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アイの新世界(物語)  作者: 夢のファイヤー
プロローグ
1/89

01.プロローグ

初投稿です。

2022年2月6日:開始。

2023年3月21日:誤字等修正。

2024年1月24日:誤字等修正。

2024年5月1日:改行を多数追加(以降の全てのページも同様)。

2024年10月20日:誤字等修正(以降の全てのページも同様)。

「総司君、起きて。」


誰かが僕を呼んでいる。

意識に直接呼びかけられた様な不思議な感覚だ。

そして僕は目を開ける。

上から天使のような可愛い子が僕を見ている。


「誰…かな?」


女の子の背景には青空が見える。

綺麗な空だ。肌にさわさわと心地好い風を感じる。


「私はアイ。よろしくね。」

「あー。うん。僕は総司だよ。」


僕の名前を呼んでいた気もするが、

記憶にない子なので僕も自分の名前を答える。


僕はこの子を知らないが、

この子は僕を知っているみたいだ。


仰向けに寝ている状態なので、取り急ぎ上半身を起こすと、

頭上にいた子が背面の位置になった。


膝枕されていたみたいだ。


周囲を確認すると草原が広がっている。

アイと名乗った女の子と話をするために、

座ったまま身体の向きを変えて女の子と正対する。


「アイ…ちゃん、でいいのかな?」

「いいよ。それがいい。」


嬉しそうに優しい笑顔で答えてくれる。

花が咲いたような笑顔とは、まさにこういうことだろう。

僕も自然と笑顔になってしまう。


改めてアイちゃんを観察する。

服装はワンピースに金のコルセットベルトをつけている。

シンプルなのに高貴な印象を受ける服装だ。


髪はロングヘアーで、白に近い薄い水色の髪色だ。

自然な色のはずは無いが、地毛のように自然に見える。

脱色したような髪の傷みもみえない。

絹糸のように滑らかで美しい髪だ。


そして、青い大きな瞳と長い睫毛、透明感のある肌、

纏う空気はキラキラと輝いていて神秘的に見る。


これほど可愛い子はこれまで見たことが無い。

一度見たら忘れようがない容姿と雰囲気だ。

確実に初見と断言できる。


「ここはどこかな?わかる?」


座りながら向かい合った状態のまま聞いてみる。

聞いた時にアイちゃんの向こう側に、

何か動いているものがいることに気が付く。


遮るものが無い広い草原の先から、トカゲみたいな生き物が、

二足歩行でこっちの方に向かってきている様に見える。


ありえないとは思うが、映画で見た恐竜の様な生き物だ。

まだ遠くてよく見えないが、数は十匹以上はいそうだ。


「私もちょっと分からないんだよね。」


アイちゃんも分からないのか…。


ところで後ろに見える恐竜の様な生き物は目の錯覚じゃない。

恐竜がいるとは思えないが、

距離が離れていることを考慮して推測しても、

かなり大きい生物であることは間違いない。


「アイちゃん後ろ。後ろに変な生き物が見えるよね?」

「え?」


アイちゃんが振り返る。


「あー。恐竜だね。どの事象かは分からないけど、

 どこの大陸にいるのかは分かった。」

「恐竜なんているわけないでしょ。

 って、言いたいけど僕にもそう見えるんだよね…。」


アイちゃんは恐竜がいるという状況にそぐわない

落ち着いた口調で答えた。


恐竜の他にも気になる言葉があったが、

今は細かいことを聞いている状況ではないだろう。


落ち着いている場合ではないけれど、

僕より小さい子の前で狼狽えるのは気が引ける。


アイちゃんという女の子も、恐竜という存在も現実感がない。

これは夢かな?

頬をつねってみるが、痛くない。

力いっぱいつねると少しだけ痛みを感じる。

痛くはあるが、本来はもっと痛いはずだ。


これはどういうことだろう?夢なのか?現実なのか?


