第一関門
昨日のアクセスが220PVでした!
ありがとうございます!
その宣言通り、悠希達は作戦を決行するための役者に協力を要請していった。
まず最初は、父からの暴行を受けた麗華が入院している病院である。
放課後に向かうと、そこには未央と凛も居て、麗華のベッドの側の椅子に座っていた。
未央は入口に背を向けて、凛は入口の方を向いていた。
「えっ!? 悠希くん達! どうしたの?」
病室の引き戸を開いてやって来た悠希、龍斗、茜、早絵を見て、未央が驚きの声をあげた。
「もう、来ちゃ駄目って言ったのに!」
立ち上がり、腰に手を当てて頬を膨らませる未央。
「すみません、未央先輩。今日は皆さんにお話があって」
「お話?」
悠希の言葉に、凛が首をかしげる。
「はい」
悠希は頷き、話し始めようとした瞬間。
「麗華ちゃん! 怪我の具合はどう?」
「おわっ!!」
悠希の身体を乱暴に押しのけて、茜が麗華の方へ駆け寄っていった。
その後に龍斗と早絵も続く。
茜に押されて思わず転けそうになってしまった悠希。
文句を言おうかと思ったが、何しろ麗華とは久しぶりの再会だ。
ずっと会いたかったのだろうし、実際、悠希も同じ気持ちだった。
ただ、優先順位が違っただけ。
茜達は麗華との再会への喜びを、悠希は未央や凛達と話したい真面目なことを第一に考えているだけのこと。
ここで文句を言うのは場違いである。
そう判断したため、茜に押されて多少痛かったが、悠希は何も言わないことにした。
「ありがとうございます。もうすっかり治っててあと少しで退院出来るかなって先生が」
ベッドの上で麗華がペコリと会釈。
見れば、あの時付けていた腕のギプスも外れて包帯だけの状態になっていた。
だが裏を返せば、包帯をしなければいけない状態である。
そのためまだ完治してはいないのだろう。
「そっか。良かった」
早絵が胸に両手を当ててホッと胸をなでおろした。
こうして感動の再会が終わったところで、悠希はようやっと話を切り出した。
「ちょっと、良いかな」
小さく手を挙げて、茜達の了承を得る。
「あ、そっか! 大事な話があったんだ!」
ポンと手を打って、茜が思い出したように声をあげた。
(忘れるなよ。そして俺が切り出そうと思ってたのに先に言うな)
心の中で盛大に茜にツッコミを入れていると、『え? なになに?』と凛が興味津々に見つめてきたので、
「あ、えっと、大事な話があるんです。……茜の言う通り」
茜の口からそれが告げられたのは些か癪に障るところがあるが、そこはグッと堪える。
そして悠希は自分達が決行しようとしている作戦について話し始めた。
※※※※※※※※※※
「なるほど……」
話を聞き終えた後、未央が納得したように顎に手をやった。
「でも、あたし達は何も出来ないよ? 麗華ちゃんなら鉄砲撃てるけど……」
凛が未央と自分の力不足を語った。
「鉄砲撃てるって……。人聞きの悪いこと言わないでください。私は森さんと父に言われて身につけただけです。別に最初から撃ちたいと思ってたわけじゃないですよ」
凛の発言に、麗華は納得がいかない様子で主張を口にする。
『あくまで強制されたことだ』と。
麗華にとって、まだ中学生なのに銃のような物騒な物を扱えるという自分はあまり好きではないのだろう。
ごく一般的な中学生で銃を扱う者などいないに等しいため、当然であるが。
麗華に文句を言われて、凛は両手を合わせて慌てて謝罪した。
「ご、ごめん! 麗華ちゃんの気持ち考えないで! あたしってばまたやっちゃったよ……」
しょぼんとうなだれる凛を見て、今度は麗華が慌てる。
「そ、そんなに落ち込まないでください。自分が『鉄砲撃てる』っていうのがちょっと嫌だっただけですから」
「ごめんねぇー! 麗華ちゃんー!」
膝をつき、麗華のベッドに突っ伏して号泣し始める凛。
「だ、大丈夫ですって!」
麗華は慌てて冷や汗をかいて凛をなだめる。
「あ、あのぉ、良いですか……?」
悠希としては、早く本題に移りたい気持ちでいっぱいだった。
作戦の中身を知ってもらうだけではなく、未央達には実際に手伝ってもらいたい。
その意志を伝えなければ意味が無いのだ。
「あ、ごめんごめん。どうぞ」
おそるおそる話を切り出そうとした悠希の声を聞いて、凛はガバッと起き上がり、目尻をごしごしと擦った。
ようやく悠希に話のバトンが回ってきたところで、悠希は本題を話した。
「未央先輩と凛先輩には、主に組織の他のメンバーへの説得をお願いしたいんです」
「説得?」
今度、悠希の言葉を繰り返したのは未央だった。
悠希はコクリと顎を引いて、
「俺達も出来れば誰も傷つけずに戦いたいです。でもだからと言って、あの危険な組織を野放しにしておくわけにはいきません」
そこで言葉を切って、未央と凛を見つめる。
「だから、先輩達には他の組織のメンバーに説得してもらいたいんです。交渉だけで組織を抜けてくれれば、相手にするメンバーの数も減りますし」
現在、森が代表を務めている地下組織には沢山のメンバーがいる。
森の命令に従ってこちらに刃を向けてくるメンバーを事前に減らすためには、未央と凛の力を借りて皆を説得し、正面衝突になる前に一人でも多く『組織を脱退しよう』と思ってもらうことが必要不可欠だ。
互いに刃を交えるメンバーが減れば減るほど、悠希達にとっても有利になる。
それに、もしかすると組織の中には、森が表向きとして唱っている文句『社会のための貢献』を信じている者達も居るかもしれない。
いくら組織に加入しているからと言って、そんな人達とは戦いたくない。
そのような人達を守るためにも、未央と凛の交渉は非常に大事な役割を担うことになるのだ。
「分かった。あたし達で良ければ喜んで力になるよ」
「相手は少ない方が良いものね」
未央と凛は二つ返事で了承してくれた。
「私は何をすれば良いんですか?」
麗華に尋ねられて、悠希は顎を引き、
「麗華ちゃんには、俺達と一緒に組織の壊滅を手伝ってほしい」
「分かりました。微力ながら尽力します」
麗華も快く引き受けてくれた。
こうして三人の了承を得ることに成功した悠希達。
だが、ここからが難関だった。
次なる壁は、破壊者の二人である陰陽寺大雅と百枝咲夜なのだから。
Twitterでは12時に更新って言ってたんですけど遅れてすみません!




