26.狐人の大森林③戦力の確認
狐人の大森林に来て約三週間、僕の訓練も順調に進んでいる。
マリカ:(そろそろ戦力の確認と共有化をしようか。)
総司:(どういうこと?)
マリカ:(戦闘に使う魔法を改めて確認する。
それと簡単に意思の共有が出来る様に名前を付けよう。)
総司:(とっさの時に名前が付いていると、
すぐに理解が共有できるね。)
マリカ:(そういうことだ。
強風や火炎、冷却のような一般的な魔法は対象外で、
オリジナルとまでは言えないけど、
私達特有の魔法を対象に名前を付ける。
それじゃ、挙げていくよ。
・シンクロ
総司とマリカ、そして装備の魂の器による魔法の同時発動。
また、魔力生成と発動を効率よく連動させること。
魔法の効果を飛躍的に高める。自動発動。
・刃の魔法
刀の刃を魔法で生成し、高速に射出する。
・刃の陣
刃の魔法を一度に複数生成し、一斉に射出する。
現状はシンクロで最大100本程度。
・刃の陣連射
刃の陣をシンクロにより連射する。
現状は同時に10本程度を連射する。
・十字剣の魔法
刃を手裏剣の様に十字にして回転させて射出する。
左右からカーブして相手に向かう。
・十字剣陣
十字剣を一度にたくさん生成し、一斉に射出する。
現状はシンクロにより最大50個程度。
・光輝大剣の魔法
光り輝く両刃の大剣を生成し、高速に射出する。
シンクロで静止が必要。
それでも一本しか生成できない。
アイさんの光輝巨槍と同様に
通常程度の防御壁なら貫通出来る。
・縛鎖陣
分銅の付いた鎖を複数生成し、
回転させながら相手に射出する。
捕縛に適した魔法。
・毒魔法
刃に麻痺毒を塗布し、相手を麻痺させる。
ただし、アイさんと自分には効かない(解毒効果持)。
・光輝剣
刀に追加した術式。
魔力を刀に通し発動すると防御壁を斬れる。
大量の魔力を使うため、発動中はマリカからの
バックアップは一切出来なくなる。
アイさんの防御壁を斬れるかは不明。
・長剣化
刀の刃を長くする。刀の斬撃の射程が伸びる。
・爆裂の魔法
手や蹴りを当てた箇所を爆散させる。
・斬撃波
刀の斬撃で衝撃波を飛ばす。
・斬撃蹴
脛に沿って刃を出す。蹴りが打撃でなく斬撃になる。
また、足よりも刃を伸ばし、蹴りの射程を長くする。
・多重防御壁
シンクロで強激に耐える複数の防御壁を展開する。
アイさんの光輝巨槍も数本なら防御可能。
多すぎると砕かれる。防げるのは精々5本くらい。
・範囲防御壁
自分の全面に防御壁を展開する。
光輝巨槍には貫通される。
・超加速
瞬間的に速度を向上させる。攻撃や回避に利用可能。
シンクロにより、速度は爆発的に向上している。
・復元
超回復のこと。手足を一瞬で復元する。
シンクロで内臓も一瞬で回復可能。
首を斬り落とされない限り死ぬことはない。
脳が損傷しても
魂の器に意識のあるマリカの魔法で復元可能。
首を斬られても直に元の位置に付ければ繋げることも可能。
ただし、使いすぎると身体が女性化(マリカ化)する。
マリカが寝ると身体は男性に戻る。
私達の魔法はこんなとこかな。)
総司:(戦闘だけでもこれだけの魔法が使えるようになったんだね。)
マリカ:(知っている範囲でアイさんの魔法も名称を付けておこう。
・光輝巨槍の魔法
光り輝く巨大な槍を魔法で生成し、高速で射出する。
普通の防御壁程度は貫通する。
・光輝巨槍多重陣
アイさんを中心に5重の円状に数え切れないほど
無数の光輝巨槍が生成される。
さすがにこの時はアイさんでも動きが一瞬止まる。
