50.ヤルザの町と避難民
アイさん達が竜の島へ行ってから一か月が経った。
結局マリンさんもナギさんも竜の島へ行っていた。
御神体のこともあるけど、
やっぱりアイさんと一緒にいられるなら、
いたいと思うのが普通だろう。
来月は武術大会があるが、僕とソフィさんは出場しないことにした。
それを聞いたデルさんは今のうちなら優勝出来ると張り切って
猛特訓を始めた。
ソフィさんもそれに付き合うことになった。
レオンさん達も当然、武術大会に向けて猛特訓中だ。
シアちゃんも武術大会に出場するそうで、みんなと一緒に
フューズの町で猛特訓をしている。
一緒に訓練している狐人族、長耳族の人達も武術大会に
参加するそうで、みんな気合が入って訓練している。
僕は一人でイルスの街からヤルザの町に向けて道を造っている。
みんな手伝うと言ってくれたが、僕は一人で大丈夫だと断った。
もともと道はあるので、それを広くして整備するだけだ。
みんなはみんなで武術大会に向けて頑張ってほしい。
ヤルザの町は港町なので海産物が主な交易品だ。
ザウルの街は既に人魚の町と交易関係にあり、
海産物は人魚の町から速やかに供給されている状態だ。
そのため、まずはイルスの街と
ヤルザの町の道を整備することにした。
NRTの周辺の道を造るときとは違い、森を切り開く必要もなく、
既にある道を広げて整備するだけだ。
今の僕なら概ね魔法を発動しながらジグザグに歩く程度の作業だ。
一人でも一か月程度で道を整備することが出来た。
これからはヤルザの町を中心に活動を行っていく。
ヤルザの町は漁業関係者の代表が町の代表を兼ねているそうだ。
ルイさんにお願いしてヤルザの町の代表へ紹介状を書いてもらい、
これからヤルザの町の代表のモリスさんとの面談が始まる。
ここは漁業関係者が集まる組合事務所のような建物らしい。
僕は応接室に通されてモリスさんを待っている状態だ。
ほどなくしてモリスさんが応接室に入って来る。
総司:「初めまして。
イルスの街で商会の代表をしています。
総司と言います。
今日はお時間を頂きありがとうございます。」
モリス:「ヤルザの漁業組合長のモリスだ。
総司君のことは知っていたよ。
前回の武術大会は私も観戦している。
決勝戦は衝撃的だったよ。
まさか人にあのようなことが
出来るとは思ってもいなかったからな。
女性だと思っていたが、イルスの街の領主からの紹介状には
君のことを男性と記載してある。
他にもイルスの街とそれ以外の北の大陸各地で
様々なことで多大な貢献をしているとも記載されている。
そして既にイルスの街とヤルザの町とを結ぶ道を
魔法で毎日整備してくれていたことも聞いている。
一人で、しかも一か月で道を拡張して整備するなど
常識ではありえないことだ。
まさに武術大会の決勝戦で見た人外ともいうべき力の
一端なのだろうな。
さて…。くどくどと私の知る総司君の話をしたのは、
君が今更くだらない嘘をつくような必要もなく、
そして多くの人々から信頼を得ているということを
十分に私が知っていると伝えたかったからだ。
それでは君の話を聞かせてほしい。」
総司:「ありがとうございます。
私からの提案は3つあります。
一つは北の大陸の交通網として、道の整備と人と物流を
速やかに行うための乗り物の運用をヤルザの町でも
許可をして頂きたいということです。
既に西の人魚の町から、ザウル、イルス、そして
新たに大陸の東端に造ったヒューズの町まで、
東西を横切るように、この乗り物の運用が行われています。」
モリス:「話には聞いている。
ヤルザの町もその中に組み込んでもらえるのはありがたい。
人魚の町とも交流が始まっているというのは
信じられないことだが…。
まあ、実際にそう聞いているし、
君の言うことに嘘はないだろう。
具体的に私達は何をすればいいのかな?」
総司:「許可を頂ければ、こちらで全て用意します。
頂く許可の中には、私共が用意する乗り物の運転手を
ヤルザの町で募集することも含んでいます。
そして、次の道の整備ですが、新たに造ったヒューズの町と
ヤルザの町とを結ぶ道にします。
ヒューズの町は人間族、狐人族、長耳族を主として
いろいろな種族が暮らしています。」
モリス:「許可する。
そもそも私達にとってありがたい話ばかりだ。
それと新たな町が建設されたのは聞いていたが、
ヒューズの町というのだな。
道が出来れば、新たな交易相手となるだろう。
拒む理由はないな。」
総司:「ありがとうございます。2つ目の提案の前に
ヒューズの町を造った理由とも重なりますが、
私共の活動の目的についてお話しさせてください。
それをご理解頂くことで、2つ目の提案の意味もまた、
ご理解頂けると思います。」
モリスさんが頷いたので、僕は話を続ける。
総司:「私共の活動の目的は、
種族に関わらず仲良く出来る世界を作ること。
そして、皆が豊で幸せを感じられる世界を作ることです。」
モリス:「崇高な理想だ。ただし、君達の力を知らなければ、
笑ってしまうような話だな。失礼。正直に言いすぎたか。」
総司:「難しいことは理解しています。
ですが、これまで私共の思い描く世界の姿は徐々にでは
ありますが、実現出来てきています。
そしてこれからも続けていきたいと、そう思っています。」
モリス:「君達の言う種族に例外は無いのかな?
