怒り【後半】
俺は男の指さした方向に向かって森の中を歩いて進む。
ベルーは俺の考えは人間として間違ってると言った。
どうしてそんな事を言われたのか、その答えが未だに分からずにいる。
歪んだ考えだからと言いたいのか?
それについては同意するが所詮人間は自分が一番と考える生き物だと思う。
だからこそ俺はあの時逃げる選択肢を選びやすいように誘導してやった
俺が逃げる選択肢を取れば逃げた後でなにかあったと報告が有っても俺のせいに出来るからだ。
だからこそベルーに逃げると言ったのに間違ってるとアイツは言った。
……本当に理解できない。
しばらく進むと舗装された道に出た。
その先では数人の男達と現在進行形で襲われてる馬車が見えた。
馬車の外見は他の商人が使う安そうな物ではなく位の高い人物が乗る様な形をしていた。
何処ぞの貴族が襲われたのか……
そんな事は今の俺には関係ない、目の前にいるアイツらを皆殺しにするまでこのドス黒い感情は消えない。
男達は目の前の獲物に興奮状態のようでこちらに気付いていない。
なにか話しているがどうでもいい。
ただ殺す事しか頭に浮かばない。
はは、こうなってくるとベルーが言ってた事もそう遠くないかもな。
俺は人じゃないのかもしれないな、これじゃまるでただの魔物だろう。
もう俺がキレてる理由も分からなくなってきた。
目の前の獲物を殺せと別の俺が叫んでるようにさえ感じる。
「護衛は皆殺しにした。大人しく出てくるんだな。」
「たまにこうした上玉を襲えるんだから辞められねぇぜ。」
「おいお前ら、早く金目の物と売れそうな女を奪え。」
頭らしい男が落ち着いた感じで指示を出してる。
それを聞いた部下は先程殺した男達と同じ下品な笑みを浮かべ馬車に近づく。
「こ、来ないでください!」
「おうおう、これはこれは可愛いお嬢ちゃんだことだ。そんな危ない物を持っていると怪我するぜ。」
「お嬢様、ここは爺やが引き受けますのでお逃げ下さい!」
「でも、それじゃ!」
「爺やはお嬢様に仕える事が出来て幸せでした。ですから最後はかっこつけさせてください!」
「威勢のいいジジイだ!ならお望み通りに殺してやるよ!」
盗賊の1人がゆっくりと燕尾服を着た老人に近づく。
手に持った獲物を愛おしそうに舐め振りかぶる。
もうダメだと思ったのか老人は目を瞑り最後の時を待った。
しかしくらい待っても最後の瞬間は訪れなかった。
不審に思い恐る恐る目を開けると振り上げた腕が肘から先がない状態で固まってる男が映った。
ボトリと地面に落ちた自分の腕を見て男は困惑した顔をする。
それが自分の腕だと気付いた瞬間痛みが襲ってきたのだろう、無事な手で傷口を押さえ叫んだ。
「お、俺の腕!俺の腕が落ちてる!」
「な、何をしやがったこのジジイ!」
周りが驚きと困惑に感情が支配され目の前にいる老人を警戒しだすがやったのはその老人じゃない。
当然俺が風の刃で切り落としたのだが、ここには他に誰も居ないと思ってる盗賊からしてみれば目の前の老人が何かしたと思ったのだろう。
だから俺が別の男の背後居るのに誰も気がづかない。
「死ね。」
短くそれも唸るような声で発した言葉が目の前の男に届く前に首を切り落とした。
異常な状態に気付いた男達は俺に視線を移し警戒する。
「よう坊主。これをやったのはお前か?」
「そうだと言ったら?」
「殺す!」
頭らしき男が怒鳴り周りの男達に命令を下す。
各々持っていた武器を振りかぶりながら俺に向かって駆け出す。
(無意味な事だと気づかないのか、まぁ殺せるならなんでもいいや。早くこの感情を抑えたい。)
そんな事を考えてると三人程が目の前に迫っていた。
振り下ろされる刃物を俺は避けようとしなかった。
俺にしてみれば一瞬の出来事だが、当事者の男達にはゆっくり時間が過ぎる様に感じたのかもしれない。
俺に刃先が当たる前に男達は獲物ごと粉々になりその場に肉塊として崩れ落ちた。
俺は先程やった様に風の刃を無数に展開し一斉に暴れらせたのだ。
だから俺に刃が届く前に男達は絶命したのだ。
「……坊主、貴様は生きて帰さん。」
黙って成り行きを見ていた頭の男が自分の倍程ある斧持ち近づいてくる。
俺の目の前に来ると男は壁のように感じる程のデカさだと再度感じた。
筋肉質のその身体で俺を殴れば一瞬で殺せるだろうと感じされるデカさだ。
「坊主名前は。」
「……レヴィー。」
「レヴィー、俺はグロウス。昔は騎士だったが落ちぶれて今に至る。その名残で俺が直接殺す相手には敬意を払い名を名乗る事をしている。」
どうでもいい情報をグロウスと名乗った男は自慢げに話す。
それでも目は怒りと復讐に満ちながら殺意を放ち俺を見据えて離さない。
「一応聞くがお前は正義感で俺らに攻撃したのか?」
「違う、俺はお前達を殺したいから殺しただけだ。」
「そうか、正義感でやったのなら両腕を落とすだけで見逃してやったのだが。」
「生憎俺はお前らを殺す事しか考えてるない。それ以上でもそれ以下でもない。」
「なら死ね!」
グロウスは獲物を振りかぶり俺めがけ振り下ろす。
先程同様細切れにしてやれば終わると思い魔法を展開しようとし異変に気づき斧を避ける。
上手魔素の制御が出来ない。
違和感に首をかしげもう一度魔法を展開しようとしたがやはり魔素制御が出来ない。
「悪いが俺の斧の効果範囲に入ってる内は魔法なんざ使わせねぇぜ。」
斧を担ぎながら近づいてくるグロウスに警戒をしながら距離をとる。
あの斧……魔道具か。
本来武器はその役割だけ果たすだけの鉄の塊だったりするのだが、まれに特殊効果が付いた武器が製造又は発見される事がある。
それらは魔道具と称され効果次第では高値で売買される代物だ。
魔道具がどうして出来るのかは未だに解明されておらず、一説では大精霊や原初の精霊の加護だと言う話だが真偽は定かではないので調査が続いている。
しかし魔道具か……厄介だな。
効果はおそらくあの斧の効果範囲内で強制的魔素を乱れさせて魔法を使えなくさせるものだろう。
精霊や精霊使いには致命的な代物だな。
さて、どうしたものか……
「オラ!何も仕掛けて来ねぇならどんどん行かせてもらうぜ!」
と言いながらグロウスは攻撃を再開するのだった。




