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人間嫌いの俺が人間の為に一肌脱ぎます  作者: ゆうやん
第一章 少年時代
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精霊の怒り

「おかーさん?おとーさん?どうしたの?」


 俺は純粋な4歳児のふりをしながら玄関に向かう。

 レーナスには事前に作戦を話し姿を消してもらって別行動をお願いしてある。

 合図があるまでこの人をここに留めておくのが今の俺の仕事だ。


「レヴィー、今は出てきては駄目。部屋に戻りなさい。」


「でも、その人は僕に用事があるんだよね?」


 指をさしながら母に問いかける。

 これで男は自分に話題を振られたと思うはずだ。


「奥様、丁度いいではないでしょうか。本人にもお話をして今の状況があどれだけ自分に危険のあるのかを理解していただければ私としてもご両親としても安心できますでしょう。」


 ほら食いついた。

 この手の人間は自分に話題が来たと感じたら話に入らずには居られない性格だ。

 だからあえて指をさし餌を巻いたのだ。


「ですから何度も言ってますが、私たちの子供は呪われている訳がございません!」


「リン!」


 父の一喝で自分が口を滑らせたことに気づいたらしく母は青い顔をしながら口元を押さえた。


「おとーさん、僕が呪われてるってどういう事?」


「レヴィーが気にすることじゃないから部屋に戻ってなさい。ここはお父さんたちに任せて大丈夫だから。」


 さぁ、部屋に戻りと父が背中を押す。

 その脇をひょいと潜り抜け男の前に走って行く。


「おじさん、僕が呪われてるってどう言うことですか?」


「おじ……お兄さんだよぼく。」


「そんなことはどうでもいいので、教えてください。」


「このガキ……いいでしょ教えてあげましょう。今の君は悪い精霊に取り付かれてる状況なんだ。だからね祓わないと君や君の周りが怖い目に遭うからお兄さんがお祓いしてあげるって話をしていたんだよ。」


 そんな事は先ほどから部屋から聞いていたから知ってるが興味本位でさらに聞いてくる子供を演じ続ける。


「どうして呪われてるって分かるの?」


「それは、お兄さんが精霊使いだからだよ。」


 口元がにやりと笑う。

 安心させるためだろうと思うがフードを完全に目元を隠しているからかただの怪しい人だ。


「そうなんだー!おじさん凄いね。」


「そうだろ。」


「それならおじさんに任せれば安心だね」


「君もそう思うだろ。」


「うん!」


 と話しているとレーナスがグルトヴィルの後ろから顔を出す。

 ……準備が出来たのか。

 思ったより早いな。

 だが、準備が出来たのならこいつには思い知らせなければな。精霊を怒らせるとどうなるのかを。

 その前にと思いレーナスに視線を向けると首を横に振ってる。

 どうやらこいつには精霊がついてないらしい。

 だからこんなに精霊に強気なのか、哀れなやつだな。


「ところでおじさん。」


「なんだい?」


「おじさんって精霊が見えるの?」


「どうしてそんな事を聞くのかな?」


 質問を質問で返すな。


「悪い精霊が分かるって事は精霊が見えてるのかなって思ってね。」


「そうだね、お兄さんは精霊が見れて良し悪しが分かるんだよ。」


「ふーん……」


「?」


 どうやら精霊が見えていないらしいな。

 まぉ、精霊が見えていたらこの後起きる事が分かるだろうから見えたないとは思ったがやっぱりか。

 では、これより精霊の怒りの劇場を開演といたしましょうか。


「ところでおじさん。」


「なにかな?」


「僕に悪い精霊がついてるって言ってたけど、彼らのことかな?」


「なにを言って……」


 俺の言葉を合図に配置についてた下位精霊が一斉に行動を起こす。

 光を司る精霊のサンが周りの光源を歪め不快な空間を作り出し、音を司る精霊のサウンが聞いたことのない音を出す。

 ほかにも色々な精霊が物を揺らしたり、子供が無邪気に笑うような声ではしゃぎ回り、ドアを開け閉めしたりと此処にいる物を恐怖におとしいれる。


「な、なにが起きてる!」


「レ、レヴィー!いったい何をしている!」


「レヴィー、お願い止めさせて!」


 グルトヴィルだけ怖がらせれればいいかなと思ったがどうやら両親も怖がってしまったようだ。

 まぁ、放置でいいか。


「おじさん、精霊が見えるんだよね?」


「へ?」


「なら、早く彼らを止めてよ。じゃないと僕たちこのままだと精霊に殺されるよ。」


「ふ、ふざけるな!」


「どうして?おじさんお祓い出来るんだよね?なら早くしてよ。」


 そう言ってレーナスに視線を向ける。

 それに気づいたレーナスが何匹かの精霊に指示を出し行動させる。


「な、なんだ急に!!!」


 いきなり両腕を何者かに捕まれ引きずられながら外に引っ張り出される。


「ねぇねぇ、レヴィー。」


「この男どうするー?」


「五つに引き裂くー?」


「イイネイイネ!」


「やろう、やろう。」


「それなら空高く上げて落としてひき肉にしようか。」


 自分の両側から恐ろしい会話が聞こえグルトヴィルは完全に怯え切って震えている。


「や、止めてくれ!」


「おじさん。」


「!!」


 怯えているせいか俺が目の前に来たことに気づかなかったようで体を震わせ驚いている。


「適当な事を言って俺の家族に悪事を働くとどうなるかその身で味わえ。」


 グルトヴィルは少年から発せられてるとは思わない程低い声で死刑宣告をされ完全に恐怖心を植え付けられた。

 俺は精霊に合図しグルトヴィルを空高く持ち上げさせる。


「レ、レヴィー止めろ!」


 父の声が聞こえたがあえて無視する。

 母はどうやらレーナスが見えた事で何をしようとしているのが分かったようで成り行きを見守ることにしたようだ。

 俺は別にこの男を殺す気は毛頭ない。

 だが、ここまでしないときっと他でも同じ事を繰り返すと思ったからこそとことん恐怖のどん底に突き落とすことを決めてた。


「やれ。」


 その一言で精霊たちは一斉に手を放す。

 悲鳴を上げながらグルトヴィルは落ちてくる。

 そのまま地面にぶつかると思ったのか手を前に突き出し少しでも生存率を上げようとする。

 しかし地面にぶつかる前に俺はレーナスの力を借り上昇気流を魔法で作りだしグルトヴィルを一瞬浮かせる。

 そのまま魔法を解除し地面に下す。


「ブヘ!」


 グルトヴィルは顔面から落ちたせいか変な声を上げその場にへばりつく。

 俺はゆっくりと近づき男の耳元でささやく。


「二度と同じことをしようと思うなよ。今回は見逃すが二度目はない。」


「………」


「分かったか!!」


「は、はい!!」


 俺が一括するとグルトヴィルは飛び起き泣きながら返事をしなりふり構わず走って逃げて行った。


「レーナスよくやった。」


「レヴィー!褒めてー!」


 レーナスは子犬のように飛びつき顔を俺の胸にこすりつけてくる。

 その頭をなでながら他の精霊にも感謝の言葉を送り今回の騒動の終焉を心から喜んだ。

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