表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/4

6/19、始まり。

 面接の日取りがあってから心はぼんやりとしていて、あっという間に約束していた日となった。天気は晴れているが、全く心は揺さぶられなかった。

 午前8時。ゴミ捨て場にごみを捨てる。部屋の清潔を保て、と親から教えられてきた。その教えが染みついているのか、ごみは回収日があるごとに出さないと気が済まない。そして、今、ごみを出したので気が済んだ。すると、また就寝する。

 毎朝早く起きて掃除をしてから再び寝る。あらたな日を迎える儀式のようなものが俺にはあった。ここ1年はこれを繰り返している。おかげで部屋はきれいとまでは言えなくとも、急に人が来ても困らない程度の清潔さを保っている。最も家に来る奴なんていないが。

 朝日を浴び、枕に頭を預ける。こうしていつもと変わらぬ日が始まった。


 ピピピピ

 スマホのアラーム機能が睡眠を妨げる。設定時刻は14時。面接場所へはギリギリに行くつもりだから、だらだら飯食って、うだうだ準備することを見越して早めに起きた。

 アラームを止めようとすると通知が何件も来ているのに気が付いた。0439-…この電話番号は確か「アフタースクール」の電話だ。面接中止か?掛けなおしてみるが全く繋がらない。こういうのは普通留守番電話にメッセージを吹き込んでおくものであるが、余程の非常事態だったのであろうか。何も残されていなかった。

 妙だとは思ったが、何もしようがない。おとなしく時間通り行くのが無難だ。そう判断した俺は前の日に買ったトーストを焼き始めた。


 1年ぶりにスーツを着る。むしむしとした今日みたいな日に着るスーツは普段の何倍もの不快感がある。暑い。汗腺が動いてる感覚にむずがゆさを覚え、爪を立てて全身をかきむしった。そのまま行くのやめてもよかったが、意を決してドアを開けた。

 目的地のビルは住んでいるマンションから徒歩15分。最寄の館山駅を反対に渡り、商店街の終わりまで道なりに歩けば左手に見える。

 意図したわけではないが、交通費が一切かからないところを選んだわけだ。働く気もないのに行く面接に金を掛けたくもない。

 駅を突っ切り商店街を歩く。この時間は小学生の下校時間と重なるようだ。一日に課された仕事から解放された彼らは、俺と反対方向を目指して走り回る。2年前までは彼らを教える立場にいた。教壇、児童たちの真ん前にいた俺は現在、遠くから小学生を眺めていた。

(余計なことは考えるな、腐るな、思い出すな。)

 気分が虚ろになりかけた時、理性が俺に告げた。今は面接を受けに行く。それだけだ、それだけ。それさえやればいい。

 ただ無思考に歩き続ける。


ご意見ご感想有りましたらコメント欄にお願いします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