多いときは500本以上。それが一斉に射出される。
見たことがある範囲でだが、アイさんの最強の攻撃魔法。
・追尾矢
避けても追ってくる矢。複数生成され一斉に射出される。
通常の防御壁程度は貫通する場合がある。
・殲滅の魔法
手を横に振るだけで、槍が広範囲に打ち出される。
人魚の島の入口でアクアさん達全員を
一瞬で壁に縫い付けた魔法。
・長剣化
刀の刃を長くする。どのくらい長く出来るかは不明。
・爆裂の魔法
身体が触れた箇所を爆散させる。
アイさんはどの部位からも発動可能と予測される。
さすがにやってこないと思うが、
離れた場所でも可能な可能性有り。
これをされたらもう戦い様がない。
・斬撃波
刀の斬撃で衝撃波を飛ばす。
・防御壁
確実に今までは手加減しているので、
どこまで出来るのか不明。
光輝巨槍多重陣を離れた場所でも
広範囲で防ぐくらいの防御壁が展開可能なのは
人魚の島での戦闘で確認済み。
アイさんの防御壁は貫通出来ないと思った方が良い。
・超加速
確実に今までは手加減しているので、
どの程度速いかは不明。
もしかしたら消えるくらい速いかも。
アイさんのことだから、まだまだあるんだろうけど、
今まで見た範囲ではこのくらいかな。)
総司:(アイさんが師匠だから仕方ないけど、僕達の魔法は
どう考えてもアイさんの劣化版だよね…。)
マリカ:(そうだね…。魔法は牽制くらいにしか使えないね。
シンクロで身体能力もかなり上がっているから、
刀での近接戦を主体にして戦うしかないね。
復元がかなり強化出来たから活用しよう。
アイさんとの戦闘では単調な斬撃は刀で受けなくて良い。
私が防御壁で防ぐから。
貫通されて斬られても直に復元出来る。
総司は攻撃に集中しろ。)
総司:(それが良いとは思うけど、復元は使いすぎるとなぁ…。)
マリカ:(まあね…。確認のために何度も復元をしている時に
身体が変わっているのに気が付いて、ビックリしたね。)
総司:(またこの世界に来た時みたいに
一週間そのままかと思ったよ。
マリカさんの思いつきで、みんなに見られる
前に戻れたから良かったけど、
もし見られたら言い訳が大変だったよね。)
マリカ:(効果が高すぎるから、
何か弊害があるかもしれないとは思ってたけど、
あの程度でむしろ良かったよ。
アイさんと戦うときは気にせずに使っていこう。)
総司:(わかった。アイさんにガッカリされないくらいには
なんとかしたいよね。)
マリカ:(そうだね。さあ、お昼まで魔法の訓練を続けよう。)
僕達は魔法の訓練を昼食の時間まで続ける。
マリカ:(そろそろ昼食に戻ろう。)
総司:(うん。)
狐人の大森林に戻ると、デルさんと長耳族の人が二人来ていた。
一人はダリアさんで、もう一人は男性の長耳族の人だ。
デル「総司、全然来てくれないから来ちゃたよ。」
総司:「デルさん、お久しぶりです。」
デル:「他人行儀な言い方して…。お母さんで良いのよ?」
呼び捨てになってる…。
あの時の言葉は気遣いじゃなくて、
本当にお母さんになる気だったのかもしれない…。
そういえば、マリカさんがデルさんに正体を明かしたって
言ってたね…。関係あるのかな?
総司:(そういえば、
デルさんに正体を明かしたって、言ってたよね?
他にも何か言ったの?)
マリカ:(総司と私が転生者で、
総司の頭の中に私がいること、
総司が寝ている時だけ私が表に出ること
以外は特に言ってないかな?
デルさんなりの気遣いなんじゃないかな。
変に疑うのはよくないぞ?)
