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アイの新世界(物語)  作者: 夢のファイヤー
83/89

70.海底都市の管理人

B6に着くと、エレベーターの扉が開いた。

周りを警戒しつつ扉を抜けてB6に入る。

広いロビーの様な空間で地上階に比べて天井がかなり高い。

この階にもロボットはいるが、見ている限り動きはない。

置物の様に周囲に佇んでいる。


正面にモニターの様なオブジェクトがある。


マリカ:(ひとまず危険は無さそうだね。)

総司:(そうだね。)


僕は刀にかけていた手を離す。

ソフィさんも伸ばしていた爪を元に戻した。


ソフィ:(正面の四角いのはアイさんのモニターに似ているね。)

総司:(そう見えるね。)


僕は慎重にモニターの様なオブジェクトを触ってみる。

するとモニターの様に画面が光り、丸い図形の様な絵が映った。


「いらっしゃいませ。兎蛙の月のスターシップへようこそ。

 管理人にご用の際には画面の案内図に沿って

 ゲート区画へいらして下さい。」


総司:(うわっ!?しゃべった。)

マリカ:(ここまで全然案内が無かったのにね。)


総司:「案内ありがとうございます。確認しますね。」

ソフィ:「ちょっと待って。スターシップって何?」


あ、そうそう。兎蛙の月のスターシップって言ってたね。

兎蛙の月って今いる月のことだよね。

スターシップってそのまま宇宙船ってことかな?


「スターシップとは宇宙空間を渡航するための船を指します。

 この海底都市は兎蛙の月に生命が住めなくなる様な

 災害などが発生した際に、他の惑星へ避難するための施設です。」


マリカ:(なるほどね。これまでの違和感や疑問が解けたよ。

  ほんと過保護な世界だな…。)

ソフィ:(アイさんの宇宙船をメチャメチャ大きくした感じ?)

マリカ:(そんな感じだと思う。)

総司:(上の建物は避難した人達のための施設だから、

  今は誰も住んでないってことか。

  確かにかなりの人数が暮らせる施設だったよね。)


総司:「この月って危険な状態なんですか?」


「現状は特に問題はありません。

 ですが、発生した問題によっては対処が間に合わない、

 もしくは対処できない可能性もあります。

 事前に十分な備えは必要です。」


総司:「確かにそうですね。」


マリカ:(「兎蛙の月のスターシップ」と言っていたから、

  他の月にも同様の施設があるんだろうね。)


ソフィ:「避難するための施設って話だけど、

  ここまで来るのはかなり大変だったよ?」


「有事の際にはスターシップが海上まで浮上して、

 アームズフレームが避難する方々を回収します。」


ソフィ:「アームズフレームって?」


「軍隊の様な役割を持ったロボットです。

 警備、防衛、治安維持や、捜索、救助、輸送などを行います。」


ソフィ:(上で見たのは戦闘用って感じじゃなかったよね。

  まだ見た事無い形のロボットがいるのかな?)

マリカ:(そうだろうね。軍隊の様な役割って話だから、

  戦闘出来るロボットがかなりの数いると思う。

  敵認定されたら大変だったろうね。)

総司:(変なことしなくて良かったね。

  とりあえず、管理人さんに会いにゲート区画に行ってみる?)

マリカ:(そうだね。)


総司:「いろいろと質問にお答え下さりありがとうございます。

  管理人の方にお会いしにゲート区画へ行ってみます。」


「はい。」


モニターに映るこのフロアの案内図に従ってゲート区画へ

移動する。通路の壁は全てモニターになっていて、

いろいろなロボットや機械の画像と性能や特徴の説明が映っている。

ところどころ目を通しながら進んで行く。


左側の壁にはウラヌスシリーズと説明されていて、

白と金を基調にした神聖な雰囲気のロボットや機械、

右側の壁にはサタンシリーズと説明されていて、

黒と赤を基調にした禍々しい雰囲気のロボットや機械が映っている。


総司:(いろいろなロボットがあるんだね。

  でも、上にいたロボットはどこにも映ってないよね。)

マリカ:(戦闘用とか輸送用だから大型の物が多いね。

  設計者の名前と思われるシリーズ名が書いてあるから、

  汎用のロボットや機械は別に設計者がいるのかもね。)


総司:(全部無人機みたいだね。)

マリカ:(無人機として成立する技術があるんだろ。

  それにこの世界の生命って魔法で強化されているから、

  個人に対して機械でサポートする意味がほとんどないからね。)

総司:(確かにそうだね。)


ソフィ:(ロボットや機械も魔法を使えるのかな?)

