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アイの新世界(物語)  作者: 夢のファイヤー
北の大陸
35/89

24.狐人の大森林①狐人族と長耳族

僕が温泉にゆっくり浸かっていると、白狐さん、蘭さん、楓さん、

他にも多数の狐人族の人が温泉に入ってきた。

男性は僕から遠巻きに。女性は僕のすぐ傍まで来る。


楓:「総司さん首まで浸かってる。恥かしがり屋さん。」

蘭:「着替えが必要かと思って用意しておいたよ。

  和服も巫女服も両方あるから、好きな方を着てね。」

白狐:「ここは源泉掛け流しで湯量も多いから、

  温泉の中でバチャバチャ洗っちゃっても大丈夫だよ。」

楓:「総司さんの身体見たい。胸はどんな感じかな。」


楓さんが飛びかかって来る。


総司:「うわっ!ダメだよ。」


僕が慌てて立ち上がる。


「「「「「「「えっ!?」」」」」」」


みんなが僕の胸を見ている。幸い下は水面の下だから無事だ。


蘭:「男に見える。」

楓:「女に見えないね。」


「男っぽい名前だな。とは思ってたんだよね。」

「マジか…。全然わからなかった。」

「いや、極端に胸の小さい女性かもしれない。」

「狐人は大き目だしね。そういうものかもしれない。」

「そうだね。まだ確定してないね。」


みんなの目線が下へ移動する。

僕はゆっくり座りなおす。


白狐:「蘭、楓。」

蘭:「やった!」

楓:「任せて。」


僕は蘭さんと楓さんに腕を左右から持ち上げられる。


「「「「「「「!!!!!!!」」」」」」」


直ぐに蘭さんと楓さんは僕の腕を離す。

胸が腕に当たって気持ちよかった。


僕はまた首までお湯に浸かる。

こういうのばっかりだ…。


前回見られたのは御神体だったけど…。

イルスでは二回も触られたし…。


総司:「ひどいよ。」

蘭:「ついてたね。」

楓:「棒だったね。」


僕はコソコソと狐人族の男性の方へ移動していく。

男性のみんなの顔が赤くなってきたので、行くのをやめた。


行く場所がなく、ちょうど真ん中辺りで止まる。


白狐:「総司は男だったのか…。男に負けたのか…。」


「「「白狐様、おめでとうございます!」」」


白狐:「そう…。だね…。ありがとう…。かな…。」


白狐さんの顔が少し赤くなる。チラチラ僕の方を見てくる。

色っぽくて可愛い。

しかし、その裏にある理由が怖い。


どういうことなんだろう…。


総司:「何がおめでとうなの?」

蘭:「白狐様はちょっと狐人族と違うの。妖狐って言ったかな?

  強く不老な代わりに自分より強い男にしか発情しない。」

楓:「白狐様は今まで男に負けたことが無いらしい。

  総司君が初めて。」

総司:「いや、勝ってないでしょ。引き分けだよ。」


「「「完璧に勝ってました!しかも手加減して!」」」


白狐:「総司は私が嫌いか?」

総司:「そんなことないよ。むしろ好みのタイプだけど…。」

白狐:「ならいいわ。蘭、楓、引き続き総司の世話をお願い。」


マリカ:(八方美人は後で大変だぞ…。)


蘭:「やった!誠心誠意奉仕しちゃうよ。」

楓:「任せて。常に知の極致へ連れて行く。

  賢者モード。なんちゃって。」


最悪だ…。

最初もそうだったが楓さんは特にヤバそうだ…。


白狐:「そういう世話じゃないからね…。」

蘭:「大丈夫です。私の忠誠は白狐様のもの。

  白狐様のものは私のもの。」

楓:「私の忠誠も白狐様のもの。

  蘭のものは私のもの。何も問題ない。」

蘭:「それ楓が一番多くない?」

楓:「気のせい。」

白狐:「みんな上がりましょう。明日から楽しくなりそうね!」


みんな僕を見ている。僕が最初に上がらないといけないらしい。


総司:「今日は夜分に突然すいませんでした。

  皆さん明日からよろしくお願いします。」


「「「「「「「総司君、よろしくね!!!」」」」」」」


僕は温泉を出た。


蘭:「総司君、外で待ってて。寝るところに案内するから。」

総司:「わかった。」


みんなも温泉から出てくる。


楓:「家まで案内する。」

総司:「よろしくね。」


僕と白狐さん、蘭さん、楓さんで歩いていく。


楓:「着いたよ。ここが族長の家。白狐様と蘭、私で住んでる。」


仲が良いと思ったら家族みたいな関係だったのか。


白狐:「もう総司の家よ。遠慮はいらないわ。」


違うよね。僕が居るのは一か月って言ったの忘れてないよね?