私は特に種族に対する偏見は無い。
但し、このヤルザの町では
人魚に対しての恐怖が少なからずある。
狐人族、長耳族は問題ないとしても、
人魚の町へ行くのは抵抗があるだろうな。」
総司:「時間がかかることもあると思います。
ですが、まずはきっかけを作ることはしたいと思います。
そのきっかけとしての提案が2つ目になります。
ヒューズの町の山側にNRTという
温泉を主とした観光地を造りました。
そこはヒューズの町と同様に、
狐人族と長耳族を主とした人々が共に運営しています。
そこへの観光の案内をする店舗を開くことの許可を
頂きたいです。
観光地には人魚の町もあります。
人魚の町では遊覧船による海の観光を主としています。
ヤルザの町も港町ですので、観光地としての魅力は
NRTよりは低いとは思いますが、
ゆくゆくはヤルザの町からも
人魚の町へ訪問する人が増えればと思っています。」
モリス:「問題ないだろう。
行きたくなければ申し込まなければいいだけだからな。
店舗を開くのは構わないが、
この町ではきついと思うぞ?」
そうかな…。今まで上手くいってたから簡単に考えすぎたかも…。
そういえばザウル、イルスの街でも、知り合いからの口コミで
広げてもらって申し込みが増えたんだったな…。
正直このヤルザの町にはまったく足掛かりがない。
モリスさんの言うようにきついかもしれない…。
総司:「モリスさんのご指摘の通りかもしれません。
商人の私が言うのも変ですが、営利目的ではないので、
店舗は予定通り開いて、その後のことは随時対策を
考えたいと思います。
出来ればモリスさんに何か良いアイデアがありましたら、
教えて頂けると助かります。」
モリス:「単純だが私からは2つだな。
信頼を得る事。
観光の楽しさを皆に理解してもらう事。
信頼を得る事は君なら時間があればそう難しくはないだろう。
問題はもう一つの方かな。
なんなら私が人を集めよう。
視察のようなものだから、
もちろん料金はそちらで持ってもらうが。」
モリスさんがニヤリと笑う。その程度なら問題無い。
ありがたい申し出だ。
総司:「ありがとうございます。準備が出来次第お願いします。
ヤルザとヒューズの町を結ぶ道が出来てからにしようと
思いますので、二カ月後くらいになるかと思います。」
モリス:「承知した。楽しみにしているよ。」
総司:「それでは最後の3つ目の提案です。
ヤルザの町で何かお困りのことがあれば、
協力したいと思っています。
よろしければ、何か問題やお困りのことがあったら
私共にも相談して頂ければと思います。」
モリス:「それはありがたいな。
困っていることと言えば、
今年に入ってから南から移住を希望して渡航してくる者が多い。
それも徐々に増えてきている。
どうもここから南東の三角大陸で揉め事があって
避難してくる者達らしい。
鳥人族や兎人族が特に多いな。
まだ問題というほどではないが、そのうち問題になるだろう。
いずれ相談させてもらうかもしれん。」
ここから南東といえば、鳥人族のマテオさんやサディさんが
住んでいたという大陸と同じ方向だな…。
マテオさんやサディさんも被害が出ない様に移住してきたと
言っていたから、同じ大陸の可能性が高いな。
南の大陸と言っていたけど三角大陸と呼ばれているのか。
何かあればモリスさんが連絡をくれると言っているけど、
連絡の手段が難しいな…。
総司:(マリカさんはモニターを作れるようになった?)
