61.三種族の対立⑪三種族会談の準備
今日は兎人族のみんなと朝ご飯を食べながら、
簡単な打ち合わせをした。
今は予定通り書状を届けるためにソフィさんを抱えて
猫人族の国である北戯の川沿いの町に向かっている。
ソフィ:「町が見えてきたね。あれかな?」
総司:「うん。そろそろ降りて走っていこうか。」
猫人族の町は前回と同様に検問のようなものは無く、
難なく町に入れた。
そのまま孟さん達のいた屋敷へ向かうことにする。
「耳じゃにゃくて角かにゃ?にゃんて種族だっけ?」
「にゃんだっけ?」
走っている途中でソフィさんの角に気が付いた人が
ヒソヒソ話をしている。
急に走って逃げだす人もいる。
たぶん竜族と気が付いた人だろう。
マリカ:(む…。ソフィの角は隠した方が良かったかな…。)
総司:(これまでは町に入る時は念のため変装とかしてたけど、
意味が無かったから失念してたね。)
ソフィ:(変装って?)
総司:(猫耳とか犬耳、尻尾なんかを付けて、猫人族、犬人族に
変装してから町に入ろうとしてたの。)
ソフィ:(何それ!超見たい!)
マリカ:(私の時にやってあげようか?)
総司:(絶対ダメだからね…。)
なんだかんだでマリカさんも女性なのかな。
可愛いものが好きなのかもしれない。
僕が付けて可愛いかは別にして…。
特にトラブルになることもなく前回会談した屋敷に着いた。
町の入口に検問は無かったが、屋敷の前には衛兵と思われる人が
二人、入り口の前に立っている。
総司:「先日お伺いした際、
孟様に面会させて頂いた総司と言います。
今日は兎人族の代表からの書状を届けに参りました。」
衛兵:「承知した。ここで待っていてくれ。」
その衛兵は書状を受け取ると、屋敷の中に入って行った。
衛兵:「こないだは治療ありがとにゃ。」
総司:「どういたしまして。」
残った方の衛兵は前回来た時に僕が治療した人みたいだ。
屋敷の扉が開き衛兵が出てくる。
衛兵:「お会いするそうだ。案内するからついて来てくれ。」
僕とソフィさんは案内してくれる衛兵について屋敷に入る。
前回は入って直ぐのエントランスで
兵士に囲まれながらの会談だったが、
今回は応接室のような部屋に通された。
正面の上座の左側の席に元さんが座っている。
元:「孟様と妙は所用で少し遅れる。
まあ、座って待っていてくれ。」
総司:「ありがとうございます。それでは、失礼します。」
ソフィ:「失礼します。」
僕とソフィさんは勧められた通り席に座る。
元さんは書状を読み終わったみたいだ。
暫く沈黙が続く。なんとなく気まずい。
総司:(飲み物でも出した方がいいかな…。
訪問した側がお茶を出すってマナー的にどうなの?)
マリカ:(迎える側が出すのが普通だからな…。
気が回らなかったことを恥じるような相手なら
やらない方がいいだろうけど、
そういう感じの人では無さそうだし、いいんじゃないかな。)
総司:(このまま沈黙が続くよりはいいよね。
飲み物は何がいいかな?)
マリカ:(コーヒーで。ちょっと濃い目で。
出す時に「砂糖は入れますか?」って聞くんだぞ。)
総司:(わかった。ソフィさんも同じでいい?)
ソフィ:(いいよ~。)
僕は魔法でソーサーとコーヒーカップを三つ出し、
それぞれにコーヒーを注ぐ。
総司:「コーヒーを用意しました。砂糖はいれますか?」
元:「ありがとう。ブラックで。」
元さんの顔が少し嬉しそうだ。
マリカさんが予想した通りコーヒーが好きなのかな?
