表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アイの新世界(物語)  作者: 夢のファイヤー
北の大陸
52/89

41.交流への道④ペンギン救出

アイさん達が来るのに思いの外時間がかかっている。


もしかしたら、アイさんは他の仕事が忙しくて、

まだ、人魚の町に来ていないのかもしれない。


ペンギン達はみんな僕の言葉を守ってくれていて、

僕の傍から離れない。


みんな痩せていて少し痛々しい…。

早く可愛いシルエットを取り戻してほしいと思う。


マリンさんの魔法の指導も終わってシアちゃんは僕の傍で寝ている。

この島から出た時からずっと寝ていなかったのかもしれない。


僕はと言えば、あまり移動出来ないし、特にやることがない。

暇だから魔道具でも作ってようかな。


僕は魔道具の指輪を作り、魔法効果を高める術式と、

槍を作り出せる術式を組み込んでマリンさんに渡した。


総司:「ちょうど時間もありますし、いつもお世話になっている

  お礼ってことで、魔道具の指輪を作ってみました。

  良かったら使って下さい。」

マリン:「ありがとう。ありがたく使わせてもらうわ。

  折角だから、ちょっと試してくる。」


マリカ:(時間があるなら、魔法の勉強でもするか?)

総司:(うん。他にやることもないし、お願い。)


僕は目を閉じて、マリカさんが魔法でイメージを描写しながら

説明してくれるのを聞く。


しばらくして目を開けると、ペンギン達は立ったまま寝ていた。

至近のペンギンは僕に寄りかかって寝ている。

僕に気を許してくれたみたいで嬉しい。


マリカ:(可愛いね。早く元に戻してあげたいね。)

総司:(そうだね。)