マリカ:(使えないはず。魂の器は流石に搭載してないだろから。

  ただ、エネルギーは純粋に電子を電力として使っている

  みたいだから、バッテリーのような機構に直接電子を

  魔法で充填していると思う。

  新世界では物質界にあるものだけでエネルギーシステムを

  成立させるのは効率が悪いだろうからね。

  電子なら魔法適正が無くても魔法で充填できるから

  誰でも使えるメリットは大きいね。)


総司:(それすごいね。もしかして魔道具に設計図を写せば

  僕もこのロボットを魔法で作れる?)

マリカ:(おお!出来ると思う!召喚魔法みたいでかっこいいな!

  それだけじゃない。いろいろな分野で応用できる。

  北の大陸の小型浮遊艇も運転手に適正を求めなくて済むし、

  そもそも自動運転化まで出来れば、

  乗る人が魔法で電子を充填すれば目的地まで運んでくれる。)

総司:(管理者の方に会えたら聞いてみよう!)

マリカ:(そうだな!)

ソフィ:(二人はいつも楽しそうでいいね。)


ゲート区画の入口と思われる重厚な扉に近づくと自動で開いた。

中は円形の広い部屋で床には魔法陣のような模様が描かれている。

正面には人型のロボットがいて、その背後に大きな扉がある。


ソフィ:(誰もいないね。)

総司:(これはアレかな。正面のロボットを倒さないと

  奥に進めないって感じなのかな?)


背後の扉が閉まると床の魔法陣が眩しいくらいに発光した。



眩しさに閉じた目を開くと周囲の風景が一変していた。

周囲は真っ青な青空、一面芝生の地面で足元には

先程の部屋とよく似た魔法陣が描かれている。

少し先に教会のような建物が見える。


マリカ:(ありえない!ここは…。そんなはずない。)

ソフィ:(ビックリした…。急に叫ばないでよって!?

  総司君が二人!?って、男の総司君、服!)

総司:(えっ!?)


ここはどこだろうという疑問とは別におかしな点がある。

目の前にソフィさんの他に背の高い綺麗な女性がいる。

どこかで見た事がある女性だ。

ソフィさんは手で顔を覆っている。

そして指の隙間から僕の下半身を見ている。


綺麗な女性が僕の方へ手を翳す。


マリカ:「一気にいろいろなことが起きたな。

  とりあえず総司と私で分離したみたいだ。

  そして別の場所、もしくは世界へ飛ばされたらしい。

  私の知識の中でこんなことが出来る魔法はない。」


綺麗な女性は考え込む仕草をする。


総司:「もしかしてマリカさん?」

マリカ:「そうだ。」

ソフィ:「何が起きたの?」

マリカ:「分からない。」


三人で考え込んでいると教会の扉が開き人が出てきた。

扉からは男性と女性の二人が出てきて、

こちらに向かって歩いて来ている。

二人共仮面を着けていて顔は見えない。


男性の方は黒髪で頭には二本の角が生えている。

ソフィさんのような竜族の角とは違い、悪魔っぽい角だ。

身長はかなり高く、細身で悪魔の貴族といった雰囲気だ。


女性の方はライトグリーンの髪で耳が長い。

デルさんと同じ長耳族みたいだ。

仮面を付けているのに気品のようなものを感じる。

肩に梟がとまっているのも含めて神秘的な雰囲気だ。


ソフィ:(管理人の人かな?)

総司:(そうかも。でも見た目がかなり怪しいね。)

マリカ:(かっこいいじゃん。

  仮面を着けるのは正義の味方だろ。)

総司:(フィクションではそうかもね…。

  男性の方は悪魔っぽい雰囲気だし。

  普通は素性を隠したい人が仮面を着けると思うけどね。)

マリカ:(素性を隠したいのは悪人だけじゃないだろ。)

総司:(そうかな…。まあ、まずは会話してくれそうだから、

  お話ししに行こうか。)

マリカ:(そうだな。)


マリカさんに続き僕とソフィさんも教会の方へ歩き出す。


「ようこそ。ここは…。そうだな。

 万魔殿とでも言っておこうか。」

「ダサ…。センスを疑うね。

 いつものように転移基地で良いでしょ。」

「それだと陳腐過ぎない?

