38.交流への道①構想
総司:「う~~ん…。」
腰のあたりが重い…。
楓:「総司君起きたね。おはよう。」
総司:「ん。おはよう。」
目を開けると楓さんが目の前にいる。
下の方を見ると僕の腰の辺りに座っている。
楓:「不思議。総司君が目を覚ます直前に胸が小さくなった。
そして私の股の下で何かが発生した。
何が発生したか見ていい?」
総司:「ダメ。」
楓さんがユサユサと腰を動かす。
総司:「ダメだってば…。」
刺激を与えてはいけない。
マリカさんが寝ている時は危険だ…。
楓:「残念…。でも良かった。
身体は元に戻ったみたいだね。」
股の感触で確かめないでほしい…。
総司:「ありがとう。心配かけたみたいだね。」
楓:「いつ身体が元に戻るか見てた。結局朝になってしまった…。」
総司:(マリカさん起きてる?)
返事が無い。マリカさんは寝ているみたいだ。
なるほど。マリカさんが寝たら戻るのではなくて、
覚醒している意識が僕だけの状態になることが
戻る条件ってことか。
てことは、先にマリカさんが目を覚ましていたら、
今日も身体は女性のままだったのかもしれない。
元に戻っていなかったら相当焦ったと思う…。
総司:「とりあえずそこから退けて貰っていい?」
楓さんがユサユサと腰を動かす。
楓:「退ける前にもう一回。」
満足したのか楓さんは立ち上がった。
僕はすぐには立ち上がれなくなったので上半身だけ起こす。
直隣にみんなが寝ていた。ここは白狐さん達の家みたいだ。
楓:「総司君、そこで私が寝るからちょっと退けて。
さすがにもう眠い…。」
僕は少し横にズレる。そこにはアイさんが寝ていた。
とっても可愛い寝顔だ。天使がいたとしても敵わないだろう。
昨日の試合で無慈悲に僕を斬り刻んだ人と
同じ人とは到底思えない。
楓さんは横になって直ぐにスヤスヤと寝息を立て始めた。
起き上がれるようになったので、起きて外に出る。
まだ薄暗い。かなり早い時間に起きたみたいだ。
そういえば温泉に浸かりながら寝ちゃったんだっけ。
きっとその後はマリカさんが上手い事やってくれたんだろう。
心配なんてしてない。大丈夫なはずだ。
フラン:「おはよう!今日、仕事だったの…。
役場まで送って貰って良いかな…。」
総司:「おはようございます。良いですよ。
それじゃ、掴まって下さい。」
フラン:「頼んでおいて申し訳ないんだけど、
急いでもらっていい?」
総司:「わかりました。」
フランさんが前から掴まって来る。
総司:「行きますよ。舌を噛まない様に気をつけて下さいね。」
フランさんが頷く。
僕はロケット発射と超加速で一気に音速を超える。
フラン:「キャーーー!」
防御壁で周囲の空気も含めて加速しているので、
ドップラー効果は発生しない。普通に会話出来る。
総司:「5分くらいで着きますよ。」
フラン:「こんなに速いと思わなかった…。
ごめん…。ちょっと総司君の家に寄って貰っていい?
