↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
7/45

第7話 美少女姉妹の親の服も脱がしてみました

「君達の父親がワークスの領主様だって!?」


 ワークスの領主であるヤマツミ伯爵はここヒノト王国でその名を知らない者はいないだろう。

 かつては王国一の冒険者として数々の魔獣の討伐を成し遂げた彼はその功績を王国に認められ、平民出身ながら伯爵位を与えられた程の人物だ。


 彼を主人公とした読み物や芝居も多く作られ、国内外を問わず民衆からも人気がある。

 既に一線は退いているが、もし彼がまだ若く現役だったとしたら勇者パーティに加えられていただろうな。


 俺もその偉大な英雄に一度はお会いしてみたいと思っていたところだ。


「さあクサナギさん、中に入って下さい」


 俺は二人に(うなが)されるまま入り口の門を開け、敷地の中に足を踏み入れる。


「お嬢様、よくぞご無事でお戻りになられました」


 庭を通りがかると二人の無事な姿を見た使用人達が集まってきた。

 一様にほっと胸をなでおろして安堵している。


 その時、屋敷の中から怒鳴り声が響いた。


「このバカモノがぁ!」


 声のする方向を見ると、立派な髭を蓄えた逞しい壮年男性が屋敷から出てきた。

 貴族の身なりをしているが、その厳つい面構えはまさに歴戦の古兵(ふるつわもの)といった雰囲気を醸し出している。


 名乗るまでもない、俺はこの人物が誰なのかひと目で分かった。

 彼がチルとサクヤの父でありワークスの領主であるヤマツミ伯爵に間違いはないだろう。


「チル、サクヤ、お前達俺に断りもなく何をやってるんだ! こんな書置きだけ残して行きやがって」


 そう言って伯爵は一枚の紙を投げつける。

 その紙には「火焔山に薬草を採りに行ってきます。二、三日で帰りますので心配しないで下さい。チル&サクヤ」と書いてあった。


「お前達の身に何かあったら母さんがどれだけ悲しむと思う? もう二度とこんな勝手な真似はするな」


「ごめんなさいお父様……」


「だってあたし達だけで火焔山へ薬草を摘みに行くって言っても、お父様は絶対許してくれないでしょう」


 しゅんとして首を垂れるサクヤとは対照的に、姉のチルは口を尖らせて反論をする。


「当たり前だ。近頃火焔山に山賊が住みついたという話は聞いているだろう。もう少しお前達の帰りが遅ければ火焔山に救援の軍隊を派遣するところだったぞ」


「だからといって誰かが薬草を取りに行かなければいけなかったでしょう」


「お前達が行く必要はなかったと言っている。俺だって弱っていく母さんを何もせずに眺めていた訳ではない。ずっとかつての冒険者仲間に声をかけて火焔山へ向かう者を募っていたのだ。どの道近い内に薬草は手に入っただろう」


「むー……」


 それでもチルは納得していないという表情をしているが、俺の立場としては伯爵の意見に賛成をせざるを得ない。

 冒険者ならともかく、もし軍隊が火焔山に入ってきたら山賊団との衝突は避けられないだろう。

 そうなれば俺の村は軍隊に占領され、俺の安寧の地が無くなってしまう。


 チルと伯爵の言い争いが終わった後、伯爵と使用人達の関心は姉妹と一緒に帰ってきたこの俺に集まる。


 伯爵が怪訝そうな顔でチルとサクヤを問い詰める。


「それでお前達、この者は誰だ?」


「はい、火焔山でお世話になったクサナギさんです。このお薬もクサナギさん達に譲って貰いました」


「火焔山で……か」


 伯爵は眉を顰めて不信感をあらわにする。


 彼が今考えている事は手に取るように分かる。


 山賊のねぐらとなっている火焔山にいた人間がまともな人間であるはずがない。

 山賊かその関係者と考えるのが自然だろう。

 そしてその不審者から渡されたという怪しい薬を妻に飲ませようとはしないだろう。


 しかし姉妹の母親が病で苦しんでいる今、こんなところで腹の探り合いをしている時間が勿体ない。

 俺は自らの素生を明かす事にした。


「ヤマツミ伯爵、俺は大魔法使いツクヨミの弟子のクサナギといいます。一年前に勇者パーティから抜けた後ずっと火焔山で自らを鍛え直していました。火焔山に山賊達が住みついているのは事実ですが、俺は山賊ではありません」


「それを信用しろというのか?」


「どうすれば信じて貰えますか?」


「お前が大魔法使いツクヨミの弟子というのなら、それなりの魔法が使えるのだろう。それを見せてみろ」


「魔法ですか……」


 もし俺が炎や氷の魔法を使いこなす事ができれば話は早かったのだが、生憎俺が使える魔法は相手の防御力を下げるガードレスと、相手の防具その物を消滅させるクロースレスだけだ。


 どちらも見た目のインパクト的に説得力に欠けるな。


 などと思案に暮れていると伯爵が痺れを切らせて怒り出した。


「どうした、魔法ひとつ見せられないのか? やはりお前は山賊の回し者という訳か。ならば容赦はせん! おい、あれを持ってこい」


「はい、旦那様」


 伯爵の指示で使用人が持ってきたのは自身の背丈の倍はある大剣だ。


 伯爵はその剣を受け取るとその切っ先を俺に突き付ける。


「お前が本当にあのツクヨミの弟子だというのなら、既に一線を退いた俺に後れを取る事はあるまい。魔法で何とかしてみろ!」


「ちょ、落ちついて下さいお父さん」


「誰がお義父さんだ!」


 そういう意味で言ったのではないが、激昂した伯爵は問答無用で俺に斬りかかってくる。


 俺はそれを後ろに下がって回避する。


 振り下ろされた大剣はそのまま地面に激突し、その衝撃で地面が二つに割れた。


 何が一線を退いただ。

 これだけの腕力があればオーガやサイクロプスとも正面からやり合えるだろう。

 あんな攻撃をまともに食らったらひとたまりもない。


 俺は更に後ろに下がって伯爵から距離を取る。


「逃げるな小僧!」


「くっ……あれ?」


 伯爵は逃げる俺を追ってくるがどう見ても足が鈍い。

 いくら歴戦の英雄とはいえ、年齢による足腰の衰えには抗えないようだ。


「ま、待て小僧……はぁ、はぁ」


 伯爵は息を切らせながら俺を追いかけてくる。

 見てるこっちが辛くなってきた。

 こんな無駄な戦いは早く終わらせよう。


 俺は呪文の詠唱を始めながらチルとサクヤにウィンクでアイコンタクトをする。

 彼女達なら俺が今から何をやろうとしているのか察してくれるはずだ。


「俺の娘に色目を使うな!」


 伯爵は俺の行動に対して更に誤解をして頭の血管が切れそうなくらい怒り狂っている。


 完全に我を失っているな。

 早く楽にしてあげよう。


「……クロースレス!」


 俺が呪文の詠唱を終えた瞬間、赤い光と共に伯爵の身を包んでいた全ての物が弾け飛んだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。