スイカと私とかくれんぼ
私は毎年夏休みに、田舎のおじいちゃんの家にお泊りに行く。
おじいちゃんの家はすごく田舎にあって、田んぼと畑ばかりのすごく田舎らしい場所にあります。
マンションやアパートといったコンクリートの建物もなく、ゲームセンターやカラオケといった娯楽はありません。
生け垣を見ながらおじいちゃんの平屋の家についた私は、玄関のドアを開けて――
「おじ~いちゃん来たよ~」
そう声をかけます。
おじいちゃんの家は不用心なことに鍵はなく、インターホンもありません。
おじいちゃんに言っても、「田舎には必要ない」の一点張りで、とても心配です。
返事がないので畑に出ているのだろうと思い、客間に荷物を置くことにしました。
おじいちゃんの家は入ってすぐにトイレ洗面所と続き、客間である六畳の部屋があります。
その隣がリビングダイニングで、広さは十二畳とちょっとしたパーティーができそうに思える。
その隣がおじいちゃんの部屋で、入ったことがないのでどういう場所かは分かりません。
私は客間に鞄を置きスケッチブックとペンを持って、おじいちゃんの作っているスイカ畑に行きました。
「おじーちゃん」
畑の奥におじいちゃんが見えたので声をかけます。
「ミチル、来たかいのー」
私の声に反応して、手を振ってこたえてくれました。
「終わるまで、絵描いてるね」
おじいちゃんはこくこくとうなずいてくれました。
私は持ってきたスケッチブックにスイカ畑を書いていきます。
私は中学校の美術部なので、その課題で毎年スイカ畑を書くのが恒例でした。
日が暮れてきたころにおじちゃんが私の所にスイカを持って歩いてきました。
「かえって、夕ご飯さ食べるべ」
「うん」
二人で家に帰ります。
・・・・・・・・・・・・
セミの声を聴きながら、夕ご飯が始まりました。
これでもかってくらいに盛られた、そうめんです。
何処の家のか分からない子も座って食べています。
もう慣れた光景です。
おじちゃんも何も言わないで皿をだしているので、きっと知り合いなのだと思い今では気にしません。
嘘です、気になります。
その子は夕ご飯を食べ終わるとそそくさと帰ってしまいます。
それを見届けた後シャワーを浴びて眠っていると、スイカを食べ忘れたことを思い出しリビングに行きました。
「あ、切っておいてくれてる」
皿の上に三角の形に切られたスイカが目に入ってきました。
私はそれを一つ持って、シンクの上でかじりつきます。
行儀は悪いですが、効率的に手が洗えて良いのです。
種を少し飲んでしまいながら、甘さを堪能しシンクに種を飛ばしました。
「甘い~。え?」
私はシンクの種がひとりでに動くのを見て、声を出してしまいました。
そうその種は種ではなく、スイカをかじっていた小さなゴキブリだったのです……
(完)
ちょっと盛りましたが、(笑)実話です