48.【付録】小型浮遊艇による交通網の整備
北の大陸の各町への移動や輸送を行うために
小型浮遊艇による交通網を整備したお話です。
本筋に影響ないので、読み飛ばしても問題ありません。
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僕は昨日行くつもりだったザウルの街へ直接移動する。
まずはナギさんと合流するためにナギさんの家に行ったが、
ジルさんの不動産屋へ行ったとの事で、
ジルさんの不動産屋へ向かう。
お店に入るとナギさんとジルさんが話をしていた。
総司:「こんにちは。お久しぶりです。」
ナギ:「お。総司君も来たんだ。」
ジル:「久しぶりじゃの。ちょうど君達の話をしとったよ。」
ナギ:「今、ツアーの受付に使えそうな店舗と人員の話を
していたところだよ。」
ジル:「総司君達から資金を貰って、
人を集めて土地開発の仕事をしていたんじゃ。
これまでの知識も活かせるからの。
ナギさんの依頼も人手も土地も十分にあるから問題無い。」
総司:「以前にお渡しした資金はジルさんの計画の
通りに使って下さい。
店舗代と追加の仕事の分はお支払いします。
建物が古くても構いません。」
ジル:「その辺のことは特に問題はないんじゃ。
ナギさんから聞いた話の準備はもう出来ておる。
儂が気になっとるのは観光地までの足じゃの。
ツアーと言うからにはある程度まとまった人数を
連れて行くことを考えていると思うが、
儂らのような年寄りは、自走や馬車の手配などは億劫じゃ。
年寄りは無視せん方がいい。金と時間があるからの。
観光などには喰い付きやすいぞ?」
確かにそうだ。
僕達は飛べるからその辺を軽視し過ぎていたかもしれない。
マリカ:(たしかにジルさんの言う通りだな。)
総司:(そうだよね…。そうするとやっぱり
乗り物で送迎ってことになるよね。)
マリカ:(そうだな…。但し簡単に乗り物と言っても、
公共的に使うなら動けばいいって話じゃ済まない。
ぶつかって事故などは論外だ。)
総司:(そうだね。でもザウルと人魚の町との道は、
まだ、ほとんど通っている人がいないよね。
今のうちに人を雇って運転を覚えて貰えば、
事故も極力防げるんじゃない?))
マリカ:(確かにそうだね。それなら試しに空気浮遊艇より
マリンジェットの方をベースにして10人乗りくらいの
地上での乗り物を作ってみるか。
目新しさもあって移動も観光の楽しみの一つになる。
ジルさんに頼んで運転手をやってくれる人員を
用意して貰おう。)
総司:(いいね!そうしよう。)
総司:「ジルさんの言う通りだと思います。乗り物を用意します。
そこでお願いなんですけど、運転手をしてくれる人手を
多めに用意してもらえませんか?
用意する乗り物は魔力を使って動く物にするので、
それなりに魔力が高い人でないと動かせないかもしれません。
ですので集めた人の中から動かせる人を選びたいと思います。」
ジル:「難しい話のつもりじゃったが、随分と直に解決しそうだの。
人手の件はわかった。一緒に北部の労働者区域まで来てくれ。」
総司:「ありがとうございます。」
ナギ:「さすが総司君だね!」
三人で店を出る。
総司:「時間が勿体無いので飛んで行きましょう。
ジルさん、ちょっと失礼しますね。」
僕がジルさんを後ろから抱えると、ナギさんは何も言わなくても
僕の後ろから掴ってきた。
ジル:「なんじゃ?」
僕は浮き上がり、北部の労働者区画へ移動する。
ジル:「おおおおおお…。飛行の魔法か!初めてじゃの…。」
総司:「どの辺に降りたらいいか教えて下さい。」
ジルさんが指差したところへ降りる。
ジル:「速いのぉ…。あっという間に着いた…。
人を集めてくるからちょっと待っててくれ。」
ジルさんは歩いていく。
僕は今のうちに小型浮遊艇を作る。
これを起動できる人に運転手をお願いして、
しばらくザウルと人魚の町を結ぶ道で練習して貰おう。
総司:(それじゃ、小型浮遊艇を作ろう。)
マリカ:(わかった。)
僕とマリカさんとでマリンジェットの時よりも大きな魔素結晶で、
強化プラスチック製の小型浮遊艇を作った。
