表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
アイの新世界(物語)  作者: 夢のファイヤー
北の大陸
31/89

20.人間の街イルス①イルス市民

ザウルの街を出発し、上空からイルスの街までの道を見ると

人魚の町からザウルの街までの道とは違い、

小さな村がいくつも見えた。


道も整備されており、馬車、荷車を引く人、

走っている人など、人通りが結構ある。


この世界では、ほぼ全ての生命に魔法の恩恵があり、

身体能力は高く、あまり疲労しない。


荷物が多い人は馬車や荷車を利用して、

荷物が少ない人は普通に走って移動している感じだ。

流石に飛んでいるのは僕達しかいない。


アイ:「一気にイルスまで飛んで行くつもりだったけど、

  途中でどこかに寄っていくのも良いよね。どうしようか?」

総司:「みんな仕事してるだろうし、

  変に邪魔しちゃっても悪いからね。

  困ってそうな人を見かけたら、

  手伝いに行くくらいで良いんじゃないかな?」


ソフィ:「広い平地でぶつかる危険もないし、

  久しぶりに元の姿で思いっきり飛んでみたいなー。」

総司:「大事になるから絶対にやっちゃダメだからね…。」

アイ:「その辺って世界の守護者の戒律的にどうなってるの?」

ソフィ:「その時々の竜王の裁量だろうけど、

  今の竜王は大量虐殺したり、脅して支配したりしなければ、

  討伐されたりはしないんじゃないかな。」


総司:「自制してくれているのはありがたいけど、

  窮屈な思いをさせちゃってるのは申し訳ないよね。」

アイ:「将来は竜の島で最強決定戦みたいなイベントでもやろうか。

  竜の島の人魚族から、すごい子がたくさん生まれそうだしね。」

ソフィ:「アイさんがちょっと気合入れて景品を作れば、

  実現しそうだね…。」


三人で話をしながら飛んでいると、

右方向から大きな鳥の群が飛んでくるのが見える。


いや、鳥ではなくて鳥人族みたいだ。

鳥人族もこちらに気が付いたようだ。

群から二人ほどこちらに向かってくる。


鳥人男:「ちょっと良いかな?」

総司:「良いですよ。」

鳥人男:「俺達は南の大陸から移住しようと思ってこの大陸に

  飛んできたんだけど、良い場所を知らないかな?」


総司:「良い場所と言われても難しいですけど、

  この大陸で鳥人族が住んでいる場所は知らないです。

  既に他種族が住んでいる場所であれば、

  ここから真っすぐ東に行けば人間族の街イルス、

  後ろへ真っすぐに西へ行くと人間族の街ザウル、

  更に西へ行くと人魚の町があります。

  イルスは行ったことがないですが、

  人間族以外が住むには都合が良くないという

  噂を聞いたので、人間族の街であれば、

  ザウルの方が良いと思います。

  人魚の町は僕達の知り合いが多いので、

  僕達のことを話せば、共生を認めて貰えると思いますよ。」


鳥人男:「丁寧に教えてくれてありがとう。」

アイ:「お勧めは人魚の町ね。私はアイ。

  黒髪が総司、赤髪がソフィア。

  人魚の町のアクアマリンって人魚を呼んで、

  私達三人の紹介と言えば良くしてくれるはずよ。」

鳥人男:「ありがとう。俺の名前はマテオ。後ろにいるのがサディ。

  行く宛ても無いし、教えて貰った人魚の町に行ってみるよ。」


後ろにいる鳥人族の女性も頭を下げている。


アイ:「私からもちょっと聞いていい?」

マテオ:「どうぞ。」

アイ:「行く宛ても無いのに南の大陸から

  移住してきたのはどうしてなの?」

マテオ:「南の大陸は犬人族と猫人族の国があるんだけど、

  それが定期的に争っているんだ。

  最近は両方の国の魔法使いが参戦するようになって

  戦闘が激化してきたんだ。

  俺達は被害が出ないうちに移住することにしたんだよ。」

アイ:「なるほどね…。南の大陸は正確に言うと、どの辺りなの?」

マテオ:「ここから真っすぐに南東方向だね。」

