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アイの新世界(物語)  作者: 夢のファイヤー
北の大陸
26/89

15.人間の街ザウル①ザウルの人々

ペンギン族と仲良くなることを諦めた僕達は

人間の街に向かった。


近くに行くまでは飛んで移動する。

アクアさんは情報交換と、

今後の人魚の一族の事を話合うために

人魚とペンギンの町に残った。


一緒に来た竜の島の人魚達も

しばらく北の大陸に留まるらしい。


総司:「この大陸ではペンギン族を除いてだけど、

  人間が一番多くて、

  文化も一番発展しているって話だけど、

  どんな感じなんだろうね。」

アイ:「農業、漁業、畜産とかをしてるって話だから

  共同体としてはそれなりに機能してるんだろうね。」


マリカ:(ソフィは角を隠した方が良いんじゃないか?

  ペンギン族みたいに

  見る前から怖がられるって事はないだろうけど、

  角を見れば怖がる人もいるかもしれない。)


ソフィ:「そうだね…。

  話す前から嫌われるのはちょっと面倒だから、

  そうしようかな。」


マリカ:(私が作ってあげるよ。

  猫耳、犬耳、狐耳、兎耳のどれがいい?)


ソフィ:「この大陸には狐人族がいるって話だから

  違和感が無いのは狐耳かな。」

総司:「逆に人間と狐人族とでトラブルになってたら

  弊害になるかもよ?」

ソフィ:「確かにそうだね。

  兎だと長すぎて上に当たっても気が付かないで

  変装ってバレても面倒だから猫耳か犬耳かな。

  アイさんはどっちが良いと思う?」

アイ:「そうね。その前にソフィさんの角は

  結構大きいけど隠れるの?」


マリカ:(角が透明になる魔道具にするから大丈夫だよ。)


アイ:「それがあったね。」


ソフィ:「それなら耳じゃなくて良くない?

  細いシンプルなカチューシャにしてよ。」


マリカ:(耳の方が可愛いと思うけど…まあいいか。

  総司、ソフィの頭に手を当てて。)


総司:「はいはい。」


ソフィさんの頭に細くて黒い

シンプルなカチューシャが出来る。


総司:「おー。見えなくなった。すごいね。」

アイ:「これで見た目は人間3人の旅人っぽくなったね。」


マリカ:(あとは当然初見だろうから、

  どこから来たかとか聞かれそうだな。

  南の方の小さな島とか言っとくか?)