アイちゃんが不思議そうに僕を見ている。

アイちゃんはそんな顔もとても可愛い。

いやいや、そんなことを考えている場合ではない。


僕はアイちゃんの向こう側の恐竜に意識を向ける。

まだ恐竜とは距離がある。

アイちゃんも僕の視線に合わせるように恐竜の方を見る。


「元気そうだね。」

「え?どっちが?僕?恐竜?」

「恐竜。」


アイちゃんがニコニコ笑顔で答える。


このまま恐竜がここに来たら、僕達は食われると思う。

友好的な生き物には到底見えない。

アイちゃんは怖くないのか?


「こっちに向かって来ているから逃げた方がいい。行くよ。」


僕は立ち上がってアイちゃんに手を差し出すと、

アイちゃんは嬉しそうに僕の手を取る。

この子をおいて僕だけ走って逃げるのは流石に出来ない。


それと僕は心臓が強くない。そう長くは走れない。

僕は長くは生きられないと医者の先生から聞いていた。

正確には先生とお母さんが話しているのを聞いてしまっていた。

ショックではあったけど、不安や悩み、

そして憤りは僕の中では既に過去のものだ。


自分に恥じる事の無い人生を送れれば、それでいい。そう思う。

逃げきれそうにない場合は、僕が少しでも足止めしよう。

僕が食われている間に、この子くらいは逃げられるかもしれない。

最後に一人でも誰かのためにと思えるなら、むしろ望むところだ。


最後のあがきに使えそうな物を探すが、

何故か僕の腰に刀が差さっていることに気が付いた。


当然、僕は刀なんて持っていない。

武器になるような物があったのは嬉しいが、

なぜ刀を持っているのかは分からない。


他にもいろいろと違和感を感じたが、今はそれどころじゃない。

しかし、こんな状況なのに、あんまり気持ちが動揺してないな。

冷静でいられるのが不思議だ。やはり夢なのかもしれない。


「大丈夫だよ。

 でも、落ち着いてお話し出来なくなりそうだから移動しよう。

 ちょっとごめんね。」


アイちゃんはそう言った後に僕の後ろにまわる。


「え?何をするの?」


アイちゃんは後ろから僕のお腹に両手を回して抱き着いてきた。

僕は自然と自分のお腹の方を見ようと下を見るが、

抱えられた手が見えない。

僕の胸が膨らんでいる様に見える。


「ちょっと飛ぶから舌を噛まないように注意してね。」

「あ、うん。」


飛ぶ?

意味が分からないが、言われた通り舌を噛まない様に口を閉じる。


「行くよー!」


アイちゃんがそう言ったすぐ後に、フワッと身体が浮いた。

頭は混乱しているが、僕は反射的に頷く。どこへ行くんだ?


