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アイの新世界(物語)  作者: 夢のファイヤー
人魚の島
15/89

05.暴力的交渉

プロローグ「04.竜の島 旅立ち」からの続きになります。

ドレイクさんの家から帰宅後、旅の準備を始める。

準備といっても身に着けている物以外に必要な物は無い。

アイさんの魔法で大抵の事は何とかなってしまう。

住んでいた横穴の入口と通気口を封鎖するくらいで準備は終わった。


アイ:「準備できたかな?」

総司:「うん。準備する事も特に無いし。」

ソフィ:「私も。何時でも出発出来るよ。」

アイ:「ここは私達の最初の家だから記念に保存しておこうね。

   横穴の私の作った家、まさにアイの巣だね。」

総司:「あ、うん…。あははは。」

ソフィ:「あははは。」


顔を赤くしながら言うアイさんに

僕とソフィさんが愛想笑いを返す。


アイさんがたまに繰り出して来るこういった言葉も、

わざと欠点や隙を見せて、

僕達を安心させようとしているのだろう。


アイ:「それじゃ…。行こうか。」


アイさんは照れ隠しか、そのまま飛び立った。


総司:「僕らも行こうか。」

ソフィ:「そうね。」


アイさんを追いかけるように僕とソフィさんも飛び立つ。


アイ:「場所はわかってるから急ごうか。私の手を掴んで。」

総司:「わかった。よろしくね。」

ソフィ:「ん?わかったわ。」


アイさんは左右の手で僕とソフィさんと手を繋ぐ。


アイ:「舌を噛まない様に注意してね。行くよー。」


前面に透明な楕円の防御壁が発生し、僕達三人を包む。

その瞬間に急加速が始まった。


ソフィ:「すごいな…。アイさんといると

  今までの常識がどんどん崩れていくよ…。」


新幹線には乗った事が有るけど、それより確実に速い。


総司:「すごいね。アイさんだけなら

  簡単に世界一周とか出来ちゃうんじゃない?」

アイ:「総司君と一緒がいいの!」

ソフィ:「これ、人魚に頼まなくても

  一日で海を渡れちゃうんじゃない?」

アイ:「そうかもしれないけど、

  海上でやっぱり無理でしたって訳にはいかないから、

  確証がない状況だと安全な方法にした方がいいよね。

  命がかかっちゃうもん。」

ソフィ:「確かにそうね。」


アイ:「でも、そうだよね。失敗したかな。

  私が先に下見しておけば良い話だよね。

  なるべく常識から外れない様に意識していたせいだね。

  今から下見に行けば遅くないか。」

ソフィ:「既に十分常識外れだと思うけどね…。」

総司:「人魚への依頼は命がかかる訳じゃないし、

  いろいろな人達に会うのも旅の楽しみでしょ。」

アイ:「そう?まあ、総司君の

  人生経験になるって考え方もあるか。」

ソフィ:「私にはそう割り切れる話じゃないけどね…。」


アイ:「そろそろ着くよ。総司君、本当にいいのね?

  嫌なら私が何とか出来る。

  嫌なら嫌ってちゃんと言ってね?」

総司:「うん。内容がアレだけど、

  僕に役に立てる事が有るのが単純に嬉しいんだ。」


これは本心だ。下心なんて微塵もない。うん。


アイ:(マリカさん、よろしくね。)

マリカ:(大丈夫だ。)

総司:(そうか…。マリカさんに見られるんだね…。)

マリカ:(安心しなさい。

  いざとなったら私が何とかするから。)

総司:(そうね…。ありがとう…。)


マリカ:(せっかくだから、

  そっち系の魔法も開発しちゃおうかな。

  アイさんは絶対作らないだろうし。

  ヌルヌルグチョグチョな感じで。)

アイ:(ほどほどにね…。)


やばい…顔が火照ってきた。

マリカさんが余計なこと言うから…。


ソフィ:「なんか怪しいな…。」

総司:「そんなことないよ。本心なんだから。」


アイ:「見えてきた。あの島だね。」

総司:「火山島っぽいね。

  中央火口丘と外輪山が綺麗に形になってる。」

アイ:「そうね。どの辺に降りればいいかな?

