36.武術大会⑧四日目、決勝戦
アイ:「そろそろ時間ね。」
総司:「緊張してきた…。」
ソフィ:「二人とも、アッと驚く試合を期待してるよ!」
アクア:「竜の島でのアイ様との戦闘から、総司様が
どの程度強くなったのかを楽しみに観戦させて頂きます。」
白狐:「総司の奮戦を期待しているわ。でも無理はしないでね。」
蘭:「総司君が誰かに負けるなんて信じられない。頑張ってね!」
楓:「蘭に先に言われた…。総司君、頑張ってね!」
デル:「総司、無理しないでね。」
みんなからの温かい声援を受ける。
アイ:「それじゃ、行こうか!」
総司:「うん。出来るだけ良い勝負が出来る様に頑張るよ!」
アイさんが手を伸ばしてきたので、僕もアイさんの手を取る。
始める前の握手かと思ったら、そのまま手をつないで、
会場まで飛んで行くみたいだ。
観客からの拍手と声援と冷やかしの声が聞こえる。
総司:「さすがに恥かしくない?」
アイ:「総司君の復元能力を考えれば、
血肉が飛び交う凄惨な戦闘になるでしょ。
最初にちゃんと仲良しってアピールしておかないとね!」
総司:「あー。確かにそうなるね…。」
マリカ:(アイさんよろしく。
それと試合中はアイさんとの念話は切らせてもらうよ。)
アイ:(それはそうね。私の方こそよろしくね!)
僕とアイさんは会場に降り立つ。
そして手をつないだまま観客に向けて手を振る。
観客からの拍手と声援と冷やかしの声が更に増した。
「決勝の対戦相手同士が手をつないで入場とは…。
初めてのことですね…。
そして竜族の参戦に試合内容のレベルの高さ。
今回はこれまでの武術大会とはまったく異質のものとなりました。
そしてこれから、その大会の決勝戦となります。」
拍手と歓声が鳴り響く。最高潮の声援だ。
「まずはマジック商会所属の総司さんです。
盛大な拍手をお願いします。」
僕はアイさんと繋いだ手を離し、
四方の観客席に向けてお辞儀をした。
そして開始位置まで歩いて向かう。
「続きまして、同様にマジック商会所属のアイさんです。
盛大な拍手をお願いします。」
アイさんは両手で手を振りながら、僕と同様に
歩いて開始位置に向かう。
「観客席からご覧の皆様には既にご存知の通り、
両者は圧倒的な強さで他を寄せ付けず、決勝まで進んでいます。
この決勝戦は想像もつかない戦闘が繰り広げられるでしょう。
それでは試合を開始しますので準備をお願いします。」
「開始10秒前!」
僕は刀に手をかける。刀は鞘に納めたままで光輝剣を発動する。
アイさんは光り輝く刀を出して上段に構える。
「始め!」
僕とアイさんは同時に超加速で距離を詰める。
アイさんは突進の勢いをそのままに刀を振り下ろしてきた。
躱して後の先を狙いたかったが、避けらそうにない。
僕は直さま抜き打ちで受ける。
僕は片手の分、力負けするため、アイさんの刀を弾いてすぐに
バックステップで距離を取ろうとするが、
アイさんは追撃してくる。
僕は刃の魔法で牽制しつつ両手で刀を中段に構える。
アイさんは刃の魔法を躱して、
先ほどと同様に上段から斬り下ろしてくる。
僕は刀で受けるが、下がりながらの受けなので、
力で押し込まれ、瞬間的に両足で踏ん張ってしまう。
その瞬間にアイさんの右足の蹴りが、
僕の前に出ている右足を切断する。
アイさんは斬撃蹴を発動していた。
僕は飛行の魔法で上空へ回避しつつつ右足を復元する。
会場から悲鳴と感嘆の声が上がる。
僕は刃の陣を最大限に発動する。
しかし、すぐに追撃してきたアイさんに射出前に追いつかれ、
刀で斬り上げられる。
僕は斬撃蹴で応戦するが、
光輝剣のアイさんの斬撃は難なく応戦した足を斬りおとした。
制御の失われた刃の陣は崩れ、地上に落ちる。
息をつく暇もない。
僕はまた右足を復元し、更に上空へ回避する。
アイさんは光輝巨槍多重陣を展開している。
これまでにない規模だ。
展開される円もいつもの五つではなく七つある。
そして容赦なく全てが射出されてくる。
マリカ:(これはヤバい。最大出力で範囲を絞って
多重防御壁を展開する。)
僕とマリカさんで集中して多重防御壁を展開する。
防ぎきれず、僕の胸から下が吹き飛ばされた。
両手は無事だ。直に失った身体を復元する。
このまま距離を開けていると光輝巨槍多重陣を連発されるので、
僕は超加速でアイさんに斬りかかる。
焦って距離を詰めたため、アイさんに躱され上下が逆転する。
直にアイさんから刀が振り下ろされる。
僕は直に振り返り、刀で受けるが、反動で体勢が崩れた
隙にアイさんはスタンピングのような蹴りをしてくる。
