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アイの新世界(物語)  作者: 夢のファイヤー
北の大陸
49/89

38.交流への道①構想

総司:「う~~ん…。」


腰のあたりが重い…。


楓:「総司君起きたね。おはよう。」

総司:「ん。おはよう。」


目を開けると楓さんが目の前にいる。

下の方を見ると僕の腰の辺りに座っている。


楓:「不思議。総司君が目を覚ます直前に胸が小さくなった。

  そして私の股の下で何かが発生した。

  何が発生したか見ていい?」

総司:「ダメ。」


楓さんがユサユサと腰を動かす。


総司:「ダメだってば…。」


刺激を与えてはいけない。

マリカさんが寝ている時は危険だ…。


楓:「残念…。でも良かった。

  身体は元に戻ったみたいだね。」


股の感触で確かめないでほしい…。


総司:「ありがとう。心配かけたみたいだね。」

楓:「いつ身体が元に戻るか見てた。結局朝になってしまった…。」


総司:(マリカさん起きてる?)


返事が無い。マリカさんは寝ているみたいだ。

なるほど。マリカさんが寝たら戻るのではなくて、

覚醒している意識が僕だけの状態になることが

戻る条件ってことか。


てことは、先にマリカさんが目を覚ましていたら、

今日も身体は女性のままだったのかもしれない。


元に戻っていなかったら相当焦ったと思う…。


総司:「とりあえずそこから退けて貰っていい?」


楓さんがユサユサと腰を動かす。


楓:「退ける前にもう一回。」


満足したのか楓さんは立ち上がった。


僕はすぐには立ち上がれなくなったので上半身だけ起こす。

直隣にみんなが寝ていた。ここは白狐さん達の家みたいだ。


楓:「総司君、そこで私が寝るからちょっと退けて。

  さすがにもう眠い…。」


僕は少し横にズレる。そこにはアイさんが寝ていた。

とっても可愛い寝顔だ。天使がいたとしても敵わないだろう。


昨日の試合で無慈悲に僕を斬り刻んだ人と

同じ人とは到底思えない。


楓さんは横になって直ぐにスヤスヤと寝息を立て始めた。

起き上がれるようになったので、起きて外に出る。


まだ薄暗い。かなり早い時間に起きたみたいだ。

そういえば温泉に浸かりながら寝ちゃったんだっけ。


きっとその後はマリカさんが上手い事やってくれたんだろう。

心配なんてしてない。大丈夫なはずだ。


フラン:「おはよう!今日、仕事だったの…。

  役場まで送って貰って良いかな…。」

総司:「おはようございます。良いですよ。

  それじゃ、掴まって下さい。」

フラン:「頼んでおいて申し訳ないんだけど、

  急いでもらっていい?」

総司:「わかりました。」


フランさんが前から掴まって来る。


総司:「行きますよ。舌を噛まない様に気をつけて下さいね。」


フランさんが頷く。

僕はロケット発射と超加速で一気に音速を超える。


フラン:「キャーーー!」


防御壁で周囲の空気も含めて加速しているので、

ドップラー効果は発生しない。普通に会話出来る。


総司:「5分くらいで着きますよ。」

フラン:「こんなに速いと思わなかった…。

  ごめん…。ちょっと総司君の家に寄って貰っていい?