アイ:「そうね。どこにどんな種族が居るかとか、

  周辺くらいしか分かってないだろうし、

  そんなので良いよね。」

ソフィ:「全員が念話も使えるし、臨機応変にいけるね。」

総司:「そうだね。」


森を抜けると遠くに牛がたくさんいるのが見えてくる。


アイ:「そろそろ降りて歩いて行こう。」


全員が地上に降りる。


総司:「のどかな雰囲気でいいねー。」

アイ:「そうだね。

  本物の牛のステーキとかも食べてみたいなー。

  魔法で出す食材って美味しいんだけど、

  ほんの少しだけ良いものには劣るんだよね。」

総司:「僕には十分美味しいけどね。」

ソフィ:「人はどこにも見えないね。

  家畜が獣に襲われる事もそれほどないのかな。

  竜の島だと恐竜にすぐに食べられちゃうと思うけど、

  ここではそういう事がないんだね。」


更に進んでいくと田園地帯になる。

人もそこそこ見えてきた。


僕達の方を見ている人もいる。

通り過ぎる人に挨拶すると普通に挨拶を返してくれる。


遠くに街並みが見える。

囲いや門のようなものは無く、

そのまま入っていけそうだ。


北の大陸は思ったより平和みたいだ。

魔法で作った家もちらほら見えるが、

基本的にレンガ造りの家が多い。


大通りには人も多く、ほとんどは人間族だが、

鳥人族や猫人族、犬人族なども見かける。

他にもいろいろな種族が居るかもしれない。


出店もたくさん並んでおり、食料がほとんどだが、

他にもいろいろなものが売っている。

武器を身に付けた人もちらほら見かける。


アイ:「すんなり入れちゃったね。」

総司:「お店もいっぱいあるね。アイさんはお金持ってる?」

アイ:「持ってないよ。」

総司:「ソフィさんは?」

ソフィ:「持ってないよ。」

アイ:「大丈夫よ。作ればいいじゃない。」

総司:「いいのかな…。

  まあ、作るにしろ現物を入手しないとね。」


何か聞くにも先立つものがないと切っ掛けが掴み難い。

店員さんに話しかけて、ついでにいろいろ聞くという

ありきたりな方法も使えない。


アイ:「まあ、歩いてれば何かあるでしょ。」

総司:「そうかな…。」


街の中心の方へ行くにつれて建物は大きくなっていく。

お金持ちは街の中心の方に住んでいるみたいだ。

お店も出店ではなく室内の商店が多くなってくる。


更に進むと囲いがあり、

入り口の両脇に兵士のような人が立っている。


アイ:「ここから先は

  街で地位のある人達が住んでいる場所っぽいね。」

総司:「怪しまれないうちに移動しよう。」


僕達は左側へ移動していく。


しばらく進むと

木組みに板や藁で覆ったような家々になってくる。

廃材を集めて組み、隙間を藁で隠している感じだ。


アイ:「この辺りはお金の無い人達が住んでるみたいね。」

総司:「僕らもそうだけどね。」

ソフィ:「絡まれそうな気もするけど、

  誰も何も言ってこないね。」

総司:「そろそろ辺りも暗くなってきたし、

  泊まるところを探さないとね。」

ソフィ:「お金が無いから、その辺で野宿かな…。」

アイ:「あっちの方に空き地があるから、

  その辺に泊まれる場所でも作ろうか。」

総司:「勝手に作ったら怒られるんじゃない?」

アイ:「この辺の家は誰かに断って作ったようには

  見えないけどね…。」

総司:「それもそうだね。

  とりあえず、その辺にいる人に聞いてみようか。」


周囲を見て気の良さそうな女性に声をかける。


総司:「ちょっと聞いても良いですか?」

女性:「なんだい?随分と綺麗な娘達だね。」

総司:「この先の何もない所に

  家を建てて泊まろうと思うんですけど、

  誰かの許可が必要ですか?」

女性:「知らないけど、今住んでる私達だって

  誰かに許可なんて取ってないよ。」

総司:「そうですか。ありがとうございます。」

女性:「宿屋にでも案内しようか?

  綺麗な服を着てるし、

  それなりにお金はあるんでしょ?」

総司:「いえ。まったくお金が無いんですよ。」

女性:「家を建てるって言っても材料はあるの?

  見たところ無さそうだけど。

  今から取ってくるんじゃ遅くなるよ?」


女性は僕達三人を見て言う。


総司:「大丈夫です。」

女性:「そう。まあ、頑張りなよ。」


僕は手を振って親切な女性と別れる。


総司:「問題なさそうだね。」

アイ:「ありがとう。それじゃ、

  ちゃっちゃと作っちゃいましょうか。」

ソフィ:「明日から仕事でも探すかねー。」


僕達は三人で寝泊まり出来る程度の小さな家を建てた。

10分程度で作った家だが、

魔法の家なので、この辺りでは一番まともな家だ。


「「「すごーい!」」」


いつの間にか子供達が見ていたようだ。

男の子二人と女の子が一人、

みんな10歳くらいだろう。


男の子:「それ魔法なの?」

総司:「そうだよ。」

男の子:「お姉ちゃん達みんな魔法使いなの?」

総司:「そうだよ。」

女の子:「初めて見た!魔法ってすごいね!」

総司:「ありがとう。僕達はこれから夕ご飯にするけど、

  みんなも食べていく?」

子供達:「「「たべるー!」」」

アイ:「それじゃ、ご馳走を作っちゃいましょうかね。」

総司:「お父さんとかお母さんが心配しないように、

  ここで食べるって言ってこなくて大丈夫?」

子供達:「「「大丈夫!」」」


良いものとは言い難いが普通の服は着ている。

孤児には見えない。

親の帰りが遅いのかな?


家の隣の空き地で料理の準備をする。

アイさんが調理器具を出し、

僕が食材を出して、三人で料理をする。


「お嬢ちゃん達すごいねー!」

「それが本物の魔法使いの魔法かい?