 仮にも私達が作った新世界だよ?」

「新世界って…。直径500m程度の空間を

 新世界っていうのは大仰過ぎる。

 マスターに対しても不敬だね。」

「万魔殿よりはいいでしょ?」


二人…。いや、明らかに女性の声は二人分ある。

二人なのに三人の話し声だ。

黒髪の悪魔っぽい男性が咳払いした。


「ようこそ、私達の世界へ。俺はサトルと名乗っている。」

「私はユピ。」

「ぷるっぷるのプルだよ。」


悪魔っぽい男性がサトルさん、長耳族の女性がユピさん、

そしてプルさんはユピさんの肩にとまっている梟みたいだ。

梟が自己主張するように羽を動かして嘴を動かしていた。

プルさんの何がぷるっぷるなんだろう。


短い自己紹介なのにいろいろと突っ込みどころが多過ぎる。


マリカ:「私はマリカ、そして弟の総司、

  角があるのは竜族のソフィアです。」


僕はマリカさんの弟になったらしい。

マリカさんが頭を下げたので僕とソフィさんも頭を下げる。


それにしても、マリカさんは僕に似すぎてない?

分離したってことは今はマリカさんの本来の姿なんだと思う。

僕と身体を共有することで、僕の見た目がマリカさんの身体に

反映されちゃってたのかと思ってたけど…。


まさか元の世界の別事象で

本当に僕の姉さんだったなんてことないよね?

でも、この世界に転生した最初から

マリカさんは僕に特別親切だった。それこそ身内みたいに。

ありえるのか、マリカさんが僕の姉さん説…。


なんかもう考えることが多過ぎる。

こんなに訳の分からないことが連続して起きるのは

この世界に転生してきた時以来だ。


サトル:「ん?まだ来るのか?」


サトルさんが僕達の後方を見ている。

僕もサトルさんの目線を追う。


さっきまで立っていた魔法陣が光っている。

その後、直に光は消えた。


ユピ:「誰も来ないわね。」

プル:「ダウンロードは実行されてたよね?」


みんなで魔法陣の方を見ていると

急に魔法陣から業火と言って良いほどの炎の柱が立ち昇った。


プル:「ちょ!?何が起きてるの!?」


サトルさんの頭上にロボットが現れる。

ゲート区間までの壁で見た戦闘型のロボット、

サタンアームタイプωと記載されていた戦闘タイプのロボットだ。

一体、二体、三体と同型のロボットが増えていく。

強そうだが、透けて見えている。

ホログラムのように実体がないように見える。


サトル:「君達はどこから来た?」

マリカ:「海底都市の魔法陣からです。」

サトル:「どこの海底都市だ?」

マリカ:「えーと…。兎蛙の月のスターシップです。」

サトル:「ここへ来るとき、魔法陣のある部屋に

  何か異常はあったか?」

マリカ:「通常の状態が分からないので、

  確かなことは言えませんが、

  正面にロボットが1体、奥の扉の前にいたくらいです。

  他には特に異常と思われる様な点はありませんした。」

サトル:「ありがとう。そのロボットは異常ではない。

  君達の後に何者かが侵入したんだろう。」


マリカさんとサトルさんの会話で、

魔法陣のある部屋と海底都市は複数あることがわかった。


サトル:「ユピ、炎が消えたら突っ込むぞ。」

ユピ:「分かったわ。」


ユピさんの頭上にもロボットが現れる。

ゲート区間までの壁で見た戦闘型のロボット、

ウラヌスアームタイプωと記載されていた戦闘タイプのロボットだ。


サトル:「プル、後は頼む。」

プル:「オッケー!」


ドラマを見ているみたいな印象を受ける。

深刻な状況みたいだけど、僕には深刻さがわからないから、

この三人の洗練されたやりとりに見惚れてしまう。


業火の柱は渦巻き更に激しさを増す。

まるで怒りを表現するような凄まじさだ。


プル:「なんつー魔力…。これ大丈夫なの?

