58.三種族の対立⑧ドラゴン襲来?
ソフィ:「月に行くまでの予定ってどんな感じなの?」
総司:「明日のお昼に兎人族の森で会談があるから、
そこで大体決まると思う。
僕の方からの要望は三角大陸の三種族の対立にある程度
決着を付けることかな。
それと、どうして月から落ちて来たのかの理由だね。
備玄さん達からは、月に行く方法の説明があって、
最後に僕にして欲しい事の依頼がある流れかな。
たぶんそんな感じになると思う。」
アイ:「宇宙船は3日後に北の大陸の人魚の町まで取りに来て。
試運転も兼ねて私がそこまで運んでおくから。」
総司:「ありがとう。宇宙船の運航には
何人くらい必要になりそう?」
アイ:「地球から発射するときの推力に魔道具を使う。
それだけでは足りないけど、総司君かソフィさんの
どちらかが最大魔力を送れば大丈夫だと思う。
制動を含む制御にもう一人必要だから、
発射時は魔法使いが二人必要ね。
それ以外の時は誰か一人いれば基本的に問題無いよ。
搭乗人数だけど、座席は14席にするね。
狭いけどちょっとした貨物室を作っておくから、もしもの時は
そこに入って貰えば、最大20人くらいはいけるかな。
それとオーバーテクノロジーの塊になるから、
所有はあくまで総司君。
絶対に誰かにあげちゃダメだよ?
星間航行の時は総司君が搭乗していない時は
動かないように生体認証をいれておく。
もう少し具体的な話は引き渡しの時にするね。」
聞いた僕もなんだけど、アイさんの頭にはもう具体的な
設計図があるみたいだ。
総司:「いつもありがとう。よろしくね。」
ソフィ:「明日のお昼に会談ってことは
明日の朝までには私も合流した方がいいよね。
総司君は今日はどこに泊まるの?」
総司:「今日はフランさんと一緒に
ヤルザに戻って泊まる予定だよ。」
ソフィ:「それなら、この後、直にヤルザに向かう準備をするよ。
今日中に着くと思うから、夕飯を作り置きしといてほしいな。」
総司:「わかった。急な話でごめんね…。」
ソフィ:「総司君に頼られるのは私の喜びだよ。
だから遠慮なんてしないでね。」
アイ:「そうだよ。全然連絡くれなくて寂しかったんだから。」
アクア:「アイ様は昨日」
アイさんがまたアクアさんに飛びついて口を塞いでいる。
デル:「アクアさん、アイさんと仲良さそうで羨ましいね。」
アイ:「全然そういうのじゃないからね。」
アクア:「アイ様も照れ屋さんですね。」
久々にアイさんがジト目でアクアさんを見ている。
相変わらずアイさんは可愛い…。
総司:「とりあえず、僕から話したいことは終わったかな。」
アイ:「私の方も大丈夫だよ。マジック商会に関する事は
私の方からルイさん達に伝えておくね。」
ソフィ:「私もオッケーだよ。」
デルさん、アクアさん、フランさんも大丈夫らしい。
総司:「急な話だったけど、みんなありがとう。
アクアさんも身体を大事にしてね。」
アクア:「はい。旦那様。」
アイさんがアクアさんの頭に両拳でグリグリしている。
アイさんとアクアさんの通信が切れた。
ソフィ:「それじゃ、すぐに向かうよ。また後で!」
ソフィさんとデルさんとの通信も切れた。
総司:「それじゃ、帰りましょうか。」
フラン:「はい。旦那様。」
僕は無視して、家の外に出ることにした。
フラン:「ウソウソ。ちょっと待って~。」
フランさんにはアクアさんの良い所だけ真似して欲しい…。
フランさんを抱えてヤルザの町に戻り、夕飯の用意をする。
夕飯が出来る頃にジルさんも戻って来た。
ジルさんはいつも遅くまで頑張ってくれている。
ジルさんはもう結構な歳だ。本当にありがたい。
ヤルザの家のみんなと夕ご飯を食べた後、
急に眠くなってきた。
最近、マリカさんに言われて早く寝ていたのが習慣に
なってしまったみたいだ。
片付けは家のみんながしてくれる。
総司:(最近、マリカさんが早く寝ろ寝ろ言うから、
もう眠くて…。あとはお願いしていい?)
