お互いの主張
「ドリアドと言ったな。邪魔しないでくれるか、こいつは俺が殺さないと気がすまない。」
突然に現れたドリアドを睨みながら話しかける。
「あなたのお気持ちを汲むのでしたらそうしたいのですがこちらも譲れない理由がございます。」
「その理由とは。」
「彼らが好き勝手に暴れていたせいで私たちの森は荒らされ他の精霊たちは怒りに我を忘れる程になっております。ですから、精霊たちの怒りを静める為にも彼を私たちの手で始末しなければなりません。」
「……」
なるほど、このまま俺が殺せば精霊たちは怒りのぶつける場所を失い暴れると考えての行動なのだろう。
だが俺の中に渦巻く黒い感情は今すぐにでもこいつを殺せと訴えてくる。
こいつを引き渡してもいいがそうなるとこの感情を俺はいったい何処に向ければいいのか分からなくなる。
「ご理解頂けないでしょうか?」
「理解はしたがそれじゃ俺の感情が収まらない。」
「……そうですか。」
両者とも引く気が無い事をドリアドは理解しこちらを睨みながら見る。
引かなければあなたも殺すと言った感じか。
一触即発の空気が漂い始めたその時。
「レヴィー!」
後ろから聞き覚えの有る声が聞こえてきた。
振り返ると傷が治ったレーナスが飛んでくるのが見えた。
「お仲間で?」
「俺の契約している精霊だ。」
「そうですか。」
そうつぶやくとドリアドから殺気が消える。
「レヴィー無事なの!」
「あぁ、レーナス俺は平気だ。」
「何処をどう見たら無事に見えると思っているのかしら?」
レーナスの後ろからロロナたちも近づいて来て俺のぼろぼろの身体を見ながらため息を吐く。
「で、ドリアド。こいつの処分についてだが。」
「そうですね、どうしましょうか?」
ドリアドは困ったように首を傾げこちらを見てくる。
どうするもこいつは殺した方がいいだろうと思ったが彼女が聞きたい答えだとは思えないので言葉を飲み込む。
「や、やっと追いつきました……」
最後に息を切らしながらベルーが到着する。
「とりあえず一旦話合いましょうか。」
「そうですね。」
俺とドリアドは話し合いをする方針でその場を収める。
「ただ、あなたに逃げられては困りますので拘束させて頂きますわね。」
そう言うとドリアドはグロウスの身体を木の根でぐるぐる巻きにし拘束した。
「それでレヴィー、この方は?」
「ドリアドです。以後お見知りおきを上位精霊さん。」
「これはご丁寧に、レーナスと申します。」
レーナスは上品なお辞儀で挨拶をするドリアドに同じ様に挨拶をする。
「それで、彼の処分についてなんですがどういたしましょう。」
「俺はこいつを殺せれば気が済むからそうしたいんだが。」
「それではこちらの気が済みませんので許可できないです。」
現状はお互いの主張を言いながら話が進まないでいる。
二人であーだこーだと自分の言い分を言うが折り合いが見つからずにいる。
「あのー……」
その時話を聞いていたベルーがおそるおそると言った感じで手を上げる。
「それでしたら王都まで連れて行きギルドに引き渡すと言うのはどうでしょう?」
だめですかね?と付け足しながらベルーは提案をしてくる。
「ベルーさん、話を聞いていましたか?俺はこいつを殺したいと言っているのですよ。それに彼女も森の精霊たちの為にも引き渡してほしいと言っています。」
「それは理解してます。が、このままレヴィーさんが殺人を繰り返すと戻ってこれない所まで行きそうですし、それにドリアドさんのお仲間さんには申し訳ないですがそこで捕まっている彼は罪人、私たち人間の然る場所で罰せられるべきだと思います。」
「それではわたくし達の怒りが収まりません。」
「だったらそこに転がってるもう一人を使ったら?」
レーナスが指差す方向には両腕を切断され放心状態の盗賊の一人が座っていた。
「……そうですね、それでしたら他の精霊のおもちゃに出来ますし落ち着くと思います。」
「レヴィーさん、不満は有ると思いますが心を静めてください。これ以上は本当にあなたの心が壊れてしまいます。」
ベルーが心配そうにこちらを見ながら訴えかける。
「……はぁ、分かりました。」
ため息を吐きながらしぶしぶ承諾する。
その瞬間心に巣くっていた感情が消え去り穏やかになる。
「良かったです。」
ホッとしたのかベルーは安堵の表情をする。
この人は絶対損する人だと思いながらも自分を心配してくれていた事に少し感謝をする。
「ドリアドはそこの男を精霊たちに引渡し、僕たちはそれを王都まで持って行きギルドに引き渡すでこの話は終わりでいいですか?」
口調を元に戻し話をまとめる。
「ええ、それで結構ですわ。」
ドリアドも承諾してくれたおかげで話がややこしくならなくて済みそうだ。
「ですが、彼の引渡しに付いてはわたくしも同伴してもよろしいですか。」
「どうしてです?」
「彼の処罰を他の精霊にお伝えしないときっと精霊たちは彼を殺しに王都へ向かおうとします。そうならない為にも彼の処罰がどうなったか知っておかないといけないのです。それに、その根はわたくしが作りあげた特性の魔法の木の根ですのでわたくしがいないと解けないですし。」
「……分かりました。しかし、この森の管理者が森から離れても大丈夫なのですか?」
「それは大丈夫です。もう一人わたくし以外にも森の管理者がいますのでそちらの方に暫くお任せしようと思います。」
「そうですか。でしたら一緒に来ていただければ話が拗れずにすみそうですね。」
「ええ、そちらが宜しければよろしくお願いいたしますわ。」
とドリアドはやさしい笑みを浮かべながら頭を下げる。
こうして、新たにドリアドを一時的に仲間にし王都へと向かうべくベルーの荷馬車まで戻る事になった。
「ま、待ってください!」
その際に背後から呼び止められた気がしたが、かすれながら搾り出された声に俺たちは気づかず森の中を進んで行くのだった。




