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アイの新世界(物語)  作者: 夢のファイヤー
北の大陸
30/89

19.人間の街ザウル⑤イルスの街へ

マリカ:(総司。総司。そろそろ起きなさい。)


総司:「ん…。おはよう。」

人魚達:「「「おはよう。」」」

総司:「え?お…おはようございます。」


起きると人魚達が僕を見ていた。

みんな僕の目線より少し下の方を見ている。


人魚:「触っていい?」

総司:「ダメです…。」


僕は慌てて隠しながら立ち上がる。


人魚:「残念…。せっかく早起きしたのに…。」

人魚:「私はもう一回寝ようかしら。」


総司:(アイさんとソフィさんは?)


マリカ:(朝ご飯の支度に行ったよ。

  人魚達はアイさんとソフィと入れ替わりで入ってきたね。)


総司:「みんなは朝ご飯は食べたの?」

人魚:「食べてないよ。」

人魚:「夜の仕事だから、いつもは朝はもう少し遅いんですの。」

総司:「早起きして様子を見に来てくれたんだね。ありがとう。」


笑顔でお礼を言うと人魚達は嬉しそうにしてくれた。

人魚達のうち二人は、誰かと誰かと顔と雰囲気が似ている…。


人魚:「朝ご飯なら食堂に案内しますわ。

  アイさん達が用意してますの。」

総司:「ありがとう。」


僕は人魚達に案内されて食堂へいく。


食堂にはアイさんとソフィさん、人魚達も数人いた。


アイ:「総司君、起きたんだね。おはよう。

  ちょうど朝ご飯が出来たよ。」

ソフィ:「おはよう。」

総司:「おはよう。今日も良い匂いだね。並べるの手伝うよ。」

アイ:「みんなの分もあるから遠慮なく食べてね。」


人魚達:「「「頂きます!」」」


ナギ:「おはよう。今日はみんな早いんだね。」


ナギさんも食堂にきた。これで全員かな?


