プロローグ
初投稿。
気が向くままに書いていけたらなと思います。
目指せ完結。
「もぉ!なんでこんな目に遭わないといけないのよ!生きて帰ったら絶対あのくそばばあ〆てやる!」
少し前から薄く広い雲が出ている為、いつもより暗い森の中を1人の少女が叫びながら走っている。そんな少女の背を追うのは体長3mはある2体の狼に似た獣である。
「はぁ、はぁ、はぁ、こんな所に魔獣なんて出た事がないのに。なんでなのよ!あぁもう!」
普段から事ある毎になんとか流の武術を文字通り体に染み込ませる形で教えてくる祖母が、珍しくしおらしい声で、「ミリオの実を切らしたから森に行って採ってきて欲しい。そういえばまだアンタにかけてない技があるんだよねぇ。」と言われたからには、数少ない村の子どもの中では敵うものがいない程の強さを持ちながらも、日頃の祖母の特訓により、祖母に対して若干トラウマが刻まれつつ今年で十の歳になる少女は、二つ返事で単身森へと駆け込むのは必然であった。
▷▶︎▷
ミリオの実は村の周囲に成る木の実で、子どもの遊び場から少し道を外れれば見つかるもののため、少女はまずはそこを重点的に探していた。しかし、今日は全く見つからず、かと言ってそのまま戻れば祖母に何をされるかと想像した瞬間、子どもは入ってはいけないと言われる森の奥へ自然と足が動くのだった。
昼過ぎから探し回り、陽が沈みかかった所でようやく目当ての実を見つけた少女は、ようやく自分が迷子になりかかっている事に気付き、なんとか自分の足跡を辿って村へ戻っていく。その道中、慣れないことをして疲労が溜まっていた為か少女は気づかなかった。肉に飢えた目をした魔獣が少女の側まで迫っている事を。
そこで冒頭に戻る。
「なにか、なにか無いの!?」
もし仮に村の周囲までうまく逃げ延びることが出来ていれば、異変を察知した大人たちが駆けつけていたのかも知れない。しかし、少女はただひたすらに、やみくもに逃げているため、どんどん子供の遊び場や村そのものから離れていく事に気づかない。
一心不乱に逃げる少女の耳に、水の流れる音が入ってきた。恐怖と焦燥感、そして疲労のピークに達していた少女は少しでも環境を変えれば何とかなるという思いで、その音の方へとがむしゃらに走っていくのであったがその時。
ドガッ
木の根につまずいてしまった少女は、そのまま急斜面を転がり落ちて意識を失ってしまうのだった。
▷▶︎▷
『いいか、森の中は何があるか分からない。しかも、この村は山のせいで地形が悪い。だから、もし万が一にも森の奥に行くことがあったらいつも以上に足元を見て歩きなさい。』
『何を言ってるの。万が一もなにも、子どもが森の奥なんて絶対行っちゃいけないし、お義母さんが許すわけないじゃない。ほら、この子もお義母さんが怖いから絶対そんなことしないって。ほら、ご飯にするわよ。』
...はっ!もしかして私気を失ってた!?
無理やり擦り傷だらけの重たい身体を起こして辺りを見渡す。彼女の今までの人生で最悪の日の中でも神は見放さなかったのか、魔獣はまだ周りにいない様だ。
そういえば、確かこんな事を父と母がそんな話をしていた気がする。もっとちゃんとその時に話を聞いておくべきだったな。まさか、そのおばあちゃんがきっかけで森の奥まで行くなんて思いもしなかったけど。
「でも、どうせ目が覚めるなら夢の中ででも良いからご飯食べたかったなぁ。お母さん達心配してるだろうなぁ。」
蓄積した疲労と痛みにより少女の気力も底を尽き、顔に悲壮感が浮かぶと共に、祖母からの拳骨以外では久しぶりに目に涙が浮かんできた。もう限界だ、動きたくない。
そう彼女が思うのも無理はない。するとその時、
グゥ〜
盛大な音を立てて少女のお腹が鳴った。いつもの元気いっぱいの少女を想起させるような、まだ何とかなると身体が叫んでいるような、そんな音だ。
「そっか、私お腹空いてるんだ。ちゃんと何か食べて動き出せって言ってるんだろうなぁ。」
いつ魔獣が近くにやってくるかも知れない環境の為、本当は大きく笑いたいところではあるが、我慢してくすっと小さく笑いながら改めて周りを見渡すと、見慣れた木の実と傷薬を作るために使う葉が所々に生えていた。
...頑張ろうと思ったら、見える景色も変わるんだな。
帰ったら家族や友達に教えてやろうと心に誓いながら、小腹を満たし、噛んだ薬草を擦り傷に塗りつけていった。
「考えろ私。動物は匂いに敏感なのは知ってる。転がり落ちて泥まみれになったから臭いは大丈夫なはず。今はあの魔獣と鬼ごっこをしてるんだ。朝まで逃げ続ければ、お父さんたちがきっと私を見つけてくれる。そしたら私の勝ちだ。」
そう呟くと、1歩ずつ1歩ずつ足を踏み出し、なんとか複数の太い木の根が入り組んでで出来た、子ども1人なんとか入れそうな穴を見つけその穴の中に身を隠し一晩を過ごすのであった。
何度も目を覚ましては周りを確認しながら、浅い眠りを何度かしたおかげで多少は体力の回復した少女は、再び森の中を歩き出す。
▷▶︎▷
幸いにも、晴天に恵まれ、陽が差して幾分か歩きやすくなった森の中を、改めて水の流れのする方へ歩き出す。
程なく、水の流れる場所、川へとたどり着いた。
「あっ!この川って何回か連れてきて貰った事がある川かも!どこら辺か分からないけど、昨日は転がって落ちたから上に向かって歩いてけば、知ってる場所に着くかも!」
そう自分を奮い立たせ、多少なりとも希望が見えてきた事もあり、更に身体を動かして上流へと向かうのだった。
⦅グルルルルルルル、、、、⦆
警戒はしていたが、あと少しという気の緩みでだいぶ疎かになっていた為、すぐ側まで魔獣が近づいてきている事に気づかないまま。