それとお風呂貸して…。」
僕も服を洗った方が良いね…。
総司:「わかりました。ちょっと聞いていいですか?」
フラン:「え…。な…何かな?」
総司:「昨日の夜、温泉で何かありました?」
フラン:「あー。私、デルさん達の演奏が始まってすぐに、
温泉で寝ちゃったの…。
たぶん誰かが寝所まで運んでくれたんだと思う。」
フランさんも寝ちゃったのか。
総司:「屋上に降りますね。3階のお風呂を使って下さい。
直にお湯を張りますね。僕は2階を使いますから。」
フラン:「ごめんね…。みんなにも内緒でお願いします…。」
総司:「大丈夫ですよ。」
僕は家に入り、3階のお風呂に魔法でお湯を張る。
総司:「後で乾かしに来ます。濡れたままでいいので、
服を着て待っていて下さい。」
僕も急いで2階のお風呂場でお湯で身体を流して服を洗う。
時間はまだ余裕がある。
3階に上がって、温風でフランさんの服を乾かす。
フラン:「ありがとう。」
総司:「そういえば、寝ちゃったってことは夕ご飯も
食べてないですよね?朝も食べてないし。
直に何か食べられるものを出しますね。」
僕は魔法でパンと燻製肉を出してサンドイッチにする。
飲み物はココアにしよう。
総司:「どうぞ。」
フラン:「ありがとう!緊張が解けて、
ちょうどお腹が空いてたんだ。」
フランさんが食べ終わるのを待って役場に移動する。
フラン:「いろいろありがとう。
仕事が終わったら、念のため総司君の家に寄るね。
いなかったら帰るだけだから、
私のことは気にしなくていいからね。」
総司:「はい。お仕事頑張って下さい。」
フランさんは役場の入口で手を振ってから中に入って行った。
僕も手を振って見送った。
結構時間がかかってしまった。急いで大森林に戻る。
白狐さんの家に着くとアイさんとアクアさんが外で
朝ご飯の準備を始めようとしていた。
総司:「おはよう。」
アクア:「おはようございます。」
アイ:「おはよう!どこに行ってたの?」
総司:「フランさんを送ってイルスまで行って来た。
今日は仕事みたい。」
アイ:「そうだったんだね。送ってくれてありがとう。」
総司:「僕も手伝うよ。」
アイ:「ちょっと朝ご飯っぽく無いけど、狐人族の人達用に
ずっと考えてたメニューにするよ。」
総司:「どんなメニュー?」
アイ:「きつねうどん、きつねそば、おいなりさん。」
総司:「ザウルの街で思い付いたアイデアね…。」
アイ:「アクアさんはたくさんお湯を沸かして。
総司君は器をお願い。
これまで考えてた最高の物を出したいから、
料理は私がするね。」
アクア:「かしこまりました。
アイ様がそれほど言うなら余程のものでしょうね。
楽しみです。」
総司:「う~ん…。こればっかりはどういう結果になるか
予測出来ないね…。」
料理を開始すると、ちょうど狐人族の人達が外に出てきた。
「おはよう。朝早いねぇ。朝ご飯を作ってご馳走しようと
思ってたけど、もう準備を始めちゃってるね。」
アイ:「おはようございます。
たくさんの人にご馳走したいから、
来れる方を呼んできてくれると嬉しいです。」
「そうなの?悪いね。それじゃ、遠慮なくご馳走になるよ。」
「私が声をかけてくるわ。」
アイ:「総司君とアクアさんで油揚げにご飯を入れて。」
僕はアイさんの言う通りに稲荷寿司を作る。
アクアさんは僕の作業を真似して上手に稲荷寿司を作っている。
そうしているうちに狐人族の人達が集まって来る。
アイ:「先にそばにするね。
きつねそばと、おいなりさんを2つ、
セットで配膳をお願い。」
僕とアクアさんでテーブルに配膳していく。
アイ:「時間が経つと味が落ちるので、
食べられる人からどんどん召し上がってください。
おかわりもありますからね。」
「それじゃ、遠慮なく先に頂いちゃうよ。」
「「「頂きます。」」」
どうだろう…。安直な気もするけど、期待もある。
「すごく美味しい!」
「初めて食べたけど、とっても美味しいわ!」
みんな美味しそうに食べている。
アイ:「良かった!たくさん食べて下さいね!」
総司:「僕も食べていい?」
アクア:「私もよろしいでしょうか?」