術式はマリンジェットの時のものをベースにして
マリカさんが微調整をしたみたいだ。
マリカ:(乗る人数が多いから推進力より浮力の方をより強くした。
それでも馬車よりは全然スピードが出ると思うけどね。)
ナギ:「相変わらず、ありえないことを平然とするねぇ…。」
総司:「ちょっとこれに乗って魔道具を起動してみて。」
ナギ:「ここに座ればいいの?」
総司:「うん。」
ナギさんが魔道具の魔力を通すと普通に起動して浮き上がる。
高さに制限をかけているので、ナギさんのように魔力が高い人でも
一定の高さ以上に上がらないように設計している。
ナギ:「なにこれ!浮いてる?」
総司:「うん。浮いて移動する乗り物だよ。ここだと狭いから、
とりあえずこれを起動できる人をここで選んで、
街の外で練習してもらうつもりなんだ。」
ナギ:「すごい乗り物だね…。」
ジル:「連れてきたよ。」
「お!いつかのお嬢ちゃんじゃないか!元気だったかい?」
総司:「お久しぶりです。元気にやってますよ。」
初めてザウルの街に来た時に
夕ご飯を一緒に食べた人もいたみたいだ。
そういえば、みんなからお嬢ちゃんと呼ばれていたね…。
あえて訂正しなかったから、仕方ない。
ジルさんは20人くらい連れて来てくれた。
総司:「お集まり下さり、ありがとうございます。
今からこの乗り物を動かせる方がいらっしゃるか
確認させて下さい。まずは10人ほど後部の座席に
座って頂けますか?」
手前にいた10人が乗客用の座席に座ってくれた。
総司:「今から私が試しに実演します。
これと同じように出来る方がいたら、
これの運転手をお願いしたいと思っています。」
僕は操縦席に乗り、魔道具を起動すると小型浮遊艇が浮き上がる。
「「「おおおおお!浮いてる浮いてる!」」」
僕は魔力を切り、小型浮遊艇を降ろす。
総司:「順番に運転席に乗って魔道具に魔力を通してください。」
一人ずつ小型浮遊艇に魔力を通していく。
「動かないな…。」
「ダメだね…。」
「おおお!浮いた!」
「おお!すごい!魔法使いじゃなくてもこんなこと出来るんだ!」
「うーん…。起動したけど浮かないよ…。」
やっぱり客席に乗っておいて貰って良かった。
起動は出来ても浮かないと意味がない。
結果的に3人が小型浮遊艇を浮かすことが出来た。
ジル:「集まってくれてありがとう。
また何かあったら声をかけるよ。」
総司:「小型浮遊艇を浮かせられた3名は残って下さい。」
この小型浮遊艇はここに置いておいちゃマズいよね…。
総司:(運転して持って行くしかないかな…。)
マリカ:(そうだな…。総司がやるしかないね。)
総司:「街の西側へ移動するので、後ろの座席に乗って下さい。」
ジルさんとナギさん、小型浮遊艇を浮かせられた3名が
後ろの客席に座る。
総司:「それじゃ、移動します。私もちょっと不慣れですけど、
皆さんにも同じように運転して人を運んでもらう仕事を
してもらいたいと思います。」
ジル:「給金は弾むよ。」
「楽しそうな仕事の上に給金もいいのか!」
「ラッキーだね!」
なんとか無難に街の西側の道路まで着く。
とりあえず、道沿いに小型浮遊艇の倉庫を作っておきたいな。
総司:「この辺で倉庫を作って良い場所はあります?」
ジル:「この辺は放牧地だから、近くの酪農家のものじゃな。
売買か賃貸が可能か話をしてみよう。」
僕とジルさんで近くの民家の方と交渉し、
倉庫を作る程度の区画を買い取った。
まずは小型浮遊艇をもう2台作る。
マリカ:(フランさんの指輪に組み込んだ魔法適正者以外でも
魔力の効果を上げる術式も追加しておこう。
浮いても、ノロノロ進むんじゃ意味がないからね。)
総司:(そうだね。)
総司:「まずはこの小型浮遊艇の操縦の練習をお願いします。
座席には10人分の重りを乗せておきますので、
適宜軽くしたり試してみてください。
衝突を回避するように出来ていますが、
制動時に急激な負荷がかかるので、
最低でもぶつからない様に運転出来るようにお願いします。」
「「「わかりました!」」」
各々、小型浮遊艇に乗って道路で練習を始める。
総司:「ジルさん、他にも人を募集して運転出来る人を見つけて
貰っていいですか?