それが僕の腹部へ刺さる。
爆裂の魔法で僕の腹部が爆散する。
更に逆の足でも蹴られ、僕は地面に激突する。
直に立って態勢を立て直しつつ、腹部を復元するが、
その間にアイさんは上空で光輝巨槍多重陣を展開している。
そしてすべての槍を射出してくる。
僕は先ほどと同様に多重防御壁を展開する。
防ぎきれず、左肩が吹き飛ばされる。すぐさま復元する。
完全に防戦一方だ。
しかも少しでも気を抜けば僕の防御も崩壊する。
アイさんは再び光輝巨槍多重陣を展開している。
僕も再び多重防御壁を展開する。
マリカ:(次受けきったら、復元の前に超加速で高度をあげろ。
このままだと戦闘不能になるまで同じことを繰り返される。)
総司:(そうだね。)
次は下半身を吹き飛ばされた。
止血だけして飛行の魔法で高度を上げる。
アイさんは追尾矢を展開し、射出してきた。
僕は更に高度を上げながら左手を自分で斬り落とす。
追尾矢は全て僕の左手へ突き刺さり、地上へ落ちて行く。
僕は欠損した身体を復元する。
なんとかアイさんの上まで高度を上げることが出来た。
アイさんは光輝巨槍多重陣を展開し、射出してくる。
カンベンしてほしい。さすがに回数制限がほしい。
僕の復元も回数制限は無いので、言えた義理ではないけど…。
僕は多重防御壁を展開する。
突破された槍を刀で払い、
吹き飛ばされた両足を復元しつつアイさんへ向けて超加速する。
今度は上下を入れ替えられない様に、直前で減速して刀を
振り下ろす。アイさんも刀で受ける。
アイさんの左右の動きに反応出来る様に注意しつつ、連撃する。
アイさんの剣戟の方が速く、何度か足を斬り飛ばされる。
アイ:「むぅ…。総司君はもう殺さない限り止まらないじゃない。
勝敗判定を追加しようよ。」
アイさんは僕と刀で斬り合いながら、言ってくる。
総司:「例えば?」
アイ:「手か足をあと10回斬りおとせば、私の勝ち。
私の身体に少しでも傷を付けられれば、総司君の勝ち。
それでどう?」
マリカ:(どうせ時間まで粘っても判定で勝つことは無い。
万に一つでも、勝てる可能性のある条件だ。
ここまで粘った総司の健闘で引き出した条件だよ。)
総司:(そうだね!)
アイ:「相談は終わったかな?」
アイさんが笑顔で言ってくる。
総司:「それでいいよ。それじゃ、気合を入れなおして行くよ!」
アイ:「ふふ~~ん。私ももうちょっと本気出しちゃうからね!」
アイさんの速度が飛躍的にあがる。
即座に僕の右足が斬りおとされる。
アイ:「まず一本目~。」
距離を取ったら光輝巨槍多重陣で確実に身体を削られる。
ここは踏ん張って近接戦で耐えるしかない。
マリカ:(まだ全然本気じゃなかったか…。底なしだな…。)
アイさんの斬撃が僕の左手を狙ってくる。
僕は受けることなく、アイさんの左肩に斬撃を繰り出す。
斬られてもアイさんに傷さえ負わせられれば僕の勝だ。
光輝剣を発動しているので、防御壁ごと斬ればいい。
アイさんは僕の斬撃を受けにこない。勝った!
僕の振り下ろす刀の前に光り輝く防御壁が展開される。
僕の光輝剣でも斬れなかった。僕の左手は斬りおとされる。
マリカ:(その防御壁に触れろ。)
総司:(え?わかった。)
僕は刀を離し右手で防御壁へ触れてすぐに刀を持ちなおす。
その間に僕の左右の足まで斬られた。
アイ:「4本目~。私の防御壁を解析する気だね。」
マリカ:(この試合にはちょっと間に合わないけど、
たぶんアイさんがさっき展開した防御壁は
光輝剣も受けられる防御壁だ。
覚えられれば今後の戦力になる。)
アイ:「後で言ってくれれば教えてあげたんだけどね。」
マリカ:(失敗したか…。そうだね…。
アイさんなら頼めば教えてくれたか…。)
総司:(やっぱりこういうのは獲得してこそ意味があるよね。)
マリカ:(そうだね。)
失った左手と両足を復元する。
アイ:「総司君…。胸が膨らんでない?」
アイさんは言いながら容赦ない斬撃で僕の左手を斬りおとす。
アイ:「5本目~。」
総司:「超回復で身体の瞬間復元をし過ぎるとマリカさんの身体に
一時的に戻っちゃうの…。」
アイ:「そんな副作用があったんだね…。7本目~。」
両足が斬りおとされる。ほんと容赦ない…。
すぐに復元する。斬られるために元に戻してるみたいだ…。
アイ:「あとはサクッといっちゃうよ~。」
アイさんは自分の刀の刃の部分に左手で触れる。
刀が割れて二本になった。両手に光輝剣を構えている。
アイさんは急に変則的な剣術に変わる。
僕の刀を片手の剣で弾き、同時に空いている手で
