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回復の兆しと新たなる問題

総合評価124pt、ブクマ件数23件ありがとうございます!

悠希(ゆうき)!」


 目を開けた悠希に気づいて龍斗(りゅうと)(あかね)が一斉に叫ぶ。

 悠希の目はゆっくりと開いていき、黒目がキョロキョロと左右に動いている。


「悠希、大丈夫?」


 茜が尋ねると、悠希は顔をわずかに縦に動かした。

 茜たちにはそれが肯定の合図に思えた。

 実際悠希も大丈夫、ありがとうと言う意味を込めて顔を縦に動かしたのだ。


「よかった……!」


 悠希の肯定の合図に茜はホッと胸を撫で下ろした。

 その直後、ガラッと病室のドアが開いて月影先生が小走りで病室に入ってきた。


早乙女さおとめ!」


 月影先生はそのまま悠希が寝ているベッドの側まで進み、悠希の意識が戻ったのに気づいて笑顔を見せた。


「よかった。意識戻ったのね」


「あれ? 校長先生はどうされたんですか?」


 龍斗は病室に入ってきたのが月影先生だけだということに疑問を感じた。

 走ってきて少し息があがっている月影先生に尋ねる。


「あ、校長先生はね、一旦公民館の方に戻られたのよ」


 月影先生はそう返事をした。


「そうだったんですね」


 龍斗は校長先生がいない理由がわかって納得したように頷く。

 月影先生も頷き返す。

 そして病室を見渡し、悠希の向かいのベッドで横たわっている大雅と悠希の隣の早絵を見つめて言った。


「この二人は……まだなのね」


「はい……」


 月影先生の言葉に龍斗と茜が暗い表情で俯いた。

 先生はそれに気付き、慌てて言い直す。


「あ、ごめんね! きっと大丈夫よ!」


 龍斗と茜は少しだけ笑顔を見せた。

 不意に月影先生が腕時計を見て言った。


「もう六時だし、あなたたちは帰りなさい。ご両親が心配されるわ。一応私からは連絡しておいたけど」


「ありがとうございます」


 先生に言われて茜が頭を下げる。


「じゃあ帰るか」


「うん」


 龍斗が茜に尋ね、茜も頷く。


「じゃあな、悠希」


「バイバイ」


 まだトロ目しか開けられていない悠希に二人が声をかける。

 悠希も二人の方を見て弱々しく頷いた。


 ※※※※※※※※※※


「そうか。よかったな」


「はい」


 夜、校長室に呼ばれた月影先生は校長先生に悠希が意識を取り戻したことを報告していた。

 龍斗たちが帰った後も月影先生はしばらく悠希に付き添っていたが、悠希の食事の時間になったので学校に戻ってきたのだ。

 先生が病室から出るときに振り返ると、悠希がベッドから起き上がることさえやりにくそうにしていた様子が少し気がかりだった。


「まぁ、意識を取り戻して数時間だから仕方ない。処置も終わったことだし、すぐに回復できるだろう」


「そうですね」


 校長先生の言葉に月影先生も頷いた。


「そういえば、他の二人は?」


古橋ふるはし陰陽寺おんみょうじですか?」


「ああ」


「私が行った段階ではまだ二人とも意識がないままでした。特に陰陽寺は古橋よりも酷い状態で……」


 そう言って月影先生は俯いた。


「そうか……。心配だな」


 校長先生も腕を組んで眉をひそめる。


「早乙女の意識が戻ったのが奇跡と言っていいレベルだったわけか」


「そうですね……」


 月影先生もため息とは違う深い息を吐いた。

 二人の間に少し気まずい雰囲気が流れる。

 校長先生はパンと手を叩いてその雰囲気を壊すように立ち上がった。


「まぁ、こうしていても仕方がない。今は出来るだけ病院にお見舞いに行ったりして付き添ってあげることだな。彼らの回復を祈るしかない」


「はい!」


 校長先生の言葉に月影先生は笑顔になり、強く頷いた。


「もう帰っていいぞ。夜遅くまでご苦労様だったな」


「ありがとうございます。校長もお疲れ様でした」


「ああ。また明日な」


「はい」


 そうして月影先生は校長室から出て行った。

 学校の玄関から出て車に乗る月影先生を満天の星空が明るく照らしていた。


 ※※※※※※※※※※※


 それから一週間が経ち、三人とも普通に会話ができるまでに回復した。

 特に大雅の回復のスピードは担当医も驚くほど速かった。

 あのとき足元に爆弾を落としたため、正直言って身体の損傷は悠希や早絵とは比べ物にならないくらいひどかった。

 だが担当医の懸命な処置により、一命を取り留めることができたのだ。

 龍斗も茜も月影先生も毎日放課後に悠希たちのお見舞いに行った。

 大雅だけは素っ気ない反応しかしなかったが、それでも日に日に良くなっていく様子を見るのが龍斗たちも嬉しかった。

 この日もチャイムが鳴って終礼が終わると、龍斗と茜は決まって悠希たちが入院する病院にお見舞いに行った。


「あいつら良くなってるかな」


「多分ね。昨日も元気だったし」


「そうだな」


 そんなことを話しながら二人は病院に向かった。

 病院に入り悠希たちの病室がある棟に行くと、何やら中が騒がしかった。

 知らない男の人の声もする。

 悠希たちの家族が来ているのかと思って、龍斗がドアを開けた。

 するとそこには青いスーツに身を包み帽子を被った男性二人が大雅のベッドのそばにいた。


「警察……?」


 茜は思わず呟いた。

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