蘭:「もう遅いから布団敷いちゃうね。

  白狐様と総司君は同じ布団で良い?」

総司:「ダメでしょ…。」

楓:「やっぱり総司君は恥かしがり屋さん。」

蘭:「大丈夫だよ。3つ並べて私達も横で見てるから。」

総司:「お願いだから4つ敷いてね。」

白狐:「総司と私が真ん中で蘭と楓はその隣ね。」

蘭:「わかりました。」

楓:「私も総司君の隣。」


マリカ:(私がちょっとだけ長く起きてるから心配ないよ。)

総司:(マリカさんも変なことしないでよね…。)


こうして4人並んで眠りについた。



狐人の大森林に来て次の日、僕はみんなの朝食を作るために

少しだけ早起きする。


お世話になるからにはそれくらいはしたい。

魔法の訓練にもなるしね。


三人は寝ていたが、僕は起きて外へ出た。

外へ出ると狐人族の人達が朝食の準備をしていた。

やっぱりある程度大人数で集まって食べるらしい。


総司:「おはようございます。朝ご飯の支度は僕も手伝いますよ。」


「おはよう。昨日の夜は大変だったでしょ。

 ゆっくり寝てていいんだよ?朝の支度は私達がするから。」

「白狐様には幸せになって貰いたいからね。」


総司:「大丈夫です。」


気になる言い様だけど、気のせいだろう。

僕はいつものように魔法で料理を始める。


マリカさんに協力してもらって、大人数が食べられるように

大きな鍋や調理器具と大量の食材を魔法で出す。


「魔法で調理器具と食材を出しちゃうのか。すごいね~。」


総司:「全員分に足りるかはわかりませんけど、

  たくさん作るから皆さんも食べて下さいね。」


さっぱりした肉野菜スープを作る。煮込んでいる間に

パンを魔法で用意して机に並べる。


「良い匂い。美味しそう。」


総司:「スープも出来たから欲しい人は取りに来てください。」


「私もらう~。」

「私も~。」


来てくれた人達に魔法で器を出してスープをよそっていく。


「白狐様達は起きてこないね~。」

「え?三人とも?」

「総司君ってすごいんだね。」

「総司君は朝早くから元気に起きて来てるし、更にすごいよね。」

「総司君っていろいろ強いんだね!」


朝から微妙な会話が全開だった。

これ以上言われないためにも、みんな早く起きて来てほしい。


楓:「おはよう。朝食は何だろう?お赤飯かな?」

蘭:「おはよう。昨日の夜いろいろあって遅くなっちゃったよ。」

白狐:「みんなおはよう。遅くなってすまない。」


「「「白狐様、おはようございます!」」」


総司:「おはよう。朝食出来てるから食べて。」

白狐:「総司がみんなの分も作ったのか。ありがとう。」

楓:「総汁美味しそう。いっぱい飲みたい。」

蘭:「私も頂戴。」

白狐:「それじゃ食べましょうか。頂きます。」


「「「頂きます。」」」


狐人族は頂きますをする人達だった。

いろいろ違うけど、日本の文化に近いところがあるのかな?


白狐:「パンもスープもすごく美味しい。」

蘭:「いつもはご飯だけど、パンも美味しいね。」

楓:「ほんとに美味しい。総司君は料理も上手なんだね。」


みんなで朝食を食べ終わり、

僕は大森林の先の山の上で魔法の訓練を始める。


僕とマリカさんの魔法の同時発動で刃の魔法の展開数を

増やしたり、防御壁の二重展開など、組み合わせにより

効果が高められる方法をいくつか作っていく。


マリカさんが新たな術式を作り、

自動でシンクロする部分も増やしていく。


マリカさんの使っていた術式には限定的だが、

物理法則の制限を受けない様な効果を持つものもあり、

その効果を僕も連動して使えるようになった。


それらは秘術に分類される術式らしい。

新しい方向性は大きな成果になる。


魔法のメカニズムは基本的に魔力の生成と発動の連鎖だ。

これを交互に同時に行うことで、切れ目なく効果を得られる。

これらを自動で発動できる術式により、

これまでにないスピードを得られる様になった。


マリカ:(たった半日の成果にしては大きいな。)