その後もマリカさんから術式の説明を聞く。

辺りが暗くなってきたので、

ライトの魔道具をいくつか作って周囲に配置する。

これなら、アイさん達も見つけやすいだろう。


夕ご飯の時間になり、僕はみんなの食べ物を作る。

ペンギン達は味はあんまり気にしないみたいだけど、

兎に角量を作らないといけない。


ペンギン達は、もう衰弱から回復してきているので、

たくさん食べても大丈夫だろう。


みんな食べ終わってゆっくりしていると、

急にシアちゃんが飛び起きる。


周りのペンギン達もビクッとなった。


シア:「怖い…。なにこれ…。」


シアちゃんが僕にしがみついてくる。

周りのペンギン達も僕の方に更に近づいてきた。


わかりやすい…。アイさんが来たみたいだ。


総司:「みんな怖がらないで!大丈夫だから!」


アイさんが上空に姿を現した。

ソフィさんを抱えている。


そのままゆっくり地上に降りてこちらに歩いてくる。

ペンギン達は僕の後ろに隠れる。


シアちゃんはブルブル震えながら僕にしがみついている。

なんとかみんな僕の傍に留まってくれている。


総司:「来てくれてありがとう。」

ソフィ:「遅くなってごめん。」

アイ:「ソフィさんから話は聞いてるよ。」


そのままアイさんは近づいて来て、

屈んでシアちゃんの頭を撫でる。


アイ:「怖い思いをさせてごめんね。」


アイさんは慈愛に満ちた笑顔で言う。


アイ:「ペンギンの皆さんも怖い思いをさせてごめんなさい。

  そしてこの場に勇気を持って留まってくれて、ありがとう。

  みんなに恐怖心を与えているのは、私の強い力に反応して

  本能が警鐘を鳴らしているの。

  でも私はみんなに危害を加える様な事はしない。

  出来ればみんなの力になりたいと思う。

  落ち着いて私の姿を良く見て。」


アイさんは立ち上がって手を広げる。


密着しているので、みんなの震えが治まっていくのがわかる。


シア:「偉大な方、来てくれてありがとうございます。」


シアちゃんがなんとか声を絞り出すように言う。

恐怖が畏怖に変わったのだろう。なんとか克服出来た様に思う。


アイ:「受け入れてくれてありがとう。

  普通に話をしてくれていいからね。」


周りのペンギン達もギャーギャー言い出した。


マリン:「来てくれてありがとうって言ってるよ。良かったね。」

アイ:「うん!良かった!みんなありがとう!」


些細なことに見えるけど、大きな一歩だと思う。

やっぱりアイさんはみんなに好かれてないとね。

アイさんもとっても嬉しそうにしている。良かった良かった。


総司:「そういえば船は?」

アイ:「私がここで作れば問題無いから持ってこなかった。」

総司:「そういえばそうだね。」

アイ:「今日は遅いからここで一泊して、

  明日の朝、ご飯を食べた後に移動の準備をしよう。」


屋根はないけど、雨も降らなそうなので、このままでいいだろう。

ペンギン達は立ったまま寝るし。

僕達は寝床を作って、横になった。


僕の周りにペンギン達が犇めく。


総司:「あ、もう僕から離れても大丈夫だからね。」


ペンギン達はギャーギャー言ってくる。


シア:「うん。わかってるんだけどね。」


シアちゃんもずっと僕にしがみついたままだ。

もう震えもないし、怖いということも無いと思うけど。


シア:「ありがとう。」


シアちゃんは笑顔だ。もう心配ないだろう。

二つの月が照らす暗い空の下で、みんなで眠りについた。


朝起きるとアイさんとマリンさんがいなかった。

昨日僕が作ったコンテナも無い。

二人が持っていったのかな?


とりあえず、朝ご飯の準備を始めると、

アイさんとマリンさんがコンテナを担いで海の方から帰って来た。

コンテナにサメがたくさん入っている。


アイ:「総司君おはよう!今日はフカヒレスープにしよう!

  まだ食べたことなかったよね?

  サメがいるって聞いてたから楽しみにしてたんだ。」

総司:「おはよう。そんなこと考えてたんだね…。」


アイさんはサメのヒレを全て切り落とす。

頭と内臓と鱗は捨ててきたみたいで、始めから無かった。


巨大なミキサーを出して、ヒレを取ったサメを丸ごと入れる。

薬味や香草、塩も入れてミキサーを起動する。


サメはあっという間にすり身になった。

ソフィさんとペンギン達も起きたみたいで微妙な顔で

アイさんの豪快な料理を見守っている。


巨大なトレイに、取って来た全てのサメのすり身を入れて、

上から炎で焼いていく。

ヒレの方は魔法で乾燥させている。


アイ:「朝ご飯が出来たよ。サメのすり身焼き。」

シア:「あれ…。海にいた大きな怖い魚だよね…。」

総司:「そうだね。」


ペンギン達は微妙な顔で食べ始めたが、

思いの外美味しかったらしい。


みんなガツガツ食べ始めた。

僕もちょっと食べてみたが、

確かに思っていたより美味しかった。


僕達の朝ご飯はサメのすり身焼きとフカヒレスープだ。

フカヒレスープはとても美味しかった。


マリカ:(術式化完了。これでいつでも食べられるな!)

総司:(それだけの価値があるね。すごく美味しい。)

アイ:(でしょ!竜の島にも北の大陸にもいなかったからね。)

マリカ:(さすがアイさんだね!)

ソフィ:(ペンギン達の気持ちを思うとちょっと微妙…。)

アイ:(みんな美味しそうに食べてるじゃない。気にし過ぎだよ。)

ソフィ:(そうだね…。みんな美味しそうに食べてるね…。)


