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第20話 脅威の格闘王

「それではワークスリッターの選手とカグツチ選手は競技場へ移動して下さい」


「よし、俺達の出番だ。チル、サクヤ、準備はできているか?」


「はい、クサナギさん!」

「いつでもOKです!」


 ついに準決勝が始まる。

 俺はチルとサクヤを連れて競技場へと向かった。


 競技場の中央では既にカグツチが俺達を待っていた。


 S級冒険者パーティエキゾチックスすら退けた強敵だ。

 俺達も最初から全力で当たらなくては。



「チル、サクヤ、試合開始と同時に俺がガードレスを使う。お前達は一撃でいいから攻撃を当ててくれ」


「クロースレスの方じゃないんですね」


「ああ、どうせカグツチは軽装だ。奴の衣服そのものに防御力は皆無だ。剥がす意味もないだろう」


 俺はガードレスの魔法だけで充分勝算はあると判断した。

 それにあれ程の武人を辱めるのは気が引けるという理由もある。



「それでは双方構えて……始め!」


 審判の合図でチルとサクヤがカグツチに向かって行くのと同時に俺は呪文の詠唱を開始する。


「……ガードレス!」


 その瞬間カグツチの身体は青白く光り出した。

 この視覚効果はガードレスの魔法が効いている証拠だ。


「よし、今だ!」


「はい!」


 まずはチルが手にしたロングソードでカグツチに斬りかかる。


 先程の試合のようにカグツチが籠手で防御をしようとすればこちらのものだ。

 鋼鉄の籠手程度なら俺のガードレスで防御力が皆無になっているはずだ。

 ロングソードで斬りつければ粉々に砕け散るだろう。


「ふっ!」


 しかし俺の思惑とは異なり、カグツチは回避を選択した。


「まだです! ……ライジングサンダー!」


「ふっ!」


 すかさずサクヤが電撃魔法で追撃するが、カグツチはそれすらもかわしてみせた。


 いくら防御力が下がっているとはいえ、攻撃が当たらなければ意味がない。


 このカグツチという男、見た目と違ってかなり慎重な戦い方をする奴だ。


 攻撃がダメなら口撃だ。


「格闘王カグツチともあろう男がこんな少女達の攻撃を恐れているのか? 逃げてばかりいないで、さっきの試合のように正面から受け止めたらどうだ?」


 俺はカグツチを煽って真正面からぶつかり合いをするよう誘導を試みるが、カグツチは俺の挑発を軽く受け流す。


「俺が警戒しているのはこいつらではない、お前だ。今俺に何かの妨害魔法をかけたのだろう?」


 ご名答。

 さすがは歴戦の猛者だ。

 青白く光り出した自分の身体を見て何らかの妨害魔法をかけられたと判断し、注意深くこちらの動向を探っている。


 基本的に支援魔法や妨害魔法は実際に効果が出ているのかどうかを使用者に認知させる為に対象者の身体が淡い光に包まれるようになっている。


 味方がかけた魔法ならば支援、敵がかけた魔法なら妨害と相場が決まっている。


 ひとりで戦っているカグツチには支援魔法をかけてくれる味方はいないので、何らかの妨害魔法がかけられているのは自明の理だ。


 それがどんな効果なのかまではまだ気付かれていないはずだ。

 ならば気付かれる前に速攻を仕掛けるのみ。


「ふむ。俺の動きを阻害する魔法ではなさそうだな。それに筋力も衰えていない。幻覚が見えている訳でもなさそうだ」


 カグツチは考えられる妨害効果をひとつずつ確認しながら潰していく。


 しかし防御力の低下は実際に攻撃を受けてみない限り自力で気付く事はない。

 そして気付いた時にはもう勝負がついている。

 そこが狙い目だ。


「チル、攻め手を休めるな! サクヤ、点の攻撃は避けられる。面の攻撃をするんだ!」


「はい、クサナギさん!」

「やってみます!」


 チルが矢継ぎ早に攻撃を続けてカグツチの注意を引き付けている隙にサクヤは呪文の詠唱を始める。


「フローズンウィンド!」


 サクヤの杖の先から吹雪が噴出してカグツチを包み込む。

 この魔法ならいかにカグツチといえども避けられまい。





「お前達は先程の試合を見ていなかったのか?」


 カグツチは吹雪が自身に届く直前、両掌をすり合わせて摩擦熱で炎を作り出す。

 炎は瞬く間に吹雪を蒸発させ、カグツチの身体には雪の欠片一粒も届かなかった。


「その程度か? 先程の相手の方がまだ歯応えがあったぞ」


 俺のガードレスの魔法がかかっている以上一発でも攻撃を当てる事ができれば俺達に勝機はあるのだが、かすりさえしないとは計算外だ。


 何か手はないか……。

 俺は頭を捻って次の作戦を考えるが、それを思いつくまで待ってくれるような相手ではない。


「それでは次はこちらから行かせて貰うぞ。……はあっ!」


 カグツチは気合と共に拳を地面を殴りつける。

 先の試合で見せた周囲に衝撃波を発生させる技だ。


「サクヤ!」


「任せてお姉様! ……エンチャントインパクト!」


 しかし彼女達も負けてはいない。

 咄嗟の判断でチルはサクヤの衝撃魔法を剣に纏わせて衝撃波を切り裂き、威力を相殺する。


「衝撃には衝撃、上手くいったわ」


 チルはほっと胸を撫で下ろす。


「戦闘中に油断をするとはまだまだ未熟」


「え?」


 チルが気を抜いた一瞬の隙をカグツチは見逃さなかった。


「疾風突戟掌!」


 カグツチはその脚力で一瞬でチルとの距離を詰め拳を突き出す。


「きゃあああああっ」


 その一撃をまともに受けてしまったチルは後方へ吹き飛び、競技場の壁に激突する。


「チル、大丈夫か!?」


 俺の声に返事はない。


 すかさず医療スタッフが駆け寄って様子を確認すると、チルは完全に気を失っていた。


「チル選手戦闘不能!」


 審判の判定が下り、医療スタッフがチルを競技場の外へ連れ出して治療を開始する。




「どうやらお前達も俺の相手ではなかったようだな」


 カグツチは不敵な笑みを浮かべた。


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