 何でも出せるんだねー。」

「美味しそう。」


街の人達が集まってくる。


アイ:「良かったら食べてってね!」


「遠慮なくご馳走になるよ。」


気が付けば50人くらいはいる。まだ増えそうだ。

凝った料理はやめてシチューにした。


総司:「出来た順に渡しますので並んでください。

  足りなくなることはありませんから。」


アイさんとソフィさんが次々にシチューを用意していき、

僕が一人一人に魔法で器を作り

鍋に入ったシチューをよそって渡していく。


「お姉ちゃんありがとう。」

「ありがとう。お嬢ちゃん達はここに住むのかい?」


総司:「今日はそこに建てた家に泊まります。

  明日からはわからないですね。」


お礼や聞かれたりすることに答えながら

シチューを渡していく。


みんなそのまま周辺の空き地で食べている。

百人以上はいそうだ。


周囲が真っ暗になってきたので、

アイさんがライトの魔道具を作って

人々が集まる真ん中らへんに置いてくる。


この辺りの人は大通りや中心街に比べて

人間以外の種族の比率が多い様に見える。


「お姉ちゃん、おかわりもらっていい?」


総司:「良いよ。遠慮なくおいで。」


みんなからお姉ちゃんとかお嬢ちゃんと呼ばれる。

やはり男には見えないらしい。


訂正するのも面倒なのでそのままにする。

あと10人くらいで終わりそうかな。


総司:「遅くなっちゃったね。僕達も食べよう。」

ソフィ:「お腹すいちゃったよ。」

アイ:「みなさーん!作ったシチューはまだあるから、

  おかわりしたかったら自分でよそっていってね!

  それと器は持って帰ってね!」


住民達:「「「「ありがとう!!!」」」」


アイ:「さあ、私達も食べよう。」


僕達が食事をしている間も

お礼を言って帰っていく人がいる。


「ご馳走様。ちょっと変わってると思ってたけど、

 魔法使い様だったんだね。」


最初に声をかけた女性も食べにきていたのか。

お礼が出来て良かった。


「お姉ちゃん達ありがとう。ご馳走様!」


最初に来た子達もお礼を言って帰っていく。

すぐ後ろで頭を下げていた人達が両親だろう。


ずいぶんと時間がかかったので、

仕事から帰って来ていたようだ。


人間の街は思っていたより平和で活気があった。

貧富の差はあるようだが、

それはどうしようもない部分もある。


自分に合った仕事を見つけられた人、

能力の差、機会の差、生まれの差、違いは必ずある。


それでもここは貧しくても、

それなりに楽しそうにしていたので良い方だろう。


アイ:「そろそろ寝ようか。」

総司:「そうだね。」

ソフィ:「歩いてばっかりだったけど、

  初めて見るものが多かったから

  私は結構楽しかったよ。」


総司:(マリカさんもお疲れ様。お皿ありがとうね。)

マリカ:(あんなのたいしたことじゃないよ。礼は不要だ。)


念のため戸締りして鍵をかけて寝ることにした。



そして翌朝、

アイさんは起きて室内で出来るご飯の支度をしている。

ソフィさんはまだ寝ている。


総司:「おはよう。」

アイ:「おはよう。ご飯食べたら、また街の見学に行こう。」

ソフィ:「おはよう。」


僕らの会話で起きたのかソフィさんが挨拶する。


総司:「まったくお金を持ってないのも不便だから、

  何か売れるものでも作っておいて、

  機会があったら売ってお金にしない?」

アイ:「そうね。無難に金のインゴットでも作っておこう。」

総司:「そう言われてみれば、

  小さい金の粒とかで物々交換とかも出来たかもね。」

アイ:「思い付かなかったね…。

  粒くらいなら握った手の中で作って出せばいいから、

  予め作っておく必要もないね。

  マリカさんも出来るだろうし。」

ソフィ:「仕事を探そうかと思ってたけど、必要無さそうね…。」

総司:「この家はどうしようか?

  またここに帰ってくるかわからないし。」

アイ:「誰かにあげちゃおう。

  またここに来ても、また作ればいいしね。」

総司:「それもそうだね。」

アイ:「さて、ソフィさんも起きたし、朝ご飯にしようか。」


朝食を食べて外に出る。


アイ:「おはようございます。」


アイさんは近くに住んでいる人に声をかけた。


「おはよう。昨日はご馳走様。美味しかったよ。」


アイ:「喜んでもらえて良かったです。

  この家ですけど、

  もうここに帰ってこないかもしれないので、

  良かったら使って下さい。

  帰ってきたとしても、また新しく作るので。」


「こんな良い家を…。

 なんて幸運!遠慮なく貰っちゃうね!」


アイ:「ついでになんですけど、

  二つほど教えてほしいことがあります。」


「私にわかることなら何でも聞いて。」


アイ:「一つはお金を得るために

  手持ちの金を売りたいと思っています。

  取引して下さる場所か、人を教えて頂きたいです。

  もう一つはこの街のことや

  周辺の地理などに詳しい方に

  いろいろと教えて頂きたいと

  思っているのですが、

  心当たりのある方か、

  方法を教えて頂きたいです。」


「それならどっちも中心街の商店なら、

 どの店でも大体は取引も

 情報提供も対応してくれると思うよ。

 私は行ったことはないけどね…。」


アイ:「ありがとうございます。早速行ってみます。」


僕達は昨日通った大通りに面した中心街へ移動する。

昨日は大まかに眺めるだけだったが、

商店を構える店にはいろいろな種類がある。


食料品、服、装飾品、武器、家具、宿屋、料理屋、不動産屋など。

見た目でよくわからない店も看板があり、

文字を読めばわかる。


アイ:「どの店にしようかな。」


マリカ:(それぞれ一人ずつ違う店で売って、

  一番高く買い取ってくれたところで

  情報を聞くのが良いんじゃないかな。

  何も情報無しに誰かの情報を信じるよりは、

  良心的な経営者、店員である可能性が高い方が

  良いんじゃない?)