  ちょっと上空から一周してみよう。」


人魚の島は中心に大きな山があり、周囲を海に囲まれている。

また、その周囲の海を円の様に外輪山の山脈が囲んでいる。


来た方向と逆側から中央の島を見ると、

洞窟のような窪みがあり、船の一部と思われる人工物が見える。


外輪山もその方向だけ途切れて外海と繋がっている。

船もそこから外海に出れそうだ。


総司:「船が見えるから、

  あそこに降りれば誰か来るんじゃない?」

アイ:「そうね。そうしよう。」


ちょうど船の甲板にあたる位置に降りる。

最近は使っていないのか、汚れがそのままになっている。


アイ:「洞窟の入口に魔法の障壁があったね。

  私達、というか侵入者に気が付いたと思う。

  このクラスの魔法が展開されているって事は

  結構強い魔法使いがいる。」


三人で周囲を警戒する。


アイ:「伏せて!」


海面から複数の人影が飛び出すのが見えたが、

僕とソフィさんはアイさんの指示通りに伏せる。

壁に何かか突き刺さる音が聞こえた。


アイ:「もう大丈夫だよ。」


起き上がって周囲を見ると、

人魚達が複数の短槍で洞窟の壁に縫い付けられている。

ざっと二十人くらい居そうだ。


人魚:「急に驚かせて申し訳ない。

  危害を加えるつもりは無かった。」


アイさんが手を払うように振ると、

人魚達を壁に縫い付けている槍が消えた。

人魚達はそのまま海に落ちて沈んでいく。


流石と言う他ない。

ソフィさんも恐る恐るアイさんを見ている。


アイさんは船首の方へ行き海面を見ている。


アイ:「手当が必要な方は海面に顔を出して下さい。」


アイさんは海面に向かって大きな声で呼びかけている。

僕とソフィさんもアイさんの隣へ行く。

海面から人魚の一人が顔を出す。


人魚:「手伝って貰えるなら頼みたい。」


アイさんは海へ飛び込んだ。


しばらくするとアイさんが海面から飛びあがり、

甲板に降りた。

服が肌に貼り付いて、ちょっと見ちゃいけない感じだ。


僕がチラチラと見ているのに気が付いたのか、

頬を膨らませて胸の部分に

両手を当てて魔法を発動する。

服が一瞬で乾いて、いつものアイさんに戻った。


続いて船の側面辺りから、

人魚が一人だけ海面から飛び上がり、甲板に降り立った。

先ほど海面から顔を出していた人魚だ。


青色の長い髪の綺麗な女性だ。

顔はソフィさんに似ている。

ソフィさんというよりドレイクさんか?まさか…ね。


見た感じは二十歳くらいに見える。

胸にチューブトップのような服だけを着ている。

胸もかなり大きく、思わず見てしまう程だ。


腰から下が魚の尾のようになっているため人魚と分かる。

上手にバランスをとって立っている。


人魚は人でいうところの足の付け根あたりに

両掌を合わせた。

魚の尾が割れて下半身が人の足のように変わっていく。


完全に人の下半身に変わると

短いスカートが浮かび上がってきた。

魔法で服を作ったのだと思う。


物質化の魔法が使えるということは

強い魔法使いであることがわかる。

一応常識として教えてもらっている。


人魚はこちらを見ているが近づいてこない。

視線はアイさんを見ている。

僕もアイさんを見たところで背筋に寒気が走った。


いつもの微笑みは消えて、冷徹な視線を人魚に向けている。

可愛い容姿なのに動けなくなる程の恐怖を感じる。


アイさんは人魚の方にゆっくり歩いていく。

ソフィさんも僕も付いて行けない。

ソフィさんも明らかに恐怖している。


アイ:「急に襲撃してきた理由を問います。

  危害を加えるつもりは無かったと言っていましたが、

  信じられません。改めて理由を問います。」

人魚:「………」


アイさんが人魚の目の前まで行くと

人魚はその場にへたりこんだ。


アイ:「許す代わりに対価を要求します。

  私達をこの大陸から別の大陸まで運びなさい。」

人魚:「………」


何も返事をしない人魚に対して、

アイさんは一方的に話を進める。


アイさんは人魚の顎に手を当てて自分の方に向かせる。


アイ:「聞こえませんでしたか?対価を払いなさい。

  皆殺しにされたくないでしょう?

  私達をこの大陸から別の大陸まで運ぶだけです。

  たやすいことでしょう?」

人魚:「は…はい…。わかりました…。」

アイ:「了承しましたね?」


アイさんは両手をパッと開き

笑顔でクルクル回りながら僕の方に来た。

手前で飛びついてきて頬を舐められた。


アイ:「なに怖がってるの?

  私は総司君のために頑張って交渉したんだよ?