確認方法はさっきみたいにしてください。
倉庫を造った後に小型浮遊艇も、もう何台か作っておきます。」
ジル:「了解じゃ。」
ナギ:「私も練習しておくよ。いざという時に対応出来る様にね!」
総司:「ナギさんだと相当速度が出ると思いますよ。
特急便で割り増し運転手になれますね。」
僕は小型浮遊艇をもう7台作った。
10台あれば大丈夫だろう。
小型浮遊艇が入るのに十分な大きさの倉庫も造る。
ザウルの街の準備は基本的に
ナギさんとジルさんに任せて大丈夫そうだ。
僕は各町と観光地までの交通網の構築を
ライフワークにしていこう。
そして領主様との会談から三か月が過ぎた。
この頃になると北の大陸では雪が降るようになる。
元の世界の日本で言うところの11月頃に相当するみたいだ。
NRTの運営も白狐さんと狐人族、
デルさんと長耳族を主として、たくさんの人達のお蔭で、
無事に観光地としてスタート出来た。
順調に宿泊客も増えて、対応できる宿泊客の数が
100人では直に足りなくなった。
そのため新たに宿泊所や温泉、食堂などの増築、
働いてくれる人も募って、対応できる宿泊客の数を
300人に増やした。
その後も順調に宿泊客は増えている。
好調な滑り出しだ。
デルさんとダリアさんは、
途中からイルスの街のコンサートの準備に移っていた。
イルスの家は地上10階、地下5階に増築した。
家の奥側には、全ての階を移動可能な
エレベーターのような魔道具を2台設置した。
さすがに10階まで階段で上がるのは大変だ。
地下への階段も店舗の入り口から
地下4階まで降りられるようになり、
お客さんは自由に地下4階まで入れるようになっている。
地下1階は演奏を聴きながら食事やお酒を飲める高級料理店。
これは狐人族の方が食事を作り、長耳族の方が演奏を担当する。
地下2階はコンサートホール。
週に3回演奏会が開かれる。
コンサートの無い日はコンサートホールで魔法教室を開いている。
地下3階は楽器の演奏の教室。
魔法も楽器も長耳族の方が教えてくれている。
楽器の演奏の教室は演奏を聞いて
自分でも楽器の演奏をしてみたいという人を対象にしたものだ。
地下4階は剣術の道場を開いた。
狐人族の人が刀の剣術を教えてくれている。
どちらも既にたくさんの人達が習いに通っている。
ここで足りなければ、また増築することになる。
そろそろ別の建屋を買うことも考えた方がいいかもしれない。
地下5階は、この家に住んている人達のための訓練場。
アイさんが魔法の習得に有効な魔道具をいろいろと用意してある。
また、魔法の基礎知識を映像で説明してくれるモニターもある。
マリカさんが頭の中で僕に説明してくれたものと似ていた。
一階のリビング手前の店舗スペースは観光ツアーの受付と
楽器の販売、そして刀の販売をすることにした。
楽器は長耳族の人が作ったもの、
刀は狐人族の人が作ったものを販売している。
武術大会でアイさんと僕が刀を使っていたのを見ているので、
イルス兵団の方や剣術を習っている、たくさんの人が買いに来る。
長耳族の方は、演奏者を主として40名、
狐人族の方は料理人を主として、
30名ほどがイルスの家に住んでくれることになった。
家の管理は一番長く住んでいるフランさんにお願いした。
フランさんは今では役場の仕事を辞めて
マジック商会の所属になって、
諸々の管理運営をしてくれている。
既に多くの人を雇って各所で働いてもらっている状況だ。
人魚の町の遊覧船ツアーも
アクアさん、マリンさんを主とした人魚達、
