プロローグ その4
何故、他の誰でもないあの子を助けるのか。それを話すためにはこの世界についても話さないといけないね。
この世界は、君の世界とは違って「魔素」というものに溢れているんだ。そして、この魔素が澱みなく循環する事で成り立っている。
例えば、君の世界のゲームにダンジョンというものがあるでしょ?この世界にも同じものがあって、魔素を用いて魔物を創り出し、その魔物を倒すことで人は魔物の魔素を取り込み、段階的に成長していく。そして人が死に、土に還ることで魔素も世界に還元されていくんだ。
あっ、ちなみにダンジョン内にも宝は存在するよ?ダンジョン内で死んだ者の持ち物をダンジョンが取り込み、魔素を含むことでより力を増し、それを設置する事でダンジョンに挑むものを増やす。そうすれば、より効率的に魔素を循環させられるでしょ。
他にも、自然に存在する植物や動物にも魔素が存在する。
魔素を取り込みすぎたそれらは、力を制御出来なくなって魔獣となり、脅威になったりもする。まぁ、それは今は置いておこう。
そういったシステムは、この世界が出来て数千年、滞りなく成立していた。だけど、世の中何事にも「例外」というものは存在する。それが大体400年前に起きた災害。
魔物、魔獣にはそれぞれ「魔核」と呼ばれる核があるんだけど、そこに自然やダンジョンから魔素を取り込むことであいつらはより強力になっていく。魔核は人族や普通の動物には存在しない。魔核を人が手に入れる事は不可能なんだけどさ。
どの世界にも、どの時代にも存在するよね?圧倒的な力を欲しがる存在って。魔核を取り込むことで魔素を常に吸収し続ければ強くなれると信じていた輩が一定数存在してて、千年単位で研究していたんだけど、500年前、何の因果か2人の人族が魔核を体内に埋め込むことに成功して、更に一体の魔物が魔核を体内に3つも存在させてしまった。
しかも、そいつらは「強者こそ世界を統べるに相応しい」という考えで一致して、陸海空という3つの領域で分けて、自らを「魔王」と名乗りそれぞれを支配していた。
それから100年余り、そいつらの支配はより強くなり、魔素がその三体の魔王に集中する事で魔素の循環が滞りだし、あわや世界が滅びる所までいった。それは世界災害として大きな爪痕を残すほどになった。
この世界を見守っていた神様は、なんとかして魔王を討ち滅ぼそうと5人の若者に加護という名の力を与えた事で、彼らは魔王を倒すことに成功した。
そして神は、5人の若者の内、魔王に最後の一撃を与えた2人の者に「勇者」の称号を、そして残りには「勇者を護る者」という称号を与えた。
でね、その5人はどうなったか分かる?
ゲームや小説みたいに、皆から感謝されてめでたしめでたし。
ってなったら良かったんだけど、実際は違うんだよ。
もしもだよ?もしも、平和が訪れた時に、世界を滅ぼす存在を倒せる存在がいたら、みんな喜ぶと思う?
違うんだよ。みんな、そう、みんなが「恐怖」を感じた。
そして、みんなが彼らを血眼になって探し出そうとしていた。何故か分かるよね?それを知った彼らは姿を現し、魔王を滅ぼした後に再建された国の代表達の目の前で、自らの生命を絶った。
それを知った神は涙を流したさ。あっ、ちなみにわかってると思うけど、その時の神様は僕じゃないからね。僕はちょっとやそっとじゃ泣かないよ?まぁいいや。話を戻すね。
神は、加護を人に与えたから悲劇が起きたのだと嘆き悲しみ、他のあらゆる世界の神に「神はその世界の人に加護を与えること」を禁止し、自らも神の座を降り、次元の先へと旅立っていった。
その後任として僕がこの世界を見守ることになったんだよ。
そしてここからが本題。
「魔王」「勇者」「勇者を護る者」この3つの称号は、この世界にうみだされたことで、システムに組み込まれることになった。そして20年前、「魔王」という称号を持った存在が現れてしまった。そして今、魔王は世界を手に入れようとしている。
ここまで来たらわかると思うけど、誰かが魔王を倒さないと世界が滅びてしまう。そこで世界中が手を組み、魔王を倒すための軍が作られることになり、魔王と何度か対峙する事になったんだけど、あらゆる強者の剣撃が、魔法が一切効かないんだ。そこで世界中の賢者が集まり、幾日もの討論、何百もの犠牲を払う中である仮説が建てられた。
神という余りに強大な力が干渉したシステムが400年の間に3つの称号を世界に適合した結果、「魔王」は「勇者」のみ倒すことが出来るということ、そして「勇者」は「勇者を護る者」しか連れていく事が出来ないという事になってしまったということ。
そして、システムは世界を滅ぼさないようにする為に「勇者」と「勇者を護る者」の称号を持った者を新たに選定したのではないかと。