  褒めて褒めて。」


一瞬何が起きたのか分からなかったが、

アイさんは僕のために交渉していたらしい。


総司:「う…うん。ありがとう。」


僕はアイさんの頭を撫でた。

拗ねた顔からパッと満面の笑顔に変わった。


可愛いすぎる…。

数秒前と同じ人とはとても思えない。


見た目の可愛さと上品さで失念していた。

アイさんの交渉には脅しも含まれていたらしい。


いや、確かに有効な手段だとは思う。

圧倒的強者の脅しに勝る交渉手段なんて無い。


アイさんは僕の首に回した両手をほどき着地する。

そして再び人魚の方へ歩いて行く。


アイ:「脅してごめんね。

  でも急に襲いかかってくるのが悪いんだよ。

  ちゃんと反省してね。」


アイさんは人魚の頭を撫でた。

人魚はブルブルと震えている。

魂にまで恐怖が植え付けられていると思う。


アイ:「私はアイ。お名前を教えてくれると嬉しいな。」

人魚:「私はアクアマリンと言います。

  皆にはアクアと呼ばれています。

  一応ここの人魚の一族の代表です。

  無比なる強者アイ様。

  どうか一族に危害を加えることが無い様に

  お願い致します。」


アクアさんはブルブル震えたまま平伏した。


アイ:「う…ちょっと脅しが効き過ぎちゃってたみたい…。

  アクアマリンさん。

  私達に危害を加えるような事が無い限り、

  私達もあなた方に危害を加える事は無いと誓います。

  私も少しやり過ぎました。

  お詫びにお役に立つ様な魔道具などを作って進呈します。

  どうか許して下さいね。」


アイさんは何とかアクアさんを

なだめようと頭を撫で続けている。


もう無理だと思うよ…。

とんでもない逆掌返しだと思う。


アクア:「ありがとうございます!

  二度とアイ様のご機嫌を損ねる様な事は無いと誓います。

  どうか私達の一族が安寧に暮らすことをお許しください。」

アイ:「もちろん許しますとも。

  お願いですから仲直りしましょう?ね?」

アクア:「ありがとうごございす!

  二度とアイ様のご機嫌を損ねる様な事は無いと誓います。

  どうか私達の一族が安寧に暮らすことをお許しください。」

アイ:「もちろん許しますとも。

  お願いですから仲直りしましょう?ね?」


同じようなやりとりを何度か繰り返している。

アイさんは諦めたのかアクアさんの手を取って立たせる。


アイ:「仲良くしましょうね?命令ですよ?」

アクア:「わかりました。アイ様のご指示に従います。」


竜の試練の時にも感じたが、アイさんの判断は早く、

ハッキリしていて決めたら迷いなく実行する。

力技だとしても最も有効だと思ったら迷いなく実行する。


しかしアレは無くなったか…。

残念に思ってなんかいないよ?

良かった良かった。


ソフィさんの方を見ると、

気配を感じたのかソフィさんも僕の方を見てきた。


総司:「僕たちも行きますか。」

ソフィ:「そうだね…。」


総司:「アクアマリンさん。僕は総司です。

  仲良くしたいので総司って呼んでください。

  僕もアクアさんと呼ばせて欲しいですけど

  いいですよね?

  僕はアイさんみたいに怖くないですから。」


笑顔で僕が言うと、

アイさんが頬を膨らませて可愛く怒った顔をした。


アクア:「はい。総司さん。よろしくお願いします。

  アクアと呼んで下さって結構です。」

総司:「敬語もお互いやめませんか?

  僕は大した人間じゃないから恥かしいので。」


アクアさんは何かに気が付いた様に

僕の方を注意深く見ている。


アクア:「少し質問させて下さい。

  僕…と、おっしゃっていますね…。

  胸も無いようですし、失礼を承知でお聞きしますが、

  もしかして男性ですか?」


そう来たか…。確かに勘違いしてもしょうがないよね…。

髪の毛短くしようかな。


マリカさんに遠慮して長いままにしているけど、

これも誤解の種になってるよね。


総司:「こんな見た目なので仕方ないですよね。

  僕は男ですよ。」

アクア:「なんという大失態を。

  悔やんでも悔やみきれませんね…。

  大変失礼しました。

  女性三人だと思い、警戒しておりました。

  竜族の女性もいらっしゃいますし。」

総司:「女性の方が警戒するんですか?」

アクア:「はい。私共は他種族の女性から

  恨みを買う事もよく有りますので…。」

総司:「僕達は恨みとかじゃなくて、

  べつの大陸に行く手助けを

  お願いしたくてここに来ました。

  過ぎたことは仕方ないとして、

  これからは気軽に接してもらえると嬉しいです。」


アクアさんは泣きそうな顔になった。

自分達の行動が待ち望んでいた状況を、

最悪の結果にしてしまったことに気が付いたのだろう。


僕もそのつもりだったし。

勿体無い事をしたと思うよ?

いや、僕じゃなくてね。


アクア:「そうご希望なら。

  総司君って呼んでいいかしら…?」


アクアさんは目尻に手を添えて涙を拭いながら言った。


総司:「うん。それがいい。それが嬉しい。

  アクアさん、改めてよろしくね。」


握手するために手を出すと、

アクアさんも手を取ってくれた。良かった。


アイ:「総司君ずるい。私も。」


アイさんも僕とアクアさんが握手した手に手を乗せてきた。


ソフィ:「じゃ、私は竜族のソフィア。ソフィでいいよ。

  アクアさん、よろしくね。」


ソフィさんもアイさんの手の上に手を乗せた。


アクア:「ええ。ソフィさんもよろしくね。

  アイ様も改めましてよろしくお願いします。」

アイ:「もう。私だけなんでよー。」


アイさんが可愛く不平を漏らす。

いや、仕方ないと思うよ。


何とかみんなで笑顔になれた。

良かった良かった。

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