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七人の対策

 それから悠希ゆうき龍斗りゅうとあかね早絵さえの四人は、未央みおから様々な説明を受けた。

 森が代表、麗華れいかの父の和泉いずみが副代表を務める地下組織について。

 森という男本人について。

 彼にりんが脅迫紛いな行為を受けたことについて。

 麗華が和泉から受けた残虐な暴行について。

 そして今まさに森率いる地下組織が動きを見せている事を刑事の黒川から聞いたことについて。

 現在は悠希の母である千里ちさとがその黒川と共に地下組織を調査していることについて。


 全てを話し終えた未央はホッと息をついた。


「そんなことがあったんですね」


 悠希がポツリと言葉をこぼす。

 悠希も千里からおおよそのことは聞いていたが、やはり未央本人から得るものと千里から聞いたものとでは情報網の大きさが桁違いだ。

 あまりの出来事に龍斗は顔をしかめ、茜と早絵は言葉を失っていた。


「ねぇ、麗華ちゃん。さっき森さんが来てたって言ったよね」


 麗華に確認をする凛。


「はい。お見舞いに来てくださいました」


 麗華の言葉を聞いて未央と凛は不安げに顔を見合わせる。

 麗華自身も父の和泉が森に強く命令を受けていたのを目の前で目撃したので、森についてもあまり好印象ではないのだろう。

 未央と凛に報告するその表情は決して明るいものではない。


「俺達も見ました。その森さんって人ともう一人部下みたいな人」


「え? 見たの?」


 驚く凛に頷いて悠希は続ける。


「はい。でも何か危ない予感がして目線は外しました。太った人が森さんで、丸刈りの体格が良い人が部下の人ですよね」


「うん。でも、その丸刈りで体格が良い人っていうのは見たことないかも。組織のメンバーは大体見たことあるけど、あたしでも心当たりないよ」


 凛は顎に手をやって部下と思わしき丸刈りの男について思考を巡らせる。

 だが、あの組織に長期間所属していた凛でさえその男の見当すらつかないのである。


「もしかしたら森さんが何人か雇ってるのかも。組織のメンバーとは別で自分の専属の部下みたいな感じで」


 未央が憶測を口にした。


「そっか。それならあたしが分からないのも合点がいくね」


 凛がなるほどと手を打つ。

 その拍子に高く結んだ長いツインテールがふわりと揺れた。


 これまでにも組織のメンバー全員が一つの部屋に集まることは多々あった。

 だが、凛が自身の記憶を辿ってもそれらしき丸刈りの男はその場にはいなかった。

 そうなれば考えられるのは自然と未央の口にした憶測ということになる。


「つまり森さんは、組織のメンバーに隠れてバレないように個別で人を雇っていたということですか」


 麗華の言葉に未央と凛が頷く。


「何だよそれ。ブラック企業ならぬブラック組織だな」


 龍斗が眉をひそめると、未央が賛同の意を示す。


「ええ。本当に。凛があの人に脅迫された時点で身を引いて正解だったわね」


「そうだね。未央のおかげだよ。あたしだけじゃあんな判断出来なかったもん。やっぱり恩を仇で返すことになるから思い留まっちゃう」


「私だって凛がいてくれたから強気で言えたんだよ。一人だったらあんなに強く言えない」


 女子高生二人は当時を振り返って微笑み合った。


「仮に未央先輩の推測が事実だとして、今動いてる組織っていうのは、その、凛先輩達が所属してた組織と実質異なってくるってことになりますよね。先輩達も知らない人間がたくさんいるかもしれない……」


 悠希が話を戻して組織についての確認をする。


「うん。あたし達も分からない人達だからいつどこに潜んでるか分からないね。こうやって麗華ちゃんの病室に集まってる時点で、あたし達はピックアップされてるはずだよ」


 凛が腕を組んで表情を曇らせた。


「色んな人から狙われるってこと?」


 茜が不安げに尋ねると、悠希は頷いて、


「その可能性も十分考えられるな。敵視されてなければ良いけどそんな簡単にいくわけないし」


「相手は大人だもん。私達の何倍も上手を行くはずだよ」


 早絵が警戒心を強めた口調で言った。

 早絵の言葉に皆が頷く。


「とりあえず、皆道中気をつけて。学校に行くとき、学校から帰るとき、麗華ちゃんの病院に寄るとき。他にも色々。誰が見てるか本当に分からない。それに今のところ丸刈りの男以外の部下の情報は何一つない。道行く人が森さんの部下だと思って警戒してても杞憂じゃないと思う」


 未央が皆を見回して警告した。


「じゃあ私のお見舞いも必要ないですよ。もしここで待ち伏せされたりしても怖いですし」


 ベッドの上で麗華が言った。


「じゃあ、悠希くん達は来ない方が良い。お見舞いは私と凛が行くようにするわ。麗華ちゃんだって100%安心出来るわけじゃない。森さんの気が変わって麗華ちゃんまで標的にされたら危ないわ」


「未央さん……凛さんもごめんなさい」


 未央の言葉に麗華が申し訳なさそうに未央と凛に頭を下げた。


「気にしない気にしない! ここは歳上のあたし達が体張らなきゃ!」


 凛が拳でドンと胸を叩く。


「よし、色々決まったことだし、今日はこれでお開きにしよう。皆、さっきも言ったけどくれぐれも気をつけること」


 未央が人差し指を立てて念を入れ、病室にいた全員が真剣な表情で頷いた。

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