74.帰路
---------- アイ視点 ----------
海上に出た後、念のため被害など無いか近くの港町へ移動する。
潜水艇は、私達が降りると水中へ沈んで行った。
自動で海底都市に戻るらしい。
アイ:「大きな蟹がいるね。」
プル:「槍に貫かれて死んでるねぇ。」
他にも大きな蟹がいて周囲の人に解体されて港町へ運ばれている。
私に気が付いた兎人族の一人がこちらに走って来る。
雲子:「なんでアイちゃんがいるの!?」
プル:「おい!ゴラァ!アイちゃんだとぉ!?」
雲子:「うわぁ!梟がしゃべった!」
肩にとまっているプルを捕まえて、プルの頭をグリグリする。
プル:「ごめんなさい!でも…。でもぉ…。」
涙目でこっちを見ているプルを胸に抱き抱えて黙らせる。
アイ:「久しぶり…。でもないか。
ちょっと事情があって私も来ちゃったんだよね。」
雲子:「来ちゃったって…。」
アイ:「もう私の用事は済んだから、地球に帰るよ。」
雲子:「総司君とソフィさんは?」
アイ:「心配ないよ。そのうち帰って来ると思う。」
プル:「結構時間がかかると思うよ。
あそこは時間の経過がこっちの1/100くらいだから。」
アイ:「そっか…。」
そうだった。FPSが1/100ってサトルも言ってたね。
アイ:「ごめん。総司君とソフィさんが戻って来るには
結構時間がかかると思う。でも、心配ないからね。」
雲子:「海底にいて心配ないの?」
アイ:「えーとね…。海底に都市があって
そこで暫く暮らすみたい。」
雲子:「都市?ああ…、海底にある宮殿ってことかな?
海底に宮殿があるって昔話は本当だったんだ…。」
アイ:「そう。そうなんだ。」
辻褄の合う伝承があるらしい。
都合が良いから話を合わせることにした。
雲子:「アイちゃんの方が先に地球に行くなら、
アイちゃんに国王様の御遺骨を亮孔に
届けてもらった方がいいかな…。お願いできる?」
アイ:「国王様…。わかった。私がちゃんと届けるよ。」
プル:「マスター?」
プルが心配そうに私の顔を見ている。
アイ:「大丈夫だよ。」
私はプルの頭を撫でる。
雲子:「どうしようかな。備玄様のところにアイちゃんを
連れて行きたいけど、ここも心配だしな…。」
プル:「この蟹のことか?」
雲子:「またしゃべった…。えーと。そうなの。
巨大蟹から港町を守らないといけないんだ。
総司君達が巨大蟹が陸に上がってくる
原因を調べに行ってくれたんだけど…。」
アイ:「なるほど。それで海底都市に行ったのか。」
プル:「マスター、ちょっと離して。」
私が手を離すと、プルはまた私の肩にとまった。
プル:「そこの兎人族、特別にアームズを一体貸してやる。」
雲子:「どういうこと?」
目の前に黒い大きなロボットと
ソーラーパネルのような板が現れる。
サトルとユピと一緒にいたロボットと違い武装はしていない。
周囲から驚きの声が聞こえてくる。
「来たぞーーー!」
海の方を見ると大きな蟹が陸に上がってきている。
雲子:「防衛体制!」
周囲の人達が港町の方へ走って行く。
雲子:「アイちゃん避難し…なくていいのかな…。」
プル:「ちょうどいいな。黙って見てろと指示を出せ。」
アイ:「プル…。もうちょっと言葉遣いはなんとかならない?」
プル:「…。ちょっと静観するように伝えて下さいませんか?」
雲子:「私は別に気にしないよ。」
雲子:「迎撃はちょっと待ってーーーーー!
指示するまで待機してーーーーー!」
雲子さんが港町の方へ大声で指示を出すと
防壁の上の人が手を上げる。指示が届いたみたいだ。
巨大蟹はそのまま砂地まで上がってきた。
プル:「ωlight01、あの大きな蟹を攻撃!」
プルは羽を巨大蟹の方へ伸ばして
アームズと呼ばれていたロボットへ指示した。
滑るように動き出し、素早く巨大蟹へ接近して右手を振り上げた。
振り上げた右手から薄く光る棒状の物が現れ、
巨大蟹が爪で攻撃してくるのを避けて右手を振り下ろした。
巨大蟹が中心部分から左右に割れて倒れた。
アイ:「おお…。すごい。こんなに強いんだ。」
プル:「継戦重視で武装してないけど蟹相手なら十分だよね。」
雲子:「巨大蟹より怖いんですけど。
私達に攻撃してきたりしないよね?」
プル:「制限をかけてるから、人族は絶対に攻撃しない。
コマンダー登録するから、何人か呼んできて。」
雲子:「プルちゃんありがと!」
雲子さんは港町の方から三人を連れてきた。
ωlight01も巨大蟹の左右の爪を持って引き摺りながら
戻って来た。
プル:「お前とその三人をコマンダー登録した。
座って待機している時は充電中だから、
緊急時以外は指示しない方がいい。」
雲子:「私は雲子だよ。」
プル:「お前の名前なんてどうでもいい。記憶の無駄遣いだ。」
プルの頭をグリグリする。
プル:「雲子。雲子。ちゃんと覚えたよ。」