アイ:「もちろん。食べて食べて。」
僕もきつねそばと稲荷寿司を食べる。
普通にすごく美味しかった。
アイさんが気合を入れているだけある。
ただ、狐人族の人達にとっても
普通に美味しいだけかもしれない。
狐人と油揚げの関係はどうなんだろう…。
アクア:「いつもながらとても美味しいです。」
総司:「うん。とっても美味しい。」
みんなで朝ご飯を食べ始めると、
白狐さんやデルさん達も起きてきた。
楓さんはさすがにまだ起きていないみたいだ。
白狐:「みんなおはよう。」
デル:「おはよう。朝ご飯出来てるのね。
って、きつねそばにおいなりさん…。」
アイ:「そういえばデルさんは作らなかったの?」
デル:「そうね…。盲点だったわね…。迷信だと思うけどね…。」
アイ:「みんなも食べてみて。」
白狐:「すごく美味しそうね!」
みんなも食べ始める。みんな普通に美味しそうに食べていたが、
白狐さんだけが異常に気に入った。
白狐:「すごく美味しい!こんな美味しいのは初めてだわ!」
アイ:「良かった。おかわりもあるからね。
あと、次はそばじゃなくうどんにしてみよう。」
デル:「これ…私でも普通にすごく美味しいんだけど…。」
白狐さんにだけは狐と油揚げの迷信?伝承?は有効っぽい。
そういえばお稲荷様も狐の神様だし、
白狐さんも正確には妖狐って言ってたっけ。
九尾の狐と言えば強い妖怪の代名詞だし。
白狐さんもそういう存在なのかもしれない。
なんだかんだで美味しいものは美味しいので、
みんなもおかわりのきつねうどんまで食べている。
僕はもうお腹いっぱいだ。
アイ:「そろそろ終わりかな?」
「とっても美味しかったよ。」
「「「ご馳走様でした。」」」
朝ご飯の片付けも終わり、ひとまず落ち着いてきた。
楓さんも起きてきたので、取っておいた稲荷寿司をあげたら
美味しそうに食べていた。
手で食べる姿がとても可愛いかった。
アイ:「総司君はどう思う?狐人族の人と油揚げ。」
総司:「普通に美味しかっただけだと思う…。
白狐さんは関係ありそうに見えたけど。」
アイ:「思ってたほどじゃなかったか…。
まあ、総司君が先に仲良くしてくれてたから、
今更どっちでもいいんだけどね。」
総司:「でも、今後イルスの街との交易を考えると、
きつねうどんと稲荷寿司を狐人族の人に
気に入って貰えれば、小麦粉、蕎麦粉、お米、油揚げが
良い品目になるかと思ったんだけどね。
逆に人間族の人には大森林温泉ツアーとかいいかなって、
思ってたんだよね。イルスは娯楽が少ないと思うし。」
アイ:「総司君もいろいろ考えてくれてたんだね。
イルスの領主との会談もあるし、
みんなと相談しようか。」
総司:「それがいいね。」
みんなに声をかけて白狐さんの家に集まる。
アイ:「武術大会も終わったし、今後のことを話したいんだ。
私達は種族の垣根を超えてみんなが仲良く出来る世界を
目指して旅をしているの。
仲良くと言っても、その姿はいろいろあると思う。
共に手を取って生活すること。
闘争も含め、お互い切磋琢磨して高め合う関係。
みんなとイルスの街で生活して、この北の大陸では
みんなが手を取りあって生活する世界が作れると思ったの。
でも、これまでの関係が悪いと言っているわけじゃない。
違うもの同士が共にいると限られた範囲では
根本的な優劣も起きる。
そのことから起きる問題は、
今の北の大陸は生活圏を分けることで起きていない。
悪くは無いけど、もっと素晴らしい世界が実現出来る。
それが今の北の大陸の状況だと思う。
だから、多面的にお互いを認め合い、共に恩恵を受け合う。
そういう関係性を作れるように、みんなから知恵と、
協力をお願いしたいの。」
マリン:「まあ、実際に嫌われてるのは私達くらいよね。」
ナギ:「私のときはそれなりに上手くいってたけどね…。
でも、マリンが悪いわけじゃない。
いずれ起きた問題だよ。
私達は水中と水辺を主な生活圏にしている。
アイちゃんの言うように水中、水辺という領域では
私達は優れた種族よ。
そして陸地であっても劣ることは無い。
全ての人魚が人型に姿を変える能力を獲得することが出来て、
