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アイの新世界(物語)  作者: 夢のファイヤー
人魚の島
16/89

06.技術的交渉

アクア:「では、出港する準備もありますので、

  それまで中でお休み下さい。」


アクアさんは先導する様に浮き上がってから

洞窟の奥の方へゆっくりと飛んで行く。

僕達もアクアさんを追いかけて飛び立つ。


洞窟は上部だけが空洞で、下部の大半が水没しているため、

上部の空洞の部分を飛んで進んで行く。


先ほどの大きな船が入ってくるには

高さが少し足りないくらいで、十分に広い洞窟だ。


アイ:「ありがとう。私にも敬語はやめてね。

  あと、さっきまでのやりとりは

  みんなには秘密にしてほしいな…。

  私の魔法の強さを見込んで

  魔道具の作成を条件に受け入れた。

  とか、そういう話にしてほしいな…。」

アクア:「かしこまりました。」

アイ:「………敬語じゃなくていいからね?

  それと欲しい魔道具があったら教えてほしい。

  一つじゃなくてもいいから。」

アクア:「そうですね…。

  私達の一族は魔法適正者も多く、

  優れた術式も多く継承されています。

  ですので魔法で困っている事は特に無いですね…。

  困っている事と言ったら…。」


アクアさんが僕の方を見る。

そうだよね…。そういう話だったよね…。


アイ:「うーん…。それはねぇ…。そうだ。

  船が中まで入って来れる様に

  洞窟を大きくして周囲を補強したり、

  居住区を広げたりの工事はどう?」

アクア:「なんでも構いませんよ。

  アイ様がご納得頂ければ、もうそれで。」

アイ:「何か私が我儘言ってるみたいになってない?

  ちゃんと役に立ってみせるからね!」


アイ:(総司君、マリカさん、何かアイデアはない?)

マリカ:(アイさんが高速飛行で飛んで行って、

  ドレイクさんを連れて来るとか。)

アイ:(それはエウリアさんに悪いなぁ…。)

総司:(アクアさんの一族って

  この大陸と別の大陸との行き来を

  サポートしてるんだよね?

  だとすると行先の大陸にも一族の人が居るって事だよね?)

アイ:(聞いてみるけど、たぶんそうだと思う。)

総司:(なら電話…って言って通じるかな…。

  要は離れていても会話出来る通信用の魔道具なんて、

  役に立つんじゃない?)

アイ:(それいいね。)


総司:(あと、船で行き来してるんだと思うから、

  推進力を上げる魔道具と、

  それに伴って必要になる船体の強度の向上とか。)

アイ:(それもいいね。

  魔法適正者が多いって話だから、

  魂の器を使わなくても

  魔素結晶に術式を組み込むだけで

  使える物が作れると思う。)

総司:(良い案だったら嬉しいな。

  たまには僕も役に立たないとね。)

アイ:(総司君は一緒にいてくれるだけで

  十分なんだからね。)

マリカ:(そうそう。

  そういうことを気にする必要はないから。

  でも、なかなか良いアイデアだと思うよ。

  偉いぞ総司。)

総司:(うん。ありがとう。

  これからも気負わずに出来る事をしていくね。)


アイ:「アクアさん。

  行先の大陸にもアクアさんの一族の方が居るの?」

アクア:「はい。現状は向こう側に二隻の船があり、

  この大陸への渡航を希望する方を待っている状態です。」


アクア:「………。」


アクアさんがマジマジと僕達の方を見ている。


アクア:「そういえば、アイ様達を初めて見ましたが、

  どのようにしてこの島へ渡って来られたのですか?