プルは指示の仕方と注意事項を雲子さんと選ばれた三人に伝えた。
私もそれを聞いていたので内容は覚えた。
雲子:「もう大丈夫そうだから、私はいったん城に戻るね。
ここまで総司君に抱えて飛んでもらったんだけど、
アイちゃんにもお願いしていい?」
アイ:「いいよ。」
プル:「おま…マ…マスターに何言ってんだ!無礼だぞ!」
アイ:「プル、あんまり面倒なこと言うとおいてっちゃうよ?」
プル:「ごめんなさい…。」
プルが小さい声でブツブツとでもでも言っている。
雲子さんは港町の方へ走って行った。
雲子さんが走って戻って来る。手にはベルトの束を持っている。
私達のところに着くと顔を赤くしながらベルトを身に付けた。
アイ:「ど…どうしたの?」
雲子:「これで運んでもらおうと思って。
ほら。背中に取っ手があるんだよ。」
雲子さんはクルリと後ろを向いた。
確かに腰のあたり取っ手が付いている。
プル:「なんかごめん。
お前はお前で変態、いや、大変なんだな。」
雲子:「気にせずグイッと、イッちゃ…いっちゃって。」
雲子さんが赤い顔で振り返った。
アイ:「総司君に会ったらお説教だね。」
プル:「総司君って、あの可愛い顔した男の娘か。
やっぱりヤバいやつだったんだ…。」
アイ:「総司君を男の娘って言うな。」
プルを殴ってから胸に抱き、雲子さんを背中に負ぶい
雲子さんの指示した方向へ飛ぶ。
当然、雲子さんが身に着けていたベルトは消した。
雲子:「アイちゃん良い匂い。」
プル:「てめ…ぶっ殺すぞ。」
アイ:「プル…。言葉遣い。」
プル:「貴方を昇天させたいです。」
アイ:「なんか違う意味に聞こえるね…。」
プル:「マスターもそういう知識あるんだ。そりゃそうか。」
プルの頭をいつも以上にグリグリする。
プル:「アッ、アッ、ダメ…。入っちゃう。
(手が頭に)入っちゃうよ~。」
グリグリをやめて思いっきり叩く。
プル:「マスターが喜ぶかと思ってやったのに。」
アイ:「喜びません!私をなんだと思ってるの!?」
プル:「そりゃもう…。あっ、ヒ・ミ・ツッ、ですよね。」
アイ:「………。」
プル:「あ、本当に怒っちゃヤダ。
私は本当にマスターに喜んで欲しいからやってるんだよ?」
アイ:「プルには再教育が必要みたいだね…。」
プル:「再教育…。」
プルが嬉しそうに私を見ている。
アイ:「どうしたらいいんだろ…。」
雲子:「アイちゃんも大変なんだね。」
プル:「黙れ変態エロ兎。」
雲子:「変態じゃないよ!
好きであんな恰好したんじゃないんだからね!
あ、見えてきた。あそこに見えるお城だよ~。」
雲子さんの指示通り、お城のバルコニーへ直接降りた。
雲子:「備玄様に伝えてくるね~!」
雲子さんはバルコニーから城の中へ走っていった。
プルから手を離すと肩にとまり頭をスリスリしてくる。
ずっと続けているので頭を傾けて阻止すると
羽をパタパタして喜んでいる。もう何をしてもダメらしい。
暫くして雲子さんが備玄さんを連れて戻って来た。
備玄:「御足労ありがとうございます。
雲子から話は聞いています。
今から国王様の眠る墓所へご案内します。」
アイ:「ありがとうございます。」
お城を出て少し歩くとたくさんの花が咲いた岡が見えてきた。
その岡を登って行くと二体の像が見えてきた。
その前に二つの墓石がある。
プル:「マスターのバニーちゃん姿…。ご馳走様です。」
プルは羽をすり合わせてお祈りを始めた。
備玄さんと雲子さんは墓石の前で膝をついて手を合わせる。
私もその後ろで手を合わせる。
雲子:「やっぱり似てるよね~。」
備玄:「アイさんが成長すればもっと似てくるでしょうね。」
確かに家にいたころの私とそっくりだ。
備玄さんは墓石をずらし、壺の中から一掴み分の遺骨を
小さな袋に移してから箱に中に入れた。
プル:「でもさ…これって浮気みたいじゃない?」
備玄さんと雲子さんの動きが止まる。
実は私もそう思われるんじゃないかという気がしていた。
誠さんも頼む相手を間違えている。
こんなお願いを女性にしてはいけない。
備玄:「王妃様の御遺骨の一部も一緒に
持っていって下さいますか?」
アイ:「もちろんいいよ。私もその方がいいと思う。」
備玄さんから二人分の御遺骨の入った箱を受け取る。
備玄:「総司さんより先に地球にお戻りになると聞きましたが、
私達が乗って来た宇宙船でお戻りになるのですか?」
アイ:「このままプルと御遺骨の箱を持って帰るよ。
宇宙船はそのまま置いておいてほしいな。」
雲子:「どういうこと?」
アイ:「来たときもこのまま来たし。私は心配ないから、
総司君とソフィさんが戻ったらよろしくね。」
備玄:「承りました。アイさんもお気を付けて。」
雲子:「またね~。」
私達を囲むように防御壁を展開し一気に上空へ舞い上がり、
地球に向けて加速した。




