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星界の温床

 


入学式を終えた学生は自由時間を与えられ、

フロアーで思い思いに固まっていた。



そんな中全身をフードでおおった

インド代表のアイラ・ラウは、

居心地の悪さを覚えていた。



学生たちは大体は同じ出身国の代表同士で、

かたまっているのだが、

インド代表は彼女一人だった。



そうでなくても、

まったく違った文化をもつ国の学生たち。



インドでは考えられない露出ろしゅつたむろしている姿は、

アイラの目にはストリップ劇場さながらに映り、

彼女には、そういったお店に迷い混んだような

違和感がぬぐえなかった。


いやむしろ自分一人が、全身を隠すような姿に、

まるで世界の異物になったような、

いたたまれなさと落ち着きなさを感じてもいた。


そんな私を見かねたのか、

コーディネーターのイーサンという女性のかたが、

先ほどからフロアーを案内してくれていた。


イーサンいわく、

彼女は学生のコロニー内での生活を

サポートするのが仕事らしい。



『顔色がすぐれませんが大丈夫ですか。

 アイラさん』


彼女の親切しんせつはありがたいが、

今は一人になりたい気分だった。



『親切にしていただいてすみません。

 あとは一人で回れますのでお気遣きづかいなく』



そう言って彼女はイーサンと別れ、

一人フロアーを歩いていた。



目的もなく。



いや、目的ならあった。


身寄りのない自分に残された最後の家族、

じいさんお祖母ばあさん、従兄いとこを殺すこと。


全身をベールで包んだ女性アイラ・ラウは、

ここにいたるまでの仮定を思い出していた。



彼女の生まれた国は恵まれてはいなかった。


今だ古い因習いんしゅうの残る国インド。



カースト政の影響が色濃いろこく残る呪いの国。



そんな国で彼女は生まれた。



インド北部の農村で生まれた彼女の人生は、

その出生から波乱にみちていた。


彼女は決して、

すべての人から祝福され生まれた子ではなかった。



いやむしろ呪い憎まれ生まれた子供だった。



ただ彼女の両親だけが彼女を愛し、

生まれたのは事実だったが。


それでもその愛すべき家族は同じ家族に殺された。


彼女の両親の両親、

つまりはお爺さん、お祖母ばあさん、兄弟、

従兄に殺されたのである。


最近になりようやく交通網が整ってきたとはいえ、

彼女が生を受けたのは、

まだまだ閉鎖的へいさてきな階級差別の因習いんしゅうが、

色濃く残る場所だった。



インドではいまだに階級差別の意識が残り、

それは名字だけでその階級がわかるほどだった。



特に閉鎖的な地方では、

どこの誰がどの階級なのかはそこで住む

全ての住民が知る既成事実きせいじじつだった。



彼女の両親はそんな中、

身分の違いを越え愛し合った。


身分制度事態はとうの昔に法律により

廃止されてはいるのだが、

だからと言って差別が無くなったわけではない。


特に田舎のそれは厳しく、

両親は駆け落ち同然で彼女を生んだ。


そして彼女が生後まもなく、その事件はおこる。


身分の低い女性と所帯しょたいをもった父の家族が、

家に押し寄せ両親を殺したのだ。


つまりは父と母は、

その父と母に殺されたのである。


これ事態はこの国ではめずらしい事ではなかった。


良くある話の1つだ。


もちろん法律では禁じられた犯罪なのだが。


それでも殺さなければいけないほど、

その差別は根をはっていた。



自分の家族が身分の低いものと結ばれると言うことは、

その親戚一同が身分が落ち差別を受けることになる。


今まで身分の低いものをしいたげてきた者は尚更なおさら

身分が虐げて来た者達以上に落ちたときにあう仕返しは、

常軌じょうきいっしているだろう。


そして自分がやって来たことである以上、

文句も言えない。


生き地獄から家族を守るため、

たとえ犯罪者となってさばかれようと、

他の家族を守るというゆがんだ愛の連鎖れんさが、

続いていたのである。



自業自得と言う考えすらない、

傲慢ごうまん無知むちな差別意識。



それが彼女の生まれた国インドの実状じつじょうだった。

 

 

 

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