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アイの新世界(物語)  作者: 夢のファイヤー
始まりの物語
12/89

S08.マリカのチュートリアル 新世界見学

---------- マリカの視点 ----------

目が覚める。

テントの扉を開けて外に出ると、

アイさんが転生者選定システムのところからすぐに走ってくる。


テントの中には寝袋がある。

今日は2つの寝袋がある。


当然恋愛感情ではない。

アイさんは尊敬の対象だが、

娘のようにも感じてしまっている。


私は生前、アイさんと同じくらいの歳のときに

息子を亡くしている。

たぶんそういう事も無関係ではないだろう。


「おはようございます。」

「おはよう。」


お互い笑顔でいつものように挨拶を交わす。


「今日は新世界の見学ですね。

 先にご希望があれば聞いておきたいです。」


「事象が進んだ所と進んでない所かな。

 文化レベルとも一致するよね?」


「そうですね。分かりました。

 ただ、事象の進んでいないところは、

 新世界の中に入らなくても私の魂の器の力で

 かなりの部分を見ることが可能です。

 私が新世界のモニターに映像を映します。

 場面に関してご希望はありますか?」


うーん。前は「私の神格の器」と言っていたのに、

「私の魂の器」という言い方に変えてるね。

やっぱり神という言葉は使わない方が良さそうだ。


「戦争…とかしてるんだよね。

 そういう場面が見れるなら見ておきたい。」

「わかりました。事象が進んだところから入りますね。」


一緒に新世界の入口のモニターの前に行く。


「準備はいいですか?」

「大丈夫。」


アイさんが左手で私の右手を取る。

右手を前に出したところで光る珠が出て来て

モニターに吸い込まれた。


一瞬で移動が終わる。

私は瞬間的に閉じた目を開ける。


姿は少し透けて見えるが、

私もアイさんも魔素で作った身体のままだ。


なぜかアイさんが恥ずかしそうにしている。

どうしたんだろう?


