ロロナ視点①
頬に滴る水滴の冷たさに目が覚める。
「ん……ここは?」
「お目覚めか。」
目の前に顔が隠れる程深くローブを被った人が立っていた。
声からして男かしら?
しかし、どうやら私は気を失ってたようね。
辺りを見渡してここがどこか分かった、どうやらどこかの洞窟なのか周り一面岩肌で覆われていた。
両手を紐で縛られている為かうまく起き上がれない。
どうして私こんなところにいるのかしら?
「ふふ、どうして自分がこんなところに居るのか理解できていない様子だね。」
「そうよ、まずあなたは誰なのよ!」
「俺かい?俺はとある人物から君を連れ去る依頼を受けた人物だよ。名前は……秘密。」
「なによそれ!」
この人物一体何者?
頭の中が真っ白になりそうよ、でも私は今攫われているってことが分かった分まだ落ち着いて行動出来るわね。
ただここが何所か分からない以上、上手く逃げても助けを呼びに行けないし。
仕方ないわ、こいつから引き出せる情報を引き出す事に専念するほうがわね。
「あなたの事を聞いても何も答えてくれないと理解したから他の事を聞くわ。」
「正直に答えるかは俺自身の気分次第だよ。」
「ほっっんと腹が立ちますわね!」
「アハハ!」
「はぁ……まずはここが何所か教えて欲しいですわね。」
「それなら教えてあげてもいいかな、ここは君が居た王都から北に向かった森にある洞窟だね。」
「すんなり教えてくれますのね。」
「どうせ一人で抜け出すのにはきついだろうし教えても問題ないからね。」
「それはどう言う意味でして?」
「ほら、聞こえてくるだろ。大勢の足音が。」
謎の人物に警戒しながら外のほうに意識を向けると確かに数人の足音がこちらに来るのが聞こえた。
他にも仲間が居たのね、これは本格的に危ないかも……
「見回りの奴らが帰って来たんだろうな。どうする?早く逃げないとどんな目に遭うか分からないぜ。」
クククと低く笑いながらそいつは余裕そうにこちらを見下ろしてくる。
「そう言えばまだ何か聞きたい事が有るんだよな?良いぜ、何でも聞いてくれ、その時間があるのならな!」
煽るように笑いながら言ってくれるわね。
でも、もう少しでさっき拾ったガラスの破片で両手を縛っている紐が切れるわ。
そうなればいくらでも逃げる手段が取れる。
「おい!外は異状ない。何人かは見張りに置いてきたが別にいいだろ?」
扉の外から男の声が聞こえてきた。
もう少しで切れるのに早いわ!
(痛い!)
焦って自分の指を切ったようだが顔に出ないように歯を食いしばって紐を切る。
これぐらいどうにか出来ないとアイツには追い付けない。
そうレヴィーに……
「別に俺が指示したのは外の見回りだけだからそっちがどう行動しようと自由だ。」
「そうかよ。それならここの中に入るのも自由だよな?」
そう言いながら扉の外にいた男たちが扉を開けながら入ってくる。
それと同時に紐が切れた。
よし、これで逃げれるわ!
そう思い立ち上がり私を拉致した男たちから距離を取る。
「なんだ、紐が切れちゃったか。まぁ、それで状況が変わる訳じゃないからいいんだけどね。」
「おい何逃げられてるんだよ、これからがお楽しみの時間だったのによ!」
「いや、あまりにもこの娘が必死になって紐を切っている姿を見ていたらお前たちが入って来た時どんな絶望の顔をするのか楽しみだったからさ。」
私が紐を切っていた事を知っていてあえて見逃していたの!?
本当嫌な性格ですわね。
「それで、これからどうするつもりなのかな?」
「当然逃げさせて頂きますわ!」
「はっ!俺たちも居るのにできると思っているのか?」
無骨な恰好の男たちが笑いながら私に近づいてくる。
正直怖いですわ。
でも、泣き言を言ってられませんわね。
こんな時レヴィーならどうするかしら。
いや、アイツのやることは規格外ですわ。
それなら私が出来る事で精一杯この状況から逃げるまでですわね。
「そら、そろそろ手が届くぜ。」
相手の一番偉い人物だと思わしき男が私に向かって手を伸ばしてくる。
もう、あの時のように守りに逃げるだけには行かないわ!
男が私の服に手をかけようとした瞬間物理防御魔法を目の前に全力で展開する。
「いてぇ!」
物理防御魔法は文字通り物体の脅威から身を守る魔法。
肉体も物体に入るから当然防御魔法はそれ以上の進行を許さない。
男が怯んだ瞬間に足に同じ防御魔法を展開し足払いをする。
ついでに今の私の筋力では男を転ばすのには足りないから肉体強化も同時に足に付与する。
「うお!」
間抜けな声を上げながら男は転倒する。
その隙に扉までの距離を最短で向かえる道のりを計算し一気に駆け出す。
「お前ら逃がすな!」
倒れたまま他の男たちに支持をだす声が聞こえてきた。
その声に反応するように扉の前でニヤニヤして見ていた男たちが一斉に襲ってきた。
しかし、私まで距離がある。
私は魔法防御と物理防御の魔法壁を展開し男たちに突っ込む。
「クソ!近づけねぇ!」
「早く防御壁を壊せ!」
私に近づけず焦る男たちを無視する形で扉まで一気に距離を縮める。
あと少し!
その油断が間違いだった。
「俺のことを忘れないでくれるかな?」
ローブの男がいきなり目の前に出てきた。
そして、一瞬で両方の防御壁を破壊する。
「なっ!」
「今のこいつらじゃ君の防御壁はそう簡単に壊せないが君よりも強い俺なら簡単に壊せるんだよ。覚えておきな。」
そう言いながら男は私の腹部に蹴りを入れ吹き飛ばす。
「うぐ!」
胃液と背中から落ちた衝撃で肺の空気が同時にせり上がり鈍い声が漏れた。
「げほ、げほ、あ……がぁ……」
痛い。
痛い、痛い、痛い!
蹴られた部分が内蔵ごとえぐられたと思うほど痛い!
お腹を押さえうずくまる私に先ほど足払いした男が近づいてくる。
「きゃあ!」
そのまま乱暴に髪を捕まれ無理やり立ち上がらせられる。
「さっきはよくもやってくれたな!」
男は思いっきり私の顔を殴る。
「あぎゃあ!」
脳が揺れる。
殴られた頬がじんじんと痛む。
歯が何本か抜ける感じがあった。
痛い。
「ひ……ひっぐ……い、痛いよぅ……」
どうして私がこんな事ばっかり巻き込まれるの?
私は何か悪いことした?
ねえ神様、いるなら教えて下さい。
私は何か悪いことをしましたか?
ねぇ!教えてよ!
その場で蹲り泣く私に男たちは下品な顔をしながら近づき着ている服を無造作に破り捨てていく。
どんどん露わになる私の肌に男たちはこれでもかってくらいに気分を高揚させ高笑いする。
助けて。
お父さん、お母さん助けて。
助けてレヴィー!
いよいよ着ていた服がなくなりかけた瞬間扉が吹き飛んだ。
涙で滲む視界には無数の男たちの手とその奥に土煙が見えた。
そして土煙が収まった場所にいたのは私が一番来てほしい人物、レヴィー本人が立っていた。