マリカ:(あれはちょっと無理だな。)
総司:(そうだよね…。他にこの町から離れていても
連絡がとれる手段ってある?)
マリカ:(モニターが無いなら人伝しかないだろ。
この町に鳥人族が避難してきていると
モリスさんが言っていたよね。
店舗の従業員を兼ねて鳥人族を雇って、
何か連絡があるときはイルスの家まで、
飛んできてもらって知らせてもらうのがいいんじゃないか?)
総司:(そうしよう。ありがとう。)
総司:「その時は是非連絡をお願いします。
連絡の手段ですが、この町に店舗を開く時に
鳥人族の方を雇いたいと思います。
その方に伝えて頂ければ、イルスの私共の家まで
飛んで知らせてもらうようにしたいと思います。」
モリス:「それは助かる。ありがとう。」
総司:「店舗を購入したら改めて連絡します。
今日はお時間を頂きありがとうございました。」
モリス:「こちらが得する話ばかりで申し訳ないくらいだよ。
私に何か頼み事があれば、出来るだけ便宜を図ろう。」
僕はモリスさんとの会談を終えてヤルザの町を歩く。
マリカ:(一人で交渉も、もう問題無いな。立派だったよ。)
総司:(そうかな…。僕達の話が交渉にも値しない、
断る理由もない内容ばかりだからね。)
マリカ:(まあそうだけどね。カッコ良かったのは事実さ。)
総司:(ありがとう。そう言って貰えると嬉しいよ。)
僕はそのまま小型浮遊艇と浮遊貨物艇の倉庫用の土地と、
店舗に使えて従業員も住み込みで働ける建物を購入し、
斡旋所に行って人を雇った。
もちろん鳥人族の人も含めてだ。
そのまま店舗の方に住める人には住んでもらい、通いの人は
暫くは仕事が無くても店舗に来てもらうようにお願いした。
ひとまずは店舗の清掃と住居として使えるように整備をお願いする。
モリスさんに店舗の場所を連絡して、鳥人族の人を抱えて
イルスの街の僕達の家へ案内する。
10階建ての建物なので、イルスの街に入れば当然すぐに分かる。
モリスさんから連絡があったら、
ここに連絡してくれるようにお願いした。
この時に家にいたフランさんにヤルザの町まで一緒に
来てくれるように準備をお願いした。
一緒に来た鳥人族の人とイルスの街で遅めのお昼ご飯を食べて、
鳥人族の人にはヤルザの町へ帰って貰う。
その後にイルスの街の小型浮遊艇の運営をしてくれている人に
イルスの街とヤルザの町との道が開通したことを知らせ、
ヤルザまでの小型浮遊艇と浮遊貨物艇の運営をお願いした。
そして僕はフランさんを抱えてザウルの街へ行き、
ジルさんも一緒に抱えてヤルザの町へ行く。
ジルさんにはヤルザの町でもザウルの街と同様に
小型浮遊艇と浮遊貨物艇の運転手の準備をお願いした。
新たな募集や雑務の手伝いは
この町で既に雇っている人を使ってもらう。
フランさんには小型浮遊艇等の運営の準備と、
観光ツアーの店舗の準備をお願いする。
小型浮遊艇の運営を各町で分けるのは、それぞれの町で
独立して運営してもらう事で利益の一部をそれぞれの
町へ納めてもらうためだ。
もちろん統括はマジック商会だ。
しばらくはこのままヤルザの町で
フランさんとジルさんと暮らすことにする。
二人とも快く引き受けてくれた。
僕は明日からはヤルザの町とヒューズの町との道造りだ。
なんだかいろいろなことに慣れてきたな…。
武術大会が終われば手伝ってくれる人も増える。
みんなが頑張った分だけ武術大会も楽しみだ。
そして南東にあるという三角大陸のことも少し気になる。
これまでと違って不穏な感じがする。
モリスさんと会談した翌日の朝、
ヤルザで購入した店舗付きの住宅で目を覚ます。
今日からしばらくはジルさんとフランさん、
そして住み込みで働いてくれる人達との生活だ。
昨日雇った人は10人で、そのうち鳥人族の人も含めて
6人は住み込みで働いてくれる。
もちろん住み込みの人の方が給金は高くしてある。
通いの人は全て女性で、住み込みの人は3人が男性で3人が女性だ。
