プロローグ その2
大人の足では近くであっても、少女の足ではかなりの距離を歩き、1本の太い切り株を見つけた。
「ははっ!ほら、この傷!お父さんが私の名前を彫ってくれた時のやつだ!」
いつか忘れたが、かなり最近連れてきてもらった際、村でほんの少ししかいない字の読み書きが出来る人であるお父さんに、自分の名前を彫ってもらって、その時初めて自分の名前を見て感動した為、丸太の存在とそこへの道のりもかなり鮮明に覚えていたのだ。
ここからならなんとかなる。帰り道で、私を探しに来てくれた大人に会えるはず!たくさん怒られて、たくさんごめんなさいして、たくさんお母さんに甘えよう。そう強く決心して歩き出そうとした矢先。
「グァ〜〜〜!!!!!!!!!!」
咄嗟に転がったおかげで無傷で済んだものの、父親との思い出でもある丸太が、1匹の魔獣の突進と切り裂きにより、無惨に砕け散った。
「キャーッッ!!!!!」
そして、初めて魔獣の無慈悲な一撃を目の当たりにした少女は、急激に足が震えだし、その場から立つことが出来なくなった。
「ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。ごめんなさい。ごめんなさい。」
頭の中が真っ白になり、何にと言わず、ひたすらに謝り続ける少女。
「助けてください神様。助けてください神様。何でもします。お母さんの言うことをしっかり聞きます。いい子にします。悪いこともしません。だから、助けてください!神様!!!!!!」
そんな小さい女の子の、文字通り命懸けの神への祈りの前に、人の言葉を理解しない、ただ目の前の生き物を殺し、肉を欲のままに喰らい尽くすという獣の本能のまま牙を少女に突き立てようとしたその時。
「あ〜、もうあのバカガミ。ぜってぇ許さん。」
少女の前に、少女の知る鉈や、勇者ごっこに使うような剣とは違う、とても美しく、そして心を奪われる様な輝きを放つ武器を持った男性が突如して出現し、その武器で魔獣を吹き飛ばした。
「うぉっ!いってぇ。ってかこえぇし、かてぇし、強そうだし。俺勝てねぇよ。あっ、嬢ちゃん。あとで話があるからとりあえず少し離れて隠れてて。」
全く頼りにならなさそうな発言をした青年は、改めて武器を魔獣へと構え直すのだった。
「いやっ、もうさっ、俺の力じゃ絶対勝てないじゃん!これヤバいって。どうすんのっ!」
紙一重、魔獣の攻撃を避けながら、その手に持つ武器、、、刀で切りつけるも、ある程度魔獣を傷つけることが出来ても、かすり傷が増えていくばかりだ。
職業柄、現代日本に住む普通の青年男性よりも体力などにおいては自信のある彼ではあるが、このままではジリ貧であり、むしろ先に彼の体力が尽きてしまうのは誰が見ても明らかである。
「どうすればいいか、教えてくれよ!アホ神!」
«全く、最近の若者は。教えてください、私が誰よりも敬愛する、見目麗しい神様くらい言えないのかね?»
頭の中に、『聞き覚えのある』少年の声が響いた。
「あぁ、もう分かったから。私が誰よりも敬愛する、見目麗しい神様、どうか私にどうすれば良いか教えてください!」
«よろしい。それでは、神様であるこの僕が君にどうすればいいか教えてあげよう。良いかい。大声で「変身!」と唱えれば、あとは君の心が理解するはずだ。それが僕が君にあげた君の、君だけのスキル、<英雄見参>だ。»
脳内に響いた声が止むと同時、刀を持った青年は
「変身!」
そう叫んだ。すると、青年の身体が眩しく光り、青年の元いた場所には、、、
「ぎゃー!!!!!!」
恐らく隠れながらもこちらを見ていた少女が叫び声をあげ、失神したのを見た。
「どべこた?なサがあった?」
、、、?自分の声とは明らかに異なる、野太い声が響いた。