僕は元さんの前にコーヒーを置く。
総司:「ソフィさんは砂糖は入れる?」
ソフィ:「ブラックで。」
ソーサーごとコーヒーカップをソフィさんの前に置く。
元さんは悦に入った様な顔で匂いを嗅ぎ、コーヒーに口を付ける。
隣でソフィさんが「ゴフッ」とむせている。
元さんの顔を見るとニヤッと笑っていた。
マリカさんがクスクス笑っている。
ソフィさんには聞こえてないみたいだ。
僕は砂糖とミルクを入れた。
後ろの扉が開くと孟さんと妙さんが入って来た。
僕はスッと立ち上がる。
ソフィさんはちょうどコーヒーに口を付けたところだったみたいで、
さっきみたいに「ゴフッ」とむせて、急いで立ち上がった。
総司:「お時間を頂きありがとうございます。
今日は兎人族の代表からの書状を届けに参りました。」
元さんが孟さんに書状を渡す。
孟:「気にするな。ちょっと読むから座って待っていてくれ。」
孟さんも妙さんも座ったので、勧められたままに僕も座る。
ソフィさんもそれを見て座った。
慣れていなくて気疲れするだろうに、文句も言わずに
付いて来てくれるソフィさんは本当にありがたい。
ひと段落したら好きなお酒でも造ってあげよう。
妙:「飲んでるのコーヒー?
この屋敷にコーヒーなんてあったっけ?」
総司:「勝手ながら私の方で用意させて頂きました。」
妙:「私も貰っていいかな?」
孟:「あ、俺も。」
総司:「砂糖はいれますか?」
妙:「入れてほしいな。ミルクもお願い。」
孟:「俺も一緒で。」
孟さんと妙さんにも同様にコーヒーを出す。
なぜか元さんがニヤニヤしている。
孟さんは読み終わったのか、書状を妙さんに渡す。
孟:「いろいろあったみたいだが、文には会えたのか?」
総司:「はい。お気遣いありがとうございました。」
孟:「争い事は嫌いではないが、
ルールのない争いは勝ったとしても、
長い目でみれば不幸しか生まない。
速やかに解決できるのなら、なによりだ。」
総司:「そう言って頂けると嬉しいです。感謝します。」
書状のすり替えで一旦は誤解したが、やはり素晴らしい人だ。
孟:「ところで、連れの方を紹介してくれ。竜族のようだが。」
総司:「私と行動を共にしていますソフィアです。」
ソフィ:「総司の従者をしている竜族のソフィアです。
ソフィとお呼び下さい。」
ソフィさんは立ち上がって挨拶する。
孟:「竜族…。従者…。」
孟さんが考え込むような仕草をする。
妙:「総司さんが勇者ってことよ。」
元さんがビックリした顔をしてから
キラキラした目で僕の方を見ている。
孟:「やはりその様な者であったか。異常な強さだったからな。」
妙さんも読み終わったのか、書状を孟さんに渡す。
妙:「よくあの性悪そうな女をこの短期間で説得出来たわね。
総司さん騙されてない?」
総司:「大丈夫です。」
大丈夫だよね!?そう言われるとちょっと不安になってきた…。
不安が顔に出ない様に気を引き締めよう。
孟:「まあ、信じよう。
しかし、我らだけで決めることは出来ない。
兎人族のやり口ははっきり言えば最悪の部類だ。
犬人族はこの手の話は特に嫌う。
それにまったく賠償無しというのでは、
我らの兵も納得はすまい。」
総司:「はい。この後、東娯にも書状を届ける予定です。
内容は先ほどお渡しした書状と同じものです。
希望は、明後日に孟様、文様、備玄様のお三方と、
僭越ながら私も同席させて頂きまして、
四名で会談を開かせて頂ければと思います。
会談中は各々の方の警護を私が兼ねさせて頂きます。」
孟:「場所は?」
総司:「泰山の南西に砦が三つある場所があると
聞いています。その中心地点でいかがでしょうか?」
孟:「いいだろう。しかし、東娯が了承するかは疑わしいな。
よく配慮してある書状とは思うが、やったことは謀略の類だ。
伯は激高するだろうな。」
妙:「そうね…。」
総司:(確かに伯さん、そして仲さんも難しいかもね…。)
前回は僕の話をまったく聞いてくれなかったし。
そして僕に対する印象は悪いままだろう。
マリカ:(文さんだけと話が出来ればいいんだけどね。)
総司:(そうだね…。)
元:「それなら俺が同行しよう。
北戯は申し出を受けたことを俺が証人として伝えれば、
少しは受ける方向に傾く助けになるはずだ。」
僕が考え込んでいると、元さんがとても良い案を提案してくれた。
総司:「それは非常に助かります。」
元:「気にするな。俺達は、と…友達…だろ?」
総司:「え?」
妙:「はぁ~…。いつもクールぶって無口でいるのに
珍しく発言したかと思えば…。
総司さん、頷いてあげてほしい。
元は「勇者の友」って設定が欲しいのよ。
連れて行けば一応は役に立つと思うから。」
総司:「わかりました。元さん、よろしくお願いします。」
元さんは満面の笑みで頷いた。
ちょうどお昼の時間になったので、
そのまま応接室で昼食を頂くことにする。
猫人族なら魚料理だろうということで、
僕的に至高の魚料理である鰻重、
そして鮎の塩焼き、お吸い物の三品にした。
北の大陸ではステーキが多かったけど、
三角大陸に来てからは鰻重が多い。
妙:「前回も頂いたけど、これ本当に美味しいわよね!」
孟:「ほんと美味いよな。」
ソフィ:「私はこの鰻重って初めて食べた!