店舗が開店すれば受付業務が主になるため、女性を多めにした。
鳥人族の人は一人で飛んでもらうことになるため男性の方にした。
この世界では女性も男性とほとんど変わらない身体能力があるため、
女性だから襲われるということはあまり無いみたいだけど。
僕は一階の店舗の奥のスペースで朝ご飯を準備する。
今日は倉庫と小型浮遊艇と浮遊貨物艇を造った後は
この家の改装をしようかな。
やっぱり綺麗なお店の方がお客も来るよね。
ジル:「おはよう。今日も総司君は朝早いな。」
総司:「おはようございます。
もう少しで朝ご飯が出来ますからね。」
ジル:「ありがとう。今日は鮎の塩焼きか。儂の好物だな。
総司君と一緒にいると今日も元気に
頑張ろうという気になるよ。」
総司:「ジルさんのお蔭ですごく助かっています。
少しでも美味しいものを食べて喜んでほしいですからね。」
ジルさんは僕がザウルの街にいるときに何度も一緒に
ご飯を食べているので、僕の魔法に今更驚くことも無い。
住み込みで働いてくれる人達も住居の二階から降りてくる。
フラン:「おはよう。」
ちょうど配膳も終わったところでフランさんが降りてくる。
総司:「おはようございます。みんな揃ったみたいなので、
食べましょうか。」
フラン:「総司君がいるとご飯が美味しくていいね!」
みんな朝ご飯を食べ始める。
「うま!給金も良いけど待遇もいいね。最高だ。」
「ほんと美味しい!こんな美味しい朝ご飯は初めてかも。」
「お嬢様が作ったんですよね!とっても美味しいです!」
みんな喜んでくれている。
総司:「おかわりしたい人は遠慮なく言って下さいね。
それと僕はお嬢様じゃなくて男なんですよ。」
僕が笑顔で言うとみんな驚いている。
「ご…ごめんなさい…。」
総司:「いいんですよ。間違えない人の方が少ないですから。」
ジル:「儂も間違えたのぉ。」
フラン:「私も間違えたわね…。」
総司:「こんな感じなんです。だから気にしないでくださいね。」
僕が再び笑顔で言うと、女性の人は胸の前で手を組んで
目をウルウルさせて僕の方を見ている。
男性の人も顔を赤くして照れた顔でこっちを見ている。
フラン:「総司君。その辺にしておかないと
みんな仕事が手につかなくなっちゃうからね…。」
「「「そ…そんなことないです!一生懸命頑張ります!」」」
総司:「よろしくお願いします。一緒に頑張りましょうね。」
「「「はい!」」」
フラン:「相変わらず総司君は危険だわ…。」
みんなが朝ご飯を食べ終わるころに、通いの4人が到着する。
総司:「今日からよろしくお願いします。
まずはみんなで仕事場の一つに移動します。」
僕達は昨日購入したイルスの街と繋がる道の最寄りの土地へ移動する。
まずはみんなに試してもらうために小型浮遊艇を作る。
「魔法使い!」
「すごい!」
「魔法ってこんなことが出来るんですね!」
みんなが羨望の目で僕を見る。照れくさいな…。
総司:「ジルさん、あとはお願いします。」
ジル:「はいよ。」
僕は運転可能な人の確認をジルさんにお願いして、
倉庫と複数の小型浮遊艇と浮遊貨物艇を作る。
2人が小型浮遊艇を浮かせることが出来た。
その2人と合わせて4人にジルさんと一緒に仕事をしてもらう。
僕とフランさん、そして残りの6人で家へ戻る。
総司:「みんなはフランさんの指示に従って下さい。
僕はこの家を改装しますので、何かあったら呼んでください。
フランさん、よろしくお願いします。」
フラン:「わかったわ。」
この家はマジック商会のヤルザの町での拠点にする。
元々3階建ての建物だったが、5階建ての建物に増築した。
ちょうどお昼ご飯の時間になったので、内装は午後にしよう。
ジルさん達も帰って来たので、お昼ご飯もみんなで食べる。
「すいません。こちらに総司さんはいらっしゃいますか?」
来客みたいだ。僕に用事があるみたいなので、僕が応対する。
総司:「はい。僕が総司です。」
「モリスさんが、なるべく急ぎで総司さんに来てほしいそうです。