総司:(二人で同じ術式を共有して連動出来るってすごいね。

  マリカさんのアイデアと知識のお蔭だね。

  魔法を使えた時に近いくらいの感動だよ。)

マリカ:(まだまだ強くなれるさ。

  この感覚を普通にして更に上に行こう。)

総司:(うん。)


昼食の時間になったので、

狐人の大森林へ戻り、昼食の準備を始める。

みんなの分も含めて大量に作る。


「総司君ありがとう。とっても助かるよ。」


総司:「いえいえ。

  一人分もみんなの分もそれほど変わりませんし、

  魔法の訓練にもなるので。ところで白狐さん達は?」


「今日は三人で出かけたよ。

 白狐様からの伝言で、

 今日の午後の稽古は無しにして欲しいって

 言ってたのを伝え忘れてたね…。ごめんね…。」


総司:「大丈夫ですよ。それじゃ、

  今日は一日魔法の訓練をするので。」


「剣術も白狐様並なのに、魔法も超一流ってすごいね。」


総司:「僕なんてまだまだです。

  もっとすごい人もいるんですよ。

  それこそ信じられないくらいに。」


「世の中広いんだね。」


総司:「この大森林を出て外の世界に行けば、すごいこと、

  楽しいこと、辛いこともあるかもしれないけど、

  いろいろなことを知ることが出来ますよ。」


「そういうのもいいね。私もちょっと考えてみるよ。」


僕は午後も山頂へ行き、魔法の訓練を続けた。


夕方は飛躍的に向上したスピードと、

身体能力と動作とのズレを補うために、

型のようないくつかの定型動作を繰り返す。


一応の区切りがついたときには結構遅くなっていた。

急いで狐人の大森林へ戻る。


「総司君おかえり。夕ご飯出来てるから食べて。」


総司:「ありがとうございます。頂きます。」


僕はすぐに夕ご飯を頂く。


総司:「そういえば白狐さん達はまだ帰って来て無いんです?」


「今日は長耳族の大森林に行ったみたいだから、

 そろそろ帰って来ると思うよ。」


総司:「長耳族と交流があったんですね。」


「毎年、演奏を聞かせに来てくれるんだよ。大昔の約束でね。」


そういえばナギさんがそんな話をしていたね…。


「とっても美しい演奏なのよ?私達も毎年楽しみにしてるの。」


総司:「僕も聞いてみたいな。」


「たぶん総司君に聞かせるために、

 長耳族にお願いに行ったんじゃないかな?」

「三人で行ってるからね。楽器を持つのに人手がいるから。」


そうなのか。だとしたら嬉しいな。

夕ご飯も食べ終わったので、ちょっと様子を見に行こうかな。


僕は長耳族の大森林へ向かって飛んで行く。

道中に光などは見えない。


さすがにこの時間で無灯火ということはないだろう。

高速で飛んだので長耳族の大森林の中心部まで着いてしまった。


マリカ:(速く飛べるようになったよね…。)

総司:(アイさんに比べれば全然だけどね。)

マリカ:(それは仕方ないよ。

  ところで、長耳族のところには行ってみるか?)

総司:(でも、長耳族の代表にはアイさんが

  話をするって言ってなかったけ?)

マリカ:(言ってたね。)

総司:(気が付かれない様に白狐さん達が居るか

  確認出来ないかな…。)

マリカ:(どっちの種族も耳が良さそうだからな…。

  気が付かれずに近づくのは無理だろうね。

  昨日と同じ方法で行ってみるか?)


総司:(アイさんの言葉もあるしなぁ…。

  それに今度は理由がない。)

マリカ:(理由はあるだろ。白狐さん達が心配なんだろ?

  様子を見に来たというのは立派な理由だ。)

総司:(そういえばそうだったね。まあ、いいか。行ってみよう。)

マリカ:(最近は総司も男らしくなってきて良いね。)

総司:(マリカさんを真似て男らしくなるって変だよね。)

マリカ:(気にするな。)


僕は警戒される前に一気にライトの多い場所に降りる。


「だれ?」


総司:「こんばんは。今日、ここに狐人族の白狐さん達が

  来ていませんか?」


「確かに来てるわね。その前に貴方は何?」


総司:「僕は狐人族の大森林でお世話になっている総司です。

  狐人族の白狐さん達が戻らないので心配で確認に来ました。」


「誰か、狐人族の人を呼んできてくれる?」

「わかった」


なんとかなりそうだ。

だけど、白狐さん達はまだここに居るみたいだ。


総司:「対応して下さり、ありがとうございます。」


「え…ええ…。私は名乗って無かったわね…。ダリアよ。」


総司:「ダリアさん、素敵な名前ですね。」

ダリア:「あ…ありがとう…。」


マリカ:(総司が化けたか。魔法だけじゃなくて、

  いろいろ私とシンクロしちゃったか!?)

