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アイの新世界(物語)  作者: 夢のファイヤー
プロローグ
2/89

02.竜の島 竜の試練

AA:「*****」⇒口頭での会話。

AA:(*****)⇒念話(頭の中での会話。テレパシーのようなもの)。

という感じに、「」と()で変えて表記しています。

AAは話をしている人物名です。

アイ:「総司クーーーーン!ご飯が出来たよーーー!」

総司:「今行くよーーー!」


横穴の出口からアイさんが呼んでいる。

大きな声で呼ばれ、大きな声で答える。

このやりとりもすごく気持ちがいい。


この世界に来た日に見つけた山脈の頂上から

少し降りたところに横穴を掘り、その中に住処を作った。


その辺の作業は全てアイさんがやってくれた。

アイさんが両手を前へ広げて進むだけで、岩が無くなっていき、

どんどん横穴が伸びていった。


壁面もコンクリートのような材質に変わっている。

ある程度進んだところで広い空洞を作り、そこに平屋を作った。


アイさんの魔法で、

何もないところから瞬時に壁などが発生していった。

材料のような物も一切使っていない。まさに魔法だ。


家が出来た後にアイさんが作ってくれたベットで寝た。

アイさんは僕が寝た後も作業を続けたみたいで、

朝起きた時には内装も含めて綺麗な住居になっていた。


その後は魔法や戦闘訓練を続ける毎日だ。


この世界の魔法は、魔力を魔力界から引き出し、

原理と発動効果をイメージすることで発動する。

覚えることは数学、物理、化学に近い。


魔法の原理はマリカさんが直接イメージを映像で

伝えてくれるので、とても分かり易い。


そして教えてくれた知識や論理は理解の有無を問わず、

記憶として引き出せる。


説明を受けることでマリカさんの記憶とのリンクが繋がるため、

マリカさんが理解していることは、

マリカさんから説明されるだけで、僕の知識になるらしい。

なので、魔法や知識はアイさんではなくマリカさんが

全て教えてくれている。


戦闘訓練については戦闘用の魔法と装備している刀の扱いが主で、

形の練習とアイさんと模擬戦をしながら指導を受けている。


知識の方は、「分からなかったら逐次聞け。」

と、マリカさんに言われているので、

特に時間は割いていない。


そして、僕の身体はアイさんが言っていた通り、

一週間程度過ぎた頃に男性の身体に変わった。

徐々に変化するのではなく、朝起きたら変わっていた。

これもこの世界の魔法が関係しているらしい。


覚え始めて直に分かったことだが、魔法はすごい。

様々な物質を材料無しで生み出すことが出来る。

厳密には魔力界の魔素を物質界で元素に変換し、

それを組み合わせて様々な物質にしている。


同様に身体を構成する細胞も生み出すことが可能である。

それによって身体は疲労しないし、傷ついても直に治る。

速やかに筋組織を修復出来るため、

限界を超えて筋組織が破壊する程の筋力を使うことが可能であり、

元の世界では考えられないほどの身体能力が得られる。


複数の魔法を連動させることで、

更に早く動くことや、威力を上げることも可能だが、

今はまだマリカさんのサポート無しでは上手く出来ない。

今もマリカさんとその辺りを訓練中だ。


初日に恐竜にも襲撃されているし、

身を守る術が特に重要なのは分かっている。


こっちの世界では長生きしたいし、頑張っていこう。

と言っても、こんなに動けて様々なことが

出来るようになっていくのは単純にすごく楽しい。


たった半年の訓練で、

生前の僕とはまったくの別人のようになっていた。


アイさんに呼ばれたので、山脈の頂上から横穴の方へ降りていく。

横穴の出口に作られたテーブルに

アイさんが料理した食べ物が並んでいる。


総司:「今日も美味しいね。」

アイ:「ありがとう。どんどん食べてね。」


マリカ:(うん。美味しい。さすがアイさんだね。)