魔法適正が無くても魔法に優れ、寿命が長い。
生きていく上でこの上ない恩恵を受けている。
でも、根本的に劣る部分もある。
私達だけでは子孫を残せないのだから。」
白狐:「私達狐人族は身体能力が高い種族ね。」
蘭:「白狐様は狐人族とちょっとだけ違うけどね…。」
楓:「同じ種族って事にしとこう。尻尾が多いだけ。
ただ全体的に優れている狐人ってことで。」
デル:「私達長耳族は身軽で特に耳がいい。聞こえる音域も広い。
それと魔法適正者が多く生まれる種族。
そして魔法適正に関わらず、みんなが寿命が長い。」
アクア:「人間族は新しいものを取り入れるのに積極的ですね。
食料も自然に頼るのではなく、
自ら生産することを念頭に発展を続けています。
人数が多く、多くの子孫を残す種族でもあります。
長い目で見て生活圏を広げていく種族です。」
アイ:「娯楽が発展すると人口の増加は抑制されるのよ。
だから、生活を豊かにする一助と楽しく生きていく
ことも含めて、人間族には娯楽を積極的に
提供していこうと思う。」
アクア:「娯楽ですか。さすがアイ様ですね。
他に楽しいことがあれば、
興味はそちらに向くということですね。」
身も蓋もない言い方だけど、基本的にそういうことなんだろう…。
アイ:「人間族に限った話じゃないと思うけどね…。」
総司:「娯楽といえば、ちょっと考えがあって、
狐人族の皆さんには観光として温泉ツアーの受け入れ。
長耳族の皆さんにはイルスの街で
僕達の家にコンサートホールを作るから、
そこで演奏してもらう。とか、どうかな?」
アイ:「良いアイデアね。みんなが受け入れてくれればだけど…。
たぶんこの辺には下にマグマ溜まりがあるんだと思う。
近場で私が観光用に新たに宿泊所と温泉を用意してもいいよ。」
白狐:「そうすると私達は宿泊所と温泉の
管理運営をするってことかな?」
アイ:「そうね。」
白狐:「ちょっと相談してくるよ。」
白狐さん達は外に出て行った。
デル:「私は別に問題ないけど、
コンサートをするならそれなりに人数が必要よね…。
部屋もいっぱいあるし、足らなければ
アイさんが増築してくれるよね。
イルスに住んでも良いって人がいるか聞いてくるよ。」
デルさん達も長耳族の大森林へ飛んで行った。
ナギ:「私達が提供する娯楽って言ったらアレね!」
総司:「遊覧船ツアーだね。人魚が付き添う安全な海の観光だね。」
アイ:「それも良いアイデアね。私は大きな船を作ればいいのね!」
ナギ:「まあいいけどね。」
アイ:「そういった交流から始めて、人間族からは食料と
食料生産の技術指導、狐人族からは武術の指導、
長耳族からは魔法の指導、人魚族からは漁業と航海の指導、
そうやってみんなで発展していけるといいね。」
ソフィ:「私も出来るだけ協力するわ。」
白狐:「ただいま。みんな私のしたいようにしていいって。
協力もしてくれるそうよ。」
さすが白狐さんだ。
アイ:「ありがとう!それじゃ、早速温泉を掘りに行こうか。
場所は狐人族と長耳族の大森林の中間くらいの位置がいいよね。
そうすれば、長耳族の人達も入りやすいし。
そこでも演奏してくれたら、狐人族の人達も楽しめるし、
人間族もより楽しめて、たくさん来てくれる様に
なるかもしれないし。良い事ばっかりだよね!」
総司:「そうだね!」
アクア:「私達も協力します。」
シモン:「僕達も協力するよ。今日は仕事は休みだね。
不動産業の仕事柄、役に立てることもあるかもしれないし。
アイちゃんとの仕事と賭札と…。
たった一か月で大金持ちになってしまったよ。
少しでも恩返しをさせてほしい。」
アイ:「ありがとう。それじゃ、リゾート温泉を作りに行こう!」
武術大会は終わったけど、新たな目標が出来た。
種族間の融和も、まずはみんなが幸せを感じられる様に
なることが大事だと思う。
やっぱり自分が幸せでないと、
周囲の人の幸せを願う様にはなかなかなれない。
みんなが生活をしていく中で、
幸せを実感できる一つの楽しみと思える様な娯楽を
提供出来れば、その一助になれると思う。




