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第43話 最強の助っ人


「魔王オロチが復活しただと? ムスヒはどうなったのだ!?」


 悲痛な叫びを上げながら問いかけるタカミ王子に、ヤマツミ伯爵が答えた。


「殿下、伝承によればかつて勇者スサノオはオロチを打ち破ったものの完全に止めを刺すには至らず、聖なる力を宿した宝石の中にオロチを封印したといいます」


「宝石か……ムスヒが指輪として身に付けていたあれがそうなのだな」


「はい。長く行方知れずになっていましたが、どこかで手に入れたのでしょう。聖なる力は負の力によって相殺されます。ムスヒの邪悪な心と封印されていたオロチの魔力が共鳴して封印が破られてしまったのでしょう」


「何という事だ。するとムスヒはもう……」


「はい、既にその魂ごとオロチに取り込まれておりましょう」


「くっ、愚かな弟だったが憐れな事だ……」



「シャアアアアアアア!! キサマラミナゴロシダ!」


「ぐああああああ!」

「うわああああ!」


 オロチは八本の尾を鞭のように振り回し、周囲の兵士達を次々と薙ぎ払っていく。

 特に既に主を失って指揮系統が完全に崩壊したムスヒ派の兵士達は次々とその餌食になっていった。


 しかしそれを黙って見ている者達ばかりではない。


「これ以上やらせはしないわ! ……ガンマレイバースト!」


「魔王とやらに我が拳がどこまで通じるか試させて貰おう。疾風突戟掌!」


「みんな準備はいいかニャ?」

「当然だミャ! ……リキッドブレイク!」


「このヨイチの一矢を受けよ! ラグナロクアロー!」


「このサヌキーノ様の剛斧で唐竹割りにしてくれる! 必殺アースクラッシュ!」


 イザナミ、カグツチ、エキズチックスが先陣を切ると、ワークスなどで活躍していた冒険者達それに続いて持てる力の全てをオロチにぶつける。


「やったかミャ!?」

「いや……」


 全員が渋い顔でオロチを見つめる。


 全くダメージがない訳ではない。

 攻撃を続けている間は足止めにもなっている。


 しかし、山のように巨大なオロチの身体にとっては虫に刺された程度のダメージでしかない。


「俺達人間ごときがこんな化け物を相手にする事自体が元々無理な話だったんだ……」

「もう駄目だ、王都は捨てて逃げよう……」


 一部からは諦めの声も聞こえてきた。


「まったく情けないミャ。それでも魔物討伐を生業とする冒険者かミャ?」

「マドウカさん、そんな事言ってもどうやって戦えば良いんだよあんな化け物……」


「それを今考えてるミャ……」







「正面から撃ち貫けばいいだろ! ……ガードレス!」


 オロチと対峙している冒険者達の視線が、呪文を詠唱しながら走り寄ってきた俺、クサナギに集まった。

 少し遅れて後ろからヨイヤミもついてくる。


「あ、あんたは……クサナギさん!?」

「やっと来たかミャ! 遅いミャ!」

「ふっ、ヒーローは遅れてやってくるという事か」


「後ろの娘は……クサナギさん、事情は後でじっくりと聞かせて貰いますよ」


 ヨイヤミと因縁があるイザナミだけは複雑な表情をしていたが、そんな事は後回しだ


 俺のガードレスの効果により、オロチの身体が青白い光に包まれている。

 クシナダの脱皮の例もあるので、同じく蛇型の魔獣であるオロチに対しても俺はクロースレスではなくガードレスを選択した。


「みんなもう一度オロチに集中攻撃を仕掛けるんだ! それからヨイヤミは俺の攻撃を真似してくれ。恐らく奴にも闇の魔法は通じないからな」


「分かりました」


「OK。いくわよ、ガンマレイバースト!」


「食らえ、疾風突戟掌!」


「狙い撃つ! ファイアーアロー!」


 俺の指示で冒険者達は再びオロチに向けて一斉攻撃を行う。


 そして俺は足元の砂を掬い上げオロチに投げかける。


「必殺、メテオリックスターサンド・トゥワイス!」


 ヨイヤミも指示通り俺を真似して砂を投げる。


「め、めており…………す」


 何故そこで恥ずかしがる?




「グシャアアアアアアアアア!!」


 これにはオロチもたまらずに悲鳴を上げてのた打ち回る。


「やったかミャ!?」


「……効いてる、効いてるぞ!」


「よし、このまま一気に畳みかけるぞ! まずは一番右の首に集中攻撃だ!」


「任せて! ……ガンマレイバースト!」

「サンダースパーク!」

「デストロイファイアー!」



「ギシャアアアアアア!!!!」


 冒険者達の集中攻撃を浴びたオロチの首の一つが千切れ飛んだ。


 辺りは切断された首から噴き出した血の雨で真っ赤に染まる。


「血、汚い……ワールドオブダークネス」


 俺達の頭上からも血液が降り注いだが、返り血で汚れるのを嫌ったヨイヤミが俺達の頭上に闇を呼び出すとそれが傘の役目を果たしてくれた。


「よし、もう一度だ! 次は左の首を狙う」


 俺は冒険者達に追撃の指示を出す。

 しかし、冒険者達の動きが明らかに鈍い。


「はぁはぁ、ちょっと待って、もう魔力がほとんど残っていない」


「俺の体力も限界だ……」

「私も……どうして……?」


「まだ戦いは始まったばかりだぞ、何を言ってるんだ!?」


 もう一息でオロチを倒せるというのに殆どの冒険者が行動不能になっていた。


「クサナギ、オロチの血……」


「血? ……まさか!?」


 ヨイヤミの言葉に俺はハッとして周囲を見回すと殆どの冒険者がオロチの返り血を浴びている。

 そして動けなくなっているのはその血を浴びた者ばかりだ。


「奴の血液には毒……いや呪詛の効果があるのか!?」


 血を浴びていない者は俺とヨイヤミ以外ではイザナミ、カグツチ、エキゾチックスのメンバーぐらいか……。

 これでは明らかに火力不足だ。


「くそっ、ここまで押しているのに倒しきれないとは!」


 オロチは首を一つ落とされたとはいえ致命傷には程遠い。

 形成は完全に逆転した。

 オロチは血を浴びて動けない冒険者達に完全な止めを刺す為に八本の巨大な尾を振り上げる。


「クサナギ、来る!」


「くそっ、撤退だ! 一人でも多くの冒険者を助けて逃げるぞ!」


「シャアアアアア! イッピキタリトモニガスモノカ!」


 無慈悲にオロチの尾が振り下ろされた。







「……いでよ、聖なる結界ホーリーウォール!」


 ガガアァン!!




 オロチが振り下ろした八本の尾は冒険者達に届く前に突如空中に現れた白く輝く壁に阻まれて制止していた。


「ナンダト……ダレダ、ジャマヲスルモノハ!?」





「こんなものかしら?」

「ぎりぎり間にあったでござるな」

「辺境の魔獣の討伐から戻ってきたらすごい事になっていますね」

「あなたが魔王さんですか? 倒し甲斐がある相手ですね」



「チル、サクヤ、他の皆も……」



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