偵察開始
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その日___悠希、茜、早絵が龍斗を助けに行くと誓った___その日の夜。
悠希は自宅で母の千里に学校での事を話した。
「え!? だからってあんた……」
千里は悠希の発言に驚いていた。
「お願いだ、母さん。森の組織に乗り込んで龍斗を助けたい。その間だけで良いから母さんの拳銃貸してほしいんだ」
悠希はもう一度千里に頼んだ。
だが、頼まれた千里は簡単に承諾できるわけもない。
誰が高校生に簡単に拳銃を差し出すだろうか。
犯罪行為を手伝う母親などこの世のどこを探しても見つからないであろう。
千里は面食らって、状況整理に時間がかかりながらも、何とか冷静になって息子に話した。
「悠希、あんたが龍斗くんを心配する気持ちは分かるわよ。私だって同じだわ。でもね、本当に森達に捕まってるかどうか分からないのよ。もし当てが外れてたらどうするのよ」
「それ以外考えられないだろ。龍斗のお母さんだってあいつの居場所に心当たりもないって言ってたし、あいつからの連絡もない。誰かに連れ去られたとしか考えられない」
だが、当の息子は依然として譲らない。
はっきりと自分の推測を並べ立てる。
「悠希、落ち着いて」
千里は悠希の手を両手で包み込むように握って、息子の顔を覗き込むように見つめた。
「良い? 考え無しに突っ込んでいったら悠希まで危険な目に遭うかもしれないでしょ? 咲夜くんに拉致された時に身をもって分かったんじゃなかったの?」
悠希は数ヵ月前、百枝咲夜という少年と知り合って彼に拉致されたことがある。
悠希が拉致されたのは、深く考えずに咲夜のことをひたすら信じたからだ。
信じたがゆえに命の危険に曝されてしまったのだ。
「咲夜くんのことは勿論ちゃんと反省してるよ。でも今は関係ないだろ。こうしてる間にも龍斗が危ない目に遭ってたらどうするんだよ」
悠希は歯を食いしばり、拳を握りしめて、焦った心を必死に落ち着かそうとしていた。
だが、『龍斗が……』と考えれば考えるほど、焦る気持ちは止まらない。
「ふぅ、分かった。まずはお母さんに任せて」
こうなったら一か八か。
息子に協力しようと覚悟を決めて息をつき、千里は言った。
「母さん、協力してくれるのか?」
悠希は母の言葉に驚いたように顔を上げて母を見た。
千里は頷いて微笑むと、
「ええ。母さんに内緒で突っ走られるのも嫌だもの」
「母さん……」
「ただし条件がある」
悠希の眼前に人差し指を立てて見せ、千里は念を押すように言葉を紡ぐ。
「明日、私と黒川で組織に潜入して本当に龍斗くんが捕らわれてるかどうか確認してくる。悠希達がどうしても動きたいって言うなら、動くのは龍斗くんの拘束がはっきりしてから」
悠希の顔をじっと見つめ、千里は『良い?』と確認をする。
悠希はその確認に顎を引いて答え、
「母さんこそ無理しないで。あいつら、結構頭キレそうだから」
「そんなの、何日も監視してきた母さんが一番分かってるわよ」
力強い千里の言葉に、悠希は笑みを浮かべて力強く頷いた。
※※※※※※※※※※
「……というわけだから、よろしくね」
翌朝、千里から昨夜のことを知らされた黒川は、千里に肩をポンポンと叩かれて絶句した。
「えっと……協力したい気持ちは山々なんですけど、何でそんな危険なことするって僕に一言確認くれなかったんですか?」
組織に潜入することを聞いたとたんに、黒川は涙声と潤目で千里を見つめた。
「だって、黒川だったら絶対協力してくれるって思ってたから」
さも当然と言わんばかりに千里がすまして言う。
「いや、協力はしますよ? 勿論。僕だって悠希くんの友達が捕まってるなら助けたいですし」
「そうでしょ? じゃあよろしくね」
「待ってください! 続きがあるんです!」
話を打ち切ろうと手を振って席に着こうとした千里に、黒川は慌てて話の続きがあることを叫ぶ。
『あら、そうなの?』と言いたげなキョトンとした表情で首だけ振り返り、千里は黒川を見つめた。
黒川はそんな千里にため息をついて呆れながら、
「あのね、直前に言われたって困りますよ。僕にだって心の準備ってものがあるんですから。ちゃんと事前に言ってくれないと」
「もう出来てるんじゃないの? 用意周到じゃない」
千里は黒川が手に持っている拳銃を見下ろして言う。
「持ってるだけです! これから危険に身を曝すって時に丸腰で行く人がいますか!? 持ってるだけです!!」
黒川は手にした拳銃を持ち上げて宙でブンブンと振り回しながら叫び声をあげる。
「分かった分かった、冗談よ。気が紛れるかなって思って」
そんな黒川を見て吹き出しつつ、手招きのようなポーズで手を振って千里は笑う。
「僕で遊ばないでくださいよ……」
早朝から振り回してきてばかりの上司に呆れてため息を何度ついたか分からない黒川。
しかし、同時にその上司のおかげで彼の気が紛れているのも事実である。
文句を言いつつも千里に感謝しながら、黒川は拳銃を腰のポケットにしまって、
「じゃあ、偵察行きますか」
「無茶しないでよね」
「先輩こそ」
笑い合うバディ。
二人は警察署を出て、目的の組織のアジトへと足を運んだ。




