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第34話 光と闇


「イザナミさん滅茶苦茶強いじゃないですか!」

「あんなに強い魔法が使えるなら、本気に戦っていたらバトルトーナメントで優勝できたんじゃないですか?」


 イザナミの実力を目の当たりにしたチルとサクヤは目を輝かせながら捲し立てるが、当のイザナミはそんな二人から目を逸らしながら言った。


「私には大衆の目の前で全裸にされるリスクを受け入れるだけの度胸はありません」


 それを聞いたチルとサクヤはぷっと噴き出した。


「あはは、確かに。あたしも大衆に裸を晒すなんて絶対に耐えられません」

「クサナギさんの前でもまだ恥ずかしいですからね。当たり前ですけど」


 途端にイザナミが真顔になる。


「え? あなた達クサナギさんに裸にされたの? あの野郎、私にはチルちゃん達を守ってやってくれって言いながら、自分が手を出すってふざけてるの!? 今すぐ火焔山に戻ってとっちめてやるわ!」


「あ、いえ。それにはちゃんと理由があって……」


 誤解を招くような発言をしてしまったサクヤは大いに反省をすると同時に、怒り狂うイザナミの迫力に圧倒されていた。


「魔獣よりもずっと怖い……」




◇◇◇◇




「それじゃあそろそろ帰りましょうか」


 サギリは周囲に仕掛けたトラップを回収した後、鈺熊の解体作業に入る。

 通常は魔獣を討伐した証としてその頭部を持ち帰るのだが、生憎鈺熊の頭部はイザナミの光魔法で消し飛んでいるので金色に輝く全身の毛皮を証拠として持ち帰る事にした。


「解体が終わったでござる」


「お疲れ様。それでは王都へ帰りましょう」


 チル達が帰り支度を始める中、イザナミは付近の空気に言いようのない違和感を覚えて足を止める。


「イザナミさん、どうしました?」


「いえ、妙な気配を感じたので」


「森の中ですからね。そこら中に獣が潜んでいますよ」


「……そうね。じゃあ私はもう少しこの辺りの様子を見てから帰るので、あなた達は先に帰って下さい」


「はい、イザナミさん今日はありがとうございました」


 チル達はイザナミにお礼を言うと、帰りの馬車の待つ森の入口へと歩いて行った。


 イザナミはそれを見届けると、先程違和感を覚えた空間を睨みつけて言った。


「サクヤもこの邪悪な魔力を感じられないとはまだまだ魔法使いとしては未熟ね。そこにいるんでしょう、出てきなさい!」


「……私に気付くとはさすがですね」


 何もない空間から声だけが響く。


「何時まで隠れているつもりですか? 姿を現し名を名乗りなさい」


「その必要はない。あなたはここで死ぬから。……ダークネスファイア」


 刹那、空間からイザナミを目掛けて漆黒の炎が噴き出した。


「無駄よ! ……スターライトウォール!」


 イザナミは咄嗟に魔法で光の障壁を出現させ、それを跳ね返す。


「問答無用って訳ね。あなたのターゲットは私かしら? それともチルちゃん達? どっちにしろ、少し痛い目を見て貰ってから口を割って貰いましょうか! ……ガンマレイバースト!」


 イザナミの持つ杖の先から、光の矢が放たれる。


「無駄」


「なっ!?」


 しかし光の矢はその声の主に届く事なくかき消された。


「魔法が無効化されたですって!?」


「違う。光をも飲み込む暗黒の力。これが私の能力」


 その声がした場所を中心に、闇が円形に広がっていく。

 イザナミが気が付いた時には周囲は一寸先も見えない程の暗闇に包まれていた。


「何も見えない……身体が動かない……意識が……遠く……」



「クシナダ様、まずはひとり始末しました」




◇◇◇◇




「クサナギの兄貴、チルちゃん達が無事に鈺熊の討伐に成功したみたいですよ。次は翼竜山のワイバーン討伐に往くって話です」


「へえ、あいつらなかなかやるじゃないか。もうそこまで腕を上げたのか。またあいつらにポーションや必要な物資を届けてやってくれ」


 俺は火焔山で魔法の修行をしながらチル達勇者パーティの状況を聞くのが日課になっていた。


「鈺熊の頭部は完全に吹き飛んでいたそうです」


「なんだ、それじゃあやったのはイザナミさんだな。戻ってきたら約束の報酬を渡しといてくれ」


「へい」




 しかしそれからどれだけ待ってもイザナミは現れなかった。


 心配になった俺はジセン達にイザナミの行方を調べるよう命じたが、幻獣の森へ向かったのを最後にその姿を見た者は誰もいないという。


 状況から鈺熊を倒したのは間違いなくイザナミだ。

 その後イザナミの身に何かが起こったはずなのだが、イザナミ程の魔法使いがそこら辺の魔獣にやられるとは考えにくい。

 死体がないという事はどこかで生きていると思いたい。




◇◇◇◇




 夜、王宮にある王妃の寝室には王妃クシナダに跪くひとりの少女の姿があった。

 漆黒の髪と瞳、そして褐色の肌をしたその少女は、文字通り闇夜に溶けこんでいるように見える。


「そうか、裏でクサナギが動いていたのか。ご苦労だったわねヨイヤミ」


「はっ。しかし、チル達勇者パーティもこの短期間で著しく腕を上げています。早く手を打たないと真の勇者として覚醒するのは時間の問題かと」


「まったく忌々しいことね。かつて魔族の王だったオロチ様が人間の勇者に封印されてからというもの、ここヒノト王国では平和な世になろうとも常に勇者と呼ばれる優れた武勇を持つ者をひとり選出し、決して勇者という存在が途絶える事がないように徹底されてきた。そのおかげで我々魔族は長きに渡り人間達への反撃の隙すら与えられなかったのよ」


 クシナダは眉間に皺を寄せながら下唇を噛み締めて積年の怒りを露わにする。


「心中お察しします」


「……それが最近になって王国内の政治の腐敗と共に先代勇者ヤマトやムスヒのような愚者が現れた。ムスヒを取り込むのは容易かったわ。先代国王を毒殺し、兄タカミを病という理由付けで離宮に幽閉して王座を乗っ取る策を持ちかけたらすぐに飛びついてきた。後はムスヒを操ってこの国から勇者というシステムを撤廃させるだけ……ようやく我々魔族が人間達に復讐できる日が近付いてきたはずなのに!」


「魔族の悲願成就の為にあの勇者を消しますか?」


「確かにチル、サクヤ、ネネコ、サギリの四人は突出した素質を持っている。今はまだ未熟でもいずれは我々魔族にとって脅威となるでしょう。本当なら氷竜相手に四人まとめて死んでもらうつもりだったんだけどね。でもそれ以上に脅威なのはあのクサナギとかいう男。まずはあの男を殺しましょう」


「はっ、仰せのままに」




















 ……ピチョン。





 その時王妃の寝室の天井から一滴の水滴が落ちたのをクシナダとヨイヤミの二人は気付かなかった。


「……とんでもない話を聞いてしまったミャ」



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