アイ:「昨日の夜にみんなへのお土産に装飾品をいっぱい作ったの。

  気に入ったのがあったら使ってね。

  残ったのは売って、この街の人達と人魚が

  仲良くなるための資金に使ってね。」


人魚達:「「「ありがとうございます!!!」」」


ソフィ:「別にしてある出来の良くないのは、

  練習で私が作ったのだから…。遠慮なく売っちゃってね。

  素材代くらいにはなるから…。」


人魚達:「「「ソフィさんもありがとう!!!」」」


僕製のものはマリカさんの指示で作ったので、案外センスが良い。

僕の好みに合っているだけかもしれないけど。


技巧や精密さではアイさんの作ったものに劣るが、

デザインは個人的にはマリカさんの方が良く見えた。


この世界の魔法で単一金属を作る場合、

例外は多々あるが、基本的に元素番号が高い方が難しくなる。


ソフィさんが作ったのはアルミニウム製だから

簡単な割には高く売れる素材だ。


もちろん物質化の魔法は魔法使いでも出来る人が少ないので、

ソフィさんも一般的には相当すごい部類になる。


アイ:「これからイルスに行くんだけど、

  知ってることがあったら教えてほしいな。」

人魚:「ここ何年かはイルスからザウルに

  引っ越してくる人が多いですわね。」

人魚:「領主が変わって住みにくくなったって聞いた。」

ナギ:「領主が変わって、人間族とその他の種族で

  城壁内に入る通行料が変えられたそうね。

  住民は無料だけど、移民や商人は人間族で

  銀貨1枚、他種族で銀貨2枚って聞いたわ。

  市民権を得るにも人間族以外は厳しくなったみたい。」

人魚:「決まり事もいろいろあるみたいで面倒らしい。」

ナギ:「大きな違いといえば、イルスは常備兵がいることかしら。

  ザウルは有事に臨時で徴兵する決まりがあるけど、

  私が知る限り徴兵されたことはないわね。」

人魚:「事例はある。

  前回は当時代表だったマリンさん達が

  ヤルザに報復に行った時に、

  ザウルも人魚族の襲撃に備えて徴兵した。」

ナギ:「あったね…。そんなこと…。」


ジルベルトさんの話はこれか…。事実だったか…。


ナギ:「ちゃんと説明するから聞いてね。

  若い人魚が攫われた報復のつもりだったの。」


ナギさんはアイさんが怖い目になったのに気が付いて

慌てて説明を始めた。でも言葉尻が曖昧だね…。


人魚:「不幸な行き違いでしたわ。

  若い人魚が最後に目撃されたのが南の方の海岸だったので、

  ヤルザの住民に攫われたと思い、

  報復と救出のために私もヤルザに行きました。

  誰も殺しはしませんでしたが、

  探しても見つからず、数人の若い男を人質として攫いました。

  住民達は慌てて逃げたので何軒か火事になってしまいましたわ。

  町に戻って数日後に、若い人魚は

  遭難していたらしく、自力で戻って来ました。

  勘違いだったと気が付いて、

  攫った男達はヤルザの町に返しましたわ。

  いろいろしましたけど、

  攫った男達はみんな帰りたくなさそうでしたよ?」


ジルベルトさんの話と合う。

嘘を言っているようには見えない。

伝わるうちに誇張されることもあるだろう。


アクアさんの話では、もう少し過激な言い様だったけど、

アクアさんも伝え聞いているだけかもしれない。

人魚は不幸な行き違いと言っているが、確かにそうも思える。


マリンさんの後先考えない性格も悪いけど、

早く救出しなくちゃいけない気持ちもわかる。


人間側の証人は遥か昔に寿命で亡くなっているだろう。

事実はこれだと伝えても信じてもらえるとも思えない。


アイ:「それ完全に人魚の方が悪いよね。」

ナギ:「もっと昔に実際に攫われたこともあったの。

  マリンの行動は軽率だったけど、気持ちもわかるわ。」

総司:「これから仲良くする中で返していくしかないよね。

  返すと言っても贖罪って意味じゃないよ。

  時効って考え方もあるし、

  同じ様な事が無い様に注意するしかないよね。

  今更事実を伝えても信じて貰えないだろうし、

  怖くないと理解してもらうしかないよね。」

アイ:「そうだね。これからは最初に話し合いが

  出来るくらいには最低限なってないとね。」

人魚:「昔よりは近い存在にはなってる。もう大丈夫。」

総司:「ナギさん達のお蔭だね。」

ナギ:「そ…そうよ。ちゃんと考えてたんだから。」


アイ:「その話は終わりね。

  話を戻すとイルスは、

  この街と違って常備兵がいるってことね。

  常備兵にはお金もかかるし、

  想定している相手がいるってことかな?」

ナギ:「総司君にもっと褒めてもらいたかったのに…。

  常備兵の設立は、狐人族と長耳族を警戒してだね。

  大昔に長耳族がこの大陸に来た時に、

  既に住んでいた狐人族と大森林の取り合いで揉めたの。

  そして被害が出ない様に、両方の代表同士の一騎打ちで、

  勝敗を決めることになった。

  その戦いは狐人族の代表が勝ったんだけど、

  狐人族の代表が、戦闘中に長耳族の代表を鼓舞するために

  長耳族が演奏していた音楽を気に入って、

  長耳族に大森林の南側を分けてあげたの。

  大森林は東と南東で2つだったしね。

  両方の代表はとても強くて、それを見た人間族が恐れて

  数で対抗するしかないと思って、常備兵を作ったのが始まりよ。

  その後は不要と思っても、常備兵の組織が既得権になって、

  ずっと残っている感じかな。」


総司:「ナギさんすごい詳しいね。見てたみたい。」

ナギ:「いや、実際に見てたの。当時は大騒ぎだったわ。

  森だと被害が出るから平地で戦ったんだけど、

  イベントみたいにたくさんの人が見ている中での戦闘だったのよ。

  今でも思い出せるくらいすごかったわ。」

人魚:「ナギさんは生きている人魚で最高齢。

  年寄り扱いされたくないから昔のことはあまり話さないけど。」


アイ:(演奏好きの長耳族ね…。)

総司:(どうしたの?)

アイ:(長耳族の代表の方は私が話をするね。

  簡単に協力してもらえるかもしれない。)

ソフィ:(知り合いなの?)

アイ:(もしかしたらね。想像通りなら、まだ生きていると思う。)

マリカ:(でも、狐人族の代表に負けたんだよね?)

