二次試験【前半】
一次試験の突破と二次試験の受付を済ませた日から三日後、俺たちは二次試験を受けるために学園に来ていた。
校庭に集められた受験生は校庭を埋め尽くすほどに多かった。
しばらく待つと学園長と思われる老人が姿を現した。
その瞬間談笑していた人たちは一斉に静かになる。
「諸君、まずは一次試験の合格おめでとう。私はこの学園の学園長をしているアルストベルと言う。諸君らにはこれから二次試験を受けてもらうが注意事項があるからしっかり聞くように。」
マイクもないのにアルストベルの声は校庭中に響いた。
あれは多分風魔法の応用だろう。
声を風に乗せて話すとか比喩で使われる言葉があるが、彼がしたのは比喩とかではなく本当に風に魔法で声を遠くまで運んだのだろう。
「一つ目の注意事項だが二次試験では筆記及び面接と最後にそれぞれの実力を見るために模擬戦をしてもらう。その際当然だが不正を見つけ次第不合格にする。」
当たり前のことを言ってるが多分毎年不正する人がいるのだろうな。
「二つ目だが模擬戦での相手を死なすような事も禁じている、実際の戦闘ではないからだが時々力加減を間違えて相手を殺すといった事件が起きてるのは事実。なのでくれぐれも相手を殺すことの無いよう注意をしてほしい。」
これも当然なことだろう。
が、やはり自分の力に溺れて無駄に相手の力量を見誤り殺すことがあるのだろう。
ふと視線をを感じ隣を見るとレーナスがやらないわよねと言いたげな顔で見てきていた。
少し腹が立ったので軽くチョップをしておく。
「以上が注意事項だ、先ほど言ったこと以外は基本何でも認められてる。」
含みのある言い方だな。
早い話が今この場所で校長を殺しても良いように聞こえる。
そんな馬鹿なことはしないが二次試験を受かりやすくするためには手段を選ぶなと言ってるような感じがする。
試しに意識を集中させ無属性の探知の魔法を分かりやすく使ってみる。
今使った無属性の魔法とはどの属性にも属さない魔法で独学でしか習得できない魔法だ。
精霊は必ず属性を持つ為無属性の魔法を教えることができな。
この無属性の魔法を考えだしたのは魔法適正が無いと言われた人で、今では無属性魔法のエキスパートで賢者の称号を与えられた人物だ。
確か名前はノーブルとか言ったかな?
少し話がそれたがその人は魔法が使えないことを馬鹿にされたのが悔しくて適正が無い人でも使える魔法はないのかと考え出した結果自分で魔法を作ると言う言う偉業を成し遂げた。
それがどれほど凄い事かと言うと、何もない空間にリンゴなどの実態を持った物体を生み出すようなものだ。
それは今は廃れてなくなったと言われている錬金術の技法で無から物を生み出すなんて今の常識では考えれないことだ。
まぁ、その人の書いた本がなぜか家にあったのでそれを読み込み独学で構造を理解し使用できるまでになった。
おかげでこうして無属性の魔法を自由に使えるのだがこの事実を知っているのはレーナスだけだ。
両親にも話をしていないし話しても信じてもらえないと思ったからだ。
実際に使用して見せるのが楽なのだがあまり両親を驚かしていたらそのうちショック死しそうでやめた。
さて、ある程度できる魔法使いならこの探知の魔法で反応するがどうだろう。
そう思い周囲を見ても誰も反応していない。
おかしい、この程度に反応しないのはわかっていて無視をしているか本当に気づいていないのどっちかだ。
と考えていると学園長と目が合った。
かなりの距離があるのに確実に目が合ったと分かった。
そして子供の悪戯を仕方ないなと大人の見せる苦笑を学園長はこちらを見ながらしてきた。
ばれている。
あの学園長は俺が魔法を使ったことを察している。
……面白い。
これならどうだと自分が指定した対象の視界を奪う魔法を発動しようとして止める。
学園長がこちらを見続けて次はないぞと警告を含んだ殺気を俺だけに送ってきたからだ。
降参と両手を上にあげる。
それを見た学園長は優しい笑みをし視線を外す。
あれは敵に回すとめんどいやつだな。
「レヴィー、さっきから何しているの?」
探知の魔法に気づいていたレーナスが俺を見ながら質問してきた。
「ん?なに単なる実験だよ。」
「そう、あんまり目立つことはしないほうがいいと思うよ。」
「どうして?」
「あの学園長がレヴィーに警告を出してくる前に周りに居た数人の受験生が反応していたのと、多分先生と思う大人が警戒していたから。」
「……教えてくれてありがとう。」
「ん。」
軽く頭をなでると少しうれしそうに目を細めレーナスは微笑む。
そっか、やっぱり何人か反応はしていたのか。
本当に面白いな。
そう思うと同時に俺の人を見る眼がまだまだだと痛感した。
これは今後の課題だな。
そのあといろいろと二次試験の説明が有ったが高校とかの入試試験と同じだったので聞き流していた。
説明が終わるとロロナがこっちに来るのが見えた。
「さっき嫌な感じの魔法が飛んできたんだけど、あれレヴィーでしょ。」
「よく分かったね。」
「あんなことするのレヴィーくらいしかいないもん。」
「だよね。」
ロロナとレーナスはね~と言いあう。
そのやり取りに少しイラっとしたのでとりあえずロロナの頬を軽く抓り気分を晴らす。
「レヴィー、ひたひ。」
「なんかロロナに馬鹿にされた気がしたから抓ってるだけだから気にしない。」
「ひにふるわよ!(にきするわよ!)」
「あんまりロロナさんを虐めないのですよ。」
「ドリアドはさっきから静かだったからいること忘れてた。」
「失礼ですわね。」
少し怒った感じで頬を膨らますドリアドに苦笑する。
「少し宜しいですか?」
そう言いながらドリアドは俺たちにしか聞こえない程度の小声で耳打ちをしてくる。
「お三方気を付けた方が宜しいと思いますわ。どうもこの会場から嫌な感じがしますの。」
「嫌な感じ?」
「ええ、悪意がある感情がどなたから発せられてますわ。」
「それって……」
「ロロナ、今は気づいてないフリをした方がいいと思う。」
「どうして?」
「そう言う感情を持ってる人間は気づいた人間を口封じに殺すと思うから。」
「っ!!」
ロロナは驚いた顔を一瞬したがすぐに元の表情に戻す。
「ドリアドは引き続き周囲の警戒をお願いします。ロロナはできるだけ僕たちと一緒にいた方がいいかもしれないかな。」
「分かりましたわ。」
「分かったわ。」
双方がそれぞれ返事をしたのを確認しこの話を一旦終わらせる。
これ以上怪しい行動をしていると相手に警戒される可能性があるからだ。
二人が普段通りの行動をしたのを確認しこっそりとレーナスに耳打ちをする。
「レーナス、ロロナのことを頼む。」
「レヴィーはどうするの?」
俺はにやりとしれレーナスに告げる。
「面白そうだからそいつを見つけ出す。」




