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現れた少年

懐かしのメンバー再集結!悠希視点です!

「ふわぁぁぁ」


 眩しすぎる朝日が頬を照りつける中、悠希ゆうきは大きなあくびをしながら登校していた。

 なぜこんなにも眠いのかというと、昨夜夜更かしして宿題をしていたからだ。

 最近は全てが面倒に思えてくるようになった。


(思春期にありがちな不安定な精神ってやつか……)


 悠希はそんな気持ちの到来にため息をついた。

 高一の夏、いよいよ本格的に将来の進路や文理選択を考えなければならなくなった。

 すでに将来の夢を決めている生徒も少なからずいて、目標や夢が何もない悠希からしてみると羨ましい限りだ。

 内心はすごく焦っているのだが、例の気持ちが邪魔をしてそんなことを考える気力も起きてこなかった。

 先週宿題になっていた将来の夢については「教師」と書いた悠希。

 あの時点で将来に迷いはなかった。

 ならばなぜ、前述で将来の夢や目標が何もないと書いたのか。

 正確に言えば綺麗さっぱりなくなったというわけではなく、自分が見出した考えが正しいのか自信が持てなくなったのだ。

 教師について色々調べてみたが、教育大学の他にも教師の資格を取れる大学はたくさんあり、思った以上に手こずった。

 それからある一つの問題があることにも気づいたのだ。

 悠希たちが大人になる頃には間違いなく少子高齢化は進んでいる。それがどこまで進むのかはわからないが100%進む。

 そうなった時に当然子供の数も減り、小学校や中学校といった学校に通う生徒の数も減ってしまう。

 そうなれば、自動的に学校もいくつか廃校になったり合併したりと形を変える。

 故に仮に国家試験に合格できたとしても、その後の就職先が見つからない場合が出てくるのだ。

 教師を志す者は少なからずいるだろう。

 だが志望者数と学校の校舎数の圧倒的な差が開けば、採用枠も減り就職率は格段に下がる。

 教師免許を取得できても満足のいく方に事が進むとは限らないのだ。

 将来は資格を持っていないと働けない時代になるかもしれない。

 勿論他のサラリーマンらと共に働いて、受け入れが空くのを待つという選択肢もあるが、終わりの見えない賭けに身を投じる勇気はない。

 そう考えた悠希は教師になるのも難しいと判断し、一旦断念しているのだ。


「はぁ……、どうするかな〜」


 悠希は歩きながらまた深いため息をついた。

 すると背中に強い衝撃が与えられ、思わず前のめりになり倒れそうになる。


「……っとっとっと……。何だよ、龍斗りゅうと


 何とか体勢を整えて首だけで振り返り、呆れて言う。

 悠希の後ろでいたずらそうな笑みを浮かべた龍斗は自分が悠希の背中を叩いた事がバレバレですぐに顔を引きつらせた。


「な、何で俺だってわかったんだよ」


「当たり前だろ。何回やられてると思ってんだ?」


「そんなにしてるか、俺?」


「叩きまくってるよ!」


 キョトンとしてとぼける龍斗に悠希は唾を飛ばす勢いでツッコむ。


「悪い悪い。ハハハハハ!」


 だが当の龍斗は反省の色も見せずに大笑いしていた。


「ったく……」


 悠希はボソッと呟いたがいつものことだと思い直し、それ以上気に留めないようにした。


「ていうかさ、暑くね?」


「当たり前だろ、夏なんだから」


 暑さにうんざりしている龍斗は夏服のブラウスぬ胸元を引っ張ってパタパタと顔に風を送りながら叫んだ。

 そんな龍斗に悠希は今度は至って冷静にツッコむ。

 何せ、さっき気に留めないようにしようと決意したばかりなのだから。

 暑そうにしている龍斗を横目で見ながら、悠希は朝のテレビ番組の天気予報を思い出していた。


「そう言えば今日30℃近くなるらしいぞ」


「うえっ!? マジかよ……!」


 悠希の言葉に龍斗が「勘弁してくれよ」といった表情で地面に手をついた。


「おいおい、そんなにオーバーリアクションしなくたっていいだろ? 暑いもんは仕方ないんだから、さっさと学校行くぞ」


「へいへーい」