メッチャ美味しいね!」
みんな楽しそうに話をしながら食べている。
元さんは黙々と食べているが。
一緒にご飯を食べるのは親睦を深めるという意味で
とても有意義だと最近気が付いた。
アイさんを真似て料理はしていたが、
やっぱり大きな意義があったんだね。
アイさんも僕も見て食べたことがある料理は
何でも魔法で作れるので、その恩恵は計り知れない。
美味しいものを作れる人は、
それだけで価値があると思って貰える。
みんな食べ終わったし、犬人族の町へ行こう。
元さんを抱えて、後ろからソフィさんに掴まってもらい、
高速飛行で移動し、犬人族の町の近くで地上に降りた後は
走って町に向かった。
総司:「検問がありますね。」
元:「犬人族は身内以外には俺達より用心深いからな。」
僕達は検問前で並んでいる列に並び、順番待ちをする。
前回よりも衛兵の数が多い。
衛兵:「次。」
総司:「私は総司と言います。こちらは北戯の元さん、
こちらは私と行動を共にしているソフィアです。
私は先日、国王様に面会させて頂いており、
次来た際には連絡すれば再び、
面会して頂けることになっています。
お取次ぎをお願いします。」
衛兵:「ちょっと待ってろ。」
衛兵の一人が嫌そうな顔で僕を見た後に町の中心へ走って行く。
次の順番待ちをしている人がいたので、
僕達は横にズレて場所を譲る。
残った衛兵達は僕を嫌そうな顔で見ている。
やはり僕は嫌われたままみたいだ…。
それを見てソフィさんが睨み返している。
そしてソフィさんの爪が少し伸びてきたように見える…。
総司:(ソフィさん、衛兵さん達の反応は当たり前のことだよ。
僕は前回、そうされても仕方がないことをしたんだから。)
ソフィ:(総司君が悪いことなんてない。)
マリカ:(気持ちは嬉しいが、ここは我慢してね。)
ソフィさんはグヌヌとした顔の後にプイッと横を向いた。
「アレ、耳じゃなくて角じゃね?」
「角…。もしかして竜族?」
衛兵達がザワザワしだした。
元:「俺は北戯の大将軍、そして勇者の友、元だ。
先ほどからの勇者への態度は無礼だろ。
友人として許せん。
勇者がその気になればこの町などドラゴンのブレスで
一瞬で焼き払われるぞ?」
ソフィ:「総司君の許しがあれば、焼き払っちゃうわよ?」
「え!?本物の竜族!?」
「元って確か北戯の魔法使いにいたな…。」
「戦場で見た事ある。アイツ確かに北戯の魔法使いだよ。」
「勇者って何だっけ…?」
「勇者って竜族を従者にするスゲー強いやつのことだろ。」
「そういえばアイツ、無茶苦茶強かったよな…。」
「俺、知らせて来る!」
「俺も!」
結局、衛兵の全員が逃げる様に町の中へ走って行った。
元さんの顔が嬉しそうだ。
マリカ:(さっそく設定を使ってるな。)
ソフィ:(ん~~。気分いいね!)
