73.再会②
---------- アイ視点 ----------
ドームの外壁を修復した後、サトルと魔法陣の部屋へ戻る。
魔法陣と魔法陣の部屋はユピとロボットによって
綺麗に修復されていた。
ユピ:「おかえり~。どうだった?」
サトル:「危うく海底都市が水没しそうになってた。」
ユピ:「ドームに穴を開けちゃってたかぁ。」
サトル:「ちょっと見ればこれに穴が開いたら
大参事になるって分かるはずなんだけどね~。
絶対に壊れない強度にしてたつもりだったけど、
甘かったな~。」
ユピ:「まあねぇ~。この部屋も床と天井が
溶けるってどういう状況よって話だよ。
この魔法陣だって、どれだけ貴重なものか
見れば分かるよねぇ。」
サトル:「有事の想定にマスター要因も考える必要があるのか。」
ユピ:「この世界を創造した女神様をリスクに想定って、
もう私達がどんなに頑張っても無理なんじゃな~い?」
私は正座して二人の会話を聞く。何も言い返せない。
ただただ反省していることを態度で示すしかない。
サトル:「まあ、そんな脅威が味方なら助かるな。」
アイ:「私、頑張るよ!」
ユピ:「サトルは甘いなぁ。」
顔を上げて二人を見ると笑顔で私を見ていた。
サトル:「マスターはここでちょっと待ってて。
事情を知ってるユピに総司さん達の対応を任せて、
プルを連れて来る。」
アイ:「ユピ、総司君達をお願いね。」
ユピ:「お任せあれ!」
二人はまた仮面を付けて、魔法陣の上に座った。
私が魔法陣から離れると魔法陣が光る。
扉の前で立っていたロボットが二人を抱えて
扉へ向かって歩いていく。
アイ:「さっきはごめんね。」
アイ:「お名前を聞いていい?」
返事をしてくれない。
私もそのままロボットを追いかけて扉の先の部屋に入る。
今までいた部屋よりも広い部屋で、
床にはたくさんの寝袋が並べられていて、
全ての寝袋にコードが繋がっている。
私の家にある寝袋と見た目は同じデザインだ。
近くにある寝袋を調べてみる。
コードから電力が供給され魔法を発動している。
電気回路により疑似的な魔法の術式を起動することで、
秘術に類する魔法まで効果を発現できている。
魔素と同じ効果は発現出来ないので物質創造は出来ないが、
それ以外の魔法は同様の効果が発動出来るみたいだ。
アイ:「お~!すごい!電力で魔法を発動出来るんだ!」
実際に新世界に入り長い時間をかけて研究していただけある。
これは私も知らなかった技術だ。
アイ:「もしかして貴方も魔法を使えたりするの?」
ロボットはサトルとユピを奥の寝袋に入れていた。
相変わらず返事をしてくれない。
この寝袋は魂の抜けた身体に
時間停止の魔法を発動するように設定されている。
非常に高度な技術が組み込まれた魔道具だ。
ロボットの近くに行くと稼働中の寝袋が結構ある。
総司君とソフィさんが入った寝袋もあった。
しゃがんで総司君の頬に手をあてる。
無事なのはわかっていたが、所在が確認出来て良かった。
アイ:「総司君とソフィさんも貴方が運んでくれたんだよね。
ありがとう。」
「私はマスターテラに設計して頂いたタイプε。
汎用機ではないのでシロンという名前を頂いています。」
やっと返事をしてくれた。
アイ:「シロンね。よろしくね!」
シロン:「貴方は本当にマスターアイなのですか?」
アイ:「そう呼ばれてたのは本当だよ。なんで?」
シロン:「データにある情報と異なる点が多いので、
マスターの断定が無ければ別人と認識していました。」
アイ:「その情報は脚色されているだろうから直しておいてね。
私はそんな大した存在じゃないんだから。」
シロン:「承りました。業火の破壊者と訂正しておきます。」
アイ:「やっぱり怒ってるよね…。ごめんなさい。」
シロン:「冗談です…。」
表情が無いから分かり難いけど気を遣ってくれたみたいだ。
床の魔法陣が光りだした。
サトルが寝袋から抜け出し仮面を外した。
サトル:「ただいま。」
隅の方にある寝袋もゴソゴソ動き出し、梟が出てきた。
梟はパタパタと飛んでサトルの頭の角にとまった。
シロン:「おかえりなさいませ。」
アイ:「おかえり~。」
プル:「ただいま~。んっ?」
梟の姿のプルが目をパチパチさせて私の方を見ている。
プル:「マスター愛に溢れた誰かが
ついにそっくりなロボットを作っちゃった?
私ですら我慢してやらなかったのに。
サトルがマスターの身体に触ったらぶん殴るからな。」
アイ:「プル。久しぶりだね。会いたかったよ。」
プルの方に両手を伸ばすが、サトルの身長が高くて手が届かない。
サトルが屈んでくれたので、両手で梟のプルを捕まえる。
プル:「何の冗談だよ。騙されねーぞ。」
悪態をついているがプルの両目から涙が溢れてくる。
サトル:「本物だぞ。」
プル:「うそだーーーーーーーー!!!」
プルがバタバタ暴れるので手を離すと
私の顔にしがみついてきた。
プル:「もう離れないもん!うわ~~~ん!」
暫くして泣き止んだプルが、
しがみついた私の顔から離れて肩にとまる。
サトルがプルを笑顔で見ている。
サトル:「もう大丈夫か?」
プル:「うっせ。」
サトル:「さっきの異常事態は」
プル:「どうでもいい。マスターがここにいる。
あれは天啓の業火だろ。」
サトル:「ふふっ。確かにそうだな。」
サトルが立ち上がって仮面を付けた。
サトル:「俺はマスターのことをみんなに伝えに行く。
まずはこの兎蛙の月にいるメルとルナだな。」
アイ:「いろいろありがとう!」
サトル:「マスターから礼を言われるようなことじゃない。
嬉しくてみんなに伝えないと俺の気が済まないだけだよ。
プル、マスターを頼むぞ。」
プル:「任された!」
サトルは手を振って逆側の扉から出て行った。
プル:「マスターはどうするの?ついて行っていいよね?」
アイ:「もちろんいいよ。私は地球の人魚の島へ帰るね。」
プル:「地球か。マスターはゲートを使えないから、
宇宙空間を超えるしかないね。」
アイ:「ゲートって便利だよね。各々のゲートルームに
身体を置いておいて魂と魂の器を移動させてるんだね。」
プル:「うん。だから申し訳ないけど
マスターはゲートを使うのは不可能なんだよね。」
アイ:「そうね。」
私の神格の器は、みんなの魂の器の総量を遥かに超えている。
情報量が多過ぎて転写出来ないのだろう。
プル:「ちょっと待ってて。」
私が頷くとプルは先ほど出てきた寝袋に肉体を作って入れた。
プル:「お待たせ。とりあえず地上まで案内するね。」
プルは逆側の扉の方へ飛んで行ったので、走って追いかける。
エレベーターを経由して建物の外に出た。
正面のビルは倒壊し、地面に大きな穴があいている。
その周囲でたくさんのロボットが復旧作業をしている。
プル:「あらら…、ビルが倒れちゃったのかな?
だ…大丈夫だよ。たまにあるから…。」
アイ:「ごめんね…。」
その後もプルの案内で外周にあるエレベーターを経由して
亀のような形の潜水艇に乗って海上に出た。
潜水艇で移動中にプルと情報交換をした。