僕の身体は空高く舞い上がり、そして地面と水平に移動を始めた。

加速の衝撃に備えたが、思ったほど衝撃や痛みはない。

僕の経験からの認識と肉体の感覚が合っていない。


慣性によって生じる力や衝撃は感じるが、

それによって僕の身体が受ける力や衝撃に対して、

容易に姿勢が維持できて、痛みも感じない。そんな感じだ。


空を飛んでいるという状況と、僕の認識と現実の違いなど、

訳が分からないことが多すぎる。


前を見ると、前方から翼竜のような恐竜が近づいて来ている。

プテラノドン…だっけ?そんな名前の恐竜だと思う。


左右でシャープな音がしたので目を向けると、

左右に3mくらいの氷のように透明な長い槍が出現した。


「え?え?え?」


目の前の翼竜と、急に槍の様な物が出現するという

非現実的な光景に更に混乱する。


槍が翼竜の方に高速で射出され、そのまま翼竜に突き刺さる。


「ごめんね。」


アイちゃんの呟きが聞こえる。

翼竜はそのまま落ちていく。


そして地面に落ちた翼竜の周囲にいた恐竜が、

群がるように集まっていく。

捕食されるんだろう。


今自分がおかれている状況について考えようとする毎に、

新しい状況が発生する。

状況について考えている暇がない。


また前から新しい翼竜がこっちに向かってくる。


さっきとは違う種類だが名前は分からない。

プテラノドンよりも大きく禍々しい姿で、

恐竜というよりもドラゴンに近い。

SFやゲームならワイバーンと呼ばれそうだ。


明らかにさっきのプテラノドンよりも強そうな見た目だが、

プテラノドンと同様に槍に刺されて落ちていった。


かなりの速度で飛んでいるが、風が当たる感覚が無い。

見えないけど目の前に大きな空気の塊があって、

それが風を避けているような感じだ。


何から何まで現実感がない。

いろいろ聞きたいけれど、何から聞いたら良いのか整理が付かない。


下を見ると、既に草原を抜けて森の上を飛んでいる。

かなり高度が高く、単純に怖い。

後ろから抱えられているので手で何かを掴むことも出来ない。


心臓の鼓動が早くなっているのに気が付いて、

慌てて落ち着けるように心臓に手を当てる。


ムニュっとなった。


「うわぁ!」

「え?どうしたの?」

「いや…何でもない…です。」

「落ち着いてお話し出来そうなところを見つけて

 降りるから、ちょっと待ってね。」

「あ、うん。」


胸が変だ。触った手は僕の手で、触られた感覚もあった。

両手で左右の胸を触ってみる。両方とも同じくらいの大きさだ。

軽く揉んでみる。ちょっと変な気分になってきた。


これはアレだよね。女性の胸だよね。とすると…。

僕は有るべきものが有るのかを確認するために、下に手を伸ばす。


(総司。その辺にしておきなさい。)

「え?」


慌てて左右を見る。誰も居ない。当たり前だ。


「アイちゃん?」

「私じゃないよ。」


うん。今聞いてわかった。声が違う。


「誰?どこに居るの?」


(私はマリカ。総司の頭の中にいる。)


は?でも確かに耳というより、頭に直接響いてくるような声だ。


総司:「え?え?頭の中って…何それ?」


マリカ:(いろいろあり過ぎて大変なのは分かる。

  でも、聞いてほしい。総司は死んで生まれ変わった。

  そしてここは総司が居た世界とは別の世界だ。

  まずは今までの常識を捨て、

  起きている目の前の現実を受け入れろ。)


アイ:「総司君。周りのことは大丈夫だから、

  マリカさんの話を聞いて。」


マリカさんとアイちゃんは知り合いみたいだ。


総司:「わかった。マリカ…さん?

  僕が死んだって言ったけど、僕は今ここにいるよ?」


マリカ:(だから生まれ変わったんだ。

  いろいろとおかしいところがあるだろう?)


確かにおかしいところしかない。だからって非常識すぎる。

ああ。だから常識を捨てろって言ってるのか。


総司:「だからって、よく分からないよ。」


マリカ:(わかるはずがない。

  総司の昨日までの常識に無い世界と状況だ。

  だから頭ごなしに否定することなく、

  見えている現実を受け入れるようにして欲しい。)


とりあえずスマホで…って、着ている服が違う。

ポケットの位置に手を当てるがスマホが無い。財布も無い。

バックも無いから僕の持っていた物が何もない。


そして触って気が付いたが、

この身体は僕の身体とは少し違っている。

不自由なく僕の意思で動かせてはいるけど。


総司:「うん。分からないけど、

  マリカさんの言った意図は分かったよ。

  ところで僕の持ち物ってどこにあるの?」


マリカ:(全部無い。この世界には総司の魂しか来ていない。)


魂って…。そうか。

荷物だけじゃなくて僕の身体も来ていないってことか。


総司:「戻れるの?」


マリカ:(戻れない。

  総司は昨日まで生きていた世界では死んでいる。)


質問するたびに、そうであってほしくない返事が返って来る。

ショックな内容ばかりだ。

だけど、僕は不思議なくらいに落ち着いて聞けている。


総司:「そっか。まあ、長くは生きられないとは言われてたんだ。

  お母さんのお蔭で、割りと長生き出来たみたいだけど。

  そっか。死んじゃったのか。やっぱり心臓の病気で?」


事故にあった記憶はない。

そして昨日は普通に寝たところまでは、何とか思い出せた。

寝ている間に死んじゃったってことかな。


マリカ:(………それは分からない。)


総司:「そうだよね。分からないよね。

  まあ、ちょっと調子が悪いな。とは思ってたんだ。」


マリカ:(なんで母親に相談しなかった?)