総司:(この町には普通に入るのも難しいね…。)
しばらく待つと、武装した多くの兵士が
こちらに向かって来た。先頭の中心に仲さんがいる。
仲さんは途中で兵士達を制止して一人でこちらに歩いてくる。
仲:「ついて来て。」
総司:「わかりました。」
仲さんは極力僕と話をしたくないらしい。
言われた通り仲さんの後ろからついて行く。
前と同じ屋敷に辿り着き、応接室のような部屋へ通される。
徒歩だったので、屋敷に着くまでに時間がかかった。
嫌がらせか…。それとも何か準備する時間稼ぎかな。
応接室に入ると正面の中心に文さんが座っている。
文さんの左側に伯さんが立っている。
仲さんもそのまま正面まで行き文さんの右側に立った。
総司:「お時間を頂きありがとうございます。
今日は兎人族の代表からの書状を届けに参りました。」
僕が懐から書状を出すと仲さんが取りに来たので、
そのまま仲さんに手渡した。
仲さんは戻って文さんに書状を渡す。
文:「まずは書状を読ませてもらおう。」
文さんが右掌を上にして右手を前に出してきたので、
僕は椅子に座る。
ソフィさんも座ろうとしたが、
元さんが立ったままなのをみて座るのをやめた。
伯:「元がなぜそいつと一緒にいる?」
文さんが大きなため息をつく。
伯:「父上、何かくだらないことが書いてあったのですか?」
文:「いや、そうではない。」
いや、文さん、そこは注意するところでしょ。
僕はそれほど気にしないけど、目の前でそいつ呼ばわりは
相手に失礼ですよ?
元:「俺は孟の代理でここにいる。そして勇者の友として。」
伯:「そいつが勇者?信じられないな。」
ソフィ:「もう我慢できない!
次に総司君に無礼なことを言ったら、
この町ごと焼き払ってやるからね!」
仲:「貴方こそ兄さんへの無礼は私が許さない!」
伯:「仲…。」
伯さんと仲さんが見つめ合っている。
総司:「ソフィさん、ありがとう。
僕は気にしてないから大丈夫だよ。」
ソフィ:「総司君…。」
ソフィさんが両掌を組んで見つめてくる。
いや…、そこは真似しなくていいからね…。
ソフィさんの機嫌がちょっと良くなったみたいだからいいか。
文さんは書状を読み終わったのか、書状を懐にしまった。
文:「書状は読ませてもらった。諸々の行為に対する謝罪と、
建国と国王の僭称を撤回すると書いてあるが、本当か?」
総司:「はい。謝罪と、建国と国王の宣言の撤回は本当です。」
文:「よくこの短期間で説得出来たものだな。」
伯:「どうせ共謀しているのでしょう。
何か卑怯なことを考えているのに決まっている。」
仲:「兄さんの言う通りですわ。」
マリカ:(この二人にはホント黙っててほしいな…。)
元:「北戯は総司の提案を受けた。
勇者である総司の立ち合いのもと、
猫人族、犬人族、兎人族の代表会談を希望している。
これは北戯の大将軍であり、総司の友である俺が保証する。」
元さんを見ると僕の方を見ていたので頷く。元さんは嬉しそうだ。
ちょっと変なところはあるけど、元さんが一緒にいてくれて心強い。
伯:「簡単にだまさ」
文:「東娯もその提案を受けよう。」
文さんが伯さんの発言を遮るように言う。
伯:「父上、騙されてはいけません。」
文:「代表会談で全てがわかる。
嘘か本当かは一先ずはどうでもいい。
偽りなら北戯と共に、その時にどうするか決めればいい。
重要なのは北戯が受けているということだ。
そこにいる元まで偽者だと言うのか?」
伯:「それは…。しかし北戯も共謀している可能性もあります。」
文:「それはない。
北戯の孟も女神様の御意志に背くことは決してない。
何があってもだ。
それを信じられないようでは次の国王になど到底できぬぞ?」
元:「孟が女神様の御意志に背くことはない。
言うまでもないことだ。」
伯:「わかりました。」
伯さんは文さんに頭を下げる。
総司:(女神様の御意志ってなんだろね?)
マリカ:(何だろうな…。みんな仲良く…とかじゃないかな…。)
総司:(猫人族の人達と犬人族の人達で
仲良くやってる様には見えないけど。)
マリカ:(前から言ってるけど、
アレはアレで私には仲良くやってるように見えるぞ?
ちょっと過激な仲良くだと思えばいい。
殴り合ったら友達みたいな。)
総司:(僕にはわからないな…。
でも、マリカさんはそういうのが好きなの?)
ソフィ:(それなら総司君が寝たら、
私がマリカさんにいろいろ悪戯しておくよ。)
マリカ:(別に私もそういうのが好きってわけじゃないぞ?)
