25.狐人の大森林②狐人族と修行
マリカ:(総司、早く起きなさい。)
マリカさんの声と、足に違和感を感じて目が覚める。
総司:「ん…。」
昨日は泣きながら寝てしまったみたいだ…。
すぐ横に…。というか白狐さんが僕に抱きついて寝ていた。
逆側で蘭さんも寝ている。
抱きついてはいないが、僕の手を握ったまま寝ている。
白狐さんを少しずらして起きる。
僕の股の間に楓さんが丸くなりながら寝ていた。
白狐:「おはよう。」
白狐さんが恥かしそうに挨拶する。
蘭:「おはよう。」
蘭さんは目をこすりながら起きる。
僕は足を閉じる。
楓:「ぐぇ…。朝から総司君の熱い抱擁で幸せ。おはよう。」
楓さんは起きていた。危なかった…。
総司:「みんなおはよう。
昨日は泣きながら寝ちゃったみたいだね。」
白狐:「ん?総司は泣いた後に、お花畑と外で二人で話をしてから
ここに案内されて寝たよね?」
マリカ:(総司が泣きながら寝ちゃったから、私がここまで来た。
それと、デルさんに私と総司の正体を話した。
あの人ならちゃんと全てを秘密にしてくれる。)
総司:(そう…。うん。ありがとう。)
マリカ:(気にするな。
わかっていると思うが、デルさんも転生者だ。)
総司:(うん。僕もそうだろうと思ってたよ。)
僕はマリカさんから聞いた話で辻褄が合ったので言い直す。
総司:「そうだったね。」
白狐:「総司は辛い事があったのか?私はもう総司の味方だよ。
何でも頼って欲しい。」
蘭:「私も。総司君が泣いているのを見て、
私もすごく悲しかった…。」
楓:「私も総司君のためなら何でもする。
最強総司様とのギャップにやられて、
ペロペロしたいのを我慢するのが大変だった。」
白狐さんが左手、蘭さんが右手を握ってくれる。
楓さんは下のアレを握ってきそうになったので、
足を閉じて阻止した。
総司:「もう大丈夫だよ。心配してくれてありがとう。」
僕は笑顔で答える。
みんな僕に優しい顔を向けてくれる。
総司:「朝ご飯の支度を手伝いに行くけど、みんなはどうする?」
白狐:「私達も行くわ。」
僕達が外に出ると、朝食の準備をしている人達がいた。
「おはよう。今日は天気が良いから庭で朝食にしよう。」
総司:「おはようございます。僕も手伝います。
食べられない物はありますか?」
「特にないわよ。ゆっくりしていていいのよ?」
いつものように大人数が食べられるように魔法で準備を始める。
「デルさんより大掛かりだね。」
デルさんも同じようなことが出来るみたいだ。
既に準備をしてくれているので、
僕はそれに一品足すくらいにする。
コーンスープにした。
白狐:「昨日もこうやって作ってくれたんだね。」
三人が僕の朝食の準備を見ている。
楓:「料理で総司君の気を引くのは難しそうだね。」
蘭:「こっちばっかり引かれちゃうよね…。」
人が集まってくる。
自宅で朝食を終えた人達もいるみたいだ。
総司:「今からスープをよそるからテーブルに配ってきて。」
僕はちょっと凝った器を作り、それにスープをよそって、
白狐さん達に渡していく。
三人が順番に机に並べてに行ってくれる。
デル:「みんなおはよう。総司君も手伝ってくれたんだね。」
総司:「おはようございます。」
「ちょうどこっちも準備出来たよ。」
総司:「スープはまだあるので、朝食を食べ終わっている人も
良かったら召し上がって下さい。」
「ありがとう。頂くよ。」
「元気だしてね。」
僕は取りに来てくれた人に器を出してよそっていく。
笑顔で声をかけてくれる人もいる。
昨日の夜に僕が泣いているのを見た人だろう。
恥かしいけど嬉しいな。
「準備が終わったみたいね。それじゃ、食べましょう。」
白狐さん達と僕は「頂きます。」と言って食べ始める。
デル:「総司君の作ったコーンスープ美味しいね。」
「すごく美味しい。」
「今度作ってみよ。」
口に合ったみたいだ。良かった。
長耳族の人は何となくお肉は食べないイメージだったので、
コーンスープにしたけど、お肉も普通に食べていた。
白狐:「食べ終わったら帰るわよ。」
デル:「もうちょっといればいいのに。」
「総司君の作った器は貰っちゃっていいの?」
「綺麗な器だから私も欲しいな。」
総司:「もちろんです。使ってくれると嬉しいです。」
「ありがとう。」
会話をしながらの食事だったが、
そろそろみんな食べ終わったみたいだ。
「片付けは私達がしておくよ。」
総司:「ありがとうございます。」
白狐:「それじゃ、帰ろうか。」
デルさんが僕の前に来る。
デル:「いつでもいらっしゃい。私をお母さんと思っていいのよ?
