報告と報酬
ギジルの後についていき受付の横にあった階段を上っていく。
四階に着き案内された部屋は一番奥の大きい部屋だった。
「ここは俺が使っている部屋だ、くつろいでくれ。」
ギジルはそう言い近場に有った椅子を人数分用意し、自分の椅子に座る。
俺たちも用意された椅子に座りギジルと対面する形になる。
一緒に連れてこられたグロウスは床に座らせられてる。
「さて、詳しい話を聞かせてもらおうか。」
「話をすると言いましても先ほども言いましたが盗賊に襲われたので迎撃しただけです……といっても納得しないですよね。」
「そうだな、そいつがなぜ危険視されてるのかは戦ったからわかるな?」
「はい、彼が持っていた武器。魔道具が関係しているんですよね。」
「そうだ。こいつが持っていた魔道具のおかげで多くの精霊使いは魔法が使えず殺されていった。だから危険視されていたのだが、君はどうやってそれを攻略したのか知りたい。」
鋭い目つきでこちらを見てくる。
……嘘は通用しない目だな。
「簡単なことです。魔道具と言っても効果範囲は必ずあります、それを見極めただけです。」
「ふむ。しかし、見たところ君は精霊使いのようだが魔素を乱された状況下でこいつの攻撃をかわしきるには分が悪いと思うのだが?」
「それは小さい頃からおとーさんに武術や剣術を教わっていたからで今回が初戦闘なので運が良かったとしか言えません。」
「そうか。」
と言ってからギジルは目をつぶり考えるような仕草をする。
そして目を開けグロウスを見る。
「お前は戦ってみてどう思った。」
「こいつの戦い方はそれこそ初心者そのものと言っていい。」
「そうか、お前がいうなら真実なのだろうな。」
グロウスの言うことを簡単に納得したギジル。
友の言うことを信じるように簡単に納得したことに疑問を覚え少し警戒をする。
「ん?あぁ、こいつとは昔同じ騎士団に居てな知り合いなだけだ。」
俺の視線に気づきさらっと告げてくる。
「心配するな。こいつを逃がしたりはしないさ、ちゃんとした罰をこいつには与えるから安心してくれ。」
警戒の視線を緩めない俺に告げ手元に有った用紙に何かを記入していく。
「これで信用してほしいと思うのだがどうだろう。」
記入を終えた用紙をこちらに渡してくる。
内容を確認するとグロウスの処罰の内容とそれを必ず執行することを約束する旨が書かれていた。
最後に自分のサインがしてあり封蝋もきちんとある。
これが本人が書いたと証明されたことになるから何かあった場合はこれを使えという事だろう。
「わかりました。信用しましょう。」
「子供の割には物分かりがいいのだな。」
「子供だからですよ。」
「そうだな。」
お互い一切目線を逸らさず腹の探り合いをするがどちらも手を明かさないと分かるとギジルは一息つく。
「君からは計り知れないものを感じるが今はいいとしよう。さて、報酬の話に変えるがいいかな?」
「はい。」
「よろしい。報酬の事だがこいつにかけられてる賞金は金貨300枚となっているがそのまま君に渡せばいいのかな。」
「それにつきましてわたくしから提案をよろしいでしょうか?」
今まで静かに話を聞いていたドリアドが割って入ってくる。
「ドリアドさんといったかな。どんな提案だろうか?」
「報酬の一部を変更していただきたいのです。」
「内容にもよるが話してくれ。」
「では。わたくしの提案はここから北に行った森の管理を全てわたくし達精霊に任せると約束してほしいのですわ。」
「森の管理を全てと。」
「はい。今後、森で何かあった場合はわたくし達の独断の判断で処理をする。但し、わたくし達で対処できない案件が発生した場合はあなた達人間に手を貸していただく事。これを約束して頂ければわたくし達はこの件からは身を引きますわ。」
ドリアドの提案したのは人間を信用しないが自分たちが危険になれば手を貸せと言う横暴な内容だ。
今回の事は人間側が迅速に対応できなかったことにより森の精霊たちが暴走する一歩手前まで行った。
それは森の管理をしていたドリアドには度し難いことであり、彼女の要求も当然と考えての発言だろう。
さて、この要求をどう対応するのか。
ドリアドはこの要求が通らなかったら多分この王都を襲撃するつもりだろう。
森の近くにこんな大きな王都があるから問題が起きる、ならその問題源を潰せば森も平和になると考えているのだろうな。
それを感じさせるほどドリアドの目は殺気を含んでいた。
「ふむ……分かった。王には俺から話を通しておこう。」
「案外あっさりと承諾しましたね。」
「ここで返事をしないと彼女はこの王都に攻める気だと思ったからな。」
「あら、そんな事はしませんわ。」
「どうだか。」
きっとギジルはドリアドの考えを読んだのだろう。
さすがギルドのリーダーを務めるだけはあるな。
いや、こんな事を見抜けないならギルドマスターになっていないだろう。
「では、報酬はドリアドさんの要求を追加するとして賞金はどうするかな?」
「賞金の半分をドリアドさんの要求に変更。残りの半分を僕がもらうで良いと思います。」
「打倒なところだな。」
賞金の半分を子供が貰うのはがめつい様に見えるが、ギルドのことを考えると断る方が失礼になる。
子供が王都でも上位に入る危険人物をとらえたと言う事だけでもギルド側としては失態になるのに、無償となるとそれこそギルドの存続の危険につながる。
それなら、いらないと言われてもきちんと渡す事が他の冒険者や討伐隊に示しがつく。
だからこそ、俺から報酬をもらう意思を示せばギルドとしてはありがたいとことだろう。
「それでは受付で報酬をもらってくれ。ドリアドさんには今から俺が確約書を書き渡すから少し時間をくれ。」
「わかりましたわ。」
「僕もわかりました。」
それを合図にこの話し合いが終わっりを告げる。
俺とレーナスは立ち上がり扉を出て受付に向かうのだった。
「ギジル。」
「なんだ。」
レヴィー達が出て行ったドアを見ながらグロウスは口を開く。
「これは昔のよしみでの忠告として言っておく。あのレヴィーを見張っていろ。」
「どういう事だ。」
「確かにあいつの戦いは初心者そのものだが魔法に関しては桁外れだ。」
「それに関しましてはわたくしからも忠告しておきますわ。」
「それほどにか。」
「戦った俺が言うくらいだ。それにそこの上位精霊も言っている事だからな。」
「わかった。それも王に伝えたほうがいいな。」
ドリアドに渡す用紙とは別にもう一枚用紙を引っ張り出し王宛に報告書を静かに書き始めるのだった。