 龍斗は今にも倒れそうな低く重だるい声で返事をし、のそのそと悠希の後を追って歩き出した。


「おはよう……って龍斗大丈夫!?」


 教室に着いた悠希の後をフラフラしながらついていく龍斗を見つけて、席で早絵(さえ)と喋っていた(あかね)が引いたように心配する。


「お、おう、茜に心配されて大丈夫じゃないって言うやつなんていねぇよ」


 フラフラしながら自分の席に移動し、フラフラと手を出して親指を立てる龍斗。

 もう既に彼の体力は限界に近かった。

 龍斗は普段夏みたいに暑苦しいが、龍斗自身暑さに弱く暑がりなので彼にとって夏という季節は天敵だ。

 悠希は幼馴染みなのもあって小さい時からそのことは知っているが、流石に高校生だし大丈夫だろうと甘く見ていた。

 だがいくつになっても彼の天敵は変わらなかった。


「もっと強くなれよ……」


 机で突っ伏す龍斗を見ながら悠希はため息をついた。

 するとチャイムが鳴って月影先生が教室に入ってきた。

 悠希を含め、立っていた生徒らは一斉に自分の席に座る。

 先生は生徒らが全員着席したのを見てからこう話した。


「おはようございます。今日の連絡は一つ。先生、昨日休暇を頂いて陰陽寺(おんみょうじ)の様子を見てきました」


 悠希は、だからか、と納得した。

 実は昨日、月影先生は用事のために学校を休むと学年主任から伝えられていた。

 その用事というのが大雅に会いに少年院に赴くという用事だったのだ。

 大雅の名前を聞いて教室中がざわつき出す。

 驚く生徒、怖がり怯える生徒、無関心な生徒など様々だったが悠希は大雅のことが心配で先生の話に聞き入った。

 それは龍斗たちも同じだったようで、茜も早絵も熱心に先生の方を見ていた。

 龍斗はまだ疲れが取れないらしく、机に突っ伏したままだったが。


「どうだったんですか?」


 心配しすぎて悠希は思わず先に尋ねてしまった。

 だが先生は気に留める様子もなく笑顔で続けた。


「元気でしたよ。少しふっくらした感じで」


 先生の言葉に教室中から笑いが起こった。

 やっと悠希たち以外の生徒も大雅の話に興味を持ち始めたようだった。


「さて、ということで、陰陽寺に負けないようにみんなも今日1日頑張りましょう」


 先生の威勢のいい声で朝礼は締めくくられた。


 ※※※※※※※※※※


 放課後。


 悠希達は家路を急いでいた。

 もうすっかり夕暮れで夕焼けが眩しく輝いていた。


「良かったね、悠希くん」


 早絵が声をかけた。


「ん?」


「陰陽寺くんのこと。元気そうで」


「ああ、そうだな。本当に安心したよ」


 そう言って悠希は微笑んだ。

 その笑顔につられて早絵も笑みを浮かべる。

 一方、龍斗と茜は今朝の龍斗の弱りようについて喧嘩に近い言い合いをしていた。


 ※※※※※※※※※※


「ねぇ、お兄さん」


 悠希が声をかけられたのは、皆と別れてもう家に近づいている時だった。

 日もさっきより落ちていて薄暗い。

 振り返るとそこには短髪の男の子が立っていた。


「ん? どうした?」


 男の子といってもそこまで幼いわけではない。

 背の高さも悠希より少し低いだけで声も中間くらいのトーン。

 髪の毛より少し黒がかった水色の瞳でまっすぐ悠希を見つめている中学生くらいの男の子。

 こんな夜にしかも自分に用があるなんて珍しいと不思議に思いつつ悠希もその子を見つめた。


「頼みがあるんだけど、聞いてくれる?」


 その子は思わずキュンとしてしまいそうになる上目遣いでこう言った。


「ボクのお姉ちゃんを探してほしいんだ」


「お姉ちゃん?」


「うん、全然帰ってこなくてね」


「そうなのか……。君、名前は?」


咲夜さくや百枝ももえ咲夜さくやだよ、お兄ちゃん」


 咲夜と名乗った男の子は可愛らしげに笑った。

やっと出てきました!新たな破壊者、百枝咲夜くん!

皆様にだけお教えしますが、花奈ちゃんの弟です!(悠希たち登場人物はまだ誰も知りません、あ、大雅と院長は知ってますね)


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