  それとお風呂貸して…。」


僕も服を洗った方が良いね…。


総司:「わかりました。ちょっと聞いていいですか?」

フラン:「え…。な…何かな?」

総司:「昨日の夜、温泉で何かありました?」

フラン:「あー。私、デルさん達の演奏が始まってすぐに、

  温泉で寝ちゃったの…。

  たぶん誰かが寝所まで運んでくれたんだと思う。」


フランさんも寝ちゃったのか。


総司:「屋上に降りますね。3階のお風呂を使って下さい。

  直にお湯を張りますね。僕は2階を使いますから。」

フラン:「ごめんね…。みんなにも内緒でお願いします…。」

総司:「大丈夫ですよ。」


僕は家に入り、3階のお風呂に魔法でお湯を張る。


総司:「後で乾かしに来ます。濡れたままでいいので、

  服を着て待っていて下さい。」


僕も急いで2階のお風呂場でお湯で身体を流して服を洗う。

時間はまだ余裕がある。

3階に上がって、温風でフランさんの服を乾かす。


フラン:「ありがとう。」

総司:「そういえば、寝ちゃったってことは夕ご飯も

  食べてないですよね?朝も食べてないし。

  直に何か食べられるものを出しますね。」


僕は魔法でパンと燻製肉を出してサンドイッチにする。

飲み物はココアにしよう。


総司:「どうぞ。」

フラン:「ありがとう!緊張が解けて、

  ちょうどお腹が空いてたんだ。」


フランさんが食べ終わるのを待って役場に移動する。


フラン:「いろいろありがとう。

  仕事が終わったら、念のため総司君の家に寄るね。

  いなかったら帰るだけだから、

  私のことは気にしなくていいからね。」

総司:「はい。お仕事頑張って下さい。」


フランさんは役場の入口で手を振ってから中に入って行った。

僕も手を振って見送った。


結構時間がかかってしまった。急いで大森林に戻る。

白狐さんの家に着くとアイさんとアクアさんが外で

朝ご飯の準備を始めようとしていた。


総司:「おはよう。」

アクア:「おはようございます。」

アイ:「おはよう!どこに行ってたの?」

総司:「フランさんを送ってイルスまで行って来た。

  今日は仕事みたい。」

アイ:「そうだったんだね。送ってくれてありがとう。」

総司:「僕も手伝うよ。」

アイ:「ちょっと朝ご飯っぽく無いけど、狐人族の人達用に

  ずっと考えてたメニューにするよ。」

総司:「どんなメニュー?」

アイ:「きつねうどん、きつねそば、おいなりさん。」

総司:「ザウルの街で思い付いたアイデアね…。」

アイ:「アクアさんはたくさんお湯を沸かして。

  総司君は器をお願い。

  これまで考えてた最高の物を出したいから、

  料理は私がするね。」

アクア:「かしこまりました。

  アイ様がそれほど言うなら余程のものでしょうね。

  楽しみです。」

総司:「う~ん…。こればっかりはどういう結果になるか

  予測出来ないね…。」


料理を開始すると、ちょうど狐人族の人達が外に出てきた。


「おはよう。朝早いねぇ。朝ご飯を作ってご馳走しようと

 思ってたけど、もう準備を始めちゃってるね。」


アイ:「おはようございます。

  たくさんの人にご馳走したいから、

  来れる方を呼んできてくれると嬉しいです。」


「そうなの?悪いね。それじゃ、遠慮なくご馳走になるよ。」

「私が声をかけてくるわ。」


アイ:「総司君とアクアさんで油揚げにご飯を入れて。」


僕はアイさんの言う通りに稲荷寿司を作る。

アクアさんは僕の作業を真似して上手に稲荷寿司を作っている。

そうしているうちに狐人族の人達が集まって来る。


アイ:「先にそばにするね。

  きつねそばと、おいなりさんを2つ、

  セットで配膳をお願い。」


僕とアクアさんでテーブルに配膳していく。


アイ:「時間が経つと味が落ちるので、

  食べられる人からどんどん召し上がってください。

  おかわりもありますからね。」


「それじゃ、遠慮なく先に頂いちゃうよ。」

「「「頂きます。」」」


どうだろう…。安直な気もするけど、期待もある。


「すごく美味しい!」

「初めて食べたけど、とっても美味しいわ!」


みんな美味しそうに食べている。


アイ:「良かった!たくさん食べて下さいね!」

総司:「僕も食べていい?」

アクア:「私もよろしいでしょうか?」

アイ:「もちろん。食べて食べて。」


