6/19、始まり。
面接の日取りがあってから心はぼんやりとしていて、あっという間に約束していた日となった。天気は晴れているが、全く心は揺さぶられなかった。
午前8時。ゴミ捨て場にごみを捨てる。部屋の清潔を保て、と親から教えられてきた。その教えが染みついているのか、ごみは回収日があるごとに出さないと気が済まない。そして、今、ごみを出したので気が済んだ。すると、また就寝する。
毎朝早く起きて掃除をしてから再び寝る。あらたな日を迎える儀式のようなものが俺にはあった。ここ1年はこれを繰り返している。おかげで部屋はきれいとまでは言えなくとも、急に人が来ても困らない程度の清潔さを保っている。最も家に来る奴なんていないが。
朝日を浴び、枕に頭を預ける。こうしていつもと変わらぬ日が始まった。
ピピピピ
スマホのアラーム機能が睡眠を妨げる。設定時刻は14時。面接場所へはギリギリに行くつもりだから、だらだら飯食って、うだうだ準備することを見越して早めに起きた。
アラームを止めようとすると通知が何件も来ているのに気が付いた。0439-…この電話番号は確か「アフタースクール」の電話だ。面接中止か?掛けなおしてみるが全く繋がらない。こういうのは普通留守番電話にメッセージを吹き込んでおくものであるが、余程の非常事態だったのであろうか。何も残されていなかった。
妙だとは思ったが、何もしようがない。おとなしく時間通り行くのが無難だ。そう判断した俺は前の日に買ったトーストを焼き始めた。
1年ぶりにスーツを着る。むしむしとした今日みたいな日に着るスーツは普段の何倍もの不快感がある。暑い。汗腺が動いてる感覚にむずがゆさを覚え、爪を立てて全身をかきむしった。そのまま行くのやめてもよかったが、意を決してドアを開けた。
目的地のビルは住んでいるマンションから徒歩15分。最寄の館山駅を反対に渡り、商店街の終わりまで道なりに歩けば左手に見える。
意図したわけではないが、交通費が一切かからないところを選んだわけだ。働く気もないのに行く面接に金を掛けたくもない。
駅を突っ切り商店街を歩く。この時間は小学生の下校時間と重なるようだ。一日に課された仕事から解放された彼らは、俺と反対方向を目指して走り回る。2年前までは彼らを教える立場にいた。教壇、児童たちの真ん前にいた俺は現在、遠くから小学生を眺めていた。
(余計なことは考えるな、腐るな、思い出すな。)
気分が虚ろになりかけた時、理性が俺に告げた。今は面接を受けに行く。それだけだ、それだけ。それさえやればいい。
ただ無思考に歩き続ける。
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