アイ:「ありがとう。人魚の町までそれなりに距離があるから、

  食べ物をあげるよ。ソフィさん手伝って。」

ソフィ:「はいはい。」


ソフィさんに手を出させて、そこに大きなバックを作り、

パンをたくさん作って入れていく。それをマテオさんと

サディさんに二つずつ持たせる。


マテオ:「ありがとう。助かるよ。それにしてもすごいね。」

サディ:「すごい魔法ですね…。

  魔法で食べ物が作れるなんて初めて知りました。

  ありがとうございます。」

アイ:「人魚の町は海岸沿いにあるから。気をつけて行ってね。」

マテオ:「ありがとう。」


鳥人族の二人は群の方に帰っていった。


アイ:「私達も行こうか。」


イルスの街への移動を再開する。


総司:「南の大陸は大変そうだね。

  国同士の争いってことは戦争してるってことだよね?」

アイ:「そうだね。でも人的被害はあまり無いはずだけど…。

  他の種族に迷惑をかける様なのはやめてほしいね。」

総司:「行ってみる?」

アイ:「今はやめておこう。

  あの二種族の争いをやめさせるのはちょっと難しいし。」


アイさんは何か知っているっぽいな。

アイさんがそれほど気にしないという事は、

それほど酷い状況でもないのだろう。


総司:「ザウルの街にも犬人族も猫人族もいたよね。

  仲が悪そうには見えなかったけど…。」

アイ:「群れになると攻撃的になるのよね…。

  お互いでやり合って、それで済ませてくれていれば

  問題ないんだけどね…。」

ソフィ:「竜族が仲介したって話も聞かないから、

  大丈夫なんじゃない?」

総司:「そうだね。」


鳥人族に会った以外は特に何もなく、イルスの街が見えてきた。

城壁の左奥の少し離れた所で、たくさんの人が戦闘訓練をしている。


千人くらい居るだろうか。

あの人達が話にあった常備兵なのかな。


アイ:「目立ちたくないから、そろそろ降りて城門まで行こう。」

総司:「それならあの森に降りて着替えて行こうよ。

  ここに来るまでに僕達が飛んでいるのを

  見た人もいるだろうし。」

ソフィ:「たまに鳥人族が空を飛んでいるのを見ているだろうから、

  あんまり気にしてないんじゃない?」

アイ:「そうね。でも、森で着替えて行くのはいいね。」


僕達は最寄りの森に降りる。


総司:「僕は藍色の外套を上に着るね。」

ソフィ:「私はどうしようかな…。」

総司:「特にこだわりが無いなら、

  ズボンからスカートに変えない?

  ソフィさんが男装の令嬢っぽいから僕が女性に

  見えちゃうのもあると思うんだよね。」

ソフィ:「関係ないと思うけど…。

  それじゃ総司君の好きにしていいよ。」


ソフィさんは両手を上げて待っている。

僕に魔法で作れということか。


マリカ:(どうする?)

総司:(ソフィさんの外見からは

  学生服みたいな感じが似合いそう…。)

マリカ:(こんな感じでどう?)

ソフィ:(スカートが短くない?)

マリカ:(こんなものじゃないかな?)

総司:(それに赤いポンチョを上から着るのが良いかも。)

アイ:(可愛いね…。私はツインテメガネをやめて

  元の姿に戻ろうかな。)

総司:(僕が青でソフィさんが赤だから、

  アイさんは黄色のポンチョにしようよ。)

アイ:(………。)


マリカ:(アイさんは何を着ても似合うよ。

  メガネは邪魔そうだったし、外していいから

  髪はそのままで黒いリボンを付けよう。)

アイ:(総司君どう?似合ってる?)

総司:(とっても可愛いよ!)

アイ:(それなら良いか…。準備出来たから行こうか。)


城門前には大勢の人が並んでいる。

道の端にはたくさんの立て看板が並んでいる。

イルスの街の規則が書いてあるみたいだ。


総司:「これを全部読んで覚えるのはちょっと無理だよね…。」

ソフィ:「城門に「イルスの街へ入ったものは、この街の規則に

  同意したものとする」って、書いてあるね。」


マリカ:(元の世界でも似たようなやり口があったな…。)