アイ:「確かにそうね。みんな別の店に入って

  終わったらここに集まろう。」

総司:「僕だけ武器を身に付けてるし、

  僕は武器屋にしようかな。」

ソフィ:「私は服屋にするよ。」

アイ:「私は装飾品屋ね。」


各々移動する。僕は武器屋に入る。

店内にはそこそこお客がいる。


僕の方を見てくる人も結構いるが、

特に声はかけられない。


総司:「すいません。金の買い取りは可能ですか?」


店番をしていた若い女性に声をかける。

若いと言っても僕よりは年上だ。


店員:「しょ…少々お待ちください。」


店員は後ろの扉から中へ入っていく。

すぐに店長らしき人を連れて戻ってきた。


店長らしき人は中年くらいの男性だ。

店番の女性とは親子だろうか。


店員:「おと…店長を呼んできたので、店長にお話しください。」


やっぱり親子みたいだ。


店長:「ようこそいらっしゃいました。

  金の買い取りをご希望と伺っています。

  まずはお見せ頂いてよろしいでしょうか?」

総司:「これです。」


僕は金のインゴットを渡す。

店長は大きさと重さを調べている。


店員:「腰に下げているのは武器ですよね?

  サーベルに似た形ですけど、意匠が独特ですね。

  装飾は少ないですが神秘的な感じがします。

  狐人族がそのような武器を身に着けていると

  聞いたことがありますが、初めて見ます。」


僕は店内で売られている武器を見る。

確かに刀は置いていなかった。


この刀は転生した時から身に付けているものだ。

察するに…。

余計なことは言わない方が良いだろう。


総司:「刀と呼んでいます。サーベルに近い武器ですね。」

店員:「見せて頂いても良いですか?」

総司:「お渡しすることは出来ませんが、

  見せるくらいなら。」


僕は刀を鞘から抜いて店員に刀身を見せるようにする。

店員が驚いた顔でマジマジと見ている。


店員:「ありがとうございます。

  お父さんちょっときて。」


店員は店長を連れ店裏へいく。


すぐに出てきたが、親子は揉み手になっていた。


店長:「珍しい武器をお持ちですね。

  私は武器の収集を趣味にしております。

  店内のどの武器でも構いませんので

  その武器と交換して頂けないでしょうか?」

店員:「お嬢様には長剣の方が似合うと思いますよ。」


武器を見る目はあるようだが、

そんなわかりやすい態度をしておいて

僕が応じるとでも思っているのだろうか…。

馬鹿にされた気分だ…。


総司:「この武器は思い入れのあるものですので

  手放す気はありません。」

店長:「そうですか…。残念です。

  もし手放すような機会がありましたら

  是非ともうちの店にお売りください。

  金のインゴットの買い取り値も

  サービスさせて頂きます。」

総司:「ありがとうございます。」


僕は金貨を50枚渡された。

そして集合場所に戻る。

僕が一番早く戻ったみたいだ。


アイさんが戻って来て、

ソフィさんが戻ったのが最後だった。


アイ:「どうだった?

  私の行ったお店はすごく親切だったよ。」

総司:「僕のはあんまり参考にならないかも。

  良心よりも下心が価格に入ってる感じだね…。」

ソフィ:「私も総司君と同じ。

  ずっと口説かれて大変だったよ。

  お金をまったく持って無いって言ったら

  小銭もサービスでくれたし。

ついでに聞いたんだけど、

  銅貨100枚で銀貨1枚、

  銀貨100枚で金貨1枚の価値なんだって。」

アイ:「みんな大変だったんだね…。

  買取価格はいくらだった?

  私は金貨30枚だったよ。」

総司:「金貨50枚。」

ソフィ:「金貨50枚、銀貨10枚、銅貨50枚」


マリカ:(………ごめん。良い方法だと思ったんだけど、

  こんな方法じゃ人の良心なんてわからないんだね。

  勉強になったよ。)


アイ:「次からは装飾品を作って売ろうね。

  私、頑張ってたくさん作るよ。」


良心とは難しい。

突き詰めれば長期的に得をする、損をしない、

そういう心持ちと言えるのではないだろうか…。


そして親切や丁寧さとは異なるものだろう。

なんとなくそう思った。

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