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54話: 親友は頼もしい PART3

『しょーもなっ』


 心からしょうもないと思っているらしい。カシュッ! と炭酸ジュースらしきプルタブが開く音がすれば、グビグビと喉越しで味わっている音まで聞こえてくる。


『ブハァ……。せっかくのエナドリが不味まずなるわ』

「そんな酒が不味くなるみたいに……」

『やって、しょうもないんやもん』

「お、お前っ……! 一体どこらへんが――、」

『人生狂ったか狂ってないかなんて、自分自身で決めるもんやん』

「――え?」


 唖然とする夏彦に、さらに琥珀は言ってやる。


『未仔ちゃんは、ナツのせいで人生狂ったって言ってきたんか?』

「っ!」


 電話越し。にも拘わらず、夏彦は琥珀に水をぶっかけられたような衝撃を与えられる。

 目を覚ますのは十分すぎる一撃だった。


「…………。ううん……、言われたことなんか1度もない」

『せやろな。上級生だらけの教室で、夏彦を庇うような子が、そんなこと言うわけないし』


 夏彦は思い出す。



「私は本当にナツ君のことが大好きなんだもんっ!!!!!」



 クラスメイトの誰もが、恋人関係を疑う中、彼女である未仔だけは信じてもらおうと力いっぱいに抱きしめてくれた。ありったけの想いを叫んでくれた。


『大事にしたいとか、過保護すぎるのは結構やけど、もっと未仔ちゃんを信じてやりーや。救われへんわ』

「……うん。琥珀の言う通りだな」


 あっけらかんとした、サバサバとした琥珀らしい助言。

 新那のように、琥珀は親友へ手を差し伸ばさない。むしろ崖から突き落とすくらいの手厳しさすら与える。

 それでも、自分の力で登って来いと言ってくれる。崖上から叱咤しった激励してくれる。

 夏彦と琥珀の関係はそういうもの。

 親友であり、悪友である2人らしい関係だ。


『そ・れ・に・な』

「な、なに?」

『アンタ、『ド』人好し過ぎんねん』

「へっ?」

『自分が加害者みたいな言い方してるけど、聞いてる感じ被害者でもあるんやろ?』

「まぁ……、そう言われれば、そうとも言えるかも……?」

『自信持たんかい。向こうのオッサンなんかシバいたったらええねん』

「シバくってお前……。ゲーム脳というか、バトロワ脳すぎんだろ……」


『バトロワのう上等』と口にする琥珀は、ゲーム画面では敵と交戦中なのか。スマホのスピーカー口からは、銃声やら爆発やら騒がしい戦闘音が入り込んでくる。


『未仔ちゃんを奪い合う聖杯戦争はもう始まってるんやろ。ずっと受け身でおっても無駄死にするだけやん。男なら戦わんかい』


 喧嘩っ早かったり、おとこらしかったり。実に琥珀らしい言葉だと夏彦は思った。

 同時にその通りだとも思った。


『戦いはな。やられたらやり返すじゃ遅いねん。敵が一ミリでも、一ドットでも見えたら引き金を引かんかい』


 有言実行。スピーカーから、ズドンッ! とけたたましい射出音が響き渡る。数コンマ後には、相手のアーマーやヘルメットが砕かれた音、ノックアウトを知らせるサウンド。

 夏彦は想像してしまう。筋骨隆々な闘獣士みこちちに、裸一貫、竹槍で突っ込む自分の姿を。

 思わず身震いしてしまう。

 けれど、今までのような『恐れ』からではない。『武者震い』だ。


 勝てるかは分からない。それでも、背中から斬られるくらいなら、正面から真っ二つになるほうがずっとカッコ良い死にザマに思えた。

 未だに勝てるビジョンは思い浮かばないが、今までよりもずっと心は軽い。


「ありがとう。琥珀に相談して良かったよ」

『ん……』


 感謝されるのに慣れていない琥珀は、夏彦の真っ直ぐすぎる感謝に、ぶっきらぼうなフリをしてしまう。

 さらには、しらじらしくも大きく背伸びしつつ、


『あ~あ。ナツがウダウダしてるせいで、今日も一人寂しくソロプレイやわ。またウチだけランク上がってまうわー』

「ゴメンゴメン。今日は無理だけど、埋め合わせは絶対するからさ。今度、未仔ちゃんや草次も入れて、ゲーム大会とかもしようよ」

『えっ。未仔ちゃんってゲームするん?』

「ううん、ほぼほぼ未経験者らしいんだけど、俺や琥珀がゲーム好きなの知ってるから、一緒にするために練習したいんだって」

『ほうほう! いい心掛けやん!』

「だからさ。また今度、未仔ちゃんと一緒に、琥珀ん家で遊ばせてくれよ」

『おっけー♪』


 すっかり上機嫌な琥珀は、今では美味しそうにエナドリをゴクゴクと飲んでいく。

 次のゲームマッチングが始まったらしい。


『じゃあ、そろそろ電話切るわ。次の戦いがウチを呼んでるから』

「どこの戦場の狼だよ……」


 呆れる夏彦に、琥珀は電話越しにニヤニヤ。


『ナツも狼になれば一発解決かもなぁ』

「? どういうこと?」

『未仔ちゃん襲って、既成事実作っちゃえばええんとちゃう?』

「!!!??? はぁあああ!?」

『向こうのオッサンも認めるしかないやん? 『コ、コイツ等……、こんなにも激しく愛し愛され合っているのか……!』って』


 有り得ない。有り得ないことなのだが、未仔のあられもない姿を思わず想像してしまえば、夏彦は赤面必至。


「~~~~っ! おおだヴぁだだあvだ!」

『ひゃはははは! そんなん冗談に決まってるやん! ナツと未仔ちゃんがベッドでズッコンバッ――、』

「し、死ね――――――――ッ!」


 自分のベッドにスマホを叩きつけて、夏彦は通話を強制終了。


「めちゃくちゃ良いアドバイスくれたと思ったらコレだよ……!」


 ここまでが琥珀のデフォ。

 勝気で茶目っ気たっぷりな、夏彦の悪友である。







『獅子は我が子を千尋の谷に落とす』もとい、『琥珀は夏彦を先人の谷に落とす』という話でした。

これが、プレーン味な男と関西女の関係。



【雑談】

最近、色々な業界の人がYoutuberデビューしてますね。

芸人さん、声優さん、モデルさん、俳優さん、アーティストさんとかとか。

楽しむコンテンツが増えて嬉しい限りです。


エガちゃんが頭1つ飛び抜けてるのが、それだけで面白い(笑)




おっぱいフレンズは、ブックマーク&評価よろしくどーぞ。

Twitterもやってます(☝ ՞ਊ ՞)☝

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『おっぱい揉みたい』って叫んだら、妹の友達と付き合うことになりました。3巻書影
― 新着の感想 ―
[一言] >未仔ちゃんを奪い合う聖杯戦争 なるほど、ならばとりあえず 自害せよ、草次!!
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