アイ:「ほとんどは当たり前のことが細かく書いてあるだけだけど、

  たまに紛れ込むように、酷いのがあるね…。

  「警備隊が不審に思ったものは本人の同意なく連行出来る。」

  って…。逆に不審に該当する内容が書いてないから、

  警備隊の人の裁量ってことになるのかな…。

  イルスの市民権を持つものは

  対象外になってるのが小賢しいね…。」

総司:「みんな読んでるようには見えないね。大丈夫なのかな。」


アイ:「他にも酷いのがあるね。

  簡単に言うと、この街に住居を持っていないと、

  貨物、手荷物の検査を拒めない。

  連行された者は身元引受人が来ないと

  拘留期間を任意に延長出来る。

  身元引受人はこの街に住居を持っていて

  届け出がされている者に限る。だって。

  街に入ったら市民権と住居の購入、届け出を

  すぐにした方が良さそうだね。

  全部お金で買えるみたいだし。」


総司:「いくらくらいなの?」

アイ:「市民権は人間が一人金貨10枚、他種族が金貨30枚。

  住居の費用はここだと分からないね。」

総司:「すごい値段だね…。

  通行料は銀貨1枚、他種族で銀貨2枚って話だったから、

  それよりも他種族に厳しいね。」


元の世界の価値で換算すると金貨1枚が10万円、

銀貨1枚が1000円くらいだから、結構な価格だ。

城壁の入口が見えてきた。


受付が3つあり、右端は貨物がある人が対象みたいだ。

衛兵のような人達が城門前に立っている。

若い女性が受付をしている場所が空いたので、そこへ行く。


総司:「人間二人、他種族が一人です。」

受付:「銀貨4枚です。お名前などを記入してください。」


僕が三人分の時刻、名前、性別を記載し、種族欄に○を付ける。

分類は人間と他種族の二種類しかなかった。僕は銀貨を4枚渡す。

竜族と書くと面倒が起きそうなので、その点は良かった。


受付:「手荷物が有る方は、進んですぐに検査員がいますので、

  そこで荷物を渡してください。」

総司:「わかりました。」

受付:「ちょっとお待ちください。」


先に進もうとしたところで呼び止められた。


総司:「え?はい。」


何か書き間違えたかな…。

やっぱりソフィさんの種族を聞かれるのかな…。


受付:「総司さんは性別を男性と書かれていますが、

  検査してよろしいでしょうか?」


そこで引っかかったか。検査って何をするんだよ…。

まさかここで脱げなんて言わないよね…。


総司:「良いですけど、どんな検査なんです?」

受付:「触診です。」

総司:「誰がするんです?」

受付:「私です。」


受付さんの表情は変わらない。

あくまで仕事として仕方なくするようだ。


総司:「わかりました。どうぞ。」

受付:「それでは。」


受付さんが両手で僕の胸に手を当てて、僕の顔を見てくる。

つぅーっと受付さんの鼻から血が流れた。


総司:「鼻血出てますよ…。」


単に表情に出ない人だったらしい。


受付:「し…失礼しました…。」

総司:「もう良いですか?」

受付:「いえ…まだ下が…。」

総司:「いや…。もう分かってるでしょ…。」

受付:「仕事ですので…。

  しかし私では耐えられそうにありません。

  少々お待ちください。」


受付さんは衛兵のところに行って話をしている。

すぐに衛兵と一緒に戻ってきた。衛兵は若い男性だ。


受付:「よろしくお願いします。」

衛兵:「え?ほんとに?こんな綺麗な娘なのに男なの?

  ちょっとドキドキするな…。」

受付:「私もドキドキします。」


最悪だ…。

アイさんもソフィさんも周りの人達も

顔を赤くしながらこっちを見ている。

なんという羞恥プレイ…。


衛兵:「いくよ?」


衛兵さんが僕に聞いてくる。

マジか…。良いとか悪いとか答えなくちゃいけないの?