ペンギン達もフカヒレスープに興味があるのかチラチラ見ている。


アイ:「食べる?」


ペンギン達はギャーギャー言いながら頷く。

アイさんが小さめのトレイにフカヒレスープを流し込むと

みんな美味しいそうに食べていた。


一晩一緒に寝て、朝ご飯を食べ終わるころには、

アイさんとペンギン達はすっかり仲良くなっていた。


アイさんは背が低い分、恐怖が薄れさえすれば、

ペンギン達には親しみやすいのかもしれない。


マリン:「すっかり仲良くなったわね。

  ペンギン達に混じっているアイちゃんは違和感がないわ…。」

アイ:「もう何を言っているのか、分かるようになってきたよ。」

総司:「良かったね。」

アイ:「総司君とみんなのお蔭でペンギン達とも仲良くなれたよ。

  とっても嬉しい。いつもありがとう。」


僕がアイさんにしてあげられる事なんてほとんどない。

だけど、アイさんの笑顔を見ると、

些細な事でも出来る事があれば、何でもしたいと思う。


アイさんは暫くペンギン達と遊んでいた。

ペンギン達もすっかり元気になった。


アイ:「そろそろ帰る準備を始めようか。」

総司:「僕も手伝うよ。僕だけで出来れば良かったんだけど、

  さすがに船の構造ってよく分からなくて。」

アイ:「どうせ飛んで行くから、ここで作っちゃおう。

  まずは私が台座と骨格のキール、フレームを作るから、

  総司君はフレームに合わせて外板を貼っていって。

  私と総司君で作るんだから良い船にしよう。

  軽量化して船底をなるべく平にして

  浅瀬や川にも入れるような形にする。

  材料の術式を渡すね。」

総司:「了解だよ。」


アイさんが僕の指輪に術式を組み込む。かなり難しい術式だ。

複数の材料を混ぜるだけじゃなくて、工程も複数ある。


ちなみに僕の付けている指輪の一つは無数に術式を書き込める。

僕が魔力を通さなくても常時発動している術式もたくさんある。


指輪自体が魔力を生成して魔法を発動しているということだ。

たぶん神器と言われる類の指輪だと思う…。


マリカさんが術式の管理をしてくれていて僕達に最適化されている。


マリカ:(金属じゃないね。かなり複雑な術式だ…。)

アイ:(骨格含めて全部強化プラスチックにする。軽くて丈夫だし、

  問題無いとは思うけど、金属と相性が悪かったりするからね。)

マリカ:(そこまで専門的な話になると私には分からないな…。)