僕もきつねそばと稲荷寿司を食べる。

普通にすごく美味しかった。

アイさんが気合を入れているだけある。


ただ、狐人族の人達にとっても

普通に美味しいだけかもしれない。

狐人と油揚げの関係はどうなんだろう…。


アクア:「いつもながらとても美味しいです。」

総司:「うん。とっても美味しい。」


みんなで朝ご飯を食べ始めると、

白狐さんやデルさん達も起きてきた。

楓さんはさすがにまだ起きていないみたいだ。


白狐:「みんなおはよう。」

デル:「おはよう。朝ご飯出来てるのね。

  って、きつねそばにおいなりさん…。」

アイ:「そういえばデルさんは作らなかったの?」

デル:「そうね…。盲点だったわね…。迷信だと思うけどね…。」

アイ:「みんなも食べてみて。」

白狐:「すごく美味しそうね!」


みんなも食べ始める。みんな普通に美味しそうに食べていたが、

白狐さんだけが異常に気に入った。


白狐:「すごく美味しい!こんな美味しいのは初めてだわ!」

アイ:「良かった。おかわりもあるからね。

  あと、次はそばじゃなくうどんにしてみよう。」

デル:「これ…私でも普通にすごく美味しいんだけど…。」


白狐さんにだけは狐と油揚げの迷信?伝承?は有効っぽい。

そういえばお稲荷様も狐の神様だし、

白狐さんも正確には妖狐って言ってたっけ。


九尾の狐と言えば強い妖怪の代名詞だし。

白狐さんもそういう存在なのかもしれない。


なんだかんだで美味しいものは美味しいので、

みんなもおかわりのきつねうどんまで食べている。

僕はもうお腹いっぱいだ。


アイ:「そろそろ終わりかな?」


「とっても美味しかったよ。」

「「「ご馳走様でした。」」」


朝ご飯の片付けも終わり、ひとまず落ち着いてきた。

楓さんも起きてきたので、取っておいた稲荷寿司をあげたら

美味しそうに食べていた。

手で食べる姿がとても可愛いかった。


アイ:「総司君はどう思う?狐人族の人と油揚げ。」

総司:「普通に美味しかっただけだと思う…。

  白狐さんは関係ありそうに見えたけど。」

アイ:「思ってたほどじゃなかったか…。

  まあ、総司君が先に仲良くしてくれてたから、

  今更どっちでもいいんだけどね。」

総司:「でも、今後イルスの街との交易を考えると、

  きつねうどんと稲荷寿司を狐人族の人に

  気に入って貰えれば、小麦粉、蕎麦粉、お米、油揚げが

  良い品目になるかと思ったんだけどね。

  逆に人間族の人には大森林温泉ツアーとかいいかなって、

  思ってたんだよね。イルスは娯楽が少ないと思うし。」

アイ:「総司君もいろいろ考えてくれてたんだね。

  イルスの領主との会談もあるし、

  みんなと相談しようか。」

総司:「それがいいね。」


みんなに声をかけて白狐さんの家に集まる。


アイ:「武術大会も終わったし、今後のことを話したいんだ。

  私達は種族の垣根を超えてみんなが仲良く出来る世界を

  目指して旅をしているの。

  仲良くと言っても、その姿はいろいろあると思う。

  共に手を取って生活すること。

  闘争も含め、お互い切磋琢磨して高め合う関係。

  みんなとイルスの街で生活して、この北の大陸では

  みんなが手を取りあって生活する世界が作れると思ったの。

  でも、これまでの関係が悪いと言っているわけじゃない。

  違うもの同士が共にいると限られた範囲では

  根本的な優劣も起きる。

  そのことから起きる問題は、

  今の北の大陸は生活圏を分けることで起きていない。

  悪くは無いけど、もっと素晴らしい世界が実現出来る。

  それが今の北の大陸の状況だと思う。

  だから、多面的にお互いを認め合い、共に恩恵を受け合う。

  そういう関係性を作れるように、みんなから知恵と、

  協力をお願いしたいの。」


マリン:「まあ、実際に嫌われてるのは私達くらいよね。」

ナギ:「私のときはそれなりに上手くいってたけどね…。

  でも、マリンが悪いわけじゃない。

  いずれ起きた問題だよ。

  私達は水中と水辺を主な生活圏にしている。

  アイちゃんの言うように水中、水辺という領域では

  私達は優れた種族よ。

  そして陸地であっても劣ることは無い。

  全ての人魚が人型に姿を変える能力を獲得することが出来て、

  魔法適正が無くても魔法に優れ、寿命が長い。

