プロローグ その5
「なるほどね。そして神様であるあんたはその『勇者』とかが誰かは分かってて、あの子がその関係者ってことか。」
「さすが現代日本人というか、理解が早くて助かるよ。ちなみにあの子は初代『勇者を護る者』の子孫で、本人もなんの因果か同じ称号を手に入れちゃってさ。あっ、そうそうその初代の馴れ初めとか色々面白いんだけど聞く?」
「いやいや、聞きたいのは山々なんだが、向こうに行かないとダメじゃないか?」
ふと我に返って神様に修二は尋ねる。
「ここと向こうじゃ時間の流れが違うからさ。全然大丈夫なんだけど、確かにそろそろ向こうに行ってもらおうかな。」
見た目相応の少年らしい笑みを浮かべながらそう言うと、思い出したように指を鳴らした。
すると、修二の前にひと振りの刀と皮袋が現れた。
「とりあえず、このままあそこに放り出したら危ないと思うから、神様から君へのプレゼントね。その刀の事なら君はよく分かってると思うから良いけど、皮袋の中身について教えとくね。ポーションと鉈、あとカレーのお詫びって訳じゃないけど向こうにはお米が無いから稲をプレゼントね。育て方のヒントが書いてある紙も入れておいたから、時間があったら作ってみてね。」
修二は鞘を持ち、刀柄を握り鍔を眺めると、そこには見覚えのあるデフォルメされた「くまさん」が掘られていた。
「懐かしいなぁ。」
修二の刀の師匠であり、刀鍛冶でもあるその人は、数々の伝説があった。
例えばバイクに轢かれそうになった子どもを助けるためにそのバイクを素手で受け止めたり、例えばその時の見た目故に助けた子どもが泡をふいて倒れ、救急車の前にパトカーを呼ばれたり。
極めつけは、森に籠って修行をしていた時、身の丈3mを超える羆に襲われた際に身につけていた刀で一刀両断したというものだ。
その「羆伝説」を起こした刀に、男が彫ったものが「くまさん」であり、彼の可愛いもの好きが発覚して見た目とのギャップに仲間から親しまれる様になったのだ。
閑話休題
「よし、これさえあれば何とかなるし、稲も貰えるならなんとかなる...いや、なんとかしないとな。じゃあ行ってくるわ。」
と、鏡に向かって修二は飛び込んだ。
「いてっ!」
が、鏡にぶつかって思い切り頭をぶつけた。
「はははっ!何やってるの!?異世界では鏡に突撃するのが流行ってるの?いやー、面白い。ここ数十年で1番笑ったよ。っていててててて、ごめんごめん!頬を抓らないで!今からちゃんと送るから!はい、いってらっしゃーい!!」
今度こそ修二は少女を救いに異世界へと旅立つのであった。