総司:(どうしたんだろ…。つい…。)

マリカ:(え!?ホントに性格までシンクロしちゃうのかな?

  それは問題だな…。術式を間違えたかな…。)


楓:「総司君どうしたの?」


呼ばれて来たのは楓さんみたいだ。


総司:「心配で見にきたんだよ。大丈夫かい?」

楓:「え…。うん…。ありがとう。なんか雰囲気違わない?」

総司:「心配だったからだよ。」


僕は楓さんの頬に手を当てる。


楓:「総司…様…。」


マリカ:(ちょっと急いで術式を確認する。)


総司:「みんなのところに案内してくれるかい?」

楓:「はい。」


楓さんは僕の方をチラチラみながら歩いて行く。

顔が真っ赤だ。


そういえば、あんまり長耳族の人を見かけないな…。

楓さんは大きな家の前で止まった。


楓:「みんなこの中だよ。」

総司:「ありがとう。」


楓さんは扉を開ける。

中にはたくさんの長耳族の人がいた。

白狐さんと蘭さんも居る。


楓:「総司さ…君…入って。」


僕は家の中に入る。白狐さんと蘭さんが驚いてこっちに来る。


白狐:「どうしてここにいるの?」

総司:「心配で見にきたんだよ。何かあったのかい?」

白狐:「そうなのね…。ありがとう。心配はないよ。

  お花畑が持って行く楽器と人員に迷っていたら、

  こんな時間になっちゃったのよ。」


またお花畑…。どういう意味だろ?

昨日といい、文脈から人の名前っぽいな。


蘭:「総司君わざわざ来てくれたんだね。」

総司:「心配だったからね。大丈夫かい?」


僕は蘭さんの頬に手を当てる。


蘭:「ちょ…。なんか雰囲気違わない?」

楓:「今夜の総司様はやばい。」

蘭:「…様?」

楓:「間違えた。」

総司:「白狐さん。長耳族の方に僕を紹介してもらっていいかな?」

白狐:「そうよね。ごめんね。お花畑!ちょっと来て。」


「はーい。」


ピンクの髪をした、おっとりした美人の長耳族の人がこっちに来る。

あの人がお花畑さんらしい。


白狐:「紹介する。昨日から私達と共にいる総司だ。

  既にお花畑には総司について話はしてある。」

総司:「総司です。よろしくお願いします。」

白狐:「こちらが…名前なんだっけ?」


「デルフィニウム・ド・フラワーガーデンですわ。

 長耳族の代表をしています。

 お花畑じゃなくて、デルって呼んで下さいね。」


苗字?がある人は初めてだ。しかも名前が長い…。

ド?ドって何だっけ?


総司:「素敵なお名前ですね。

  親愛を込めてデルさんと呼ばせて頂きます。」

デル:「まあまあまあ!素敵な方ですね!」

白狐:「そうだろう。私のだからね。」

デル:「そうなの?

  強い男性じゃないとダメなんじゃなかったっけ?」

白狐:「総司は強いわよ。昨日の夜負けたわ。」

デル:「白狐ちゃんが?うっそだぁ。」

総司:「白狐さん。狐人族のみんなが心配している。

  ここでの話もあるだろうけど、一度無事を知らせに行こう。」

白狐:「私を心配?そんなことはないと思うけど…。」


うん。あんまり心配してなかったね…。

なんでこんなこと言っちゃったんだろう…。


総司:「僕がこうして心配で見に来ている。」


僕は白狐さんの頬に手を当てる。


白狐:「そうだね…。ありがとう。」

デル:「総司さんが強いって女に強いって意味?