総司:「お母さんは忙しかったからね。

  このくらい大丈夫だと思ってたんだ。」


マリカ:(そうか…。変なことを聞いてごめん。)


総司:「いいよ。終わったことなんでしょ?

  生まれ変わったってことは。

  ちょっとまだ信じられないけど。」


お母さんのことは心配だけど、

僕がいない方がお母さんは幸せになれる気がする。

子供の僕の贔屓目を十分に差し引いてもお母さんはかなり美人だ。

しっかりした大人の女性だし、

誰かに騙されるようなことも無いと思う。


マリカ:(この世界では心配することはない。

  総司の身体は健康そのもので、

  ちょっとやそっとじゃ死ぬことはない。

  魔法で大抵は治る。)


総司:「あ、やっぱり魔法があるんだね。

  この飛んでるのも、氷みたいな槍とかもそうなんだよね?」


マリカ:(そうだ。

  それと、先程も言ったが私は総司の頭の中にいる。

  身体は無いけれど、私も魔法を使うことは出来る。

  総司は何も心配することはない。

  私が必ずなんとかするから。)


総司:「うん。ありがとう。あ、敬語とか使った方がいいかな?

  姿が見えないから、年齢とか分かり難いけど、

  話をしていての印象だけど、僕よりずっと年上だよね?」


マリカ:(言葉はそのままで大丈夫だよ。そのままがいい。)


総司:「うん。わかった。ありがとう。」


重い話になっちゃったけど、明るくいこう。僕は笑顔で答えた。


アイ:「私にもなんでも頼ってね。私って結構強いんだよ?

  なんだって出来るんだから。」

総司:「うん。アイちゃんもよろしくね。」


アイちゃんが強いのはよく分かる。

僕とマリカさんが会話している間も翼竜を何匹も撃退している。

僕を抱えて飛びながら…。


アイ:「あそこに見える山脈に行ってみるね。

  あの高さなら恐竜も来れないだろうし。」

総司:「お任せするよ。何にも出来なくてごめんね。」

アイ:「気にしなくていいよ。

  さっきも言ったけど、なんでも頼ってね。」

総司:「うん。お世話になります。」


ちょうど良かった。

そろそろトイレに行きたい。トイレなんて無いよね?

その辺でするのかな…。それと…。下はどうなってるんだろう…。

いや、本当は分かっている。重さというか、

いろいろと感覚で分かってしまった。


総司:「ねえ…。ちょっと教えてほしいな。

  僕は男なんだけど、今って女性になってるよね?

  これってずっとこのままなのかな?」

アイ:「一週間くらいで男性の身体になるよ。」

総司:「そうなんだ!良かったぁ!」


マリカ:(総司。一週間は自分の裸を見るなよ?)


総司:「それは無理なんじゃない?」


マリカ:(大丈夫。私が魔法で見えなくするから。)


総司:「そんなことも出来るんだね…。」


ちょっとくらい見たい気もするけど…。

もしかしてこの身体はマリカさんの身体なのかな?

怖くて聞けないな…。

そうだとしても怒ってるっぽい感じはしないし…。


なんだかもういろいろと目茶苦茶だけど、

少なくとも身体の心配はしなくていいんだよね?


お母さんや友達に会えなくなって寂しい気持ちは大きいけど、

死んじゃったんだから仕方ないよね。

その代り、アイちゃんとマリカさんと出会えた。


総司:「アイちゃん、マリカさん、これからよろしくね。

  生まれ変わったなら、遠慮なく楽しく生きられる様に

  頑張ってみるよ。」

アイ:「いいねいいね!」


マリカ:(よく言った!楽しくやっていこう!)


訳が分からないまま始まって、

今も訳が分からないけど、

アイちゃんとマリカさんもいるし、

なんとかやっていけそうな気がする。


むしろちょっと楽しみ?

続けて読んで頂けると嬉しいです。

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