  そもそも膨大なエネルギーだけ

  ゲートシステムを超えさせるってどういう状況?

  どうやってこちらの事象に介入してるの?

  私も行った方がよくない?」

ユピ:「完全に想定外ね。私達が戻らなかったら

  深緑の月へ行って遊んでるウェヌを拾って、

  表から兎蛙の月へ行って状況の確認とコアの回収をお願い。」

プル:「必ず実行する。安心して行ってこい。

  でも…、気をつけてね?」


ユピさんが親指を立てて返事をしている。


渦巻く業火が消えるのと同時にサトルさんとユピさん、

そして複数のロボットが魔法陣に突っ込み消えた。


プルさんが梟の姿から人型へ変化した。

身長はアイさんよりちょっと高いくらいの小柄な女性だ。

灰色の髪でサトルさんやユピさんと同じように仮面を着けている。

人型の身体を見て何がぷるっぷるなのか分かった。


プル:「心配させちゃってごめんね。ここは大丈夫だから。」


仮面を着けているので表情は分からないが、

仕草から魔法陣に突っ込んだ二人を心配しているのは分かる。

そんな状況でも僕達のことを気にかけてくれている。


総司:「何が起きているのか分かりませんが、

  僕達に力になれることはありますか?」

プル:「ありがとう。そうね…。

  異常が起きたのは貴方達が来た直後だ。

  侵入者だった場合、関係者の可能性が高い。

  あの業火には強い意思が感じられたし。

  こんなことが出来そうな人に心当たりはある?」

総司:「あります。

  二年程前に僕とマリカさんとほぼ同時期に

  新世界に転生してきたアイという方です。」

プル:「アイ…。まさかね…。」


マリカ:「たぶんそのまさかの方だと思います。」

プル:「いえ、それはありえないわ。

  でも、心当たりになりそうな強い魔力を持った人が

  向こうにいる可能性があるってことね。

  でも転生者ならおかしな人のはずない。貴方達の様に。

  転生者なら大丈夫。でも、その人は気性の激しい人なの?」

総司:「とても優しい人です。」

プル:「だよねぇ。う~ん…。別の要因かなぁ…。」


プルさんは考え込んでいる。

マリカさんは飛行の魔法で上空へ飛び立った。

僕もマリカさんを追いかける。

ソフィさんとプルさんも追いかけて来る。


上空からここを見ると、とても不思議な空間ということが分かる。

直径500mくらいの大地に一面芝生が生えている。

中央に先ほど炎の柱が立っていた魔法陣がある。

大地の奥に教会のような建物がある。

周囲は雲の無い空のような空間が広がっている。


プル:「懐かしいでしょ。」

マリカ:「そうですね。」


マリカさんはここを知っているみたいだ。

暫く上空からこの世界を眺めていた。


マリカ:「不躾ですいません。貴方方は何者なんですか?」

プル:「ん~~。どうしよっかな~~。」


足元が光ったので、下を見ると魔法陣が光りを放っていた。

魔法陣の中央にサトルさんとユピさんが現れる。


プルさんが二人の所に飛んで行ったので僕達もそれを追いかける。


プル:「どうだった!?」

サトル:「もう大丈夫だ。問題無い。」

プル:「何があったの?」


サトルさんとユピさんが僕達の方を見る。


ユピ:「後でサトルから聞いて。」


サトル:「俺はまた新世界に戻る。

  みんな魔法陣から出てほしい。プルは一緒に来てくれ。」


ユピさんが魔法陣から出たので、僕達も魔法陣から出た。

魔法陣が光りサトルさんとプルさんが消えた。


ユピ:「さてと…。バタバタしちゃってごめんなさい。

  時間はほとんど経ってないと思うけど、何してたの?」

マリカ:「ちょうどプルさんから

  皆様のことを教えて頂くところでした。」

ユピ:「そうなの?私達の家の中は見た?」

マリカ:「ちょうど案内して頂くところでした。」


そうだっけ?プルさんは渋っていたような…。


ユピ:「そう。」


ユピさんは姿勢を正してマリカさんの方を見る。


ユピ:「マリカさん、心から感謝しています。」

マリカ:「え?」

ユピ:「それじゃ、行こうか!」


ユピさんは教会のような建物の方へ

嬉しそうに弾みながら走り出した。

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