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「破壊者」という確信

「マジかよ……」


 悠希ゆうきの言葉に龍斗りゅうとは唖然とする。

 少し後ずさった拍子に椅子にぶつかり、椅子が大きな音を立てて倒れた。


「きゃっ!」


 その音に驚いたあかねが思わず叫ぶ。


「ちょっと! 何すんのよ龍斗!」


「わ、悪い、ちょっとマジかってびっくりして……」


「びっくりしたのはこっち!」


 二人が言い合っているのもよそに、悠希は顎に手を当てて考え込んでいる。


(ああは言ったけど、全部の事件の生存者が陰陽寺(おんみょうじ)なのであって、こいつが直接何かしたっていう証拠にはならないな……)


 何かヒントになるものはないかと、悠希は別の資料も漁ってみる。

 何冊かの資料をめくっていったところで、悠希の手が止まった。


(こ、これは……!)


「だ、だから悪いって」


「心臓止まるかと思ったでしょ!」


 龍斗と茜は、なおも言い合っている。


「落ち着けよ。俺たちが言い合ってる場合じゃねぇだろ」


「………!」


 龍斗の言葉に我に返ったように茜は黙り込んだ。


「茜?」


 茜の異変に龍斗が心配そうに声をかける。

 茜は顔を手で覆って深呼吸をしながらゆっくりと言った。


「そうだよね……。ごめん龍斗。私もちょっと混乱しててつい、龍斗にキツく当たっちゃった」


「気にすんなって。俺の方こそごめんな」


「う、うん」


「なぁ、二人とも」


 不意に悠希が龍斗達を呼んだ。


「どうした? 悠希」


 龍斗が尋ねる。

 茜もどうしたのかとでも言う風に悠希を見つめている。


「これ、見てくれないか?」


 悠希はおもむろに二人にある冊子を手渡した。


「おう、わかった」


 龍斗と茜は不思議そうな表情を浮かべながらも、悠希に手渡された冊子を見ていった。


「ね、ねぇ! これ!」


 少し背伸びをして冊子を覗き込んでいた茜が、突然叫んだ。

 茜は写真を指差している。

 黒くて、硬そうな破片がたくさん転がっている写真だった。


「なんだこれ……」


 龍斗の呟きに悠希が深刻そうな表情で俯く。


「おそらく、これが校舎を焼くのに使われた……爆弾……だ」


「ば、爆弾!?」


 龍斗と茜の声が重なる。

 二人は驚いて悠希を見たあと、まじまじとその写真に目を写した。

 よく見ると、ところどころ火花が散っていて、中にはその火花が燃え移って少し焼けている破片もあった。


「で、でもさ、だったら陰陽寺がやったんじゃないよ。だってあいつにこんな爆弾作れるはずないし……」


 茜は自分で言ってハッとなった。

 しばらくの間、凍りついたようにその場を動かないでいる。


「ど、どうした?あか……」


「やめろ龍斗」


 またも心配して尋ねようとした龍斗を悠希が遮った。


「何で遮るんだよ」


「きっと今、フラッシュバックしてるんだ。茜が陰陽寺おんみょうじに捕まった時の日のことが」


 龍斗は驚いて茜の方を見た。

 目は大きく見開かれ、手足がぶるぶると震えている。


「だから、そっとしてやれ」


「……あいつだったら、作れるかも……」


 不意に茜が呟いた。


「ああ。そうかもしれないな」


 悠希も静かに頷く。


「何でだよ。何で二人ともわかってんだよ」


 龍斗だけがわけがわからなかった。

 当然だ。大雅の家に行っていないのは龍斗だけなのだから。

 悠希も茜も、あの時見た光景を思い出していたのだ。


 実は悠希が茜を助けに行った時、当然部屋の明かりは真っ暗で、出口のドアを開けていないと何も見えない状態だったのだが、うっすらと色々な資料が悠希には見えていた。

 そして当然茜もそれを既に見つけていた。


 春にクラスで撮った集合写真に色々と小さな文字で書き込まれていたこと。

 そして、机の上には___隠すように上に重ねていた教科書やノートの隙間から見えた____爆弾のような黒くて丸いものの写真が貼られてある作り方の説明書のようなものが置いてあったこと。


 悠希はそれを見つけた時に、陰陽寺おんみょうじ大雅たいがという人間はただ者じゃないと悟った。

 それは茜も同様だった。

 だからこそ、大雅が全焼事件の首謀者であるという確信を持つことができたのだ。


「あと、これも」


 悠希はもう一つの資料を手渡した。

 その資料には、校舎全焼事件で燃やされた学校全て、生徒のうち誰か一人は必ず、事件が起きる前に重傷な怪我を負っていたということが記されていた。


「亡くなってる人もいる……」


 茜が呟いた。

 悠希は頷くと続けて言った。


「きっとこれが、俺たちの学校でいうと、早絵さえってことになる」


「早絵!?」


 龍斗が驚いて叫んだ。


「ああ。幸いにも早絵は死んでないから、それだけが救いだけどな。陰陽寺の過去のやり方とそっくりだ。だから早絵も殺されてもおかしくなかったぐらいだ。本当に、生きててよかったよ」


 悠希の言葉に龍斗も茜も力強く頷く。


 事件が起こる前にその学校の生徒が重傷を負い、そして必ずその学校が燃やされる。

 どの学校でも生存者は陰陽寺大雅、一人だけ。

 大雅以外の教職員や生徒らは全員亡くなっているのだから、事件が起こると予めわかっている人間しか生き残ることは不可能だ。


 そして家で見た爆弾の作り方の説明書。


 茜が入手してきた資料と、悠希と茜が見たあの説明書が動かぬ証拠だった。


「やっぱり、この事件を起こしたのは陰陽寺だ。きっと、俺たちの学校でも同じようなことをしでかすに違いない」


 悠希の言葉に二人も確信を持った。


 すると突然。


 ドカーン! という爆発音が校内に響き渡った。

 天井が徐々に崩れていく。


「避けろ!!」


 悠希の叫び声とともに三人は瞬時に天井が崩れてくる教室から走って出た。


「危なかったね……」


 天井が崩れて押しつぶされた机や椅子、教卓を見て茜が言った。

 だが安心したのもつかの間、頭上の天井もゆっくりと割れていく。


「伏せろ!!!!」


 悠希は瞬時に龍斗と茜の上に覆いかぶさった。


 その後すぐに三人めがけて天井が勢いよく崩れ落ちてきたのだった___。

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