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人間嫌いの俺が人間の為に一肌脱ぎます  作者: ゆうやん
第一章 少年時代
11/30

蛮族

 森に入ってから二日過ぎた。

 一応補装された道がありそこを進んでいく。


「この様子ですと明日の夜になる前には森を抜けれそうです。」


「意外と早く抜けれますね。」


「順調にいけばこんなものですよ。魔物にも出会ってないですし今回の旅は原初の精霊様の加護があったのでしょうね。」


 などとたわいもない話をしながら進んでいくと荷台を引いていた馬が突然止まる。


「どうしたんだ、この先に何かいるのか?」


 ベルーの問いかけに答えるようにブルルと怯えた様に震える。


「困りましたね。」


「回り道はないのですか?」


「少し戻りますが回り道はございます。」


「でしたらそちらの道を行きましょう。わざわざ危険な道を通るほど急いでいる訳でもないので。」


「分かりました、それではひき……」


 ベルーが引き返しましょうと言いかけた時前方から悲鳴が聞こえた。


「レヴィー、今の声って。」


「……多分ロロナの声。」


「助けに行こうよ!」


「………」


 正直助けに行かなくても平気だと思った。

 彼女には上位精霊が居るし、ここまで一人で来たとは考えづらい。

 俺と同じく誰かに頼んで連れてきてもらったに違いない。

 ならわざわざこっちまで危ない場所に飛び込むような真似をしなくていいと結論を出していた。

 まぁ、契約の儀の時に知り合った程度の人間に対して自分の命を懸けるようなことをするのが面倒ってのもあるけど。


「ベルーさん、迂回道に行きましょう。」


「レヴィー!?」


「よろしいのですか?お友達が大変なことになっているのでは?」


「ただ一度会った程度の人です、そんな人に自分の命を懸けるのは馬鹿か勇気と無謀をはき違えてる人だけです。」


「ですが……」


「それに一人でここまで来たとは考えずらいです。それならその人に任せておいて大丈夫でしょう。」


 ベルーはチラリとレーナスを見て考えるように目をつぶる。


「レヴィーさん、一言よろしいでしょうか?」


「なんでしょう?」


「その考えは人の考え方ではないです。それは人じゃないモノが持つ考え方です。」


「どうして!」


「この先に居る人はレヴィーさんにとってたった一度会った程度の人かもしれません。しかし、そこで出来た繋がりはそう簡単に消えるものではありません。確かにレヴィーさんの言う通り他に誰か護衛で居るかもしれませんがもしその人が死んだと知らせが来たときあなたはきっと後悔します。」


 ベルーは必死に俺の考えが間違えてると訴えてくる。

 どうして?

 危険が目の前にあると知っているのならそれを回避しようとするのは当然の事じゃないのか?

 それに自分が無事なら良いと思うのが人間の本性なのではないのか?

 分からない、分からない!


「レヴィー。助けに行こう。」


「分からな、分からない、分からない。」


「レヴィーさん……」


 人間なんて自分が良ければそれでいいんじゃないのか?

 だから俺は人間を嫌っている。

 それなのにベルーは間違っていると言う。

 何故?

 どうして?

 自分が大切じゃないのか?

 分からない……


「……ベルーさん!行きましょう!」


「ですが、レヴィーさんがこの調子では……」


「私は上位精霊です。多少の戦闘なら私がなんとかします!」


「わかりました。」


 ベルーは馬に進むように指示を出す。

 暫く進むと目の前に壊れた荷馬車が目に入ってきた。

 さらにその奥に結界を張りながら主を守るラガールフと、その後ろで商人を治癒魔法で傷を癒してる姿が見える。

 その周りを数人の男が精霊を使い結界を破るのに必死になっている。


「なんだよこの硬さ!」


「おい、お前ら!なにしている、早く結界を破壊しろよ!使えねぇ精霊だな!」


「お嬢ちゃん、いい加減諦めて俺らに捕まって売られちまいなよ。」


「変態貴族に高値で売れそうな見た目だから俺らの為にさぁ大人しく捕まってくれないかなぁ。」


 下品な言葉を並べながらロロナを攻撃している。


「ロロナさん!」


「レーナスさん!?」


 レーナスがロロナ達の前に行き両手を広げ盾になるように男達に立ちはだかる。


「お!新しい獲物が向こうからやってきたぜ!」


「こいつも上玉だな、こいつもとっつ構えて売り飛ばそうぜ!」


 グヘヘヘと笑いながらじりじりとレーナスたちに近づく。

 ……こいつら今なんて言った?

 レーナスを売る?

 自分たちの幸福の為に精霊を売る?

 人間が?

 何を言っている……


「それ以上近づかないで!近づくならあなたたちを攻撃します!」


「威勢がいいねぇ、お嬢ちゃん何ができるのかなぁ?」


「レーナスさん!その精霊たちは操られてます。あの人達が持ってい奴隷の魔石を壊してしまえばその効果もなくなります!」


 奴隷の魔石。

 その名の通り、その魔石は相手を奴隷のように操ることのできる魔石で魔素を送り続けることによりその効果が半永久的に継続すると言う魔道具だ。

 しかし、魔素供給が途切れれば効果が切れると言う弱点がある。


「魔石を壊せばいいのね!」


 そう言うとレーナスは風の刃を魔石に向かって飛ばす。

 が、蛮族は精霊を盾にしてその攻撃を防ごうとする。

 それを見たレーナスは慌てて風の刃をかき消す。


「卑怯よ!精霊を盾にするなんて!」


「馬鹿正直に魔石を壊させると思ったか。」


「どうすれば……」


「じゃあそろそろいいかな?」


 男達は精霊に命令を出しレーナスたちを攻撃する。


「きゃあああ!!」


「レーナスさん!」


 下位精霊の攻撃とは言え数が多い。

 一回の攻撃の命令でレーナスはボロボロになる。


 ……こいつら今何をした。

 レーナスに攻撃したのか?

 俺の中にどす黒い何かが渦巻くのを感じる。

 殺せ、殺せと囁くように負の感情がむしばんでくる。


「おらおら!これ以上ケガしたくなければ大人しくしてな!」


「この魔石で奴隷してやるからなー。」


 その言葉を聞いた瞬間俺の中の何かが外れるのを感じた。

 体中から魔素がとめどなく溢れるのがわかった。

 殺せ…

 殺す…

 殺せ。

 殺す。

 殺せ!


「お前たちは絶対殺す!」


 俺は蓄積していた魔素を暴走させながら男達の前に立ちはだかるのだった。

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