  夜負けたってそういうこと!?」

楓:「最強。」

蘭:「いやいや、何かさっきから総司君がちょっと変だよ。

  朝と雰囲気が全然違うよね。」

白狐:「そういえば、総司がここに来てくれたなら、

  わざわざ行かなくてもいいわね。

  総司に長耳族の演奏を聞かせたかったの。

  とっても良い演奏なの。」

デル:「私もその方が助かるわね。それじゃ準備するね。」

総司:「準備にはどのくらい時間がかかりますか?」

デル:「人も呼んでこないといけないから一時間くらいかな。」

総司:「僕のためなんですよね。ありがとうございます。」

デル:「白狐ちゃんの頼みだからね。」

総司:「白狐さん、みんなのところに無事だけでも知らせに行こう。

  一時間あれば行って帰ってこれる。

  白狐さんが説明してくれた方がみんな安心するから。」

白狐:「一時間で行って帰って来るなんて無理よ。」

総司:「大丈夫。僕を信じて。」

白狐:「わかったわ。」

デル:「ゆっくり準備しておきますわね。」


僕は白狐さんの腰に両手を回して抱きしめる。


総司:「白狐さんも両手で僕の首に掴って。」

白狐:「わ…わかったわ。」

楓:「白狐様うらやま。」

蘭:「私もやってほしいな…。」


白狐さんが僕の首に掴まる。


総司:「いくよ。しっかり掴っててね。」


僕はそのまま扉を出て飛行の魔法で飛び立ち全力で飛行する。


白狐:「ほんとに速いわね。これなら本当に

  行って帰ってこれそうね。総司は本当にすごいね。」

総司:「嘘は言わないさ。」


狐人族の大森林につく。


総司:「ただいま。みんな聞いて。

  長耳族のところで、楽器の演奏を聞いてくる。

  準備が遅くなって今からだから、

  今日は向こうに泊まって来るね。」

白狐:「総司の言う通りよ。明日帰ってくるから心配しないでね。」


「総司君がいないと思ったら、白狐様のところに行ってたのか。」

「熱いわね。」

「白狐様、こっちは心配ないから、ゆっくりしてきてください。」


白狐:「ありがとう。急ぐから行くね。」


「「「行ってらっしゃい!!!」」」


僕はまた引き返す。


長耳族の大森林に着き、デルさんの家に入る。


総司:「着いたよ。もう手を離していいよ。」

白狐:「うん。」


白狐さんが僕の顔を見ていたが、少ししてから手を離した。


デル:「忘れ物?」

白狐:「いや、もう行ってきた。」

デル:「うっそだぁ。」

白狐:「ほんとだってば。信じられないのもわかるけど。」

デル:「まあ、用事が済んだのならどっちでもいいわ。

  まだ準備が出来てないから、もうちょっと待ってね。」

楓:「総司君、私も忘れ物した。取りに帰りたい。」


楓さんが両手を伸ばしてくる。


蘭:「嘘を言うんじゃないの。」


蘭さんが楓さんを引き離す。


楓:「蘭はわかってない。協力した方が得だぞ?」

蘭:「楓は後で私を蹴落とすでしょ。」


舞台を見るといろいろな楽器がある。


総司:「あの楽器はデルさんが作ったのですか?」

デル:「そうなの。すごいでしょ。」

総司:「本当にすごいです。聞くのがとても楽しみです。」


笑顔でデルさんに言う。


デル:「楽しみにしててね。」


「デルさん準備出来たよ~。」


デル:「は~~い。」


長耳族の人達が各々の楽器を手に持つ。

デルさんが指揮者だ。


デル:「今日は狐人族の方々が来てくれています。

  楽しい時間を過ごして貰えるように

  最高の演奏にしましょう。」


僕達は用意された椅子に座り、静かに待つ。

デルさんが指揮を始めると、美しい演奏が始まる。


元の世界で聞いたことがある曲もあった。


なるほど。

アイさんと知り合いという話と合わせて考えると

間違いないだろう。


デルさんは転生者だ。


マリカ:(良い演奏だね。)

総司:(そうだね。懐かしいね。)

マリカ:(そう…だな。)


マリカさんも聞き入っていると思う。

僕も懐かしさにこみあげてくるものがある。


気が付けば涙が流れていた。

唐突にたくさんのことを思い出す。


僕は死んだという感覚があまりない。

転生した直後から優しい人達に囲まれた幸せな毎日だったから。


それでも…。

僕は理不尽に、たくさんのものを失っていたことに、

今になって気が付いた。


演奏が終わっても僕の涙は止まらない。

デルさんが僕の頭を撫でていた。

いつの間にか僕の前に来ていたみたいだ。


デル:「頑張ったね。」


僕はデルさんに縋りつき、声を出して泣いていた。

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