アイ:(演奏の練習ばっかりで、

  訓練はあまりしない方だったから…。

  魔法は一通り出来るから、十分に強い魔法使いなんだけど、

  武器を使った戦闘とかは全然なの…。)

マリカ:(そうなんだ…。)


総司:「強い人の戦いって僕も見たかったなー。

  どういう戦いだったの?」

ナギ:「どっちも破格の強さだったわ。

  長耳族の代表は遠距離、狐人族の代表は

  近距離で強い感じだったわね。

  そういえば、狐人族の代表の武器は

  総司君の持っている武器と似てたわね。

  最後は長耳族の代表の手足を切り落として決着だった。

  長耳族の代表は手足の1本くらいは切り落とされても

  回復してたけど、4本がほぼ同時に切られたら、

  さすがにすぐに回復は無理だったみたいで降参してたわね。

  長耳族の代表は武器を使ってなかったから

  近づかれると慌ててたし。

  強い魔法使いだけど、戦闘は苦手に見えたわね。

  狐人族の代表は他の狐人族とちょっと違ってたかな。

  尻尾がたくさんあったわね。」


総司:(長耳族の代表の人はアイさんの知り合いの方と

   特徴が一致してるね。狐人族の人は知り合いじゃない?)

アイ:(狐人族の人はわからないな…。)


総司:「ありがとう。」

アイ:「私と総司君の戦闘は、竜の島の人魚の島にある魔道具に

  映像として保存したままだから、行ったときに見れるよ。」

ナギ:「そんなものまで保存できる魔道具があるんだね。

  行った時に見てみるわ。」

アイ:「船も改造してあるから、三日くらいで着くよ。」

人魚:「え?竜の島まで三日で着くの?」

アイ:「そうだよ。速すぎて漏らしたりしないようにね。」


人魚達:「「「すご~~~い!」」」


ナギさんが泣きそうな顔でアイさんを見ている。


アイ:「他にもいろいろ変わってるから、

  アクアさんに聞くといいよ。」

ナギ:「そういえばまだ聞いてないから、今日聞いておくわ。」


話が変わって安心したナギさんが答えた。


アイ:「一つお願いがあるの。西の大通りにある不動産屋の

  ジルベルトさんって知ってる人いる?」

人魚:「知ってますわ。もう十年以上お店に来てないけど、

  私のお得意様でしたわね。」

アイ:「ジルベルトさんに、私からお願いしている事があって、

  たまに様子を見に行ってほしいの。

  それと困っていたら助けてあげてほしい。」

人魚:「わかりましたわ。」

アイ:「ありがとう。よろしくね。」


話ながらの朝食だったが、みんなもう食べ終わっている。


総司:「片付けは僕がするよ。

  まだ話があったらそのまま話をしていていいからね。」


僕は立ち上がって片付けを始める。


ソフィ:「私も手伝う。」

ナギ:「ありがとう。

  話といえば、さっき話をした常備兵だけど、

  領主が変わってから人員を増やしてるって聞いたわね。

  前領主は常備兵を少しずつだけど減らしていたらしいから、

  大きな方針転換ね。」

アイ:「理由は知ってる?」

ナギ:「知らないわ。聞く限りは領主が変わったからだけど、

  その領主がどうしたいのかまでは、わからないわね。」


アイ:「そういえば、この街の領主のことも全然知らないから、

  知ってることがあったら教えて。」

ナギ:「この街の領主は商人組合から選出されてるの。

  商売が上手くいっていて、

  後継者が決まっている商人から選ばれるわね。

  任期は罷免されない限り10年。

  住民の不満が多くなると実家の商売に

  影響するから、みんな頑張ってるわよ。

  街の中心の良い家にも住めるしね。」


アイ:「良い方法ね。イルスもそうなの?」

ナギ:「イルスの前領主は魔法使いだったの。

  人間にしては長生きだったわね。

  住民からも慕われていたらしいわ。

  長く領主をしていたけど、数年前に亡くなったの。

  その後に後継者がどう決まったかは知らないわ。」

アイ:「いろいろありがとう。参考になったよ。」


総司:「片付け終わったよ。」

アイ:「それじゃ、そろそろ行きましょうか。」

ナギ:「いつでも時間があったら、なるべくここに来てよね。」

アイ:「もちろんよ。定期的に様子を見に来るからね!」

総司:「昨日ナギさんに声をかけて貰えて良かった。

  これからもよろしくお願いします。」

ソフィ:「今度はみんなでお酒飲もうね。」

人魚達:「「「また来てね!」」」


みんな家の前まで送りに来てくれた。

ザウルでは二泊三日の短い間だったけど、またすぐに来るだろう。

とても良い街だった。


アイ:「イルスも楽しいといいね。」

総司:「きっと楽しいと思う。」

ソフィ:「私は見るもの全てが新鮮で、ずっと楽しいな。

  イルスでもきっとそうだと思う。」

マリカ:(そうだね。)


街を出たところでみんなで飛行の魔法で飛び立った。

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