私は総司君を子供のように思ってるから。」
デルさんが軽く抱いてくれる。僕もデルさんの背中に手を回した。
総司:「ありがとうございます。嬉しいです。」
僕は笑顔でデルさんに答える。デルさんはとても優しい人だった。
僕はデルさんから離れて、白狐さん達の方を向く。
楓:「私達も飛べるけど、総司君に連れて行ってほしい。」
総司:「いいよ。」
前にアイさんがしたように、僕は後ろから楓さんの前に手を回す。
楓:「なにこの状況!嬉ションしちゃいそう!」
総司:「白狐さんと蘭さんは左右から僕に掴まって。」
狐も嬉ションするのか…。
楓さんに横から掴まられたら、
何をされるかわからないので、これがベストな選択だ。
僕は飛行の魔法で少し浮く。
総司:「素敵な演奏を聞かせてくれてありがとうございました。
感動しました。また聞かせて下さい。」
デル:「いつでも来てね。」
「「「総司君待ってるよ!」」」
みんなが手を振ってくれる。
総司:「落ちないようにしっかり掴まっててね。」
僕は防御壁を展開し、アイさんの真似をしてロケット発射から
高速飛行を行う。
蘭:「ビックリした…。これは本当にすぐに着いちゃうね…。」
白狐:「やっぱり速いね…。」
楓:「やっちゃった…。総司君。着地は温泉で。」
総司:「仕方ないなぁ…。」
蘭:「楓…。匂う…。」
楓:「蘭うるさい。総司君…。
嫌いにならないで…。すぐに脱ぐから。」
総司:「嫌いになんてならないし。お願いだから脱がないで。」
そのまま温泉の中に着地する。
みんなで温泉の中で服を洗う。
楓さんは座って袴をバチャバチャと洗っている。
総司:「昨日は温泉に入って無かったから丁度良かったね。」
楓:「総司君優しい。ありがとう。」
蘭:「匂い取れたかな?」
楓:「蘭黙れ。」
温泉の中で蘭さんと楓さんの取っ組み合いが始まった。
総司:「僕はこのまま魔法の訓練に行くよ。
白狐さん、午後は剣術の稽古をよろしくね。」
白狐:「熱心だね。わかったわ。」
僕は昨日と同じ様に、大森林の先の山の上で魔法の訓練を始める。
マリカ:(術式を確認したけど、
問題になりそうなところは無かったよ。
術式のせいじゃなくて、シンクロ自体の弊害かも。
効果が高いから、変えるのは勿体無いし、
当面は様子見かな。)
総司:(朝は普通だったみたいだから、
一時的に変になるくらいかな?)
マリカ:(総司の意識はあるし、
意に反した行動をしているわけでも無い、
ってことで、良いんだよね?)
総司:(ちゃんと覚えてるし、
僕の意思に反してるって感じじゃないね。
自然とそうしようという気持ちになって
行動しちゃう感じかな。)
マリカ:(無意識下の知識の共有が、
発想と最適と思う行動選択に影響してるって感じかな。
どちらにしろ大きな問題はなさそうだね。
実際、消すには惜しい術式だからね。
それでも、おかしいと思ったら、ちゃんと私に伝えるんだよ?)
総司:(わかった。感覚的には、
あれほどの効果を何の弊害も無しで使えると思うより、
弊害があるくらいが、逆に安心できるかな。)
マリカ:(確かにそうだね。)
昨日に引き続き、連携とシンクロの練度を上げる訓練を行いつつ、
新しい方法を試して、効果のあるものを術式にしたり、
練習を繰り返して自分達のものにしていく。
総司:(僕も出来ることが格段に増えたけど、マリカさんも
前は出来なかったことが普通に出来る様になってるね。)
マリカ:(影でいろいろやってるからね。
この世界に来た時に明確な目的が出来たから、
やる気に溢れてるんだよ。)
総司:(マリカさんの目的って何?って、聞いていいかな…?)
