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第40話 挙兵しました


 タカミ殿下の体調も回復し、いよいよ王都へ攻め入る時がやってきた。


 ムスミ討つべしの檄文を全国の領主に飛ばすと、心ある者は皆それに呼応して火焔山に集結した。


 火焔山の山賊達五百人にタカミ殿下の召集に応じた将兵が加わり、その数は七千人にまで膨れ上がっていた。

 タカミ殿下の指揮の下、王都に向けて進軍する七千の軍勢の後ろにはヤマツミ伯爵率いるワークス軍三千が続く。


 一方のムスヒ一派の将軍達は二万の軍勢でそれを迎え撃つ。


 王都に住む民には戦火に巻き込まれてはかなわないと脱出を試みる者もいたが、ムスヒ一派の者達は城門を固く閉ざしてそれを拒んだ。

 いざという時には民衆を人質として利用するつもりだろう。


 しかし、王都を守る将兵の内半数である一万人はタカミ殿下を主と仰いでいる者達だ。

 彼らはタカミ殿下の合図とともに内部から城門を開く手筈になっている。

 ムスヒ達の思い通りにはさせない。


 そして俺とヨイヤミとエキゾチックスのメンバーは別働隊として独自の判断で動く事になっている。


 俺が開戦と同時に王都全体にクロースレスをかけて一気に勝負を決める作戦も考えたが、王都内に潜伏している味方や無関係の民衆をも巻き込んでしまうのと、兵士達の裸を見たヨイヤミが戦闘不能になってしまうのでクロースレスは最後の切り札として取っておく事にした。


 タカミ殿下は城門の前まで軍を進め、そこに陣を敷く。


 その間に俺達別働隊は裏門から城内への侵入を試みる。

 ヨイヤミの姿を消す魔法と、エキゾチックスの液体化魔法の合わせ技で侵入は容易だった。


 戦闘が始まれば兵士だけでなく多くの民衆も巻き込まれてしまう。

 犠牲者を最低限に抑える為には敵の総大将を捕らえてしまうのが一番早い。


 俺達は姿を消しながら道中すれ違ったムスミ一派の兵士達には目もくれずに一直線に王宮を目指す。




◇◇◇◇




「クシナダ、これは一体どういう事だ! クサナギの暗殺に失敗しただけではなく、この王都まで反乱軍の進撃を許すとは! 話が違うではないか!」


 ムスヒは玉座から立ち上がり錯乱したように喚き散らす。

 そんなムスヒの様子を冷めた目で眺めていたクシナダ王妃は溜息をつきながら口を開いた。


「あなた、仮にも一国の王がこの程度の事でうろたえないで下さいな。兵士達の士気にも関わりますよ」


「この程度だと? お前には王都を囲む地平線を埋めつくさんばかりの大軍が見えないのか? このままでは俺もお前も破滅だ!」


「うふふ、虫けらが一万匹集まったところでそれが何だというのです?」


 クシナダは余裕の笑みを浮かべながら懐から取り出した禍々しい造形をした指輪をムスヒに渡す。


「何だこれは?」


「これは魔王様のお力を宿した魔界の宝玉ですわ。これを身に付けた者は魔王様のお力をその身に宿す事ができます」


「……その力があれば反乱軍どもを撃退できるのだな?」


「ええ、魔王様のお力を前にして生きていられる人間など誰一人おりませんわ……くすくすくす」


 ムスヒが半信半疑で指輪を嵌めると、その刹那に恐ろしい程の魔力が身体の中に流れ込んでくるのを感じた。


「おお、これは……なんと素晴らしい! この力があれば俺は誰にも負けぬ。反乱軍などこの俺自らの手で根絶やしにしてくれよう! ふはははははは!」


 ムスヒは高笑いをしながら王宮を後にして城壁へと向かった。






「そう……生きていられる人間など誰ひとりとしておりはしませんわ。誰ひとりね」




◇◇◇◇





「クサナギ、ヨイヤミ感じたかニャ?」

「ああ、今強大な魔力を持った何かが王宮から城門の方へ向かって行ったのを感じた」

「い、今のはもしかして……」


 ヨイヤミは震える声で呟くと、突如王宮へと走り出した


「待て、単独行動は危険だ!」

「クサナギはヨイヤミを頼むミャ! 私達はあの魔力の持ち主の所へ行くミャ!」

「分かった、くれぐれも気を付けてくれ!」


 俺はヨイヤミを追いかけて王宮へ走る。

 魔法で姿が消えているといっても、俺達のような高位の魔法使いは身体から溢れ出る魔力を感知する事ができる。

 王宮内には宮廷魔術師もいるだろう。


 以前エキゾチックスのメンバーに王宮内の潜入を依頼した時は魔力を持たない戦士ミケが内部調査を担当していたので感知されなかったが、生憎魔法使いである俺とヨイヤミはその魔力の量も膨大だ。

 何時察知されてもおかしくはない。


 逆に言えばそれは俺達も同じだ。

 もし王宮内に強大な魔力を持つ者がいれば少し離れていた場所からでもそれを感じる事ができるだろう。


 そして俺は謁見の間から流れ出してくる二つの大きな魔力を感じた。


「一人はクシナダ……間違いない」


 ヨイヤミ呟きながら謁見の前に突き進む。


「おっと、ここから先は行かせませんわ」


 謁見の間を目前にして、深紅のローブを纏った一人の女性が俺達の前に立ちはだかった。

 先程謁見の間の中に感じたもうひとつの大きな魔力の持ち主だ。


 俺はこの女性を知っている。

 宮廷魔術師長を務めるウズメ氏だ。

 齢六つにしてありとあらゆる魔法の基礎を習得し、以後魔法学校の入学から卒業するまでの九年間常に主席を維持していたという天才魔法使いである。


「姿を消してうまく隠れているつもりなんでしょうけど、魔力がダダ漏れなのよね。謁見の間にネズミの侵入を許したとなったら私達の立つ瀬がないのよ。悪いけど退場して貰うわ。この世界からね!」


 ウズメは手にしたロッドを掲げ、魔法の呪文の詠唱を始める。

 確かウズメが最も得意とする魔法は無条件で対象の存在そのものを消滅させるという恐ろしい魔法、バニシュデッドだ。


 但しこの魔法は有効射程距離は短く、呪文の詠唱にも時間がかかるのが弱点だ。


 こんな所で時間を食っている場合ではない俺は一切の躊躇いなく高速で呪文を詠唱する。


「……クロースレス!」


 その瞬間、ウズメの身体が赤く輝き、パァン! という破裂音と共に身に纏っている全ての物が弾け飛んだ。


「え? ちょ、ちょっと待って! 何よこんなの卑怯……」


「うるさい。……ワールドオブダークネス」


 ヨイヤミの身体から闇が円形に広がり、ウズメを飲み込んだ。


「何これ? 何も見えない!? こ、呼吸もできない……あっ……」


 少ししてヨイヤミの放った闇が消えた頃には、意識なく全裸で仰向きに転がっているウズメの姿があった。



 俺とヨイヤミはそれを一瞥だにせず謁見の間に踊り込んだ。



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