もしいらしたら直接港の方に案内するように言われています。」
総司:「わかりました。僕はちょっと行ってくるけど、
みんなはこの後も引き続き仕事の方をよろしくお願いします。」
案内の人に付いて港へ行く。ヤルザの町の港は見ていなかったが、
この光景が異常なのは僕にもわかった。
木造の簡素な船が、海に無数に浮かんでいる。
港にもたくさんの兎人族の人がいる。
兎人族の中には手や足が無い人もいた。
「あそこです。」
案内の人に促された方を見ると、
モリスさんが兎人族の人と話をしていた。
モリスさんがこちらに気が付き、僕に手招きする。
モリス:「来てくれて良かった。」
総司:「すいません。話をお聞きする前に
怪我をしている人の治療をしてきますね。」
モリス:「頼む。」
出血はしていない。
ここに来るまでに自分達である程度治療はしているはずだ。
今も怪我の残る人は身体に大きな傷を負った人か、
身体のどこかを失っている人だ。
内臓の負傷はいずれ命を失う危険もあるため、
そういう人から順番に治療していく。
何人か治療しているうちに怪我人の方から僕の方に来てくれる。
みんな驚きながらも感謝の言葉を言っている。
怪我人は20人くらいいた。
今港にいる兎人族の人は全部で100人くらいだろうか。
治療が終わったので、改めて話を聞くことにした。
総司:「何があったのですか?」
モリス:「今回は規模が大きいが、これまでと同じで三角大陸から
避難してきたらしい。」
総司:「もう少し詳しい話を聞きたいです。治療した人達の怪我は
明らかに武器によって傷つけられたものです。」
「猫人族と犬人族に襲撃されたんです。
私達は住んでいた場所から追われてこの大陸に避難してきました。
三角大陸の大半は猫人族と犬人族が住んでいるので、
避難するには別の大陸に行くしかなかったのです。」
襲撃されたのか…。
総司:「襲撃された理由に思い当たることはありますか?」
「………ありません。」
総司:(どう思う?)
マリカ:(ただごとじゃないな。
ただ、何か隠しているようにも感じる。)
総司:(僕もそう思った。ただ、放置出来る状況じゃないよね。)
マリカ:(そうだね。粘って情報を聞き出すか、
それとも直に三角大陸に行ってみるかだね。)
総司:(行ってみよう。)
総司:「モリスさん。避難してきた兎人族をお願い出来ますか?」
モリス:「わかったと言いたいところだが、
さすがにこの人数は困るな…。
それに聞いた話では、これからも増えそうな感じだしな。」
総司:「僕が三角大陸に行って様子を見てきます。
今も同じようなことが起こっている可能性が高いので。」
モリス:「わかった。この兎人族はなんとかしよう。
申し訳ないが、三角大陸の方はよろしく頼む。」
総司:「厳しければヒューズの町へ行ってもらってください。
ヤルザの私の家にいる方に事情を言えば、手配してくれます。」
僕は兎人族の方に向く。
総司:「今から三角大陸に様子を見に行きます。
誰か案内してくれる方はいませんか?」
誰も目を合わせてくれないな…。
マリカ:(避難してやっとここに着いたのに、
また戻るのはさすがに嫌だろ。)
総司:(そうだね…。)
総司:「それなら、ここからの方向と大陸のどの辺りかを
教えて下さい。」
「直線方向であれば、この方向です。
三角大陸はその名前の通り、三角形の形をしています。
私達が住んでいたのは三角形の南西の方です。
大陸の最南西は森になっていて、
それよりも内側の平地のところです。」
曖昧だな…。それでわかるかな…。
総司:「もう少し詳しく教えて頂けませんか?」
みんな黙る。隠し事があるのか、単に知らないのか…。
マリカ:(行ってみるしかないかな…。
とりあえずここで粘って聞いても
大した情報は出てこないと思う。)
総司:「とりあえず行ってみます。モリスさん、後は頼みます。」
モリス:「ああ…。気を付けてな。」
僕は最速で三角大陸に向かう。