  生きていく上でこの上ない恩恵を受けている。

  でも、根本的に劣る部分もある。

  私達だけでは子孫を残せないのだから。」


白狐:「私達狐人族は身体能力が高い種族ね。」

蘭:「白狐様は狐人族とちょっとだけ違うけどね…。」

楓:「同じ種族って事にしとこう。尻尾が多いだけ。

  ただ全体的に優れている狐人ってことで。」

デル:「私達長耳族は身軽で特に耳がいい。聞こえる音域も広い。

  それと魔法適正者が多く生まれる種族。

  そして魔法適正に関わらず、みんなが寿命が長い。」

アクア:「人間族は新しいものを取り入れるのに積極的ですね。

  食料も自然に頼るのではなく、

  自ら生産することを念頭に発展を続けています。

  人数が多く、多くの子孫を残す種族でもあります。

  長い目で見て生活圏を広げていく種族です。」

アイ:「娯楽が発展すると人口の増加は抑制されるのよ。

  だから、生活を豊かにする一助と楽しく生きていく

  ことも含めて、人間族には娯楽を積極的に

  提供していこうと思う。」

アクア:「娯楽ですか。さすがアイ様ですね。

  他に楽しいことがあれば、

  興味はそちらに向くということですね。」


身も蓋もない言い方だけど、基本的にそういうことなんだろう…。


アイ:「人間族に限った話じゃないと思うけどね…。」

総司:「娯楽といえば、ちょっと考えがあって、

  狐人族の皆さんには観光として温泉ツアーの受け入れ。

  長耳族の皆さんにはイルスの街で

  僕達の家にコンサートホールを作るから、

  そこで演奏してもらう。とか、どうかな?」

アイ:「良いアイデアね。みんなが受け入れてくれればだけど…。

  たぶんこの辺には下にマグマ溜まりがあるんだと思う。

  近場で私が観光用に新たに宿泊所と温泉を用意してもいいよ。」

白狐:「そうすると私達は宿泊所と温泉の

  管理運営をするってことかな?」

アイ:「そうね。」

白狐:「ちょっと相談してくるよ。」


白狐さん達は外に出て行った。


デル:「私は別に問題ないけど、

  コンサートをするならそれなりに人数が必要よね…。

  部屋もいっぱいあるし、足らなければ

  アイさんが増築してくれるよね。

  イルスに住んでも良いって人がいるか聞いてくるよ。」


デルさん達も長耳族の大森林へ飛んで行った。


ナギ:「私達が提供する娯楽って言ったらアレね!」

総司:「遊覧船ツアーだね。人魚が付き添う安全な海の観光だね。」

アイ:「それも良いアイデアね。私は大きな船を作ればいいのね!」

ナギ:「まあいいけどね。」

アイ:「そういった交流から始めて、人間族からは食料と

  食料生産の技術指導、狐人族からは武術の指導、

  長耳族からは魔法の指導、人魚族からは漁業と航海の指導、

  そうやってみんなで発展していけるといいね。」

ソフィ:「私も出来るだけ協力するわ。」

白狐:「ただいま。みんな私のしたいようにしていいって。

  協力もしてくれるそうよ。」


さすが白狐さんだ。


アイ:「ありがとう!それじゃ、早速温泉を掘りに行こうか。

  場所は狐人族と長耳族の大森林の中間くらいの位置がいいよね。

  そうすれば、長耳族の人達も入りやすいし。

  そこでも演奏してくれたら、狐人族の人達も楽しめるし、

  人間族もより楽しめて、たくさん来てくれる様に

  なるかもしれないし。良い事ばっかりだよね!」

総司:「そうだね!」

アクア:「私達も協力します。」

シモン:「僕達も協力するよ。今日は仕事は休みだね。

  不動産業の仕事柄、役に立てることもあるかもしれないし。

  アイちゃんとの仕事と賭札と…。

  たった一か月で大金持ちになってしまったよ。

  少しでも恩返しをさせてほしい。」

アイ:「ありがとう。それじゃ、リゾート温泉を作りに行こう!」


武術大会は終わったけど、新たな目標が出来た。

種族間の融和も、まずはみんなが幸せを感じられる様に

なることが大事だと思う。


やっぱり自分が幸せでないと、

周囲の人の幸せを願う様にはなかなかなれない。


みんなが生活をしていく中で、

幸せを実感できる一つの楽しみと思える様な娯楽を

提供出来れば、その一助になれると思う。

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