マリカ:(すまなかったな。後は任せろ。
今日もお疲れ様。ゆっくり休みなさい。)
そして翌朝。
目が覚める。
何だか両手が痺れている気がする…。
左右から圧を感じる。
総司:(マリカさん起きてる?)
起きてないだろうとは思いつつ、念のため聞いてみる。
やはり返事は無かった。
何となく状況は察しているが、確認のため左右を見る。
ソフィさんとフランさんが、
左右からそれぞれ僕に抱き着いて寝ている。
起こさない様に注意しながら、部屋から抜け出す。
総司:「おはようございます。」
ジル:「おはよう。昨日の夜は大変じゃったのぉ。」
一階に降りると既にジルさんが起きていたので、挨拶をする。
昨日の夜、何かあったらしい。
総司:「え…ええ。」
とりあえず、マリカさんが起きるまでは、
あまり人に会わない方がよさそうだ。
総司:「僕はヤルザとヒューズを結ぶ道造りの続きをしてきます。
みんなが起きてきたら、朝ご飯は僕が戻ってから作りますと、
伝言をお願いします。」
ジル:「総司君は相変わらず働き者だの。」
僕はジルさんに笑顔で手を振って家を出る。
僕は人目に付かない様にヤルザからヒューズの方向へ飛んで行く。
そして、道造りをしながらマリカさんが起きるのを待った。
マリカ:(おはよう。)
総司:(おはよう。昨日はありがとうね。)
マリカ:(気にするな。)
総司:(何があったか教えて貰っていいかな?
朝からいつもと違うところがあったんだけど…。
ジルさんにも昨日の夜は大変だったねって言われたし。)
マリカ:(ソフィがドラゴンの姿のままヤルザに来たんだ。
私達も家の場所を伝え忘れたろ。私達の家を探すのに
ドラゴンの姿のまま上空で旋回していたらしい。)
総司:(なるほど…。町の人達は大丈夫だった?)
マリカ:(もちろん大丈夫じゃない。
悲鳴が飛び交い、町から避難する人達で大混乱になった。)
総司:(思っていたより、ずっと大変な事が起きてたよ…。
町の人達になんて謝ったらいいんだろ…。)
マリカ:(それは大丈夫だと思う。順を追って説明するよ。
総司が寝た後しばらくして、外が騒がしくなったんだ。
私が外に出てみると、町の人達が上空を見て
悲鳴をあげながら走っていた。
見るとドラゴンの姿のソフィがいたので、
急いでソフィの所に行き、広場に降りて人型化して貰ったんだ。
周りにもたくさんの人が居たので、
ソフィは私の従者だから心配ない事を説明して、
避難した人達に知らせてくれるようにお願したんだ。
既に町の外まで避難していた人達には、
ソフィと一緒に飛んで行って説明した。
とりあえず、それで事態は収束したので、家に帰って寝たよ。
それとモリスさんが組合の人達を使って町の人達に
心配無い事を伝えるために走り回ってくれた。
後でお礼を言いに行った方がいい。)
総司:(配慮が足りなかったね。
大変な事を押し付ける形になっちゃって、ごめんなさい。)
マリカ:(配慮が足りなかったという意味では、
私も会談には一緒にいたんだ。私も同罪だから気にするな。)
総司:(ありがとう。)
そろそろ朝の支度をする時間なので家に帰る。
総司:「ただいま戻りました。今から朝ご飯の準備をするので、
もうちょっと待ってくださいね。」
「おはようございます。勇者様…。」
「勇者様…素敵…。」
何人か起きていたみたいだ。
みんなが熱い視線で見つめてくるから恥かしい…。
ソフィ:「あ、総司君、おはよう。」
フラン:「おはよう。」
フランさんがモジモジしながら僕の方を見ている。
今はとりあえず、スルーしておこう…。
ソフィ:(総司君、マリカさんから聞いてる?)