文:「それで代表会談はいつだ?」
元:「明後日。場所は泰山の南西にある最前線の砦だ。
三つの砦の中心の位置で会談を行う。
北戯もそれで了承している。」
文:「東娯もそれでよい。それでは明後日に再び会おう。」
文さんが椅子から立ち上がったので、僕も立ち上がる。
文:「仲、町の外まで案内を。」
仲:「わかりました。」
伯:「俺も行く。仲は俺が守る。」
仲:「兄さん…。」
伯さんと仲さんが見つめ合っている。
ソフィさんがこっちを見ているので、僕も笑顔で見返す。
文さんは伯さんと仲さん、そして僕とソフィさんを
見ながら考え込んでいる。
文:「総司は伯のような男は嫌いか?」
え…。正直嫌いなんだけど…。
ここまで嫌味を言われて嫌わない方がおかしいと思う。
総司:「嫌いです。ですがこういった場で私情は挟みません。」
文:「そうか…。」
伯:「俺は仲さえいればいい。」
仲:「兄さん…。」
伯さんと仲さんが見つめ合っている。
ソフィさんがこっちを見ているので、僕も笑顔で見返す。
僕まで付き合わされるから、いい加減やめてほしい。
文さんがため息をついている。気苦労が多そうだ。
国王としては立派な人だし、
二人を含めて皆に尊敬されているみたいだけど、
子育ては思った様にはいかなかったみたいだ。
マリカ:(いつものことだけど、女性だと思われてるな。)
ソフィ:(いつものことだねぇ。)
総司:(もう慣れたからいいけどね。)
ようやく二人が先導して歩き出してくれたので、ついて行く。
屋敷を出ると目の前で二人がイチャイチャしだした。
それを見てソフィさんが僕に絡んできた。
僕まで付き合わされるから、いい加減やめてほしい。
町の外に出ると、伯さんと仲さんは戻っていった。
総司:「元さん、今日は来てくれてありがとうございました。
元さんがいなかったら話は纏まらなかったと思います。
心から感謝します。」
元:「気にするな。」
元さんが右手を出してくる。
僕は喜んでその手を取る。
元:「俺達は友達だ。」
総司:「はい!」
元さんは嬉しそうだ。僕も嬉しい。
ソフィ:(まさか総司君、そっちの趣味じゃないよね?
いつも女性に何の反応もしないし。)
マリカ:(ごめん。それ私のせいだ。
私が欲情系の感情を抑制しちゃってる。)
ソフィ:(そうだったのね…。
ということはマリカさんが寝ている時の総司君は…。
マリカさんが寝ているのが分かるのは、
私とアイさん、そしてデルさんだけよね…。
この二人の好意はちょっと方向性が違うわよね…。)
なんだかソフィさんがブツブツ言っている。
心の声が念話に出ちゃっているみたいけど、
小さい声でよく聞こえない。
ソフィ:(マリカさん、今日の夜だけど、
総司君が寝た後ちょっと付き合ってほしい。)
マリカ:(今日はソフィも頑張ってたからな。いいよ。)
せっかくだから元さんへの感謝を形にしたい。
僕は魔素結晶を作り、元さんの大きな長剣に似せた剣を作る。
もう一つ魔素結晶を作り、鞘にした。
ちょっと装飾を凝って、かっこいい長剣と鞘だ。
総司:「これ、友情の証です。
戦闘に有効な術式が組み込んであります。
それと刃毀れしたり、折れても魔力を通せば復元します。
ですので、気にせずに何時でも使って下さいね。」
僕は元さんに長剣を差し出す。
元:「それは魔道具の武器か。友情の証なら喜んで受け取ろう。
俺からも何かお返ししたいが、
この品に見合う物など、どうしたものか…。」
総司:「僕は種族に関わらず、
皆が仲良く出来る世界を創るために行動しています。
元さんも出来ればそうなる様に
少しでも心がけて頂ければ十分です。」
元:「わかってはいたが、嘘偽りなく、そういう人物なんだな。
喜んで引き受けよう。」
そう言って元さんは長剣を受け取った。
マリカ:(良かったな。)
総司:(うん。嬉しい。)
元さんを孟さんの屋敷に送り、備玄さん達に今日の結果を伝えた。
明日は宇宙船を受け取りに人魚の町に行く予定だ。
久しぶりにアイさんに会える。
今日の夜は明日に備えてヤルザの町に戻ってから寝よう。