総司:(そうだね。急に変わったから、
さすがにちょっと変だなって思って。)
マリカ:(切り替えの早い人なんだよ。)
マリカさんは何か隠してるっぽい言い方だけど、まあいいか。
総司:「ありがとう。昼食を作るから、
アイスでも食べて待ってて。」
デル:「ありがとう。やっぱりいろいろ出来るんだね。」
三人分のアイスを作り、デルさんとお付きの二人にも渡した。
ダリア:「総司君久しぶり。元気そうだね。アイスありがとう。」
男性:「ありがとう。
俺は一応デルさんの護衛で来ているレンだ。
総司君もデルさんと同じ魔法が使えるんだね。
先日の印象が強いから子供に見えちゃうけど、
しっかりしてるんだね。今後ともよろしくね。」
総司:「はい。お二人共よろしくお願いします。」
狐人族のみんなと献立の相談をしてから、
僕とマリカさんで魔法全開の料理を始める。
アイさんには遠く及ばないが、
それでもかなりの量を同時に作ることが出来る。
デルさん達も来てくれているし、
奮発してイルスで好評だったステーキにしよう。
白狐さん達と狐人族の人達も帰ってきた。
みんな午前中は剣術と魔法の訓練をしている。
僕は魔素が薄い高地でないと周りに被害が出る可能性があるので、
山頂に行って魔法の訓練をしている。
白狐:「ただいま。配膳するのを手伝うわ。」
デル:「白狐ちゃん、お邪魔してるよ。」
白狐さんはデルさんに手を上げて答えている。
全員に料理が行き渡った。
白狐:「それじゃ、頂きましょう。」
「「「頂きます。」」」
デル:「このステーキ美味しい!こんなの魔法で作れるの!?
薬味だって…ワサビ、ミョウガ、三つ葉、だよね?
お肉も食材の魔法で作る物より美味しい…。」
総司:「ザウルの街で売ってる食材を術式に複製したんですよ。」
デル:「すごいわね…。私も術式の意味は解るし、
改変も出来るけど、物から複製は無理だわ…。」
ダリア:「デルさんは魔法の研究とかしてないからね。」
レン:「これは本当に美味しいですね…。
みんなにも食べさせてあげたいですね。」
総司:「デルさんなら出来ると思うから、後で術式を渡すよ。」
デル:「術式を渡すって…。あ、魔道具に組み込んでくれるのね。
私がいろいろと教えてあげようと思って来たのに、
教えられることが無さそうね…。」
偉そうに言っているが、すごいのはマリカさんだ。僕じゃない。
デルさんはそれも知った上で言っているのだろう。
やっぱりマリカさんは相当優秀みたいだ。
白狐:「総司の戦闘はもっとすごいよ。
午後は一緒に訓練だから、見て行くといいよ。」
デル:「白狐ちゃんに勝ったって話だったわよね。
直接戦ってみたかったから三人で来たのよ。
後でお手合わせをお願いね。
でも、私に攻撃しちゃダメよ?
私は後衛でサポートなんだから。
レンとダリアは私達の中では1、2の強者なの。
さすがに三人なら負けることはないだろうけど、
レンとダリアが戦闘不能になったら終了ね。」
レン:「それでいいですけど、デルさんかっこ悪いですよ?」
ダリア:「根が臆病だからね…。」
白狐:「何人いても一緒だと思うわよ?