二人(三人)で笑顔で食事をする。


マリカさんは食べられないが、

僕と味覚を共有出来ているので、

僕が食べる物の味は分かるらしい。


アイさんの料理は最初の頃は微妙だったが、

今は何を作っても美味しい。


食材も魔法で出せるので、採取や狩猟も必要ない。

ただ、マリカさんが言うには

食材の魔法を使えるのは、アイさんとマリカさんと、

いても数人だろうとのことだった。


魔法で有機物を作るのは、

無機物を作るよりもずっと難しいらしい。

ちなみに僕も身に付けている指輪の魔道具で、

いくつかの食材を作ることは出来る。


アイさんは僕には必要だろうということで、

新たに指輪の魔道具を一つ作ってくれた。

一つと言っても複数の術式が書き込んであるので、

この魔道具一つでいろいろなことが出来るようになった。


魔道具に記述された魔法は、その魔法の発動に必要な知識が

なくても、必要な魔力さえ生成すれば発動することが可能だ。


この魔道具に記載されている術式の魔法くらいは、

魔道具を使わなくても使えるようになった方が

良いと言われたので、それもまた練習している。


楽しいから続けられるけど、覚えることが一杯だ。

それと最初の頃はアイさんをアイちゃんと呼んでいたが、

今の様にアイさんと呼ぶようにした。


先生のような彼女を、

ちゃん呼びすることに抵抗感が出てきたからだ。

マリカさんもアイさんと言っているし。

聞くまでもなく絶対に見た目通りの年齢じゃない。


アイ:「総司君、行こうか。今日も私と戦闘訓練だよ。」

総司:「はい。よろしくお願いします。」


昼食を食べ終わったので訓練を再開する。

午後からはアイさんとの戦闘訓練だ。


アイ:「総司君も魔法を使えるようになってきたね。」

総司:「アイさんとマリカさんのお蔭だね。」

アイ:「そろそろ街に行っても大丈夫かな。」

総司:「むしろここより街の方が安全なんじゃないの?

  ここでも相変わらず翼竜とか襲ってくるし。」


匂いで気が付くのか、

たまに下から翼竜が飛んでくることがある。

ただ、マリカさんが魔法で撃退してくれるので、

特に危険はない。


アイ:「ここでは不測の事態は起きないから、

  私とマリカさんで確実にサポート出来るけど、

  街は人種がいっぱいで密集してるから

  目を離した隙が怖いの。」

総司:「そうなんだ。なんかごめんね…。」

アイ:「総司君は絶対に死んだらダメなんだからね。」

総司:「うん。死なない様に頑張るよ。」


話をしながらも剣戟は止まっていない。

実戦さながらの訓練だ。


アイさんの動きは本当に美しくカッコいい。

武術とかに詳しくは無いけど、

見ればわかる圧倒的な魅力がある。


僕もそれを手本にして自分の動きを調整する。

マリカさんも適宜助言をくれる。


アイ:「ちょっと待って。」


アイさんの静止の声を聞いて僕も動きを止める。

アイさんが見ている方を見ると、

何かが飛んでくるのが見える。


翼竜とはちょっと違うな…。

いやいや、大きさが全然違う。

しばらくすると、それはドラゴンのような姿を

しているのが分かった。

いるんだ。いそうな気はしてたけど。


アイ:「マリカさん。総司君をお願い。」


マリカ:(分かった。)


アイさんがドラゴンの飛んでくる方へ踏み出し、僕の前に出る。

いきなり攻撃してきたりしないよね?