マリカ:(私は昔、自分の力不足で大切なものを亡くしたんだ。
だけど、もう一度チャンスを貰えた。
今度は絶対に失わない。総司と一緒ならそれが出来る。)
総司:(そうなんだ…。マリカさんのためなら何だってするし、
出来る様に努力する。だから何でも言ってね。)
マリカ:(ありがとう。ありがとう…。
だけど、もうこれ以上ないくらいに力になってくれているよ。
それに、死ぬ時はどうなろうが、総司と私は一緒だよ。)
総司:(そうだね。どうしたって
マリカさんと僕はずっと一緒だね。)
マリカ:(そういうことだ。)
僕は笑顔で答える。
きっとマリカさんも笑顔で答えてくれていると思う。
昼食を終えて午後になり、白狐さんと剣術の稽古を始める。
まずは白狐さんが稽古で行う型を習う。
蘭さんと楓さんも一緒だ。
蘭さんと楓さんは狐人族の中では強い部類らしい。
狐人族の何人かも一緒に稽古をする。
僕に触発されて狐人族でも稽古に力を入れる人が増えたらしい。
型が身に付いたら、魔法の効果を上げつつ繰り返し行う。
白狐:「私も魔法に真剣に取り組もうかな。
総司の速度についていけそうにないわ…。
一昨日は相当手加減してたんだね。」
昨日と今日の午前中だけで強くなったと言っても、
とても信じて貰えないだろう…。
マリカ:(剣術を教えて貰ってるし、
強くなってもらった方が効率が良い。
三人にも魔法効率を上げる術式をいくつか
組み込んだ魔道具を作ってあげるよ。)
僕はアイさんのように胸の前で両掌を向かい合わせて
魔素結晶を作り、指輪の魔道具を三つ作る。
総司:「魔法の練習用の魔道具だよ。
組み込んであるいくつかの術式を身に付ければ、
魔法の技術が上がると思うよ。」
白狐:「魔道具まで作れるのか…。ありがとう。大切にする。」
蘭:「嬉しい!ありがとう!」
楓:「大切にするね。指輪…。うへへへへへ。うっ…。」
ちゃんと小指にしか入らないサイズにしてある。
楓さんは薬指を斬り落とし、
斬り落とした指に無理やり指輪をはめてから、
指輪を付けた指を手に付けて回復させた。すごい根性だ…。
マリカ:(ついでに刀も作るか。
同じ形のものにするから、刀を借りて。)
総司:「魔道具の刀も作るから刀も見せて。」
白狐:「私の刀は貰ったものなんだけど、既に魔道具の刀なんだ。」
僕は白狐さんから刀を受け取る。
マリカ:(これは…。)
総司:(どうしたの?)
マリカ:(私が作れる刀よりもずっと良いものだ。
総司の刀と同じレベルの品だよ。
その刀はそのまま使ってもらった方が良い。)
総司:(そうなんだ。)
総司:「ごめん。これは僕が作る物よりずっと良い刀だ。」
白狐:「そうなのか?
大昔に筋肉質な爺さんに勝ったらくれたの。
すごく強い爺さんだったよ。
やっぱりすごい刀だったんだね…。」
総司:「そのお爺さんは?」
白狐:「知らない。
でも、さすがにもう生きてはいないと思う。
お花畑は知り合いだったみたいだよ。」
総司:「そうなんだ。」
蘭:「私のも作ってくれるの?」
総司:「うん。ちょっと待ってね。」
蘭さんから刀を受け取り、魔素結晶で同じ形の刀を作って渡す。
蘭:「ありがとう!」
総司:「楓さんも。」
楓:「私はこの刀をベースにしなくていい。
総司君が良いと思うものを作って。」
総司:「そう?ちょっと刀を貸して。」
楓:「はい。」
僕は刀を借りて刀身を伸ばしたり、縮めたり、
反りを変えたりして楓さんに都度刀を振ってもらった。
総司:(どれが良いと思う?)
マリカ:(ちょっと刀身を伸ばしても良さそうだね。
それじゃ、作るよ。)
総司:「はい。ちょっと刀身を伸ばしたよ。」
楓:「ありがとう。大切にする。」
総司:「刃毀れしても魔力を通せば修復するから、
気兼ねなく使って、組み込んである術式にも慣れてね。」
楓:「うん。」
刀を撫でている。こういう楓さんは結構可愛い。こういう楓さんは。
その後3対1で実戦訓練を行う。
斬られるとウットリした顔になる楓さんがちょっと気持ち悪かった。
こうして午前は魔法の訓練、午後は白狐さんと狐人族の人達との
剣術の稽古という日々を過ごしていく。