総司:「どうぞ…。」


衛兵さんが恐る恐る下に手を伸ばしてくる。


衛兵:「男性です!!!」

男性達:「「「おおお~~~!」」」

女性達:「「「キャーーーー!」」」


周囲から歓声と拍手が沸き起こった。意味がわからない…。


受付:「記載通りですね。良かったです。どうぞお通りください。」

総司:「ありがとうございました…。」


これでお礼を言わなきゃいけないのは納得がいかないが仕方ない…。

それと聞いておかなくてはいけない事もある。


総司:「市民権を得たいのですけど、どこに行けば良いですか?」


僕は努めて平静な顔で受付さんに聞く。


受付:「城門を入ってすぐの左側の大きな建物が役場になります。

  受付がいますので、詳しい事はそこで聞いてください。」

総司:「わかりました。ありがとうございます。」


僕とアイさんは手荷物はない。ソフィさんは受付のすぐ先で

検査員にバックを渡す。バックの中にはお金しか入っていない。


検査員:「問題ありません。」


検査員がソフィさんに手荷物を返す。検査員さんの顔も赤かった。


マリカ:(総司、お疲れ様。大変だったな…。

  なんだか元の世界のイミグレーションみたいだね。

  さすがに元の世界ではパスポートに顔写真もあるから

  あんな検査は無いだろうけど。

  いや、あるかもしれないか。)

総司:(その事はもういいよ。

  忘れる事にする。やりとりも事務的で、

  良い意味で言うなら余計な詮索もないし、

  文明圏に来たな~って感じだね。)

マリカ:(確かにそうだね。ちょっと先入観を持っていたけど、

  種族の違いを国籍の違いに置き換えれば、額の違い以外は、

  内容的にはそれほど違いは無いもんね。)


アイさんとソフィさんはまだ顔が赤い。会話に入ってこない。


僕達は城門を通り街の中に入った。

広い大通りがあり、左右に建物が建ち並ぶ。


レンガ作りが多く、ザウルの建物よりも高く、

造りも少し良いように感じる。


総司:「市民権を得るには左側の大きな建物だったよね。」

ソフィ:「あれだね。西門役場って書いてあるね。」


僕達は役場に入る。

受付と思われる場所を見ると、人が結構並んでいる。

こういうのは本当に面倒だ。


アイ:「市民権の申請はこちらって書いてある。

  あそこに直接行けば受付に並ばなくていいかも。」

総司:「行ってみよう。」


少し年配の女性職員が座っている。


総司:「市民権の申請をしたいんですけど、ここで良いですか?」

職員:「はい。

  この用紙に記入と必要経費の支払いをお願いします。」

総司:「わかりました。」


申請用紙を見ると城門前で書いた情報の他に

職業、住居の有無、住所を書く欄がある。


総司:(職業だって。

  旅人ってわけにはいかないよね。何にしようか?)

アイ:(商人で良いでしょ。細かく聞かれたら、

  貴金属を扱っていることにしよう。)

総司:(わかった。)


用紙に記入して金貨50枚と一緒に全員分提出する。


職員:「確認します。」

総司:「お願いします。」

職員:「総司さんは男性と記載がありますが、

  間違いありませんか?」

総司:「間違いありません。」

職員:「検査してもよろしいでしょうか?」


またか…。本格的にどうにかしたくなってきた…。


総司:「拒否したら、どうなります?」

職員:「総司さんの市民証を発行出来ません。」


そうだよね…。聞くまでもないよね…。


総司:「どうぞ。検査してください。」

職員:「失礼します。」


職員さんが両手で僕の胸に手を当てて、

真っ赤な顔で僕の顔を見てくる。


職員:「し…失礼します…。」


そのまま恐る恐る下へ手を伸ばしていく。


職員:「ありがとうございました。

  記載に間違いがないことを確認しました。

  市民証を発行しますので、少々お待ちください。」


職員さんはフラフラと奥の部屋に入っていった。


しばらくして手にカードを三枚持って戻ってきた。


職員:「市民証です。無くさない様にしてください。

  再発行には手数料を頂きますので。」

総司:「わかりました。住居を買って登録する場合も

  ここに来ればいいですか?」

職員:「この役場で可能ですが、専用の窓口での登録になります。

  役場はここでなくても最寄りの役場で可能ですが、

  ここに寄って頂ければ私がお手伝いします。」


職員さんは赤い顔で答えた。


総司:「ありがとうございました。」


住所の登録は絶対に違う役場にしよう。


市民証はカードのようなものだった。

申請用紙に記載した情報の他に、

誰かのサインと通し番号も記載されている。


頭二文字が申請した役場の番号っぽい。

この通し番号で一応偽造を防いでいるのか。


アイ:「それじゃ、家を買いに行こうか。」

ソフィ:「良い家があるといいね。」


こうして僕達はイルス市民になった。

僕のイルスの印象は最悪の一言だ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