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7話:走れ童貞

 夏彦エロスは激怒した。

 必ず、かの邪智暴虐のこはくを除かなければならぬと決意した。

 夏彦には政治が分からぬ。夏彦は普通の高校生である。けれども童貞という言葉に対しては、人一倍に敏感であった。


「チクショォォォォォォォ―――~~~~!」


 行く先は分からない。それでも全力で走らずにはいられなかった。感情のたかぶりを鎮めるくらいなら、いっそ爆発させてしまえとさえ思った。


 羨ましかった。草次に綺麗な彼女がいることが。

 悔しかった。琥珀に玩具おもちゃにされたことが。

 情けなかった。自分の童貞丸出しな行動が。


 何よりも、大きくて柔らかそうな、おっぱいだった。


「わぁぁぁぁぁぁ~~~~~!」


 感情の9割がおっぱい。気を抜けば、頭の中がおっぱいでワッショイ。

 多くを望まぬ夏彦だって男子高校生だ。おっぱいに憧れてしまうのは自然の摂理。


 何事かと夏彦に注目する人々が、「すげぇ形相で、やべぇ奴が走ってる……」とモーゼの十戒の如く夏彦から遠ざかっていく。


『リア充は爆発しろ』という危険的思想の無いはずの夏彦だが、通りすがるカップルやリア充グループには、さすがに敏感になってしまう。


 他校生の男子が、可愛い女子2人と一緒に歩いているのを見ただけで、羨ましくてハンカチを噛みちぎりそうになる。

 老夫婦が散歩している光景だけでも嫉妬してしまうし、仲良く手を繋ぐ小学生くらいの男の子と女の子にも嫉妬してしまう。

 公園で盛っている犬2匹にも嫉妬してしまう。末期である。


 どれくらい走っただろうか。


「ぜぇ……、ぜぇ……」


 急勾配な坂を上り切った高台の先端にて、夏彦は肩を激しく上下させていた。

 沈みゆく夕陽が目に沁み、中腰でひたすら呼吸を繰り返し続ける。


 急激な運動で肺や心臓が痛い。もう足は一歩も動かない。

 けれど、目一杯叫ぶことはできる。


 真っ赤に染まる街並みに向かって、夏彦は叫ぶ。



「おっぱい揉みた――――――――~~~~い!!!」



 この瞬間の夏彦は、夢にも思っていなかった。

 自分に恋人とおっぱいモミモミする権利が譲渡されることに。






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-お知らせ-

というわけで、次回からは、やっとこさメインヒロインの登場です。

メインヒロインが全く出てこない状態にも拘らず、ここまで耐え忍んで読んでいただき、本当にありがとうございます!

メインヒロインの健気で可愛い姿をドシドシ披露させていただきますので、改めてよろしくどうぞ!


今回、夏彦が惨めだと思った方は、ブックマーク&評価よろしくどうぞ。

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-公式ページはコチラから-
『おっぱい揉みたい』って叫んだら、妹の友達と付き合うことになりました。3巻書影
― 新着の感想 ―
[気になる点] 琥珀ちゃんすこ 出番あるといいな…
[一言] いい小説を読んだな。 俺もちょっとおっぱい揉みたいって叫んでくるわ
感想一覧
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