  私共に知られずに、こちらに来るのは

  相当難しいと思いますが…。」

アイ:「私と総司君は別の世界から

  この大陸に転生してきたの。

  だから別の大陸から渡ってきた訳じゃないんだ。」

アクア:「そうでしたか。

  転生者の伝承はありますが、温厚な方だったと…。

  実際はこのように怖い方達だったのですね…。」

アイ:「違うから。怖くないから。」

アクア:「申し訳ございません。

  そういう事にしておくのでしたね。」

アイ:「ほんとに違うのに…。私のことはもう忘れて…。

  総司君みたいなのが転生者の本当の姿だから…ね?」

アクア:「かしこまりました。」


なんかもうアクアさんがアイさんを

弄っているようにも見えてくるな…。


アイ:「話を戻すね。ここと別の大陸の一族の人と

  会話が出来る魔道具があったら便利じゃない?」

アクア:「そうですね。

  そのような魔道具が有るなら、とても助かります。」

アイ:「よかった!後で作ってみるね。

  たぶん相手の姿を見える様にも出来ると思う。」

アクア:「その様な魔道具が有るのですか?」

アイ:「無いけど作れると思う。」

アクア:「そうですか…。」


アイさんは笑顔で答えるが、

アクアさんは半信半疑の様子だ。


少し斜めに曲がったところを超えると

洞窟の出口が見えてきた。

先に広い空間がありそうだ。


アクア:「どうぞ中へ。」


洞窟の出口を超えると広い空間が広がる。

空間の中ほどより先まで水面が続き、

奥の方だけ陸地になっている。


一番奥は傾斜で少しづつ高くなり、

その先の壁面には洞窟の入口が見える。


空間の左右にも水面が続く洞窟がある。

複数の人魚が通過しているのが見えるため、

左右の洞窟のどちらにも、奥に空間があると思われる。

また、空間の上部から日の光が射していて

概ね全体を照らしている。


幻想的な雰囲気で、とても美しい空間になっている。

それに人魚が暮らすにはとても適した環境に思える。


奥の陸地の部分の手前に二人の女性が立っていて、

その奥に更に二十人ほどの女性がいる。

人型だけど人魚が変化した姿だと思う。


服装…というか水着姿に近いが、

アクアさんと似た格好だ。


水面には数え切れないほどの人魚達がいて、

こちらを見ている。


アクアさんはそのまま奥まで飛んでいき、

手前にいる二人の女性の前に降りる。


「姉様、ご無事で何よりです。」

「アクア姉さん、良かった…。」


手前の二人がアクアさんに駆け寄る。


アクア:「私は大丈夫よ。

  アイ様、総司君、ソフィさん、紹介します。

  私の妹達です。上の妹のシトリン。

  下の妹のスピネルです。」

シトリン:「初めまして。シトリンと申します。」

スピネル:「スピネルです。」


シトリンさんは金髪で優雅な笑みを浮かべている。

スピネルさんは赤髪で気が強そうな見た目だ。

系統は違うが、どちらもアクアさんの様に美しい女性だ。


アクア:「そして後ろにいる者達は

  一族を代表する魔法使いです。

  私も含めて、先ほどの無礼を改めて謝罪します。」

「申し訳ございませんでした。

 また、傷の手当までして頂き感謝します。」


人魚達の一人が言い終わると全員で頭を下げていた。

みんな綺麗な女性だ。

たくさんの水着美女が並ぶ圧巻の光景である。


アクア:「次はお客人を。

  こちらは先ほど私共を瞬時に制圧されました、

  無比なる強者アイ様です。

  とてもお優しい方との事ですが、

  死にたくなければ、くれぐれも無礼の無い様に。」

アイ:「………アイです。仲良くして下さいね。」


アイさんが少し引き攣った笑顔で挨拶した。

ここに来てアイさんのいろいろな姿が見れる。

これだけでも、ここに来て良かったと思える。


人魚達のアイさんを見る目は恐る恐るという感じだ。

人となりはまだわからず、

暴れたら誰も止められない事だけは知っている

という状況では仕方がないだろう。


アクア:「こちらは総司君。仲良くして下さいね。

  それと女性に見えるけど男性よ。」


人魚達の目が獲物を狙う猫のような目になり

アクアさんを見る。


アクアさんは目を閉じて軽く首を振った。

あからさまに全員が、がっかりした顔になる。


総司:「総司です。お世話になります。」


少し申し訳ない感じで挨拶した。


アクア:「こちらは竜族のソフィアさん。」

ソフィ;「ソフィアです。

  気軽にソフィって呼んで下さい。」


ソフィさんが笑顔で答える。


僕はアイさんとソフィさんの手を引き

水辺の方へ一緒に向くようにする。


総司:「こっちがアイ、こっちがソフィア、僕は総司です。

   お世話になります。」


言い終わった後に両手を上げて手を振る。

水辺の人魚達も僕に合わせて笑顔で手を振ってくれた。


アクア:「総司君ありがとう。」


アクアさんは笑顔で僕に御礼を言ってくれた。

少しずつイメージを回復していかないとね…。


再びアクアさん達の方を向く。


アクア:「アイ様達は別の大陸に渡りたいとの事で、