直ぐ近くに来たドラゴンは上空で滞空飛空する。

ドラゴンの羽ばたく風が突風のように吹き荒れる。


恐竜や翼竜は異様ではあったが、まだ生物の範疇だと思えた。

しかし、目の前のドラゴンは神々しく、

神話に出てくる存在のような威容を感じる。


アイさんは怖がっている様なそぶりは見せていない。

僕だけ狼狽えるのはかっこ悪いので、頑張って平常心を保つ。


ドラゴン:「お前たちが最近この辺に住み着いた者か。」

アイ:「はい。」


ドラゴンって言葉が話せるのか。

ドラゴンはそのまま高度を落とし、地面に降りた。


ドラゴン:「ここまで足を踏み入れ、

  生き抜いた力は認めよう。

  更に力を示し我らの友となるか?」

アイ:「あ、竜の試練をして下さるのですね。

  ならば夜にまた来て頂きたいです。」

ドラゴン:「心配しなくても、力を試すだけだ。殺しはしない。」

アイ:「誓って逃げ出すために

  言っているのではありません。

  それに試練を受けるのは

  私ではなく、後ろにいる総司という者です。」


総司:(え?マジで?無理でしょ。)

マリカ:(夜って言ったろ。戦うのは私だ。

  ドラゴンは力を示した者と

  共に旅をすると聞いたことがある。

  総司に護衛を付けるためだと思う。)

総司:(そうなんだ…。マリカさん大丈夫?)

マリカ:(大丈夫だよ。安心して寝てなさい。)

総司:(うーん…。我ながら情けない。)

マリカ:(私と総司はそのまま一心同体だ。気にするな。)


僕が寝ている間はマリカさんがこの身体を動かせるらしい。

話には聞いていたけど、

当然、僕は寝てるから実際に確認したことはない。


マリカさんも睡眠は必要で、日中に眠くなるのはマズいから、

基本的に夜は寝ているらしい。

いや、これも僕は確認出来ないけど。


いつも僕の意思とは関係なく物事が進んでいく。

僕のためなのは分かるので、本当にありがたいんだけどね。


ドラゴン:「姿で欺けると思うな。

  明らかにお前の方が強者であろう。」

アイ:「総司は夜しか本来の力を出せない呪を受けています。

  落胆させるようなことは無いと誓います。」

ドラゴン:「いいだろう。

  しかし願いを通すのもまた力によるもの。

  それに見合う力を今ここで問おう。」


ドラゴンは再び羽ばたき、滞空飛行に戻る。


総司:(どっちかと言うと、

  僕がマリカさんの力を縛る呪だよね。)

マリカ:(そんなことはないよ。

  私は総司のためにいると思っていい。)

総司:(なんでマリカさんもアイさんも、

  ここまで僕のことを気にかけてくれるのか

  分からないけど、とても嬉しい。ありがとうね。)