総司:(うん。聞いたよ。僕の配慮が足りなかったよ。ごめんね。)
ソフィ:(他の町ではもう普通にドラゴンの姿で移動してたから、
すっかりこれが普通になっちゃってて…。
私の方こそ、気が回らなくてごめんなさい。)
マリカ:(お互い済んだことだ。
それに怪我の功名じゃないけど、総司の名声が一気に広まった。
結果オーライだよ。)
総司:(僕はあんまり目立ちたくないんだけどね…。)
僕は話をしながら朝ご飯の支度を進める。
総司:「そろそろ出来ますよ。みんな取りに来てください。」
今日は卵焼き、焼きナス、豚汁、わかめご飯の4品だ。
「美味しそう!さすが勇者様です!」
「よく考えたら、勇者様に朝ご飯を作って貰ってる私達って…。」
ご飯の美味しさと勇者は関係ない気がするけど…。
喜んで貰えてるみたいだから、まあいいか。
朝ご飯の後、ソフィさんとフランさんと一緒にモリスさんの所へ、
昨夜のお礼と三角大陸の状況を報告に行くことにした。
道中、町の人達から熱い視線を向けられる。
フラン:「今日はどうして私も一緒なの?
総司君は慣れてるかもしれないけど、
私はこんなに周りから見られるのはちょっと恥かしいかも…。」
総司:「月に行ったら、しばらくヤルザには来られないから、
僕の後任として紹介するためだよ。」
僕だって慣れた訳じゃない…。
ソフィ:「私は総司君の護衛かな。」
総司:「ソフィさんは僕と一緒に昨夜のお詫びをするためだね…。」
ソフィ:「そうね…。」
漁業組合事務所につき、会議室に通される。
すぐにモリスさんが会議室に入って来た。
僕はソフィさんの脇をチョンとつつき、立ち上がる。
総司:「昨夜はご迷惑をおかけしました!」
ソフィ:「お騒がせしてすいません!」
僕とソフィさんは丁寧に腰を折ってお詫びする。
モリス:「済んだ事だ。
被害の報告や苦情なども来ていないので、気にする事は無い。
むしろ良い宣伝になったんじゃないか?
もうこの町で総司君のことを知らぬ者は居ないだろうな。
それもドラゴンを従者とする勇者の名として。」
モリスさんは意地の悪そうな笑顔で見ている。
総司:「ありがとうござます。
これもモリスさんを始め、
協力して下さったこの町の皆様のお蔭です。」
モリス:「それにしても、昨夜の総司君の立ち振る舞いは、
惚れ惚れしてしまう程に凛々しいものだった。
私達も協力はしたが、早急に事態が収拾したのは、
やはり総司君の言葉の力が大きかったと思う。
また、何かあったら協力をお願いしたい。」
総司:「ありがとうございます。
先日もお伝えしましたが、喜んで協力させて頂きます。
ただ、本日伺ったのは昨夜のお詫びと、
引き継ぎに関するご報告のために参りました。
しばらくの間、私は北の大陸から離れることになりますので、
マジック商会の代表をここに居るフランソワーズへ
引き継ぎます。本日より正式に代表も交代しています。」
フラン:「フランソワーズと申します。
本日よりマジック商会の代表を務める事になりました。
フランとお呼び下さい。よろしくお願いします。」
モリス:「そうか…。フランさん、総司君の時と同様に
今後ともよろしくお願いする。
ところで、総司君が北の大陸を離れる理由を
聞いてもいいかな?」
僕は三角大陸での状況と、
それによって月に行く事になりそうな事をモリスさんに伝えた。
モリス:「この町のことで私からお願いした事が、
そもそもの原因か。本当に申し訳ないな。
変わりと言ってはなんだが、この町でのことで、
これまで以上に協力は惜しまない。
フランさん、困った事があったら何でも相談してもらいたい。」
フラン:「ありがとうございます。」
モリス:「それにしても月か…。総司君は行った事があるのか?」
総司:「もちろんありません。今から楽しみです。」
モリス:「そうか…。」
僕は笑顔で答える。
ヤルザも含め、北の大陸は当面大丈夫だろう。
そもそも北の大陸からアイさんには連絡が可能だし、心配はない。
そろそろ兎人族との会談に行かないとね。




