17話:ぱふぱふよ永遠なれ PART5
長い長い妄想から帰ってきた夏彦は、膝から崩れ落ちる。
「~~~~~~~っ!」
「ナ、ナツ君!?」
「どの世界線の未仔ちゃんも可愛すぎて辛すぎるっ……!!!」
キッズな頃の夏彦は、可愛い町娘やセクシーなお姉さんのお誘いに、『おいおい。本当にいいのか……?』と画面越しに生唾を飲み込んできた。
そして、何度もぱふぱふ詐欺を経験してきたものだ。
ぱふぱふと二体のスライムに顔を挟まれたり、ぱふぱふと化粧されたり。
今回の妄想ならば、未仔ではなく未仔父が登場していた。「どうだ夏彦君。俺のぱふぱふは気持ち良いだろう?」と、あの鍛え抜かれた大胸筋でカッチカチなぱふぱふを経験していただろう。夜は枕を濡らしていた。
ドラクエのぱふぱふには、『人生はそんなに甘くないですよ』というメッセージが込められている。すなわち、子供たちが大人へと一歩近づくための教育もなされている。
だからこそ、衝撃的な事態だった。
最愛の彼女が真のぱふぱふを許可してくれたことが。ファストパスチケットをプレゼントしてくれたことが。
未仔が人を悲しませるような嘘はつかないことを知っているだけに、夏彦の心臓は高鳴りっぱなし。
夏彦はハッとする。
未仔ちゃんは、ぱふぱふの意味を知っているのか……?
「ピュアすぎる故、過激な愛情表現なことに気付いていないのでは?」という懸念が生まれてしまう。
彼女に問わずにはいられない。
「未仔ちゃんは、ぱふぱふをご存じなのですか……?」
夏彦の恐る恐るな質問に対し、未仔は首を横にふるふる。
予感的中。ぱふぱふを知らないようだ。
安堵及び、ちょっとばかし残念という感情が入り乱れる中、夏彦は声を荒げる。
「駄目だよ未仔ちゃん! 知らないことを許可するのは危なすぎるって!」
彼女が大事だからこその注意喚起。
未仔自身、エッチな行為なことは何となしに分かっているのだろう。顔を赤らめたり、忙しなく手指を動かしているのが、その証拠である。
裏を返せば、『エッチな行為』なのは理解できている。
理解できているからこそ、
「だって」
「だって……?」
「ナツ君のしたいことは、全部受け入れたいんだもん」
「!!!」
身体中の血液が、鉄分から糖分に変わってしまったかのような。
未仔の甘々で幸せな言葉が、夏彦のハートをガッシリ鷲掴み。
現実・異世界・妄想。どの世界の未仔も、例外なく尊い存在だと改めて気づかされてしまう。
一肌、二肌どころか、夏彦のためにならスッポンポンになってくれる。
それが未仔クオリティ。
(全部受け入れる? ぱふぱふ以上のことも……?)
邪な妄想、カムバック。
一緒に風呂に入ったり、
サンタやナースコスでサービスされたり、
ゲームの世界でぱふぱふされたり、
そして、ゆうべにお楽しみしちゃったり。
自分は勇者などでは決してない。にも拘らず、彼女は至れり尽くせりなサービスをしてくれると言っている。
勇者ではなく、遊び人や大魔王であろうと愛してくれるのだろう。たとえ、村人やわかめ王子であろうとも。
とはいえだ。
やはり夏彦としては、未仔の勇者でありたいわけで。
「絶っっっ対! 未仔ちゃんに相応しい男になるから!」
「!」
「相応しい男になったときに、ぱふぱふをお願いします!」
大好きな彼女の勇者になりたいからこそ、道のど真ん中で押し倒すようなことはしない。
雄々しい夏彦の叫びに、未仔はキョトンとしてしまう。
「今のナツ君だって、私には十分魅力的だよ?」
「俺が納得してないんだ!」
「そう、なの……?」
「そうなんです! 魅力的かつ相応しい男になりたいんです!」
若干の混乱は否めないのだが、及第点くらい与えてもよいだろう。相応しい男になるまでは、未仔の純潔に手を出さない意志は伝わってくるのだから。
夏彦の気持ちを聞いた未仔は、「そっか……」と呟く。
しかし、それは落胆の声音ではない。
「じゃあ、ぱふぱふは、またのお楽しみだね♪」
「! ……待ってくれるの?」
「ナツ君は待たないほうがいい?」
「と、とんでもない! コチラ側としては願ったり叶ったりです!」
「願ったり叶ったりではあるんだ」
「えっ!?」
「あははっ♪ ナツ君、顔真っ赤!」
イタズラ成功と言わんばかり。未仔は堪えることなどできないと、嬉々とした表情で大笑い。
自分の顔に大爆笑されているのに、夏彦は不快感を全くに感じない。それどころか、目の前の彼女が笑顔でい続けてくれるのなら、一生茹でダコで良いとさえ思う。
自分のことを最優先で考えてくれている未仔が愛おしくて仕方がない。
普段の夏彦なら頭を撫でたりとスキンシップしていただろう。けれど、如何せん男らしくなると誓ったばかり故、ただただ照れるばかり。
とはいえだ。
「えへへ♪」
甘えん坊な未仔が我慢できるわけもなく。照れる彼氏も大好きなんですと、夏彦の腕へとぴっとり寄り添う。
さらには、細く小さな小指を夏彦へと差し出す。
「ナツ君が自分で納得するようになったら、そのときは。ね?」
「未仔ちゃん……。うん! 約束!」
彼女の笑顔を守りたい、相応しい男になりたい。夏彦は未仔の小指と自身の小指を絡ませて指切りげんまん。
未来のぱふぱふを夢見つつ。
「ナツ君、嘘ついたらコチョコチョの刑だよ?」
「了解です! てか、未仔ちゃんからのくすぐり攻撃なら全然罰にならないよ」
「えー、本当に? そんなこと言うなら、今すぐ試しちゃお!」
「えっ!? ちょ、ちょっと未仔ちゃん――、ワハハッハハハハハッ!」
「うりうり~~~♪」と未仔のか細い指が、これでもかと夏彦の脇腹や首筋をくすぐり続ける。
傍から見れば、「相応しい男にならなくてもいいんじゃね?」というくらいのイチャつきっぷり。
それでも夏彦と未仔は、現状の幸せだけでは満足しない。
何故なら、200%も300%も幸せになりたいから。
それがバカップルという生き物である。
2人が歩道でイチャついている最中だった。
「あれ? もしかして、未仔ちゃん?」
次回、新規な人物? それとも……?
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