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始まり、ハローワーク編

やってみたいことやってみます。ヒューマンドラマです。

 6月14日。松野洋介、26歳は就職活動をしていた。

 これは定職に就くための行為ではない。医者に書かせたうつ病の診断書で貰った特別失業保険。便利なもんで、働かずとも月17万がもらえるのだ。無論、「限界ギリギリまで加入し続けたい」、そう考えるのは当たり前だ。この保険を続けるには働く意思があることを証明しなくてはいけない。そのために何回か面接を受けたことをハロワに証明させるのだ。


 働きたくはないが、ハローワークに行く。倒錯した就職活動の最中であった。


「49・バン・ノカタ、お越しください。49・バン・ノカタ、お越しください。」

 人間の声と機械の音入り混じる人工音声に呼ばれ、洋介の職業相談の番が来た。

「こんにちは、担当の林と申します。本日は職業相談のお相手いたします。お名前教えていただけますか。」

 えらく事務的だが、こなれた感じがある。林は大体40~50歳くらいのヒトだろう。眼鏡をかけていて、小太りな体形である。顔からはフレンドリーな感じを受けるが、いかんせん真面目そうである。今だって事務的で、人間らしいやり取りをしようとしなかった。

「うん…と、松野洋介さん…東京都の中学校と高等学校の教員免許をお持ちなんですか。素晴らしいじゃないですか。」

 ありがとうございます。社交的な返答はするが、洋介の心は全く喜んでいなかった。

「教育関係のお仕事はいかがですか。」

 林はパソコンをいじりだす。一般企業を探し出したか?洋介は慌てて止める。

「あの…有償ボランティアもしくはNPO法人のみ紹介していただくことは可能ですか?」

 担当の男は手を止め、洋介を眼鏡越しにちらりとみる。この男にはおそらく洋介の意図がおそらくわかっていた。

 特別失業保険は更新する際、働く意思の証明としてボランティア活動への参加も含まれている。そして、有償ボランティアともなれば、少ないながらも給金があり、小遣い稼ぎにはなる。NPO法人は面接を受けに行ったことが確実に記録に残るし、更新の際は担当者によっては心証がよいのだ。

 この二段構え。働く意思がないことが見え透いていた。

 林は表情を曇らせた。まるで駅前で寝てる浮浪者を見るような眼だ。

 だが、希望するからには無理には辞めさせない。林はしぶしぶ条件に合う求人を照会した。

「そうですね…教育系のNPO法人『アフタースクール』の求人がありますが。ボランティアの要請も出してます。」

 渡りに船だ。とりあえず、そこに行ってみよう。

「そこの紹介をお願いします。」

 林は黙って求人票を印刷する。

「では、職業相談は以上です。もし、分からないことなどありましたらお気軽にどうぞ。」

 洋介もぺこりと頭を下げる。今は素晴らしいものだ。わざわざ紙に書かなくても、インターネットで応募ができる。洋介はハローワークの待合室の椅子ですぐに求人登録を済ませた。


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