私は周りを見渡して、すぐに理由が分かった。

アイさんによく似た大きな像が笑顔で立っていた。


マーカーは転生者が新世界に持ち込んでいる。

まだ生きているかは分からないが、

ここには確実に転生者がいた痕跡がある。


そして私が新世界でやりたかった、

もう一つのことを既にやっている

転生者がいることを知った。


いや、むしろみんながやっているような気もする。

この新世界を作った神様のことを広めるということを。


「この像はアイさんによく似ているね。」

「そうですね。」


あんまり突っ込んで聞かれたくなさそうだ。

流してあげよう。


元の世界では絵画や像に笑顔のものは少ないが、

笑顔にした方がいいんじゃないだろうか。


そして目的だった新世界の状況を確認する。

白っぽいコンクリートのような建物がほとんどだ。

これは私にもわかる。

魔法で作った建物の特徴だ。


道路も整備されている。

トラックによく似た車が荷物を積んで走っている。

でも大半は普通に人が走っている。

魔法で高速に走れて疲れないのだから

そうなるのだろう。


飲食店も数多くある。

転生者が広めたのだろうか、

元の世界に似た食べ物が多い。

あのトラックも転生者の知識からだと思う。


近くを通る人は私達のことが見えないみたいで、

意識を向けてこない。


人々の服に関してはデザインは違うが、

生地や仕立ては21世紀のものと比べても、

見劣りしないように見える。


種族の違いも含めていろいろな人がいる。

猫耳、犬耳、耳が長い人、角がある人など、

いろいろな特徴が見て取れる。


ファンタジーの世界の住民が

近世の生活をしている違和感はあるが、

争いのようなものは見渡す限りは見当たらない。

みんな裕福な生活をしているように見える。


「平和な世界みたいだね。」

「はい。街中なのもありますが、

 種族間の違いなどで争いが起きないように、

 年を経て成熟された取り決めがされています。」


「あんまり武術とか必要なさそうね…。」


「魔法適正者は基本的なことさえ知っていれば、

 どこに行っても生活に困ることはありません。

 また、寿命も長くなりますから、時間の差こそあれ、

 新世界に入ってから、

 その土地土地の文化を学んでいけば

 十分に溶け込めます。

 争いに巻き込まれて命を落とすことだけがリスクです。

 文化レベルが高い事象では、

 命を落とすリスクも少なくなりますが、

 この事象でも、これが全てではありません。

 共存が難しい種族は長い年月を経て

 住み分けがされていますが、

 立ち入れば、襲撃されるようなところは存在します。

 覚えておいた方がいいです。」


アイさんは私に笑顔を向けてくれる。

この事象にくれば、急に死ぬことはなさそうだ。

能力をフル活用してお金持ち人生も可能だろう。


マーカーはそれほどないと言っていたから、

来るとしたら、そのままここって話になるのかな。


もう帰ろうかと思ったけど、せっかくだから、

もうちょっと見ていった方がいいかな。

場所を移動出来ないから、

ここで見続けるしかないけど。


「もうちょっとここで見ながら待ってもいい?」

「はい。それでしたら、

 少し私の話を聞いてもらってもいいですか?」

「もちろん。何時でも何でも話して欲しいな。」


アイさんが真剣な顔をしている。

珍しいな。何だろう…。


「この世界の事象、分岐、転生者、

 そして魂に関する私の解釈です。」

「うん。」


重いの来たな。

怒涛の説明が続きそうだ…。


「新世界でも事象の系譜は数多の分岐と成長を重ねています。

 分岐の個々で考えた場合、事象が分岐する時には、

 一方で選ばれた選択と選ばれなかった選択、

 もう一方ではその逆になります。

 その事象を観測した観測者は同じ存在なのに、

 違う結果を見た2つに分かれることになります。

 この2つの魂には当然違いはありません。

 その後、片方の観測者が亡くなったとき、

 情報、もしくは記憶と言っていいですが、

 それを消失し、生まれ変わるときに、

 一番近い魂は分岐した生き残った方の魂になります。

 生き残った方の情報を持つ魂と、

 情報を消失して乗り移る魂。

 この2つは生き残った方の情報を持つ、同じものになります。

 同じ情報であれば、思考、選択もまた同じものになります。

 それに疑問を持つことはありません。

 同じ身体で同じ思考、同じ行動をする。同じ魂となります。

 遡って考えてみると、事象の分岐がこの魂の生き残りを

 助けたとも言えます。

 事象によって発生する分岐の中で、

 生き残る魂が継承していくのです。

 事象はそれを観測したものが強固にします。

 影響力のある強い魂は多くの観測者へ影響をあたえ、

 強固な事象を生むのです。

 また、影響力のある強い魂が観測者になることで、

 観測した情報で、新しい可能性を得ることで

 次の大きな事象の分岐を発生させるのです。

 転生者システムはこれを強制的に行うものであり、

 転生者がそれを行うのです。

 なので、透子さんが生き残ることが重要なのです。」


アイさんが真剣な目で私を見ている。

なるほど。

私の最近の悩みを見抜いて、その答えを言っているのか。


要するに転生後の私の選択、行動を全肯定し、

新世界もそれを望んでいると、そう言っている。


それが例え大量殺傷であっても。

そんなことは絶対にしないけどね。


強い意思、深い優しさを感じる。

その悩みはもうそれでいいだろう。

もうそれほど重要じゃない。


今の私には、もっと大きな悩みがある。

私に伝えてくれた、その言葉が、その優しさが、

大きな悩みの方を更に大きくする。