アイさんは何も言わずドラゴンと合わせて、フワリと浮き上がる。

そしてドラゴンの顔の高さまで上がり、

少し距離を取った所で滞空する。


ドラゴン:「いつでもくるがいい。」

アイ:「はい。では、いきます。」


アイさんは両手を開き目を閉じる。

その瞬間、衝撃波がアイさんの方から発せられる。


マリカさんが瞬時に展開した魔法の壁で僕は無事だ。


アイさんを中心にして大きくなっていく光り輝く円が

五つ発生している。

よく見ると、光り輝く無数の巨大な槍が、

並んで円に見えているみたいだ。


それを見てドラゴンが慌てたようにブレスを吐く。

アイさんに一番近い内側の円の槍が動き、

穂先がアイさんの前で交差する。


その槍が中心から外に伸びるように

扇風機のファンのような形に変形する。


そして高速に回転する。

アイさんの後方からも強い風が吹いている様に見える。


ドラゴンのブレスは途中で止まり、

逆流する様にドラゴンに返る。

ドラゴンは急下降して地面に伏せる様に避ける。


伏せているドラゴンに

アイさんの周辺にある無数の槍が降り注いだ。


ドラゴンは無数の槍により、地面に身体を縫い付けられた。

その後、アイさんはドラゴンのところまで降りていき、

ドラゴンの眉間に右手を当てる。


終わったみたいだ。


アイ:「どうですか?」

ドラゴン:「………。」

アイ:「まだ足りませんか?」

ドラゴン:「十分です。

  共に旅を希望したら連れていってくれます?」

アイ:「私には必要ないです。

  でも、これからも仲良くしてくださいね。」


アイさんはニッコリ笑ってドラゴンの頭を撫でた。

ドラゴンに刺さっていた槍が消えていく。


ドラゴンが人型に姿を変える。

人型になったドラゴンは結構カッコいい。

金髪のイケメンだった。


ドラゴン:「お名前を伺ってよろしいでしょうか?」

アイ:「はい。アイです。」

ドラゴン:「私の名前はドレイクと言います。

  アイ様、私にお役に立てることがあれば、何なりと。」


ドレイクさんがカッコよく片手を胸に当て片膝をついて言った。


自然体で立つアイさんも含めて、

洗練された様式美に満ちている。

映画を見ているようだ。


総司:(アイさんパないね!)

マリカ:(アイさんだからね!)


アイ:「では約束通り、夜にまた総司の試練に来てください。

  あ、ご家族がいらっしゃいましたら、

  試練の後に一緒に晩餐会なんて素敵ですよね!」

ドレイク:「ええ。喜んで。」


ドレイクさんもアイさんの笑顔に

つられるように笑顔で答えていた。

良いんだ。僕は寝てるんだよね。

仲間はずれでも気にしないんだ。



そして翌朝、目が覚めると長い赤髪の綺麗な女の人がいた。

頭に綺麗な二本の白い角がある。

僕よりちょっと年上くらい、18歳くらいに見える。


マリカ:(起きたか。

  そこにいるのはドレイクさんの娘のソフィアさんだ。

  昨日の夜、竜の試練で認められて

  総司の従者になってくれた方だ。

  気軽に接してくれって言ってあるから総司も気軽にな。

  ちゃんと上手く事情は話してある。

  ソフィって呼ぶんだぞ。)

総司:(従者って言われてもね…。

  なんだか騙しているみたいで気が引けるな…。

  でも分かった。マリカさんお疲れ様。)


とりあえず朝の挨拶だね。


総司:「おはようございます。」

ソフィ:「起きたんだ。おはよう。」


可愛い笑顔で僕に答えてくれた。


総司:「ソフィさん、今日からよろしくね。」

ソフィ:「ソフィさん?

  ほんとに夜と全然雰囲気が違うんだね。

  そんな呪なんて聞いたこと無かったけど、大変ね。」

総司:「う…うん。そうなんだ…。」

ソフィ:「見た目がほんと女の子だもんね。

  昼は可愛くて、夜はカッコいいなんて最高じゃん。

  って、思って…ね?」


ソフィさんが慰めてくれている。良い人だ。


総司:「うん。そう思うことにする。ありがとう。」


笑顔でソフィさんに答える。


総司:(ドレイクさんは?)

マリカ:(ん?奥さんが連れて帰った。娘に譲れって。)

総司:(なるほど…。)

マリカ:(奥さんの方が強かったぞ。

  この世界はほんと強さに男女の差がなくていいね。)

総司:(僕はもともと身体が弱かったから実感ないなー。)

マリカ:(まあ…これから頑張れ。)

総司:(そうだね。)


アイ:「朝ご飯が出来たよー。」

ソフィ:「朝ご飯が出来たみたい。

  昨日初めて食べたけど、

  アイさんのご飯は美味しかったから楽しみね。」


ソフィさんはウインクをして微笑む。

本当に綺麗で素敵な人だ。


総司:「うん。顔を洗ってから行くって言っておいて。」

ソフィ:「はーい。」


ソフィさんが手を振って出ていった。


人の姿だと僕らと全然変わらない。

角が有るか無いかの違いだけに見える。


新世界は毎日が新鮮だ。

そういえば、見た目がほんと女の子とか言われたか?

元々そういう顔ではあったが…。


僕はまだ、こっちに来てから自分の顔を見ていない。

ちょっと不安だ…。

感想など頂けると嬉しいです!

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