  私共が手助けする事になりました。

  代わりに魔道具の提供を受けることになっています。」


人魚達を見ると、皆が不思議そうな顔をしている。


アイ:「これまでに見た事も、

  聞いた事も無い様な物でも、

  要望があれば言ってね。

  手始めに別の大陸の人とも会話出来る様な

  魔道具を作ってみるね。

  総司君、ソフィさん、ちょっと手伝って。」


アイさんは僕の前に立ち、

胸の前で両掌が向かい合うようにして目を閉じる。


両掌の間に光の珠が出現し、

直径20cm程度まで大きくなる。

周囲から「おお~」と感嘆の声が聞こえる。


アイ:「総司君、今からこれを板状にしていくから

  落ちない様に下から支えておいて。」

総司:「わかった。」


光の珠は板状に変形していき、

すぐに32インチ程度の液晶モニターのような形になる。


アイ:「次はソフィさん、総司君と同じようにしてね。」

ソフィ:「わかったわ。」


再びアイさんが両掌を合わせて光の珠を作り、

モニターを作成する。


アイ:「総司君はそのまま右側へ移動して。

  ソフィさんは左側へ。

  シトリンさんは総司君のところに行って魔道具を起動して。

  同時にスピネルさんはソフィさんのところに行って

  魔道具を起動して。」


シトリンさんとスピネルさんがそれぞれアイさんの

指示通りに魔道具を起動する。


すると僕の持っているモニターにスピネルさん、

ソフィさんの持っているモニターにシトリンさんが映った。


「「「おおおおおお~~!すご~い!!」」」


陸地にいる人魚達が更に大きな感嘆の声をあげる。


たくさんの水辺の人魚達も

それを見ようと陸地に上がってくる。


尾ヒレを足に変化させているが、

半数以上の人魚がスカートを履いていない。


「「「私達にも見せてー!」」」


水辺に留まる人魚達からも声があがる。


アイ:「ちょっと待って!

  水辺からも見える様にするから、

  スカートを履いてない人達は水辺に戻って!」


アイさんが僕のところに来て、後ろから肩を押してくる。

陸地の先端側にモニターの正面を向ける様に

魔法で台座を作り、固定する。


同様にちょうど逆側に当たる位置にソフィさんを

連れて行き、台座を作りモニターを固定する。


アイ:「準備出来たよ。

  シトリンさん、スピネルさん、

  さっきと同じように画面の前に立って、

  同じように魔道具を起動して。」


シトリンさんとスピネルさんは

それぞれのモニターへ移動して魔道具を起動する。

同様に各々のモニターに他方を起動した術者の姿が映る。


「「「「すご~~~い!」」」」


アイさんも誇らしげな顔をしている。

そうだ。アイさんの凄さはこういうところなんだ。

無双プレイだけがアイさんの凄さじゃない。


アイ:「すごいでしょー。

  シトリンさんとスピネルさんで

  何かお話ししてみて。」


二人は頷く。


シトリン:「スピネルの不細工な顔が映ってますわよ。」

スピネル:「姉さん疲れてるんじゃない?

  いつも以上に酷い顔してるよ。」

シトリン:「なんですってぇ~~!」


二人は口喧嘩を始めた。実は仲が悪かったらしい。


アイ:「ちょっと待って待って。ね!

  すごいでしょ。会話も出来るんだよ。」

「「「すごいですね!」」」

アイ:「しかも情報は魔力界を通して伝達しているから

  このモニターを設置すれば地球上の何処からでも、

  同じようにお話しが出来るんだよ。

  だから別の大陸に住んでいるっていう

  人魚の一族の人達とも会話が可能になるんだよ。」

「「「おおおお~~!」」」


アイ:「別の大陸に持って行くのも大変だから

  この魔道具はこのままここに置いておいて、

  別の大陸で新しいのを作るよ。

  右側を一番、左側を二番、

  別の大陸に設置したら三番にする。

  それぞれ会話したい場所の番号をイメージすれば

  その魔道具と繋がる様にするね。」


アクア:「アイ様。厚かましいお願いとは思いますが、

  その魔道具をこの空間と、奥の空間、右の空間、

  左の空間、船、別の大陸、

  それぞれに設置して頂く事は可能でしょうか?」


アイ:「いいよ。

  その代り、船での私との会話の記憶を

  微塵も残さず忘れ去ること。

  それと私を特別扱いしない。

  この二つを約束して。」


アクア:「かしこまりました。」

アイ:「良かったぁ。それじゃ、やり直そう!

  アクアさんよろしくね!」

アクア:「アイ様、これからもよろしくお願い致します。」

アイ:「変わってないよね?それはもうそれでいいよ…。」


アイさんが手を出すとアクアさんも

笑顔で手を取って握手した。


周りの人魚達は一瞬よくわからない顔をしたが、

その後に笑顔で拍手を始めた。


こうしてアイさんの暴力的な力技の黒歴史は、

技術的な力技によって封印された。

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