僕の両足を斬り、弾いた刀の返す刀で左手を斬られた。
舞うような美しい動きだ。まったく対応出来なかった。
アイ:「はい。10本目~。私の勝だね。」
総司:「最後に二刀流って…。負けちゃったか…。」
アイ:「短期間で本当にすごく強くなったね。私も嬉しいよ。」
総司:「アイさんに比べればまだまだだね…。」
僕達は二人で会場に降りる。
会場には僕の手足がたくさん落ちていた。
アイさんの光輝巨槍多重陣で打ち抜かれた地面は
たくさんの穴になっている。
僕は両手を上げて敗北宣言をする。
「決勝戦、勝者はマジック商会所属のアイさんです。
優勝はアイさん、準優勝は総司さんに決まりました。」
観客席から、これまでにない盛大な拍手と祝福の言葉を頂く。
僕とアイさんは手を振って答える。
そして二人で魔法で会場を直しながら走り回る。
マリカ:(アイさんの防御壁、光り輝く防御壁の術式化が出来たよ。
光輝剣と対にして光輝盾って名前にしよう。)
総司:(ありがとう。名前もそれでいいと思う。)
アイ:(もう術式化出来たんだ。早いね。)
「いよいよ最後の試合となります。
前大会の優勝者と本大会の優勝者との対戦となります。
この対戦の勝者がイルスで最も強い方と言っても
過言ではありません。」
総司:「それじゃ、僕は観客席に戻るよ。頑張ってね。」
アイ:「ありがとう。」
僕が観客席に戻ると、
周囲の人も含めて立ち上がって拍手してくれた。
楓:「そ…総司君…。胸、胸、胸が変…。」
とっさに僕は両手で胸を隠す。
忘れてた…。マリカさんは結構胸が大きい。
とても男の身体に見えない。
「「「どういうこと!?」」」
みんなから驚かれる。それはそうだろう…。
シモン:「いや、朝は間違いなく男だった。
抱き抱えられた私が言うんだから間違いない。」
事情を知らない人はビックリしている。
頬を赤くしている人もいる。
不穏な発言だ。抱き抱えられたって…。
間違ってないけど言うタイミングが最悪だ…。
いつの間にか僕の後ろに回りこんだ楓さんが胸を揉んでくる。
楓:「本物だ…。総司君は女の人だったの!?」
総司:「違う。正真正銘、僕は男だよ。」
「「「え~~~。」」」
みんなが僕の胸を見て言う。
アクア:「これまでわかっている事実から言えば、
総司様は間違いなく男性です。
私も含めて何人もの人魚を妊娠させているのですから。」
フラン:「はぁ!?」
アガサ:「まぁ!顔に似合わずお盛んね…。」
総司:「間違ってないけど、その言い方は間違ってるよ…。」
僕は確信する。アクアさんはいつもワザと言っている…。
一義的には的確なフォローにもなっているから尚更タチが悪い…。
実は人をからかうのが好きなのかもしれない。
アクアさんは御神体のことを簡単に説明する。
自分で混乱を収束させる安定さもいつも通り。文句も言えない…。
白狐:「そうよね…。間違いなく男性よね…。
理由は分からないけど、胸だけ膨らんだ状態なの?」
みんなが下の方を見る。
白狐さんが頷く。楓さんが後ろから僕の下を触る。
またこのやりとりか…。
楓:「無い…。」
みんながオロオロする。
意味が分からない事態に混乱している。
楓:「でも待って。温泉で見た時はちゃんと付いてた。」
蘭:「そうよね。私もちゃんと目に焼き付いてる。」
白狐:「そうよね。私もしっかり形まで覚えているわ。」
「俺も綺麗な人なんでよく見てた。
決勝前は確かに胸は大きく無かった!」
「私も見てたよ!」
「「「俺も!」」」
知らない観客の人まで会話に加わってきた。
みんなが顔を赤くしながら言う。
みんな何処を見てるんだよ…。
久々の羞恥プレイだ…。最近ないから安心していた…。
総司:「身体の瞬間的な復元をし過ぎると、
一時的に女性の身体になっちゃうんだよ…。」
白狐:「良かったわ。一時的ってことは元に戻るのね?」
総司:「寝れば元に戻るよ。」
楓:「逆に言えば、寝るまではそのままなのね。」
シモン:「総司君には悪いけど、こんな美しい女性の姿で…。
なんというか…。勿体無いね…。」
デル:「試合が終わったらみんなで温泉ね!
今日しか見れないなら絶対見ないと!」
「「「一緒に温泉超行きたい!!!」」」
知らない人まで巻き込んで大騒ぎになった…。
最後の試合はアイさんの一回戦とまったく同じ展開で、
1秒かからず終了していた。
そして観客席の一部では、それどころではない騒ぎになっていた。
しかし温泉か…。大森林温泉ツアーとか良いかもしれない。
観光なんて良い娯楽だ。
新しい仕事の候補として覚えておこう…。