それとソフィさんのお蔭で、
観光地として順調にスタートしている。
小型遊覧船も2台追加した。
マリンさんの家もイルスの家と同様に
多層階構造の建物に立て替えて、
多くのお客が宿泊している。
同様の宿泊所も複数用意してある。
最初は人魚の町への不安からか、ツアーへの応募は少なかったが、
ナギさんや、フランさんの知人を招待してツアーへ参加して頂き、
口コミで遊覧船ツアーのことを広めて貰った。
人魚の町へ行っても問題無いことが広まると、
ツアーへの応募は一気に増えた。
特に男性の応募が急増した。
ザウルの街でジルさんの助言で作った小型浮揚艇だが、
魔法適正者でなくても運転に慣れると公共の乗り物として
十分に使えることが分かった。
まずはザウルの街、イルスの街、人魚の町、NRTの麓の町、
それぞれに20台ずつ配置して、
定期的に運行してもらうことにした。
それとは別に貨物用の小型浮遊艇も作り、
各町の間での物流に関しても飛躍的に発達することになった。
マジック商会の事業としてフランさんが人を雇って運営している。
仕事や立場が人を変えるのか、
僕達以外と接するときのフランさんはアクアさんに似てきた。
意識的にアクアさんの真似をしているのかもしれない。
今やフランさんは北の大陸で一番の実業家だ。
お見合いの申し込みもたくさん来ているらしい。
NRTの麓の町はアイさんが特に力を入れて開発した。
既に5万人以上の人々が暮らす町になっている。
ここまで大きくなるとNRTの麓の町ではなく、
独自の名前を持った方が良いだろうということで、
フューズという名前を付けた。
いろいろな種族の人々が融合する素敵な町になってほしい。
訓練に参加するイルス兵団の方達は結局500名になった。
イルス兵団全体の約四分の一の人数になる。
武術大会毎の交代ということで、半年で交代することになる。
2年で一巡する計算だ。
狐人族と長耳族の人達は予定通り各100名で、
同様に半年で交代することになった。
たまに白狐さん達やレンさんも参加しているみたいだ。
交流が活発になって種族の違いを超えて仲良くなってほしい。
イルスの家で修行しているレオンさん達も全員が飛行の魔法を
使えるようになり、それなりに速く飛べるようになった。
知識を得て、様々な論理を理解することで魔力も大幅に高くなる。
アイさんの魔道具を使った魔法の教育システムは、
映像による説明と、魔道具によって
魔法の効果のプロセスを体験できるため、非常にわかりやすい。
戦闘用の魔法に関しても、氷の槍を複数展開出来る様になった。
みんなそれなりに魔法を使えるようになったみたいだ。
この三カ月の間、僕は小型浮遊艇と浮遊貨物艇の作成の他に、
ザウルの街と人魚の町の開発に取り組んでいた。
アイさんには到底敵わないが、ジルさんとナギさん、
アクアさんとマリンさんに協力してもらって、
たくさんの住居や商店を作り、道の整備も行った。
イルスの街、ザウルの街、人魚の町、フューズの町、
予定していた全ての町で交流が始まっている。
それに伴い、種族間の交流も順調に進んでいる。
イルスの領主様とルイさん達も約束通り実行してくれている。
また、イルスの街に入るための検問だが、
人流が増えて処理出来なくなってきたことと、
イルスの街を迂回する人達が増えてきてしまったため撤廃された。
武術大会の後に考えた構想と、
領主との会談で取り決めた内容は
予定通りに実現出来たと言っていい。
北の大陸は大きく変わり、飛躍的に発展していくだろう。