「わかった。話してくれてありがとう。」


伝わったのがわかったのか、ニコニコ笑顔に戻った。


「そろそろ戻ろうか。」

「はい。」


アイさんの家に戻る。

次は事象の進んでいないところを

アイさんが映像で見せてくれるんだよね。


正直、それを見たいという動機の方が

解決しちゃったんだよね。


「少々お待ちください。」


アイさんが新世界のモニターに両手を掲げている。


「元の世界の中世の様な戦争もありますが、

 新世界で最も多く起きている戦争は

 猫人族と犬人族の戦争です。」


新世界のモニターに左右に分かれている群が見えてきた。

左が猫人族で右が犬人族かな。


両軍が合図ともに、

すごいスピードで接近して斬り合っている。

遠距離魔法を打ち込んでる人は、この一帯には居ない。

魔法適正者ってやっぱり少ないのか。


狙っているのは手足に見える。

手や足が斬られて飛んだりしている。

ちょっと見るに堪えない。


負傷、と言ってもかなりの重症で

手とか足のどこかが斬り落とされている。

ただ全員が即座に止血の魔法をしていて、

その傷で死ぬ事はなさそうだ。


負傷した人は止血したら近い方の上下に移動している。

画面が少し動いて、上に避難所と書いてある場所が見えた。


疲れないため、最初と同じ勢いで闘争は続いている。

猫人族の方が劣勢に見える。


時間がたって最初から目立っていた強い人が残り、

高度な戦闘を行っている。

遠距離魔法も多用されている。

高度と言っても初級から中級レベルの魔法の範疇だが。


何が行われているのか、もう大体分かってきた。

これは明確なルールがあっての戦争である。

そして全員がルールを守っている。


たぶん手足のいずれかを失ったらリタイア。

言葉は重いが全滅した方が負けという、そういう戦いだ。


そのまま犬人族が勝利した。


やってることは血生臭いが

魔法があることで成立する競技に類するものだ。


止血した後に避難所へ退避している。

戦闘が終わったら本格的な治療ということか。

失った手足は瞬間的に回復することは出来ないから、

ルール違反はすぐにわかる。


避難所では猫人族も犬人族も

武勇自慢合戦をしているように見える。


「新世界は魔法により、

 生産性が高く領地や食料を戦って奪うという

 ところまではなかなか行きません。

 ただ闘争本能の強い種族もまた多く、

 こういった戦争が定期的に起こっています。」


「これは戦争というより、

 過激なオリンピックって感じなのかな…。」


私はちょっと引き気味に言った。


「はい。魔法があるからこそ実現している姿です。

 そして魔法が元の世界のような技術の発展を

 阻害しているという側面もあります。

 魔法の効果が高すぎて、物質界の技術の蓄積のみで

 これを超えようという意欲が沸きにくいのです。

 皆が魔法を使えるので、魔法の研鑽に務めるのが普通です。

 ここで重要になるのが、魔法の特性です。

 魔力は魔力界の魔素の密度により制限され、

 発動者と発動箇所の距離で減衰します。

 複数人で集まっても上限は効果範囲の魔素量で

 決まりますので、効果が上がらず、

 単位体積当たりの威力は頭打ちになります。

 よって、魔法で元の世界の大量破壊兵器に類するものを

 作ることは非常に難しいです。」


「魔法の特性が上手く機能して

 破滅的な効果には至らない様になってるんだね。」


「はい。ただ、これは実力が拮抗しているからで、

 大きく差がある場合は多数の死者が出ます。

 例えばドラゴンや恐竜などに遭遇した場合です。

 ドラゴンと恐竜は同じ大陸に住んでおり、

 ドラゴンは山、恐竜は平地に住み分けられています。

 ドラゴンは圧倒的強者で、温厚な性格により

 世界の守護者のような存在です。

 怒らせない限りは他の大陸の種族に

 攻撃するようなことはまずないです。

 また、ドラゴンと恐竜の住む大陸で

 生き残れる力を示すことが出来れば、

 ドラゴンに勇者として認められ、

 一族の一人が行動を共に

 してくれるようになります。」


「ドラゴンと恐竜もいるのね…。

 ドラゴンのお供とか名誉だとは

 思うけど、大きいんだよね?

 それはそれで大変にならない?」


「ドラゴンは全員が強い魔法適正者です。

 人型にもなれますし、認めたその種族に

 姿を変える魔法も使うことが出来ます。」


のんびり楽しく生きることも可能だが、

強くなる意義もまた用意されているということね。


いろいろとよく出来てるなぁ。

魔法なんてファンタジーそのものの現象が有るからだけど。

私もドラゴンに認められるように頑張ろう。


「あえて自分から危険に近づかなければ、

 基本的に安全なのかな?」


「日常にも危険はあります。

 中規模の集団、特に犯罪者の集団などです。

 戦争のような大きな闘争はルールが設けられますが、

 犯罪者はルールを守らないことがほとんどです。

 ルールがない闘争は殺すことが

 前提の悲惨なものになります。

 それと死に至る危険とは少し変わりますが、

 新世界では強さを示すことで

 社会的地位を得られるケースが多いです。

 目立つと挑まれたり絡まれたりすると思っていいです。」


脳筋の世界だね…。でも私ももう脳筋の一人だ。

それに先ほどの猫人族と犬人族の戦いで

私は相当強い部類なのも分かっている。上等だ。


「了解。でも大丈夫だよ。上手くやっていけると思う。」

「良かったです。」


アイさんが笑顔で答える。

新世界のことは大体わかった。

これ以上は特に見なくてもいいだろう。

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