みんなの驚く顔が、楽しみだから止めないけど。」
総司:「何か参考になることがあると嬉しいな。
よろしくお願いします。」
僕は食べ終わったので術式を渡すのにデルさんの傍に行く。
総司:「デルさん。術式を渡すので魔道具を見せて。」
デル:「はい。」
デルさんの指輪の術式を確認する。
これって僕の指輪に記述されている食材の術式とピッタリ同じだ。
指輪の形は違うが、コピーされた様に合致する術式が多い。
合致しない術式は明らかに違う人が記述した術式だ。
合致しない術式はデルさんが記述したものだろう。
こう言ったらなんだけど、記述者のレベルが明らかに違う。
合致する術式から考えると、
デルさんのこの指輪と僕の指輪は同じ人が作った可能性が高い。
デルさんはかなり昔からこの世界にいるみたいだから、
僕とマリカさんとは転生した時期が全然違う。
僕は会ったことが無いけど、マリカさんとデルさんは
転生の際に同じ人からこの指輪を貰っている可能性が高い。
アイさんも転生者のはずだけど、この指輪は身に着けていない。
まあ、必要ないから貰わなかった可能性もあるけど…。
そういえば、アイさんはデルさんのことを知っていたけど、
マリカさんは知らなかったみたいだ。
アイさんとマリカさんは前から知り合いだったみたいだし…。
う~ん…。
アイさんがマリカさんとデルさんに
この指輪をあげたってことなのかな…。
とりあえず、デルさんの指輪に術式を組み込もうと思ったが、
既に多くの術式が組み込まれていて容量が足りない。
総司:「新たに組み込むには容量が足りないから新しく作るね。」
デル:「ありがとう。私も出来るけど、
お手並み拝見させてもらうわ。」
僕はマリカさんに頼んで、指輪の魔道具の作成と
必要な術式を組み込んでもらった。
総司:「はい。」
デル:「ありがとう。わかってたけど、
私が作る指輪より容量が大きいし良いものね。
情けないけど、私が総司から魔法を教わろうかしら…。」
総司:「教わるならア」
マリカ:(待て総司!)
総司:(ビックリした…。どうしたの?)
マリカ:(デルさんにアイさんのことは話してない。
武術大会が終わったら、アイさんを長耳族の大森林に
直接連れて行こうと思ってたんだ。
だからまだアイさんのことは秘密にしてほしい。)
デル:「どうしたの?やっぱり教えて貰うのはダメ?」
総司:「いえいえ。喜んで。」
デル:「ありがとう。」
デルさんは嬉しそうにお礼を言う。
白狐:「みんな食べ終わったし、そろそろ午後の訓練にしようか。
元々は稽古をつけるはずが、私達が稽古をして貰う感じに
なっちゃってるけどね。」
総司:「そんなことないよ。
実戦の訓練はやっぱり強い相手が必要だもん。
僕達を除けば白狐さんがこの大陸では一番強いと思うし。」
白狐:「総司より強い人がいるというのが信じられないけどね。」
総司:「僕なんて相手にならないくらい強い人が一人いるんだ。」
総司:(あ!白狐さん達も武術大会を見に行けないのかな?)
マリカ:(聞いてみれば?通行料さえ払えば他種族でも
街には入れるし、なんなら市民権を取得しても良いし。)
総司:(そうだね!)
総司:「一週間後にイルスの街で武術大会があって、
僕はそれに出るのにイルスの街に帰る。
良かったら白狐さん達も一緒に行かない?」
白狐:「そうだったね…。一か月って言ってたもんね…。」
「白狐様。行って下さい。」
「私達は大丈夫ですよ。」
「総司君との出会いは運命だと思う。逃しちゃダメです。
遠慮なく行って下さい。」
楓:「私は行きたい。総司君の行くところに連れてって。」
総司:「楓さん…。ありがとう!」
蘭:「白狐様。そんなに悩むことないですよ。
イルスの街なんてすぐ近くだし。私も行く。」
白狐:「そうね!私も行く!」
総司:「良かった!
これからもみんなと一緒にいたかったから。
これからもよろしくね!」
マリカ:(また八方美人…。)
デル:「私も行く!定期的に大森林には帰れば良いよね?」
レン:「良いですよ。」
ダリア:「デルさんも楽しんで来てください。」
総司:「嬉しいな!一週間後にみんなで移動だね!
家にはいっぱい部屋があるから、何人でも大丈夫だからね!」
気懸かりだったことが解決した。本当に良かった。
みんなと離れたくなかったし、
アイさんに会わせたいとも思ってたんだ。
家の改装の時に部屋をたくさん作ったのは、
こういうことも考えてのことだったのかな?
さすがアイさんだ。