見た目はシンプルだけど、すごい船になりそうだ…。


アイさんの指示に従って船を造っていく。

室内が2階あって、屋根が展望台になっている。


船首像は人魚の姿のマリンさんがペンギンを抱えて泳ぐ姿だ。

生き写しの出来栄えで今にも動き出しそうだ。


船首像も魔道具になっていて、

魔力を通すと船も含めて綺麗になり、傷があっても修復される。


操舵室には魔道具で水中レーダーによる海底の映像が

映し出せるモニターも設置されている。


魚群探知も可能で漁船としても大いに活躍しそうだ。

魔法と高度な技術が使われた遊覧船になった。


ソフィ:「綺麗な船だね~。」

マリン:「これ私か…。胸が小さくなってない?」

アイ:「気のせいよ。」

マリン:「別にいいけど…。」

シア:「すご~い!これでみんなで海を渡るんだね!」

総司:「いや…。たぶん飛んで行くと思う…。」

シア:「え!?この船は空を飛べるの!?」

総司:「アイさんがいるときだけね。そしてアイさんがいれば、

  この船じゃなくても空を飛ぶよ。」

シア:「本当にすごいんだね!」


アイ:「ペンギン達が全員乗れるように大きな船にしたけど、

  戻ったら、もう少し小さい船も作ろう。

  そっちはホバークラフトにしようかな。

  そうすれば川を遡ってザウル、イルスの最寄りの位置から

  送迎も出来るでしょ。」

総司:「良いと思うけど、もうそれ遊覧船じゃないよね…。」

ソフィ:「もう飛行船にしちゃったらどう?」

アイ:「飛行船は万が一があるからね…。

  見たことは無いけど、竜王国にある飛行船って、

  竜はいざとなったら自分で飛べるって

  前提があるから成り立っているんだと思う。」

ソフィ:「そうなんだ…。」


アイさんは魔道具を起動して船からタラップを出す。

緩やかな坂道になっているので、ペンギン達にも使える。


アイ:「みんな~移動するよ~!順番に船に乗って~!」


ペンギン達が整列してタラップを登って行くのは見ていて可愛い。


タラップの下でみんなを誘導しているアイさんに

みんなギャーギャー声をかけている。


アイさんはニコニコしながら手を振っている。

たぶんお礼を言っているんだと思う。


マリン:「陸の上で船に乗り込むって変な感じね…。」


印象としては飛行機に乗り込む感じに近い。

実際飛んで行くんだけど…。

ペンギン達の全員が乗り込んだのを確認してから僕達も船に乗る。


ペンギン達は島の方を見ていた。少し寂しそうに見える。


アイ:「この島とお別れで、

  寂しいと思うところもあるかもしれないけど、

  今からいく場所もとっても良いところだから安心してね。」


アイさんは船から飛び降りて地上に立つ。

そして両手を広げると地表が花畑へと変わっていく。


ペンギン達は不幸にも生まれ育った島を出ることになったけど、

少しでも良い思い出にしようという気遣いだろう。


アイさんは本当に優しいな…。

僕もアイさんのようになりたいと思う。


アイさんは再び船に乗る。


シア:「ありがとうございます!」


ペンギン達もギャーギャー言っている。


アイ:「それじゃ、出発するよ~!」


遊覧船がゆっくりと台座から浮き上がる。

前方に大きな防御壁が展開され、徐々に前へ加速していく。


直に海上へ出て、更に加速していく。

ペンギン達は嬉しそうにはしゃいでいる。


シア:「すご~~い!本当に船が飛んでる!」


こういうことにも慣れてきちゃったけど、普通じゃない。

これほどの質量を飛ばすなんて、

僕とマリカさんでも到底不可能なことだ。


アイ:「人魚の町に着くのに一時間くらいかかるかな。

  お昼ご飯は人魚の町に着いてから食べよう。」


アイさんは魔法を発動しながら言う。まだ余裕があるのだろう。

僕は屋根の上の展望台に行く。


ペンギン達もいるので、落ちない様に見ていることにした。


シア:「お兄ちゃん達は人魚の町に住んでいるの?」


いつの間にかシアちゃんが傍にきていた。


総司:「違うよ。たまたま用事があって人魚の町にいたんだ。」

シア:「そうなんだ。どこに住んでいるの?」

総司:「定住している場所はないかな…。

  最近はイルスの街にいることが多いかな。」

シア:「イルスの街?」

総司:「人間族の街だよ。

  でも、多くは無いけど、人間族以外も住んでいるよ。」

シア:「私も住めるかな?」

総司:「人の姿なら問題ないと思うよ。

  ペンギンの姿でも大丈夫だとは思うけど。」

シア:「私も一緒に行きたい。」

総司:「う~ん…。」


総司:(僕は良いと思うけど、マリカさんはどう思う?)

マリカ:(良いんじゃない?せっかく魔法適正があるんだし。

  今のままペンギン達といても魔法を覚えていくのは難しい。

  それなら私達と一緒に来て魔法を覚えた方が、

  間違いなくシアちゃんのためになるよ。)

総司:(そうだよね。)


シア:「お願い!」

総司:「ごめん。断るのに悩んでいたわけじゃないんだ。

  いいよ。一緒に行こう。

  でも、一つ約束してほしいことがあるけど、いいかな?」

シア:「やった!何でも約束を守るよ!」

総司:「僕達の仲間は他にもいて、

  ほとんどの人が魔法使いなんだ。

  そしてシアちゃんも魔法使いだ。

  これからのことを考えて、

  シアちゃんは誰かに魔法を教えてもらった方がいい。

  みんな親切だからマリンさんみたいに魔法を教えてくれる。

  だから、シアちゃんは積極的に魔法を

  教えて貰うようにしてほしい。

  僕も時間が取れるときは教えたい。」

シア:「それが約束?」

総司:「そうだよ。」

シア:「そんなの私がお願いしたいくらいだよ!

  お兄ちゃんありがとう!」

総司:「頑張ってね。」


シアちゃんが抱きついてきたので僕は抱きとめて頭を撫でた。


船が速度と高度を落としている。

もうすぐ着くみたいだ。


人魚の町の手前で着水してゆっくりと桟橋に接舷する。


アイ:「人魚の町に着いたよ~!

  今からタラップを降ろすから、

  順番に船を降りてね~!」


船内放送でアイさんの声が聞こえる。

桟橋にはアクアさんと人魚達が出迎えに来てくれている。


人魚の町のペンギン達はいない…。

でも、これからはペンギンの島から一緒に来たペンギン達が、

アイさんを怖いと感じても実際には優しい事を伝えてくれて、

いずれこの町のペンギン達も逃げなくなるだろう。


ペンギン達は順番に船を降りていく。

アクアさん達がペンギン達を歓迎してくれている。


アクアさんはペンギンの言葉が分からないみたいだけど、

この町の人魚達は分かるので通訳しながら話をしている。


僕達も含めて船から全員が降りて、お昼ご飯にする。

マリンさんが近づいてくる事で僕達が来るのを知ったのだろう。

もしくはペンギン達が逃げ出したからか…。


アクアさん達がお昼ご飯を用意してくれていた。

みんなで食べた後、アイさんと一緒にペンギン達の住処を作る。

人魚の家々の南側の砂地に屋根を付けただけだけど…。


こうしてペンギン達の救出が無事に終了した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